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ランヴァルトが取られるの?

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ランヴァルトが、他の女性に心奪われる、ていうの!?

私は焦ってしまった。
あれだけ、私を好きだと言っていた人なのに・・・?

少なくとも、女性の影は今まで見えたことがないんだけど。

フェレミスは、指を一本立てて目線を上に上げながら、挑発するような声色で告げる。

「惚れられてると思って油断してたら、他の女に奪われるぜ?あいつ、天然でウブだから、あっという間に誰かに手玉に取られ・・・。」

私は、最後まで聞かずに宿を飛び出した。シングヘルトを奪ったアリシアの顔が浮かんで、無我夢中でランヴァルトを探す。

彼は・・・彼は違う!そう思っても、根拠はない。

いや、嫌だ。他の女性に取られるのは!!

でも、よく知らない街。ランヴァルトは見張りをすると言ったから、そんなに離れてないはずだけど。

「モーガン、ランヴァルトを探そう。」

モーガンにそう言って空に放す。
モーガンはしばらく空を旋回して、宿屋の裏手に向かった。

「そこね?」

宿屋の裏手にある土手の下の方に、ランヴァルトの姿が見えた。
いた!!・・・え?

ランヴァルトのそばには、見知らぬ女性がいる。

二人は親しそうに話をしていて、ランヴァルトがしきりに頷いているのが見えた。

「嘘・・・あいつ、もう捕まってやんの。」

後ろからフェレミスの声が聞こえて、私は思わず振り向いた。

「フェレミス!?いつの間に!」

「しー!1人で行かせるわけないでしょ?お、ほら、あいつら移動し始めたぜ。」

ランヴァルトと女性が、街の中心部へと向かって歩いていく。ずっと楽しそうに話をしながら。

嫌。そんな目で彼女を見ないで。楽しそうに話をしないで・・・。

私はモーガンを肩にのせると、二人の後を追い始めた。

「シルヴィア、シルヴィア!尾行するのに距離が近い!人目のあるところでは、何もないってば。・・・おっと、あぶね!」

フェレミスが私の腕を掴んで、路地裏に引っ張り込んでくる。

「離して!見えなくなっちゃう!」

「こらこら。ランヴァルトが振り向きかけたんだよ。バレたら逃げられるぞ?」

「ランヴァルト、見張りをするなんて言って、女性と出かけるなんて・・・!」

イライラしているのに、フェレミスがニヤニヤしながら私を見る。

「フェレミス、なぜ笑うの?」

「ふふふ、面白いんだもん?シルヴィアがランヴァルトを追いかけるなんてさ。」

「楽しんでるの?」

「成り行きがどうなるのか、興味あるね。」

「ひどい!」

「ごめん、ごめん。でもさ、ライバルが現れると自分の気持ちをハッキリ自覚するでしょ。」

「そ、それは。」

「私のランヴァルトを取らないで!てさ・・・。」

「・・・!」

「でしょ?」

な、なんでこんなに鋭いの?フェレミス。
下手に取り繕っても、見抜いてきそう。

彼が女性にモテるのは、こんなふうに気持ちがわかるからじゃない?

でも、面と向かって認めるのは・・・なんか悔しい。

フェレミスは、私の表情にふっと笑って路地裏から顔を出して覗き込む。

「よし、行こう。」

「待って。こうしましょ。」

私はフェレミスと手を繋いで、奥歯を噛み締めて血を飲んだ。すぐにモーガンと私とフェレミスで透明になって、ランヴァルトの後を追う。

「やっぱり、これすげぇ。まるで空気じゃん。すれ違う人まで、体の中を抜けてくぜ。」

「静かに!ディミトリでさえ、こうなった私に気づかない。ランヴァルトにも気づかれないはず。」

「な、る、ほ、ど。お、二人で店に入ってくな・・・と、おおっと、やっぱりここか。」

フェレミスの声に、ランヴァルトたちが入っていった店を見上げると、際どい女性の姿が描かれた看板が目に入った。

「何よ・・・これ!!」

「シルヴィア、落ち着いて。男にはこういうところが必要な時もあ・・・。」

「ランヴァルトはダメ!!」

「・・・はいはい。」

フェレミスが、ため息をついてついてくる。店の中は広い酒場のようになっていて、肌の露出が多い女性たちが、談笑していた。

ランヴァルト、いないわ・・・。

今は夕方。彼女たちは、今からが仕事なんだ。

「おぉ、美人ばっかり!」

女性たちに見惚れたフェレミスが、繋いでいた手を離してしまい、彼の透明化が解けてしまった。

いけない!女性たちにフェレミスが丸見えになっちゃった!!

「きゃ!」

「なに!?」

女性たちは、驚いてフェレミスを見ている。
フェレミスは、サッと態度を変えて女性たちを見回した。

「あぁっとぉ、運命の女性のところへ行かせてください!て神様に願ってたら、叶ったみたいだ。」

「本気で言ってるの?」

「それは嘘でも、君に会えたことは、俺の人生の奇跡なんだ。」

「ふふ、大真面目な顔してぇ!」

「クスクス、おかしぃー。」

「女性を笑顔にするの、得意なんだぜ、俺。その笑顔が素敵すぎて、もっと頑張っちゃうかも。」

・・・何やってるの!?フェレミス。

彼は女性たちに騒がれながらも、お得意のコミュ力の高さで、あっという間に仲良くなっていた。

すっかり、馴染んでる。
まったく・・・もう!

私は1人でお店の中を探した。店内には部屋がいくつもある。ランヴァルト、どこ?

一つ一つ探す?でも、もし、もし、間に合わなかったら?

よく見ると、部屋の扉の横に一つだけ、蝋燭が灯っているところがある。

使用中、てことかしら。

私は意を決して扉をくぐり抜けた。

薄い色とりどりのカーテンが、たくさんかけられた部屋の奥から声が聞こえる。

「まだ動いてはだめよ、ランヴァルト。」

「!!」

何、この色っぽい声!!

部屋の奥に踏み込むと、ベッドに横になったランヴァルトと、彼の横に腰掛けて、両手で彼の顔を包んでいるさっきの女性の姿が見えた。

そん・・・そんな!!



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