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忘れたかった恐怖
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悲鳴と怒号が古城から響き渡る。
そして無数の蝙蝠たちが、空を埋め尽くすように飛んでいくのが見えた。
変身して逃げているのだわ……!!
純血の吸血鬼たちが逃げ惑うなんて、あり得ない。
吸血鬼は魔物の中でも最上級のはず。
そんな彼らを襲えるなんて、何者?
人間? ワーウルフ? それとも他の恐ろしい悪魔?
私は震えながら、モーガンを懐に入れて身を縮める。
しばらくすると、古城の方から気絶した吸血鬼たちを抱えた集団が、山を降りてくるのが見えてきた。
その中の一人に、私は見覚えがある。
先頭を歩くその男性は……!
「ディミトリ!! 今日はなかなかの収穫だったせ! 純血どもの危機感のなさには、呆れ果てるなぁ、おい」
気絶した吸血鬼を四、五人抱える巨漢の男性が、先頭の男性に声をかけた。
ディミトリ!! やっぱり!!
長く封印していた記憶が、蘇ってくる。
膝が震えて、痙攣しそうになるのを必死で抑えた。
ディミトリと呼ばれた、美しく若い男性は、ピタリと足を止める。
音もなく巨漢の男性の方を振り向き、白金の長髪を優雅になびかせていた。
けれど、その口からは優雅さとは相入れないような、冷たい声が聞こえだす。
「イァーゴ、私は全員捕まえろと言ったはずだ。それなのに、たったこれだけだなんて、どれほどがっかりしているか、わかるか?」
威圧的にイァーゴを睨みつける。
イァーゴは、怯えたように二、三歩下がった。
あの男の声……怖い!
私まで恫喝されてるみたいで、余計に緊張してしまう。
「……まったく、ディミトリを失望させないで。今度彼にこんな思いさせたら、私があんたを始末するわ」
ディミトリの隣から、さらに氷のような声がして、ムチを持った金髪で隻眼の美女が現れる。
彼女も知ってる……。ディミトリの恋人を自称して、彼が好意を寄せる女性を陰でズタズタにしようとする人だ。
「イシュポラ、その時はお前に任せる」
ディミトリはそう言って、彼女と濃厚なキスを交わす。お互いの唇を噛んで血を飲み合う姿も、変わらない。
いつ見てもゾッとする。
ディミトリはイシュポラから離れると、イァーゴの様子に興味を無くしたように、今度は後ろからついてきている“しもべ”たちの方を見た。
“しもべ”たちは、主人である吸血鬼が意識を失っている間、その支配下から解放されて、自由意志で動く。
つまり、今は自分の意思でものが言えるの。
“しもべ”の一人が、ディミトリに跪いて見上げた。
「純血の吸血鬼の支配からお助けくださいまして、ありがとうございます。本当に、私たちは解放されるので?」
ディミトリは顎を軽く上げると、ニヤリと笑った。
「あぁ。お前たちはただ解放されるだけじゃない。今よりも、遥かに強いこの世の覇者の一人となる。さぁ、私と共に来るがいい」
“しもべ”たちは、魅入られたように喜んで感謝の言葉を言いながら、ディミトリを賛美している。
解放ですって?
一度咬まれて“しもべ”になれば、主人格の吸血鬼が死ぬ時は共に消滅するのに。
ディミトリはそのままみんなを連れて、私の横を通り過ぎようとした。
早く……早く行って!
私は緊張のあまり、奥歯をガリッと噛み締めてしまった。
いけない!!
私は吸血鬼としての牙が、一番奥にある。
牙が歯茎に刺さって、痛みで思わず口を開いた。
口の中に鉄の匂いが溢れて、慌てて飲み込む。
「……ん?」
ディミトリが、私が隠れた茂みの横で足を止める。
ひ! その時茂みの中から、私はディミトリの顔をはっきり見た。
まるで人形のように整った顔立ちと、陶器のような肌。
そして、鋭い両目の魔眼。
同じだ……あの時と同じ……。
恐怖で震える私の方に、ディミトリは歩いてくる。
傷ついた歯茎は、吸血鬼の再生能力のおかげでもう塞がってる。
でも、さっきの一咬みで、血の匂いが届いてしまったんだ……!!
ディミトリは茂みに手をかけて、中を覗き込もうとする。
ひ!!
その瞬間、恐怖のあまり動けなくなっていった。
怖い……怖い……誰か……見えなくなりたい……空気のように透明に……。
私は目を閉じて、祈るように願った。
やがて茂みの中に、ディミトリが入ってくる。
もうダメだ!!
そう思った時……。
「なんだ、誰もいないな」
そんな声が聞こえて、私はハッと目を開く。
気がつくと、ディミトリは私の体を通り抜けて、茂みの向こう側へと行ってしまった。
私は慌てて自分の体を見た。
透き通ってる!!
指先すら、そばに生えている草にも触ることができない。ほ、本当に空気みたいになってるんだ……。
驚いたことに、触れていたトランクまで透明化している。
驚愕している私の前を、もう一度ディミトリは通り抜けて、イァーゴたちの元へと戻った。
イァーゴは、首を傾げてディミトリのほうを見る。
「なんだ? 何かいたのか?」
「いや、懐かしい香りがしたから、見に行ったんだが、誰もいなかった」
「懐かしい?」
「あぁ、『小さなシルヴィア』の香だ」
「!!!」
私はその声に、激しく動揺して叫び出しそうになった。
あ……あ……覚えてるんだ。
彼はまだ忘れてないんだ……。
イァーゴは、怪訝な顔でディミトリの方を見ながら片眉をあげる。
「『小さなシルヴィア』? あー、そういや十年前にそんなガキがいたな。お前はえらく気に入ってたのに、仕留め損ねて逃げられたよな」
それを聞いたイシュポラが、激しい嫉妬心を表情に滲ませた。
「あなたが愛していたあの小娘? どこにでも連れ回してたわね」
ディミトリは、彼女の表情には目もくれず、恍惚感を浮かべた顔で空を見上げる。
「そう、あの日逃してしまった唯一の獲物……。生きていれば、『大きなシルヴィア』と同じくらいの年頃のはずだ……」
『大きなシルヴィア』!!
頭の中に、同じ名前の年上の女性の顔が浮かんでくる。
『逃げて! あなただけでも!』
あの日、もう一人のシルヴィアに言われた言葉を思い出して、気を失いそうになった。
ダメ……あいつらがいなくなるまで、気を失っては!!
必死に呼吸して、早くいなくなってと願う。
やがて、イァーゴが呆れたように歩き出した。
「はー、まだ、あの日のガキンチョに執着してんのか? お前にそんな嗜好があったとはなぁ」
バキ!! イシュポラが鞭を両手でへし折り、忌々しそうに投げ捨てた。
「あの小娘……!! 今でもあなたを独り占めするの!? やっと大きなシルヴィアがいなくなってくれたのに!! ディミトリ、ねぇ、私だけを見てちょだい!」
縋り付くイシュポラを、ディミトリは振り払ってイァーゴの方に突き飛ばす。
「黙れ、イシュポラ。私とシルヴィアたちの間に入れるものは、この世にはない」
断言された彼女は傷ついたような顔をして、トボトボとイァーゴと共に歩き出す。
ディミトリは、早く行くようにみんなに向かって手を振ると、
「ふふふ……あの子は私のものだ。生きていたら必ず仕留めてやる。……私の中で『大きなシルヴィア』と一つにさせてあげるのだ……」
と、不気味に笑いながら言った。
ディミトリは集団の一番後ろを歩き、私の隠れている茂みの方をもう一度振り向いた。
気づいた!?
いえ……違うみたい。
彼は唇の周りを赤い舌でゆっくりと舐めて、軽く牙を見せると、背を向けて山を降りて行く。
私は体を抱き締めたまま、しばらく動けずにいた。どのくらいそうしていたのか……。
「ホーホゥ」
モーガンが、優しく鳴き声をあげて動き出す。
モーガンは懐から出てきた途端、透明な姿が元に戻っていった。
そして、クリクリの目玉で、首を傾げながら私を見つめてくる。
「モーガン……」
どんぐりまなこのモーガンを見ていたら、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。
もう、彼らの足音も聞こえない。
遠くに離れていったんだ。
「はぁ……」
息を吐くと、透き通った体が元に戻っていく。
こんな力、私にあったんだ。
低木の枝に掴まりながら、ゆっくりと立ち上がる。まだ足は少し震えているけど、いつまでもここにいる方が怖い。
さっき捕まった吸血鬼たちの中に、お養母様や、シングへルトやアリシアはいなかった。
あんな人たちでも、心配してしまう。
一応、ね。
それよりもディミトリが、まだ生きていたなんて。私をまだ覚えているなんて……。
古城に戻るべきかしら。みんなは大丈夫かな。
そんな私は、お養母様に『二度と戻ってくるな』と言われたことを思い出した。
今戻っても、誰もいないでしょうね。
蝙蝠になって逃げ去っていたし。
私はチラッと古城の方を振り向いてから、急いで荷物を持って下山した。
忌まわしい過去の記憶から、逃れるように早足で。
そして無数の蝙蝠たちが、空を埋め尽くすように飛んでいくのが見えた。
変身して逃げているのだわ……!!
純血の吸血鬼たちが逃げ惑うなんて、あり得ない。
吸血鬼は魔物の中でも最上級のはず。
そんな彼らを襲えるなんて、何者?
人間? ワーウルフ? それとも他の恐ろしい悪魔?
私は震えながら、モーガンを懐に入れて身を縮める。
しばらくすると、古城の方から気絶した吸血鬼たちを抱えた集団が、山を降りてくるのが見えてきた。
その中の一人に、私は見覚えがある。
先頭を歩くその男性は……!
「ディミトリ!! 今日はなかなかの収穫だったせ! 純血どもの危機感のなさには、呆れ果てるなぁ、おい」
気絶した吸血鬼を四、五人抱える巨漢の男性が、先頭の男性に声をかけた。
ディミトリ!! やっぱり!!
長く封印していた記憶が、蘇ってくる。
膝が震えて、痙攣しそうになるのを必死で抑えた。
ディミトリと呼ばれた、美しく若い男性は、ピタリと足を止める。
音もなく巨漢の男性の方を振り向き、白金の長髪を優雅になびかせていた。
けれど、その口からは優雅さとは相入れないような、冷たい声が聞こえだす。
「イァーゴ、私は全員捕まえろと言ったはずだ。それなのに、たったこれだけだなんて、どれほどがっかりしているか、わかるか?」
威圧的にイァーゴを睨みつける。
イァーゴは、怯えたように二、三歩下がった。
あの男の声……怖い!
私まで恫喝されてるみたいで、余計に緊張してしまう。
「……まったく、ディミトリを失望させないで。今度彼にこんな思いさせたら、私があんたを始末するわ」
ディミトリの隣から、さらに氷のような声がして、ムチを持った金髪で隻眼の美女が現れる。
彼女も知ってる……。ディミトリの恋人を自称して、彼が好意を寄せる女性を陰でズタズタにしようとする人だ。
「イシュポラ、その時はお前に任せる」
ディミトリはそう言って、彼女と濃厚なキスを交わす。お互いの唇を噛んで血を飲み合う姿も、変わらない。
いつ見てもゾッとする。
ディミトリはイシュポラから離れると、イァーゴの様子に興味を無くしたように、今度は後ろからついてきている“しもべ”たちの方を見た。
“しもべ”たちは、主人である吸血鬼が意識を失っている間、その支配下から解放されて、自由意志で動く。
つまり、今は自分の意思でものが言えるの。
“しもべ”の一人が、ディミトリに跪いて見上げた。
「純血の吸血鬼の支配からお助けくださいまして、ありがとうございます。本当に、私たちは解放されるので?」
ディミトリは顎を軽く上げると、ニヤリと笑った。
「あぁ。お前たちはただ解放されるだけじゃない。今よりも、遥かに強いこの世の覇者の一人となる。さぁ、私と共に来るがいい」
“しもべ”たちは、魅入られたように喜んで感謝の言葉を言いながら、ディミトリを賛美している。
解放ですって?
一度咬まれて“しもべ”になれば、主人格の吸血鬼が死ぬ時は共に消滅するのに。
ディミトリはそのままみんなを連れて、私の横を通り過ぎようとした。
早く……早く行って!
私は緊張のあまり、奥歯をガリッと噛み締めてしまった。
いけない!!
私は吸血鬼としての牙が、一番奥にある。
牙が歯茎に刺さって、痛みで思わず口を開いた。
口の中に鉄の匂いが溢れて、慌てて飲み込む。
「……ん?」
ディミトリが、私が隠れた茂みの横で足を止める。
ひ! その時茂みの中から、私はディミトリの顔をはっきり見た。
まるで人形のように整った顔立ちと、陶器のような肌。
そして、鋭い両目の魔眼。
同じだ……あの時と同じ……。
恐怖で震える私の方に、ディミトリは歩いてくる。
傷ついた歯茎は、吸血鬼の再生能力のおかげでもう塞がってる。
でも、さっきの一咬みで、血の匂いが届いてしまったんだ……!!
ディミトリは茂みに手をかけて、中を覗き込もうとする。
ひ!!
その瞬間、恐怖のあまり動けなくなっていった。
怖い……怖い……誰か……見えなくなりたい……空気のように透明に……。
私は目を閉じて、祈るように願った。
やがて茂みの中に、ディミトリが入ってくる。
もうダメだ!!
そう思った時……。
「なんだ、誰もいないな」
そんな声が聞こえて、私はハッと目を開く。
気がつくと、ディミトリは私の体を通り抜けて、茂みの向こう側へと行ってしまった。
私は慌てて自分の体を見た。
透き通ってる!!
指先すら、そばに生えている草にも触ることができない。ほ、本当に空気みたいになってるんだ……。
驚いたことに、触れていたトランクまで透明化している。
驚愕している私の前を、もう一度ディミトリは通り抜けて、イァーゴたちの元へと戻った。
イァーゴは、首を傾げてディミトリのほうを見る。
「なんだ? 何かいたのか?」
「いや、懐かしい香りがしたから、見に行ったんだが、誰もいなかった」
「懐かしい?」
「あぁ、『小さなシルヴィア』の香だ」
「!!!」
私はその声に、激しく動揺して叫び出しそうになった。
あ……あ……覚えてるんだ。
彼はまだ忘れてないんだ……。
イァーゴは、怪訝な顔でディミトリの方を見ながら片眉をあげる。
「『小さなシルヴィア』? あー、そういや十年前にそんなガキがいたな。お前はえらく気に入ってたのに、仕留め損ねて逃げられたよな」
それを聞いたイシュポラが、激しい嫉妬心を表情に滲ませた。
「あなたが愛していたあの小娘? どこにでも連れ回してたわね」
ディミトリは、彼女の表情には目もくれず、恍惚感を浮かべた顔で空を見上げる。
「そう、あの日逃してしまった唯一の獲物……。生きていれば、『大きなシルヴィア』と同じくらいの年頃のはずだ……」
『大きなシルヴィア』!!
頭の中に、同じ名前の年上の女性の顔が浮かんでくる。
『逃げて! あなただけでも!』
あの日、もう一人のシルヴィアに言われた言葉を思い出して、気を失いそうになった。
ダメ……あいつらがいなくなるまで、気を失っては!!
必死に呼吸して、早くいなくなってと願う。
やがて、イァーゴが呆れたように歩き出した。
「はー、まだ、あの日のガキンチョに執着してんのか? お前にそんな嗜好があったとはなぁ」
バキ!! イシュポラが鞭を両手でへし折り、忌々しそうに投げ捨てた。
「あの小娘……!! 今でもあなたを独り占めするの!? やっと大きなシルヴィアがいなくなってくれたのに!! ディミトリ、ねぇ、私だけを見てちょだい!」
縋り付くイシュポラを、ディミトリは振り払ってイァーゴの方に突き飛ばす。
「黙れ、イシュポラ。私とシルヴィアたちの間に入れるものは、この世にはない」
断言された彼女は傷ついたような顔をして、トボトボとイァーゴと共に歩き出す。
ディミトリは、早く行くようにみんなに向かって手を振ると、
「ふふふ……あの子は私のものだ。生きていたら必ず仕留めてやる。……私の中で『大きなシルヴィア』と一つにさせてあげるのだ……」
と、不気味に笑いながら言った。
ディミトリは集団の一番後ろを歩き、私の隠れている茂みの方をもう一度振り向いた。
気づいた!?
いえ……違うみたい。
彼は唇の周りを赤い舌でゆっくりと舐めて、軽く牙を見せると、背を向けて山を降りて行く。
私は体を抱き締めたまま、しばらく動けずにいた。どのくらいそうしていたのか……。
「ホーホゥ」
モーガンが、優しく鳴き声をあげて動き出す。
モーガンは懐から出てきた途端、透明な姿が元に戻っていった。
そして、クリクリの目玉で、首を傾げながら私を見つめてくる。
「モーガン……」
どんぐりまなこのモーガンを見ていたら、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。
もう、彼らの足音も聞こえない。
遠くに離れていったんだ。
「はぁ……」
息を吐くと、透き通った体が元に戻っていく。
こんな力、私にあったんだ。
低木の枝に掴まりながら、ゆっくりと立ち上がる。まだ足は少し震えているけど、いつまでもここにいる方が怖い。
さっき捕まった吸血鬼たちの中に、お養母様や、シングへルトやアリシアはいなかった。
あんな人たちでも、心配してしまう。
一応、ね。
それよりもディミトリが、まだ生きていたなんて。私をまだ覚えているなんて……。
古城に戻るべきかしら。みんなは大丈夫かな。
そんな私は、お養母様に『二度と戻ってくるな』と言われたことを思い出した。
今戻っても、誰もいないでしょうね。
蝙蝠になって逃げ去っていたし。
私はチラッと古城の方を振り向いてから、急いで荷物を持って下山した。
忌まわしい過去の記憶から、逃れるように早足で。
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