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これからも生きていく
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プルッポムリンは、本当になんでも上手い。
雨が止んでから、クロスノスが言っていた場所へみんなで行ったの。
それから二人で畑を耕して、彼女に教えてもらいながら種を蒔いた。
「どれくらいで、芽が出るのかな。」
私が聞くと、
「そこはもう、これよ。」
プルッポムリンが、妖精の粉をふりかけていくと、次々と芽が出てきて、あっという間に成長してしまった。
「わぁ、すごい!
これならお野菜とかも出来そう。」
私が感動していると、そこへカミュンたちがやってきて、
「や、野菜はいいよ。
薬草だけでさ。」
と、カミュンが言うので、私は彼を見上げて首を傾げる。
「お野菜、嫌いなの?」
私の話を聞いていたクロスノスが、横でため息をつく。
「私が料理上手になったのは、彼に野菜を食べさせるためです。」
そこへプルッポムリンが、私にもう一つの種の入った袋を渡してきた。
「はい、リタ。
これを畑のこの辺にどうぞ。」
言われるまま種を蒔くと、プルッポムリンがまた妖精の粉をかける。
あ、という間に小さくて赤く丸い野菜が実をつけた。
試しに、摘んで食べてみる。
「美味しい!
カミュン、口を開けて。」
あまりの美味しさに、私は早速彼の口元へ持っていく。
「え・・・。」
カミュンの顔が青ざめているけど、構わず、
「はい、どうぞ。」
と、笑顔で唇にぽんとつけてあげる。
根負けしたカミュンが、仕方なく口を開けたところに、そっと入れた。
カミュンは目を閉じて噛んでいるけど、意外と美味しいらしく、目を開いてもう一つ食べてくれる。
「奇跡ですね・・・。」
クロスノスが、驚いている。
「本当だわ。
あれだけ生野菜食べないからと、色々味付けを工夫して食べさせてたのに、おかわりまでしてる。」
プルッポムリンも、同じ野菜をその場でもいで食べてみている。
「うそ!
なにこれ、美味しい!」
プルッポムリンの喜びように、クロスノスも食べた。
「こ、これは!
とても美味しい。
種がいいんですかね。」
クロスノスも感心して、自分も同じ種を畑に蒔き、プルッポムリンに妖精の粉をかけてもらっている。
見た目は全く同じ実をつけた野菜を、カミュン以外の三人で食べてみた。
「うーん・・・美味しいけど、普通?」
プルッポムリンが、クロスノスを見る。
「た、確かにそうですね。
カミュン、はい、あーんしてください。」
クロスノスがカミュンに詰め寄る。
「な、なんでお前までそれをやる!?」
カミュンが、後ろに下がるとクロスノスがさらに詰め寄る。
「食べ比べ。
実験と考察です!」
「目が据わってるぞ、お前!」
カミュンとクロスノスが追いかけっこしながら、畑を回っている。
「もしかしたら、リタが触れたからかもよ?」
突然後ろから声がして、振り向くとレティシアがいた。
「レティシア!」
私は駆け寄り、レティシアも笑顔で手を上げる。
「呼んでくれてありがとう。
安心して。
ちゃんと後をつけられないように、尾行防止の魔法かけてきてるから。」
レティシアは、そう言って袖をまくった。
「私も、貰ってもいい?」
私は頷いて、赤い実の野菜をレティシアに渡した。
「わぁ。本当にこっちは美味しい。
きっとね、リタは触れたものも効果倍増するのよ。
こうして種に触れるだけで、種の質がよくなるんだわ。」
レティシアに言われて、そういえばカミュンに初めて会った時、彼が馬にかけた魔法が効果倍増されたと言っていた。
あの時は、髪を切って渡してないけど、彼は私を抱えたまま、魔法をかけたんだっけ。
「そうですねぇ。
私たちが、ハーティフにあれだけ強いシールドが張れたのも、リタの背中に乗っていたからでしたし。」
いつの間にか戻っていたクロスノスが、レティシアにお辞儀しながら、話している。
「お、おぇ・・・。
なら、リタが種を蒔いた薬草も、効果が高いかもな・・・。」
カミュンは水を飲みながら、ふらふらの足取りでやってくる。
「それにこの辺の土は肥えてるわぁ。
これも、アムが淀みを平らげて、リタが大きくエネルギーを押し流したからかしらね。」
プルッポムリンはにこにこと笑って、畑の周りを飛んでいる。
「本当。
黒竜を恐れる必要なんてないのに。
三界の王たちは、精霊の神殿にある偽装されたリタの毛皮を見るまで、あなたを探してた。」
レティシアが、その時の様子を目の前に映し出して見せてくれる。
「怖がられるのは、仕方ないよ。
黒竜の力は大きな力だもの。
今はちゃんと眠らせてるし、暴走もしないけど、信じられない人もいるのは、理解できる。」
私たちは三人の王が、何度も毛皮を広げて、細かく検分している姿を眺めていた。
「それにしても、クロスノスは凄いよね。
この毛皮バレなかったもの。」
レティシアがクロスノスを見ると、
「まぁ、私も一応あの人の血を半分継いでるので、王を騙せるほどの偽物を作るのは得意なんです。」
と、彼は笑った。
・・・!
「え!クロスノスは、魔王の・・・?」
私たちは、思わず見つめてしまった。
「それ以上聞くなよ。
奴の黒歴史だからな。」
カミュンが私の肩に手を置く。
私は頷いてカミュンの手を握った。
そう、誰にも色々ある。
「薬草もいい出来よー。
リタ。
これは、街に売りに行けば喜ばれるわよ。」
プルッポムリンが、私の周りに飛んできて、摘んだばかりの薬草を見せてくれる。
とっても綺麗な色。
嬉しくなってくる。
「薬草と野菜。
みんな、私もやり甲斐のあるもの見つけちゃった。
プルッポムリンにもっと習って、色々育ててみたい。」
私が言うと、みんなも頷いてくれる。
「プルッポムリンと、リタが組めば最強でしょう。
ただし、リタ。
売り出すのは、もう少し経ってからにしましょう。
一応我々は、リタを失った悲しみに明け暮れて、特にカミュンは、新しい恋人カトラのおかげで回復してきたばかりの状態ということになっています。」
クロスノスの言っていることは、正しい。
みんな私を隠すために、ここまでしてくれているのだから。
今は我慢しないと。
「まぁ、俺は毎日幸せなんだがな。」
カミュンは、私の肩を抱き寄せてくる。
「カミュンには、毎日朝から私の野菜を食べさせて、悲しい顔を作りましょう。
リタ、人前でその髪を隠すこと、それから狼への変身も人前では絶対だめです。」
クロスノスは、改めて私に言ってくれる。
私はその言葉に頷いた。
「わかったわ、ちゃんと守る。」
そう、これから私が生きていくには、ちゃんと守らなくては。
私の生存を知ってるのは、ここにいるみんなと、大巫女シェーラ。
それから、妖精界のクタヴィジャ姫だけ。
私の生存を望んでくれる人たち。
先代のアムも出来たんだから、私にも出来るはず。
私はこれからも大丈夫。
「大丈夫だって!
リタ、心配ないよ。」
カミュンが、お日様より明るい笑顔で言ってくれる。
そう、この人がいてくれる。
この人の声は、私を繋ぎ止めてくれる。
初めて黒竜に変身した時も、この人の声だけが記憶にある。
恐ろしい力があっても、それに呑まれないための、そして止めてくれる人がいれば、共存はしていける。
「大好きよ。」
私はカミュンに抱きついた。
「みんな、大好きよ。」
そんな私たちの周りを、プルッポムリン、クロスノス、レティシアが囲んで、互いに固く包むように肩を抱き寄せ合う。
明るい太陽の光の下で、私は共に生きていく人たちと、これからも支え合うと心に誓った。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
長文を読んでくださってありがとうございました。
お気に召したら、お気に入り登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。
本編はこれにて終了です。
次回は番外編を投稿いたします。
※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
雨が止んでから、クロスノスが言っていた場所へみんなで行ったの。
それから二人で畑を耕して、彼女に教えてもらいながら種を蒔いた。
「どれくらいで、芽が出るのかな。」
私が聞くと、
「そこはもう、これよ。」
プルッポムリンが、妖精の粉をふりかけていくと、次々と芽が出てきて、あっという間に成長してしまった。
「わぁ、すごい!
これならお野菜とかも出来そう。」
私が感動していると、そこへカミュンたちがやってきて、
「や、野菜はいいよ。
薬草だけでさ。」
と、カミュンが言うので、私は彼を見上げて首を傾げる。
「お野菜、嫌いなの?」
私の話を聞いていたクロスノスが、横でため息をつく。
「私が料理上手になったのは、彼に野菜を食べさせるためです。」
そこへプルッポムリンが、私にもう一つの種の入った袋を渡してきた。
「はい、リタ。
これを畑のこの辺にどうぞ。」
言われるまま種を蒔くと、プルッポムリンがまた妖精の粉をかける。
あ、という間に小さくて赤く丸い野菜が実をつけた。
試しに、摘んで食べてみる。
「美味しい!
カミュン、口を開けて。」
あまりの美味しさに、私は早速彼の口元へ持っていく。
「え・・・。」
カミュンの顔が青ざめているけど、構わず、
「はい、どうぞ。」
と、笑顔で唇にぽんとつけてあげる。
根負けしたカミュンが、仕方なく口を開けたところに、そっと入れた。
カミュンは目を閉じて噛んでいるけど、意外と美味しいらしく、目を開いてもう一つ食べてくれる。
「奇跡ですね・・・。」
クロスノスが、驚いている。
「本当だわ。
あれだけ生野菜食べないからと、色々味付けを工夫して食べさせてたのに、おかわりまでしてる。」
プルッポムリンも、同じ野菜をその場でもいで食べてみている。
「うそ!
なにこれ、美味しい!」
プルッポムリンの喜びように、クロスノスも食べた。
「こ、これは!
とても美味しい。
種がいいんですかね。」
クロスノスも感心して、自分も同じ種を畑に蒔き、プルッポムリンに妖精の粉をかけてもらっている。
見た目は全く同じ実をつけた野菜を、カミュン以外の三人で食べてみた。
「うーん・・・美味しいけど、普通?」
プルッポムリンが、クロスノスを見る。
「た、確かにそうですね。
カミュン、はい、あーんしてください。」
クロスノスがカミュンに詰め寄る。
「な、なんでお前までそれをやる!?」
カミュンが、後ろに下がるとクロスノスがさらに詰め寄る。
「食べ比べ。
実験と考察です!」
「目が据わってるぞ、お前!」
カミュンとクロスノスが追いかけっこしながら、畑を回っている。
「もしかしたら、リタが触れたからかもよ?」
突然後ろから声がして、振り向くとレティシアがいた。
「レティシア!」
私は駆け寄り、レティシアも笑顔で手を上げる。
「呼んでくれてありがとう。
安心して。
ちゃんと後をつけられないように、尾行防止の魔法かけてきてるから。」
レティシアは、そう言って袖をまくった。
「私も、貰ってもいい?」
私は頷いて、赤い実の野菜をレティシアに渡した。
「わぁ。本当にこっちは美味しい。
きっとね、リタは触れたものも効果倍増するのよ。
こうして種に触れるだけで、種の質がよくなるんだわ。」
レティシアに言われて、そういえばカミュンに初めて会った時、彼が馬にかけた魔法が効果倍増されたと言っていた。
あの時は、髪を切って渡してないけど、彼は私を抱えたまま、魔法をかけたんだっけ。
「そうですねぇ。
私たちが、ハーティフにあれだけ強いシールドが張れたのも、リタの背中に乗っていたからでしたし。」
いつの間にか戻っていたクロスノスが、レティシアにお辞儀しながら、話している。
「お、おぇ・・・。
なら、リタが種を蒔いた薬草も、効果が高いかもな・・・。」
カミュンは水を飲みながら、ふらふらの足取りでやってくる。
「それにこの辺の土は肥えてるわぁ。
これも、アムが淀みを平らげて、リタが大きくエネルギーを押し流したからかしらね。」
プルッポムリンはにこにこと笑って、畑の周りを飛んでいる。
「本当。
黒竜を恐れる必要なんてないのに。
三界の王たちは、精霊の神殿にある偽装されたリタの毛皮を見るまで、あなたを探してた。」
レティシアが、その時の様子を目の前に映し出して見せてくれる。
「怖がられるのは、仕方ないよ。
黒竜の力は大きな力だもの。
今はちゃんと眠らせてるし、暴走もしないけど、信じられない人もいるのは、理解できる。」
私たちは三人の王が、何度も毛皮を広げて、細かく検分している姿を眺めていた。
「それにしても、クロスノスは凄いよね。
この毛皮バレなかったもの。」
レティシアがクロスノスを見ると、
「まぁ、私も一応あの人の血を半分継いでるので、王を騙せるほどの偽物を作るのは得意なんです。」
と、彼は笑った。
・・・!
「え!クロスノスは、魔王の・・・?」
私たちは、思わず見つめてしまった。
「それ以上聞くなよ。
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カミュンが私の肩に手を置く。
私は頷いてカミュンの手を握った。
そう、誰にも色々ある。
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リタ。
これは、街に売りに行けば喜ばれるわよ。」
プルッポムリンが、私の周りに飛んできて、摘んだばかりの薬草を見せてくれる。
とっても綺麗な色。
嬉しくなってくる。
「薬草と野菜。
みんな、私もやり甲斐のあるもの見つけちゃった。
プルッポムリンにもっと習って、色々育ててみたい。」
私が言うと、みんなも頷いてくれる。
「プルッポムリンと、リタが組めば最強でしょう。
ただし、リタ。
売り出すのは、もう少し経ってからにしましょう。
一応我々は、リタを失った悲しみに明け暮れて、特にカミュンは、新しい恋人カトラのおかげで回復してきたばかりの状態ということになっています。」
クロスノスの言っていることは、正しい。
みんな私を隠すために、ここまでしてくれているのだから。
今は我慢しないと。
「まぁ、俺は毎日幸せなんだがな。」
カミュンは、私の肩を抱き寄せてくる。
「カミュンには、毎日朝から私の野菜を食べさせて、悲しい顔を作りましょう。
リタ、人前でその髪を隠すこと、それから狼への変身も人前では絶対だめです。」
クロスノスは、改めて私に言ってくれる。
私はその言葉に頷いた。
「わかったわ、ちゃんと守る。」
そう、これから私が生きていくには、ちゃんと守らなくては。
私の生存を知ってるのは、ここにいるみんなと、大巫女シェーラ。
それから、妖精界のクタヴィジャ姫だけ。
私の生存を望んでくれる人たち。
先代のアムも出来たんだから、私にも出来るはず。
私はこれからも大丈夫。
「大丈夫だって!
リタ、心配ないよ。」
カミュンが、お日様より明るい笑顔で言ってくれる。
そう、この人がいてくれる。
この人の声は、私を繋ぎ止めてくれる。
初めて黒竜に変身した時も、この人の声だけが記憶にある。
恐ろしい力があっても、それに呑まれないための、そして止めてくれる人がいれば、共存はしていける。
「大好きよ。」
私はカミュンに抱きついた。
「みんな、大好きよ。」
そんな私たちの周りを、プルッポムリン、クロスノス、レティシアが囲んで、互いに固く包むように肩を抱き寄せ合う。
明るい太陽の光の下で、私は共に生きていく人たちと、これからも支え合うと心に誓った。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
長文を読んでくださってありがとうございました。
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本編はこれにて終了です。
次回は番外編を投稿いたします。
※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
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