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時の精霊の外郭の限界
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黒い竜の巨体が、古代精霊の間に入って行く。
光と闇の精霊が、そこにいた。
六大精霊よりも大きくて、荘厳なその姿。
二つの精霊を横に見ながら、通り過ぎようとした瞬間、
バリバリバリィ!!
凄まじい稲妻がほとばしり、黒い巨体に輝く鎖がかけられていく。
そのまま壁に縫い付けるように、叩きつけられてしまった。
カミュン、クロスノス、レティシアが振り落とされて、落ちたところを現れた複数の化身たちが締め上げて、短剣を喉元に突きつける。
「離せ!!」
「やめてよ!!」
彼等の叫びを、化身たちは笑って無視する。
私は、動きたくても動けない。
「よく来たな、リタ。
お前にはここで暫く大人しくしてもらう。」
さらに数人の化身が出てきて、巨体を取り囲んだ。
白いローブを羽織る化身たちの中に、金色のローブを羽織った化身が一人だけいて、巨体を覗き込む。
みんな、凄まじいエネルギーの流れにローブが
煽られて、同じ顔であることがわかった。
それでも立っていられるのは、尋常でない本体の力の証なんだろうな。
「この鎖は、闇の商人どもからかき集めた、お前より遥か昔の漆黒の狼たちの毛皮の力で、作り上げたもの。
目には目を、漆黒の狼には、漆黒の狼をだ。」
言いながら化身は黒い巨体を撫でる。
・・・この人が最初の化身じゃないのかな。
本体に何かあった時に、動けるようにするための。
「その手をどけろ!
リタに触るんじゃない!!」
カミュンが叫ぶけど、化身は意に解さない。
「待ち伏せとは古典的な!」
クロスノスも頭を上げて、化身を睨みつける。
「お前たちに用はない。
私の狙いはリタ一人。
ま、お前たちは、どのみち精霊の産み直しで果てる命だ。
せいぜい吠えるがいい。」
金のローブを羽織った化身はそう言うと、黒い巨体に視線を戻した。
「羨ましい限りだ、お前は。
誰もお前の力を超えることがない。
望めば力を増して、最後は神の力に近づける。
この世の頂点を約束された、気分はどうだ?」
化身は巨体の鬣をぐっと掴んで、強く引く。
嫉妬や憎しみを感じる、そんな掴み方だ。
「お前の力は私がもらう。
お前の力で、原初の精霊を乗っ取ってくれる。」
金のローブを羽織った化身が手を挙げると、周りの白いローブを羽織った化身たちが、一斉に黒い巨体を引きずり始めた。
「時の精霊の間は、時間停止された空間のはずよ!
どうやって、そこで本体を同化させるのよ!?」
レティシアは、化身たちを振り払うように起きあがろうとして、押さえ込まれる。
「リタの持つ時の精霊の核が、時間停止空間でも、私たちの動く時を守ってくれる。
あとは、本体を融合させれば、時の停止を解除できる。」
そう言って金色のローブを羽織る化身も、奥に向かって一緒に歩き始めた。
その時、金のローブの化身が固まって、足を止めた。
・・・何か聞いてるみたい。
もしかして、他の化身の声が聞こえる?
無言で目を閉じでいるけど、ゆっくり目を開けて黒い巨体を眺める。
「先代の漆黒の狼のアムが来ているだと?
なるほど・・・だからリタはここに来れたわけか。
ならば、計画変更だ。」
化身が呟いて、黒い巨体に巻かれた鎖の端に書いてある魔法陣を指でなでると、
「光と闇の精霊よ・・・。
この体を締め上げ、その命を奪え。
サ・チェ・リン・ク!!」
光と闇の精霊から力が化身へと流れ込み、魔法陣へと吸い込まれていく。
「!?」
直後、ものすごい力で巨体が締め上げられた。
「何をするんだ!!」
カミュンが、必死に立ち上がろうとする。
化身が大勢のしかかって、体重で抑え込んだ。
「黒竜は、本来二体存在できぬ。
こういう場合は、より多く力を示す黒竜をその時代の黒竜とみなし、混沌の神はもう一体を吸い上げ己の中に戻すのだ。
ここにいるだけのリタは、吸い上げの対象になるだろう。」
ギジギシと巨体が軋んでいく。
鎖は今にもその巨体を切り刻みそうだ。
「時の精霊の核は預かる。
こうなったら、さっさと毛皮にして、この私の手で時の精霊の外郭を崩すしかない。
残念だな、リタ。」
ボトリ。
黒い巨体から、塊が落ちる。
ボトリ・・・ボトボトボト。
巨体が崩れていく。
「ひどく脆いな。
これが黒竜か?
これではまるで土塊ではないか。」
化身が訝しがった途端、ハッと何かに気づいた。
バレた!?
「リタ!」
カミュンが声を上げる。
ピュヴォォォォォ!!
化身たちが一斉に額から、光の粒を吹き出させる。
「あぁぁ!!
な、なんだ・・・これ・・・は。」
金色のローブを羽織った化身も、光の粒を流しながら辺りを見回す。
ピュヴォォ・・・。
まだまだ!
化身たちが、額を抑えて光の粒を止めようとするけど、そうはさせない。
「く・・・くそ・・・。
どんな攻撃がきても・・・進化する体なのに!」
白いローブの化身たちは、次々と膝をついて動かなくなり、音も聞こえなくなっていく。
金のローブの化身は、なかなか音が消えない。
ォォォ・・・。
小さくはなってきたけど、まだ、抜けきれてない。
カミュンたちが立ち上がり、白いローブの化身たちを次々と倒していく。
「おのれ・・・!
本体はどこだ!!」
黒い巨体が崩れ去るのを見て、金色のローブの化身が、よろめきながら立ち上がると、
「光の精霊よ!
我が敵をその矢で射抜け!
ヤ・リカヒ・ノ・タシュ!!」
と、唱えると、光の精霊から力が流れ込み、化身の周りに光の矢が形成され、全方位に向けて撃ち放つ。
「闇の精霊よ!
光の届かぬ深き闇へ、かの攻撃を誘わぬ!
クラナ・トーン・ゲート!!」
すぐにクロスノスが詠唱して闇の精霊の力を引き寄せると、みんなの周りに闇の盾を出現させて攻撃を受け止める。
でも、一本だけ、私の胴に深々と突き刺さってしまった。
う・・・。
アムが言ってた・・・身の内に攻撃は飲み込める。
焦るな・・・体内の深いところで分解して、無害化できる。
傷口も塞げる。
光の矢が体に飲み込まれ、痛みも引いていった。
ただ、体の透明化がなくなっていき、化身の前に姿を現すことになってしまった。
私はみんなの真上に隠れていたの。
「くっそ・・・!
そんなところに・・・いたとは。
覚醒して・・・間もないのに・・・力を使いこなすなんて!!」
化身が悔しそうに額を抑える。
ォォォ・・・ォ・・・。
音が途切れてきた。
「おのれ!!
こうなったら、アムを無理矢理にでも、千年前に戻してやる!!
時の精霊の外郭は、これでもたなくなるだろう!!」
化身は懐から、大量の漆黒の髪の毛を取り出した。
「くくく!
リタ、妖精界にお前が大量に預けた、漆黒の髪の毛だ。
化身に全て盗ませた。
これだけあれば、アムを千年前に戻せる!
お前たちは、終わりだ!!」
化身は、疾風のように淀みを飲み込むアムの姿を目の前に映し出す。
皆の協力で淀みが1箇所に追い込まれ、効率よく飲まれているのがわかった。
カミュンやレティシアが化身に走り寄るけど、
「光と闇の精霊よ、時の彼方へとかの者を誘わぬ!
時の精霊の力を引き出し、我が願いを叶えたまえ、ラー・カ・キィ・タム・ト!!」
詠唱を終えた化身の持つ私の髪の毛が、光って消えて行く方が早かった。
化身が映し出した映像の中のアムも、最後の淀みを飲み込んだ直後、みるみる消えて行く。
やがて化身は膝をついて動かなくなり、カミュンの剣に貫かれて、灰のように崩れ去った。
ドクン!!
時の精霊の核が大きく脈打った。
これは、いけない!!
光と闇の精霊が、そこにいた。
六大精霊よりも大きくて、荘厳なその姿。
二つの精霊を横に見ながら、通り過ぎようとした瞬間、
バリバリバリィ!!
凄まじい稲妻がほとばしり、黒い巨体に輝く鎖がかけられていく。
そのまま壁に縫い付けるように、叩きつけられてしまった。
カミュン、クロスノス、レティシアが振り落とされて、落ちたところを現れた複数の化身たちが締め上げて、短剣を喉元に突きつける。
「離せ!!」
「やめてよ!!」
彼等の叫びを、化身たちは笑って無視する。
私は、動きたくても動けない。
「よく来たな、リタ。
お前にはここで暫く大人しくしてもらう。」
さらに数人の化身が出てきて、巨体を取り囲んだ。
白いローブを羽織る化身たちの中に、金色のローブを羽織った化身が一人だけいて、巨体を覗き込む。
みんな、凄まじいエネルギーの流れにローブが
煽られて、同じ顔であることがわかった。
それでも立っていられるのは、尋常でない本体の力の証なんだろうな。
「この鎖は、闇の商人どもからかき集めた、お前より遥か昔の漆黒の狼たちの毛皮の力で、作り上げたもの。
目には目を、漆黒の狼には、漆黒の狼をだ。」
言いながら化身は黒い巨体を撫でる。
・・・この人が最初の化身じゃないのかな。
本体に何かあった時に、動けるようにするための。
「その手をどけろ!
リタに触るんじゃない!!」
カミュンが叫ぶけど、化身は意に解さない。
「待ち伏せとは古典的な!」
クロスノスも頭を上げて、化身を睨みつける。
「お前たちに用はない。
私の狙いはリタ一人。
ま、お前たちは、どのみち精霊の産み直しで果てる命だ。
せいぜい吠えるがいい。」
金のローブを羽織った化身はそう言うと、黒い巨体に視線を戻した。
「羨ましい限りだ、お前は。
誰もお前の力を超えることがない。
望めば力を増して、最後は神の力に近づける。
この世の頂点を約束された、気分はどうだ?」
化身は巨体の鬣をぐっと掴んで、強く引く。
嫉妬や憎しみを感じる、そんな掴み方だ。
「お前の力は私がもらう。
お前の力で、原初の精霊を乗っ取ってくれる。」
金のローブを羽織った化身が手を挙げると、周りの白いローブを羽織った化身たちが、一斉に黒い巨体を引きずり始めた。
「時の精霊の間は、時間停止された空間のはずよ!
どうやって、そこで本体を同化させるのよ!?」
レティシアは、化身たちを振り払うように起きあがろうとして、押さえ込まれる。
「リタの持つ時の精霊の核が、時間停止空間でも、私たちの動く時を守ってくれる。
あとは、本体を融合させれば、時の停止を解除できる。」
そう言って金色のローブを羽織る化身も、奥に向かって一緒に歩き始めた。
その時、金のローブの化身が固まって、足を止めた。
・・・何か聞いてるみたい。
もしかして、他の化身の声が聞こえる?
無言で目を閉じでいるけど、ゆっくり目を開けて黒い巨体を眺める。
「先代の漆黒の狼のアムが来ているだと?
なるほど・・・だからリタはここに来れたわけか。
ならば、計画変更だ。」
化身が呟いて、黒い巨体に巻かれた鎖の端に書いてある魔法陣を指でなでると、
「光と闇の精霊よ・・・。
この体を締め上げ、その命を奪え。
サ・チェ・リン・ク!!」
光と闇の精霊から力が化身へと流れ込み、魔法陣へと吸い込まれていく。
「!?」
直後、ものすごい力で巨体が締め上げられた。
「何をするんだ!!」
カミュンが、必死に立ち上がろうとする。
化身が大勢のしかかって、体重で抑え込んだ。
「黒竜は、本来二体存在できぬ。
こういう場合は、より多く力を示す黒竜をその時代の黒竜とみなし、混沌の神はもう一体を吸い上げ己の中に戻すのだ。
ここにいるだけのリタは、吸い上げの対象になるだろう。」
ギジギシと巨体が軋んでいく。
鎖は今にもその巨体を切り刻みそうだ。
「時の精霊の核は預かる。
こうなったら、さっさと毛皮にして、この私の手で時の精霊の外郭を崩すしかない。
残念だな、リタ。」
ボトリ。
黒い巨体から、塊が落ちる。
ボトリ・・・ボトボトボト。
巨体が崩れていく。
「ひどく脆いな。
これが黒竜か?
これではまるで土塊ではないか。」
化身が訝しがった途端、ハッと何かに気づいた。
バレた!?
「リタ!」
カミュンが声を上げる。
ピュヴォォォォォ!!
化身たちが一斉に額から、光の粒を吹き出させる。
「あぁぁ!!
な、なんだ・・・これ・・・は。」
金色のローブを羽織った化身も、光の粒を流しながら辺りを見回す。
ピュヴォォ・・・。
まだまだ!
化身たちが、額を抑えて光の粒を止めようとするけど、そうはさせない。
「く・・・くそ・・・。
どんな攻撃がきても・・・進化する体なのに!」
白いローブの化身たちは、次々と膝をついて動かなくなり、音も聞こえなくなっていく。
金のローブの化身は、なかなか音が消えない。
ォォォ・・・。
小さくはなってきたけど、まだ、抜けきれてない。
カミュンたちが立ち上がり、白いローブの化身たちを次々と倒していく。
「おのれ・・・!
本体はどこだ!!」
黒い巨体が崩れ去るのを見て、金色のローブの化身が、よろめきながら立ち上がると、
「光の精霊よ!
我が敵をその矢で射抜け!
ヤ・リカヒ・ノ・タシュ!!」
と、唱えると、光の精霊から力が流れ込み、化身の周りに光の矢が形成され、全方位に向けて撃ち放つ。
「闇の精霊よ!
光の届かぬ深き闇へ、かの攻撃を誘わぬ!
クラナ・トーン・ゲート!!」
すぐにクロスノスが詠唱して闇の精霊の力を引き寄せると、みんなの周りに闇の盾を出現させて攻撃を受け止める。
でも、一本だけ、私の胴に深々と突き刺さってしまった。
う・・・。
アムが言ってた・・・身の内に攻撃は飲み込める。
焦るな・・・体内の深いところで分解して、無害化できる。
傷口も塞げる。
光の矢が体に飲み込まれ、痛みも引いていった。
ただ、体の透明化がなくなっていき、化身の前に姿を現すことになってしまった。
私はみんなの真上に隠れていたの。
「くっそ・・・!
そんなところに・・・いたとは。
覚醒して・・・間もないのに・・・力を使いこなすなんて!!」
化身が悔しそうに額を抑える。
ォォォ・・・ォ・・・。
音が途切れてきた。
「おのれ!!
こうなったら、アムを無理矢理にでも、千年前に戻してやる!!
時の精霊の外郭は、これでもたなくなるだろう!!」
化身は懐から、大量の漆黒の髪の毛を取り出した。
「くくく!
リタ、妖精界にお前が大量に預けた、漆黒の髪の毛だ。
化身に全て盗ませた。
これだけあれば、アムを千年前に戻せる!
お前たちは、終わりだ!!」
化身は、疾風のように淀みを飲み込むアムの姿を目の前に映し出す。
皆の協力で淀みが1箇所に追い込まれ、効率よく飲まれているのがわかった。
カミュンやレティシアが化身に走り寄るけど、
「光と闇の精霊よ、時の彼方へとかの者を誘わぬ!
時の精霊の力を引き出し、我が願いを叶えたまえ、ラー・カ・キィ・タム・ト!!」
詠唱を終えた化身の持つ私の髪の毛が、光って消えて行く方が早かった。
化身が映し出した映像の中のアムも、最後の淀みを飲み込んだ直後、みるみる消えて行く。
やがて化身は膝をついて動かなくなり、カミュンの剣に貫かれて、灰のように崩れ去った。
ドクン!!
時の精霊の核が大きく脈打った。
これは、いけない!!
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