時の精霊に選ばれし者〜人狼リタは使命があります!

たからかた

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※化身にばらしてしまーった(ノアム視点)

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「全員集合!!」

石切場の現場監督が、大声で招集をかけてきーた。
何やら、淀みたちと戦う軍の動きが活発化した矢先、淀みが一斉に各地に出没したらしく、手が足りないそーだ。
そういえば、空もどんよりとしていーる。
不気味な感じーだ。

「 ーーー 。」

現場監督は、一時停止して、沈黙していーる。

はぁ、早く言ーえ!!

「ーーー あぁ、ということで、淀みの隠れる場所に太陽の光が差し込むように、協力せよと命令がきている!
一体でも多く淀みを追い込んだものは、特赦が出る!
皆、励むのだ!!」

なぬ!?
特赦だーと!?

と、いうことは、ここから出られーる!
堂々ーと!!

ふははは!
早くそれを言ーえ!!

いざ、いかん!!

「ノアム元理事長。」

後ろから声をかけられて振り向くと、テルシャがいーた。

いや待て・・・。
こいつ・・・。

「ハーティフーか?」

もう何度も騙されているからーな。

「ハーティフの化身だーろ?
なんの用ーだ?」

腰に手を当てて、睨みつけーる。

「ふふ、流石に気付きますよね。
こちらへどうぞ。
あなたにも悪い話ではありません。」

テルシャに化けたまま、私はひと気のないところへ連れて行かれーた。

「教えていただきたいことがあるのです。
淀みはこの世界の武器では、浄化しきれぬはず。
なのに、何故リタがいないのに、淀みが数を減らしているのでしょう。」

ハーティフの化身は、真剣な顔で聞いてくーる。
そうか、こいーつ。
アムが来たことを知らぬのーだ。

「私に聞いてどうすーる。
それこそ、大巫女シェーラにでも聞くがいーい。」

と、シェーラの名前を出した途端、ハーティフの化身が殺気を帯びーた。

・・・こ、怖ーい。

「あの女の名は出さぬことです。
私がいずれ、手にかけるのだから。」

「す、すまーん・・・!」

みっともなく怯えてしまーう。
いや、本当に怖いのーだ。

「話を戻しましょう。
ノアム元理事長は、何かご存知なのでは?
教えてくだされば、願いをなんでも叶えて差し上げます。」

化身が迫ってくーる。

「ふん、お前の話は怪しいものーだ。
お前に尽くしたティルリッチがどうなったか、知っておるからーな。」

「魔法研究所の理事長に、戻してあげましょうか?
カミュンやクロスノスたちのような、美青年を侍らせてさしあげましょうか?
この国の王にすることもできます。」

な、なんーだ。
焦っているのーか?

えらくいい話ばかり並べるーな。
いい話には裏があーる。

「狙いを言ーえ。
お前は原初の精霊と同化するのが、目的だろーが。
総力戦を難しくするために、淀みたちに襲わせてリタの援護に行けぬようにしているのではないのーか?」

「・・・。」

なんーだ?
奴はリタが出てくると踏んでいたのーか。

リタが浄化に奔走すれば、精霊界に行くのが、さらに遅れーる。

・・・まさか。

「時間稼ぎーか?」

「!!」

動揺しーた!?

大巫女シェーラが言っていたーな。
これだけの淀みが過去から召喚されるとは、時の精霊の外郭にどれほど負荷がかかるのかーと。

まさか・・・時の精霊の外郭の崩壊が近いのーか?

「リタに時の精霊の核を持たせたまま、外郭の崩壊を招きたかったのーか?
だから、わざと時の精霊に負荷のかかる召喚魔法をやってのけたのーか?」

私の問いに、化身は不適な笑みを浮かべーた。

「ふふ、ただの馬鹿かと思っていたら、勘の鋭い時もあるのだな。」

と言ーう。

「なんだーと!?」

「時の精霊より高位の原初の精霊と、三柱の神々は『時』が存在しない中活動できる。
だが、私は『時』がなくなれば動けなくなる。
原初の精霊を喰らいたくてもできないのだ。」

「それで、リタが必要なわけーだ。」

「その通りだ。
混沌の神の分身とも言えるリタもまた、時のない世界を生きることができる。
奴が時の精霊の核を戻さぬうちに、外郭が崩壊すれば、それでも原初の精霊による産み直しは、始めることができる。」

「産み直しだーと?
しかし、リタが来なければ、お前はそのまま飲まれるだけだろーが!」

「時の精霊の核を持つ以上、奴も時の精霊の間に引き寄せられることになる。
その時、手前の古代精霊の間で、他の化身たちに捕縛させる手筈だった。
リタさえ近づけば、外郭崩壊後も動けるからな。」

うぬぬー!
なーんて奴!!

「もう、遅いーわ!!
リタは精霊界へと行ったはずーだ!!
何せ、千年前から先代の漆黒の狼アムが来て、世界中の淀みを喰らうのだからーな!!」

・・・は!!
い、言ってしまっーた。

「!?
な、なんだと!?
この時代に黒竜が二体だと!?」

化身は目の色を変えて私を見ーる。

あ、あわわ・・・。
アム、すまーん。

「と、言うことは、アムが帰らぬうちは、リタは混沌の神に吸い上げられる可能性が、あるわけか。
混沌の神の采配なく、二体同時に存在することは、本来許されないからな。」

化身はニヤリと笑って私を見ーる。

「き、聞かなかったことにしてくーれ。」

私は背中にダラダラと汗を流し始めーた。

「わかりました。
その願い、叶えましょう。」

化身が、にっこりと笑って去ろうとした時・・・。

ビュヴォォォォ!

化身が額から光の粒を吐き出しながら、苦しみ出しーた。

な、な、なんだ!?

やがて音が聞こえなくなると、化身は動かなくなり、鋭い一撃が化身の体を砕いた。

「ひーぃ!」

私が情けなく震えていると、目の前にアムが黒竜の姿で現れーた。

「お前、化身にベラベラと喋りやがったな!?
たまたまこの辺の淀みを一掃しているときに、気配を感じたので来てみれば・・・!!」

アムが怒っていーる!
三つの眼に睨まれて、怖くてたまらーん。

「急いで全ての淀みを、飲み干さねば!!」

アムはそう言うと、凄い勢いで飛び去っていーった。



~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。





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