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「リタ、怖い顔してるぞ。」
カミュンの声に我に返る。
ハッと気がつくとカミュンを押し倒して、上着を開いていた。
「ごめんなさい!!」
私は、恥ずかしくて慌てて離れようとする。
カミュンは、すぐ私の手を掴んでそのまま引き寄せてきた。
「いや、俺としては嫌じゃないぜ。
積極的だな、と思ってるだけだから。」
「ち、違うの!
怪我してると思ったから、だから・・・わ!」
そのまま抱きしめられて、思考が停止する。
これじゃ、この間の牢屋の中での時みたいじゃない!
恥ずかしくて離れようとした時、カミュンの静かな声がした。
「リタ・・・俺は、リタを選んだことに後悔はない。
例え生まれ直したとしても、同じ選択をする。」
「カミュン・・・。」
離れようと力を入れた腕が、緩んでいく。
「天王様から、また天界の親衛隊隊長を任せたいと言われたんだけど、断った。」
私はその言葉に目を見開いた。
「そんな・・・どうして?」
「俺はリタのそばにいて、リタと生きていきたいから。」
と、言ってくれる。
でも、かつて彼は死に物狂いで修行して、天族に認められたと聞いた。
ティルリッチの件が落ち着いたなら、天界に戻りたいんじゃないのかな。
「いいの?」
私の言葉にカミュンは大きく深呼吸すると、
「俺にはリタがいる。
クロスノスもいて、プルッポムリンもいる。
天族の武闘大会も優勝してるし、天族の英霊たちにも打ち勝てた。
天界で、一番の剣士であることに変わりはない。
それに、ギルドでは名の知れたハンターだ。
凄腕なんだぜ。」
と言って腕に力をこめてくる。
知ってる。
すごく強いのも。
私も彼の肩に手を回して抱き締め返す。
「これからも一緒にいてくれるの?」
「もちろん。
と、いうより俺がもうリタなしでやっていけない。
届いた爪書簡にも、沢山そう書いてただろ?」
優しい笑顔に、思わず胸が熱くなる。
ずっと、この人のそばにいていいんだ。
嬉しくて反射的に、彼の頬に口づけする。
「!!」
カミュンの顔が、さっと赤くなった。
「いきなりごめんなさい。
とても嬉しかったの。」
私も顔が赤い。
大胆なことしちゃった。
「い、いや。
こうくると思わなかったから。
心の準備が・・・。」
そう言って、彼はオロオロし始める。
「可愛い。」
「言うなって!」
必死に取り繕う彼は、本当にあの夜積極的に迫ってきた人と同一人物とは思えない。
こういう隙も見せてくれる人は、安心する。
よかった、この人に出会えて。
「あなたがいなかったら私・・・きっとハーティフに攫われて利用されてた。
そ、そうじゃなかったら、け、毛皮に・・・。」
言いながら、震えてくる。
この人に出会わなかったら、私を匿ってくれなかったら、私はここにいない。
カミュンがハッとして、私の顔を覗き込んだ。
「リタ。
俺がそんなことさせない。
絶対させないから。」
「うん。」
かつて先代の漆黒の狼のアムも、黒竜として活躍した後に殺されたと聞いた。
確かに黒竜から戻った時は、体が暫く動かなくなる。
この隙を突かれたら、ひとたまりもない。
それでも、今はやるしかないとわかっているの。
「カミュン。
あなたやクロスノス、プルッポムリンやレティシアたちを失いたくないから、私は戦う。
でも、これが終わったら静かに暮らしたい。
また、みんなで食卓を囲みたいの。
・・・だめ?」
私はカミュンを見上げて、尋ねる。
彼は優しい目で見つめ返して、
「もちろん、いいさ。
また、俺の部屋の寝台使えよ。
・・・俺も隣で寝るけど。」
と、言った。
ぱっと顔が赤くなって、思わず目を逸らす。
「なんだよ、今更。」
カミュンが笑って、指先で私の髪を耳にかけた。
その時、彼の右手の薬指が見えて、爪の色が私と同じ薄い桃色になっているのが見える。
わぁ、本当に、私と同じ指に同じ爪の色なんだ・・・。
じっと爪を見る、私の視線に気づいたカミュンが、
「あ、そういえば、クロスノスから、この指の爪書簡の意味を聞いたんだって?」
と、耳元で囁いてきた。
私は、少しドキッとしながら、
「き、聞いた。
私たちは、『運命の番』であるという意味だって。」
と、目を逸らしながら答えた直後に、急にカミュンの吐息が耳にかかった。
「正解。
じゃ、あの夜の『その先』に、進む覚悟ができたんだな。」
艶のある声色で耳に流し込まれて、引き寄せられるように視線が重なる。
カミュンの顔を見た瞬間、全身の肌がゾクリとするほど色っぽい表情に変わっているのがわかった。
「ち、違うの・・・。
違う。」
口をぱくぱくさせながら、顔が赤くなって、心臓の鼓動が、さっきよりもずっと早くなる。
目の前で形のいい彼の唇が、
「リタ。」
と、動いて赤い舌がちらりと見える。
鼓動が更に大きくなって、体の中心が熱くなるのを感じた。
彼が少し背中を撫でるだけで、敏感に感覚を拾おうとしてしまう。
何・・・何これ。
は、離れなきゃ。
離れなきゃ!
突然の衝動に戸惑って、彼の肩に回した腕を解くと、起きあがろうとした。
「・・・怖い?」
カミュンが、離れそうになる私を、覗き込むように顔を近づけてくる。
それだけで、心臓が飛び出しそうになった。
「す、少し、怖い。」
ここは正直に言おう。
本当は、カミュンより怖いのは自分。
自分の知らない自分が、身の内を破って出てきそうで怖い。
「ほ、ほらここ、いつ他の人が来るかわからないもの。」
と、私は言った。
絶対に、人に見られたくない。
カミュンがあたりを見回して、
「そうだな。」
と、言った。
そして私ごと起き上がって腕を離すと、立ち上がった。
「この間、俺は迫りすぎたもんな。
おまけに、ついさっきリタは俺の複製体に襲われかけて、怖かったよな。
また、今度にするよ。」
と、彼は言って上着を戻すと、裂け目の出口へと歩き出した。
あ・・・行っちゃう・・・の?
やっと会えたのに、もう?
気がつくと、カミュンの背中にしがみついていた。
「え、リタ?」
カミュンが驚いたように、振り返る。
「あなたが怖いんじゃないの!」
口が勝手に動く。
ドキドキする・・・何を言おうとしてるの?
私・・・。
「こ、怖いのは自分なの・・・。
ざわざわして、なんだか落ち着かなくて。
熱っぽいし、変になったみたい。」
彼の背中の温もりを感じて、さらに体が熱くなってくる。
恥ずかしい時の熱とは違う、何か。
やっぱり病気?
呼吸も早くなってきた。
「カ、カミュン、光の御手の治療して。
多分、病気なの。
そ、そうだ、クロスノスに言ったら、何か薬をもらえるかも・・・。」
カミュンはそれを聞くと、裂け目の出入り口に手をかざして、横にさっと動かした。
「何してるの?」
私が驚いて尋ねると、
「外から入ってこれないように、鍵をかけた。」
と、答える。
「そ、そうなんだ。
じゃ、治療するんでしょ。
狼に変わる?
それとも・・・。」
ペラペラと喋る口が止まらない私の顔を、カミュンが両手で包みこんでくる。
「リタ・・・。
やっとリタの刻が満ちてくれたんだな。」
カミュンが、そんな難しいことを言う。
「どういう意味・・・?」
と、言いながら、目が逸らせなくなる。
「俺を想って、熱が昂ぶるようになったんだ。」
「私、病気なんじゃ・・・。」
「違う。」
自然と顔が近づく。
欲しいものがそこにある。
でも・・・。
「こ、言葉・・・。」
私は彼の手を握って、訴える。
せめて、それだけは・・・。
「言葉が先よ。」
それを聞いたカミュンの目が、優しくなる。
「心から愛している。
リタ・・・俺の愛しい番。」
その言葉に私も笑顔になる。
「私も愛してる。
カミュン、私の一番大切な人。」
それから、熱に浮かされるように、身を寄せ合い、衝動のままもつれあって倒れ込んだ。
あの夜のその先へ。
もう、彼の手は怖くない。
私も自分から手を伸ばして、その愛しい温もりを感じていく。
カミュンが私の右手を、自分の右手に絡めて爪書簡の魔法で塗られた爪の指を重ねる。
爪が美しく輝いて、鮮やかな色へと変わっていった。
「イ・アトル。」
クロスノスに習った、古代語の初夜の誓いの言葉を口にする。
「イ・シト・ルヒテ。」
カミュンがにっこり笑って答える。
二人の爪に文字のようなものが、模様のように刻まれていくのが見えた。
「これ・・・は。」
私が驚いて見つめると、
「古代語だ。
俺たちの絆を永遠に結ぶと、書いてある・・・。
例え転生しても、再び巡り会える、と。」
そう言って、カミュンは私に沢山の初めてをくれる。
私達は、溢れて止まらない愛情と、他には譲れない暗い独占欲を剥き出しにして、互いを求め続けた。
私はカミュンを、強く抱きしめる。
「すごく幸せよ。」
「リタ?」
「小さい頃家族から離されて、ずっと一人で耐えてきて。
ようやく巡り会った大好きな人が、こんなに近くにいてくれる。
すごく安心する。」
「リタ・・・。」
彼が私を抱き締める腕に、力がこもる。
「離れないで。
お願い。
ずっとそばにいて。
あなたが大好き。
これからも、あなたのそばにいたい。」
私の声に、カミュンは何度も頷いてくれた。
「あぁ!もちろん。
当たり前だよ。
俺も・・・俺だって、リタと離れてる時は苦しかった。
するべきことを終えたら、リタは俺と帰るんだ。
あの隠れ家に帰ろう。」
彼の言葉に、私も心から安心する。
見つめ合ってもう一度、お互いの温もりを分け合っていった。
やがて体力が尽きて、声が枯れた私は、知らない間に眠りに落ちていく・・・。
カミュンの声に我に返る。
ハッと気がつくとカミュンを押し倒して、上着を開いていた。
「ごめんなさい!!」
私は、恥ずかしくて慌てて離れようとする。
カミュンは、すぐ私の手を掴んでそのまま引き寄せてきた。
「いや、俺としては嫌じゃないぜ。
積極的だな、と思ってるだけだから。」
「ち、違うの!
怪我してると思ったから、だから・・・わ!」
そのまま抱きしめられて、思考が停止する。
これじゃ、この間の牢屋の中での時みたいじゃない!
恥ずかしくて離れようとした時、カミュンの静かな声がした。
「リタ・・・俺は、リタを選んだことに後悔はない。
例え生まれ直したとしても、同じ選択をする。」
「カミュン・・・。」
離れようと力を入れた腕が、緩んでいく。
「天王様から、また天界の親衛隊隊長を任せたいと言われたんだけど、断った。」
私はその言葉に目を見開いた。
「そんな・・・どうして?」
「俺はリタのそばにいて、リタと生きていきたいから。」
と、言ってくれる。
でも、かつて彼は死に物狂いで修行して、天族に認められたと聞いた。
ティルリッチの件が落ち着いたなら、天界に戻りたいんじゃないのかな。
「いいの?」
私の言葉にカミュンは大きく深呼吸すると、
「俺にはリタがいる。
クロスノスもいて、プルッポムリンもいる。
天族の武闘大会も優勝してるし、天族の英霊たちにも打ち勝てた。
天界で、一番の剣士であることに変わりはない。
それに、ギルドでは名の知れたハンターだ。
凄腕なんだぜ。」
と言って腕に力をこめてくる。
知ってる。
すごく強いのも。
私も彼の肩に手を回して抱き締め返す。
「これからも一緒にいてくれるの?」
「もちろん。
と、いうより俺がもうリタなしでやっていけない。
届いた爪書簡にも、沢山そう書いてただろ?」
優しい笑顔に、思わず胸が熱くなる。
ずっと、この人のそばにいていいんだ。
嬉しくて反射的に、彼の頬に口づけする。
「!!」
カミュンの顔が、さっと赤くなった。
「いきなりごめんなさい。
とても嬉しかったの。」
私も顔が赤い。
大胆なことしちゃった。
「い、いや。
こうくると思わなかったから。
心の準備が・・・。」
そう言って、彼はオロオロし始める。
「可愛い。」
「言うなって!」
必死に取り繕う彼は、本当にあの夜積極的に迫ってきた人と同一人物とは思えない。
こういう隙も見せてくれる人は、安心する。
よかった、この人に出会えて。
「あなたがいなかったら私・・・きっとハーティフに攫われて利用されてた。
そ、そうじゃなかったら、け、毛皮に・・・。」
言いながら、震えてくる。
この人に出会わなかったら、私を匿ってくれなかったら、私はここにいない。
カミュンがハッとして、私の顔を覗き込んだ。
「リタ。
俺がそんなことさせない。
絶対させないから。」
「うん。」
かつて先代の漆黒の狼のアムも、黒竜として活躍した後に殺されたと聞いた。
確かに黒竜から戻った時は、体が暫く動かなくなる。
この隙を突かれたら、ひとたまりもない。
それでも、今はやるしかないとわかっているの。
「カミュン。
あなたやクロスノス、プルッポムリンやレティシアたちを失いたくないから、私は戦う。
でも、これが終わったら静かに暮らしたい。
また、みんなで食卓を囲みたいの。
・・・だめ?」
私はカミュンを見上げて、尋ねる。
彼は優しい目で見つめ返して、
「もちろん、いいさ。
また、俺の部屋の寝台使えよ。
・・・俺も隣で寝るけど。」
と、言った。
ぱっと顔が赤くなって、思わず目を逸らす。
「なんだよ、今更。」
カミュンが笑って、指先で私の髪を耳にかけた。
その時、彼の右手の薬指が見えて、爪の色が私と同じ薄い桃色になっているのが見える。
わぁ、本当に、私と同じ指に同じ爪の色なんだ・・・。
じっと爪を見る、私の視線に気づいたカミュンが、
「あ、そういえば、クロスノスから、この指の爪書簡の意味を聞いたんだって?」
と、耳元で囁いてきた。
私は、少しドキッとしながら、
「き、聞いた。
私たちは、『運命の番』であるという意味だって。」
と、目を逸らしながら答えた直後に、急にカミュンの吐息が耳にかかった。
「正解。
じゃ、あの夜の『その先』に、進む覚悟ができたんだな。」
艶のある声色で耳に流し込まれて、引き寄せられるように視線が重なる。
カミュンの顔を見た瞬間、全身の肌がゾクリとするほど色っぽい表情に変わっているのがわかった。
「ち、違うの・・・。
違う。」
口をぱくぱくさせながら、顔が赤くなって、心臓の鼓動が、さっきよりもずっと早くなる。
目の前で形のいい彼の唇が、
「リタ。」
と、動いて赤い舌がちらりと見える。
鼓動が更に大きくなって、体の中心が熱くなるのを感じた。
彼が少し背中を撫でるだけで、敏感に感覚を拾おうとしてしまう。
何・・・何これ。
は、離れなきゃ。
離れなきゃ!
突然の衝動に戸惑って、彼の肩に回した腕を解くと、起きあがろうとした。
「・・・怖い?」
カミュンが、離れそうになる私を、覗き込むように顔を近づけてくる。
それだけで、心臓が飛び出しそうになった。
「す、少し、怖い。」
ここは正直に言おう。
本当は、カミュンより怖いのは自分。
自分の知らない自分が、身の内を破って出てきそうで怖い。
「ほ、ほらここ、いつ他の人が来るかわからないもの。」
と、私は言った。
絶対に、人に見られたくない。
カミュンがあたりを見回して、
「そうだな。」
と、言った。
そして私ごと起き上がって腕を離すと、立ち上がった。
「この間、俺は迫りすぎたもんな。
おまけに、ついさっきリタは俺の複製体に襲われかけて、怖かったよな。
また、今度にするよ。」
と、彼は言って上着を戻すと、裂け目の出口へと歩き出した。
あ・・・行っちゃう・・・の?
やっと会えたのに、もう?
気がつくと、カミュンの背中にしがみついていた。
「え、リタ?」
カミュンが驚いたように、振り返る。
「あなたが怖いんじゃないの!」
口が勝手に動く。
ドキドキする・・・何を言おうとしてるの?
私・・・。
「こ、怖いのは自分なの・・・。
ざわざわして、なんだか落ち着かなくて。
熱っぽいし、変になったみたい。」
彼の背中の温もりを感じて、さらに体が熱くなってくる。
恥ずかしい時の熱とは違う、何か。
やっぱり病気?
呼吸も早くなってきた。
「カ、カミュン、光の御手の治療して。
多分、病気なの。
そ、そうだ、クロスノスに言ったら、何か薬をもらえるかも・・・。」
カミュンはそれを聞くと、裂け目の出入り口に手をかざして、横にさっと動かした。
「何してるの?」
私が驚いて尋ねると、
「外から入ってこれないように、鍵をかけた。」
と、答える。
「そ、そうなんだ。
じゃ、治療するんでしょ。
狼に変わる?
それとも・・・。」
ペラペラと喋る口が止まらない私の顔を、カミュンが両手で包みこんでくる。
「リタ・・・。
やっとリタの刻が満ちてくれたんだな。」
カミュンが、そんな難しいことを言う。
「どういう意味・・・?」
と、言いながら、目が逸らせなくなる。
「俺を想って、熱が昂ぶるようになったんだ。」
「私、病気なんじゃ・・・。」
「違う。」
自然と顔が近づく。
欲しいものがそこにある。
でも・・・。
「こ、言葉・・・。」
私は彼の手を握って、訴える。
せめて、それだけは・・・。
「言葉が先よ。」
それを聞いたカミュンの目が、優しくなる。
「心から愛している。
リタ・・・俺の愛しい番。」
その言葉に私も笑顔になる。
「私も愛してる。
カミュン、私の一番大切な人。」
それから、熱に浮かされるように、身を寄せ合い、衝動のままもつれあって倒れ込んだ。
あの夜のその先へ。
もう、彼の手は怖くない。
私も自分から手を伸ばして、その愛しい温もりを感じていく。
カミュンが私の右手を、自分の右手に絡めて爪書簡の魔法で塗られた爪の指を重ねる。
爪が美しく輝いて、鮮やかな色へと変わっていった。
「イ・アトル。」
クロスノスに習った、古代語の初夜の誓いの言葉を口にする。
「イ・シト・ルヒテ。」
カミュンがにっこり笑って答える。
二人の爪に文字のようなものが、模様のように刻まれていくのが見えた。
「これ・・・は。」
私が驚いて見つめると、
「古代語だ。
俺たちの絆を永遠に結ぶと、書いてある・・・。
例え転生しても、再び巡り会える、と。」
そう言って、カミュンは私に沢山の初めてをくれる。
私達は、溢れて止まらない愛情と、他には譲れない暗い独占欲を剥き出しにして、互いを求め続けた。
私はカミュンを、強く抱きしめる。
「すごく幸せよ。」
「リタ?」
「小さい頃家族から離されて、ずっと一人で耐えてきて。
ようやく巡り会った大好きな人が、こんなに近くにいてくれる。
すごく安心する。」
「リタ・・・。」
彼が私を抱き締める腕に、力がこもる。
「離れないで。
お願い。
ずっとそばにいて。
あなたが大好き。
これからも、あなたのそばにいたい。」
私の声に、カミュンは何度も頷いてくれた。
「あぁ!もちろん。
当たり前だよ。
俺も・・・俺だって、リタと離れてる時は苦しかった。
するべきことを終えたら、リタは俺と帰るんだ。
あの隠れ家に帰ろう。」
彼の言葉に、私も心から安心する。
見つめ合ってもう一度、お互いの温もりを分け合っていった。
やがて体力が尽きて、声が枯れた私は、知らない間に眠りに落ちていく・・・。
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