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幸せな朝とクロスノスの警告
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翌日、早い時間に目を覚ますと、カミュンの顔が間近にあった。
もう彼の上に乗っておらず、隣で仲良く眠っている。
一瞬驚いたけど、昨夜のことを思い出してじっと彼を見つめた。
・・・すごく幸せ。
その時、コツコツと足音が聞こえ始め、クロスノスの匂いがしてきた。
ガチャ!!
牢屋の入り口を開ける音がする。
私は慌てて起き上がって、手櫛で髪を整えた。
み、見られたのかな?
「クロスノス、少しは遠慮しろよ。」
カミュンも、目を開けて彼の方を見る。
クロスノスは、
「おはようございます。
すみません、邪魔して。
リタ、大丈夫ですか?」
と、言いながら、私の顔色を観察する。
「・・・おや。
カミュンもちゃんと、待てができるようになったのですね。」
「俺は犬じゃねぇぞ。」
「リタが無事ならいいのです。
野獣をここに放したことを、後から後悔しました。」
「誰が野獣だよ。
ちゃんと言っただろ?
一人にしたくなかったんだよ。」
「カミュン、ただでさえ彼女は、腕輪で自由が制限されているのです。
そんな女性に迫る以上、大切に対応するのは当たり前ですよ。
眠れなかったことくらい引き受けなさい。」
クロスノスにそう言われて、カミュンの目の下にクマがあるのを見つけた。
「だ、大丈夫?
カミュン。」
私は熟睡したのに、申し訳ないな・・・。
「一日くらいは、平気。
少しは寝たんだぜ。」
カミュンは、クロスノスから何か薬を受け取って飲んでいる。
「それは?」
「睡眠不足解消の薬です。
作り方は、疲労回復によい魔界の蟲たちをよく煮込んで・・・。」
「ク、クロスノス。
も、もういいわ。」
私は胸を押さえて、クロスノスを止める。
「リタ。
逢瀬の邪魔をしてまでここに早めにきたのは、あなたの血液サンプルを研究した結果について伝えておくためです。」
と、クロスノスは切り出してきた。
「何かあったの?」
私が尋ねると、カミュンもクロスノスも神妙な顔になる。
「リタの黒竜の力は、変身して力を使うたびにその威力を増します。
最終的には、混沌の神に最も近くなるでしょう。」
と、言ってクロスノスはしゃがむと、目線を合わせてくる。
「神様になるの?
私・・・。」
「最も近くなるだけで、混沌の神になるわけではないですよ。
でも、この世にはとても大きい力です。
あらゆる攻撃も、全てその身に飲み込めるようになったら、もはや黒竜の姿のあなたを倒せるものはいなくなるでしょう。」
と、クロスノスが断言した。
・・・ハーティフより恐ろしい存在になるんだ。
みんなに怖がられるのね。
クロスノスがそっと手を握ってきた。
「リタ、この戦いの後、あなたを殺すという天王の話を、カミュンがティルリッチから聞いたのです。
おそらく、魔王や冥王もそう願うでしょう。」
と言う彼の言葉に、私は目眩を感じた。
戦いが済めば殺される運命・・・。
ハーティフの化身が言った通りなの?
「私の力が恐ろしいから?」
私はクロスノスとカミュンを見る。
「想像以上の力なのです。
あなたの攻撃を三族の王が協力し、原初の精霊の力でシールドを張ることで防ごうとしました。
でも、凌げたのは一撃だけ。
覚醒したばかりにしては、巨大な力です。
王というものは、己の力を超えるものを恐れます。
あなたは、訓練して自我を保てるようにしないといけません。」
と、クロスノスに言われて、私は神妙に頷く。
それも習えるなら習いたいな。
あ、そうだ。
「私の髪の毛を、また渡しておくね。」
カミュンにナイフを借りて、二人に髪を多めに切って渡す。
髪は切るたびに元に戻るから、多めに渡しても大丈夫。
二人とも受け取って、しっかりとしまっていた。
「リタ、私たちはあなたを信じています。
あなたは力に飲まれることなく、破壊神などにはならない、と。
ですが、大きすぎる力は望まぬ結果も引き寄せます。
だから、これを作りました。」
クロスノスが、美しい真紅の薬を私に渡す。
「これは、あなたが覚醒する前の血液を使って作ったものです。
これを飲めば、あなたの中の黒竜に再び己の尾を咥えさせて、以前の状態に戻せます。
どうするかは、あなたに任せます。」
その薬を、私はしっかりと仕舞い込んだ。
「ありがとう、クロスノス。」
私は寝台から降りると、クロスノスに感謝の意を込めて抱きついた。
クロスノスも、優しく返してくれる。
「いいんですよ、リタ。
それに、あなたの髪は私の研究対象でもあります。
定期的に血液サンプルも取りたいし、それから・・・あ、次から次にすみません。」
その言葉に、私はクスッと笑った。
そうだった。
クロスノスにも、いいことがあった方が私も気持ちが楽になるし。
「それに、カミュンとあのお姫様を二人だけにするのは、私も心配でしたしね。
私が一緒に行くことで、彼女を監視することもできました。」
クロスノスからそう聞いて、私はカミュンを見る。
カミュンは寝台から立ち上がると、私たちのそばに来て、
「クロスノス、もういいだろ?
いつまでそうしてる気だ。
リタはこっちがいいよな?」
と、言って自分も両腕を広げた。
クロスノスと二人でその様子に苦笑して、私が離れようとすると、クロスノスは思い出したように、私の耳元に囁きかけた。
「リタ、それから・・・。」
クロスノスの話に、私が頷いていると、
「おう!
起きてるかー?
朝飯の時間だぜー。」
と、ガルンティスの声がして、私たちの朝ごはんを持ってきてくれた。
「ありがとう、ガルンティス。」
私は、クロスノスから離れてそれを受け取ると、ガルンティスがチラリと私を見る。
「リタ、お前があの黒竜だなんて、想像つかんな。
頼むから俺たちをやっつけんなよ。
やるのはハーティフだからな。」
と、言った。
「わかってる。
怖い思いさせてごめんなさい。」
と、私が言うと、ガルンティスは顔を覗き込んでくる。
「魔王様が『結びの間』についたら、すぐに時の精霊の力の使い方を教えるとさ。
くれぐれも粗相するなよ。」
「わかった。」
「虫刺されとかも治しとけよ。
こっちの首の横が赤いぞお前。
クロスノスに薬を貰っとけ。」
そう言うと、ガルンティスはスタスタと戻って行った。
虫刺され?
私は寝台の近くの鏡に自分の姿を写して、首筋を確認する。
「本当だ、痛くも痒くもないのに。」
私がその痕をなぞっていると、今度はアシェリエルがやってきた。
あれ、なんだか暗い顔をしている。
「カミュン、天王様がお呼びだ・・・。
すぐに来い。」
声にも覇気がない。
どうしたんだろう。
アシェリエルはすぐに戻っていった。
何かあったんだ。
カミュンはサッと向かおうとして、足を止めると、
「リタ。」
と、呼ぶ。
なんだろう?と、カミュンの方を見ると、彼は片膝をついて跪き、私の片手の甲に軽く口付けた。
そして、
「大切なリタ。」
と、言われる。
昨日、アシェリエルからされたところと同じところに・・・!
「カ、カミュン・・・。」
私は顔を真っ赤にしながら言うと、彼はふっと笑って立ち上がり、片手を私の頭の後ろに添えて、今度は首筋を強く吸ってくる。
「きゃ!」
「反対側にもつけとかないとな。
虫除けしとく。」
カミュンはそう言うと、牢屋を走り出て行った。
あ、この痕は彼がつけたんだ!
い、いつの間に。
も、もう・・・。
「はあ、やれやれ。
リタ、許してくださいね。
あなたが好き過ぎて、抑えが効かないんです。」
とクロスノスは、苦笑いをしながら言った。
私は熱くなる首筋を押さえながら、カミュンの後姿を見送る。
この時何となく嫌な予感がした。
妖精界で彼を見たのは、これが最後だった。
もう彼の上に乗っておらず、隣で仲良く眠っている。
一瞬驚いたけど、昨夜のことを思い出してじっと彼を見つめた。
・・・すごく幸せ。
その時、コツコツと足音が聞こえ始め、クロスノスの匂いがしてきた。
ガチャ!!
牢屋の入り口を開ける音がする。
私は慌てて起き上がって、手櫛で髪を整えた。
み、見られたのかな?
「クロスノス、少しは遠慮しろよ。」
カミュンも、目を開けて彼の方を見る。
クロスノスは、
「おはようございます。
すみません、邪魔して。
リタ、大丈夫ですか?」
と、言いながら、私の顔色を観察する。
「・・・おや。
カミュンもちゃんと、待てができるようになったのですね。」
「俺は犬じゃねぇぞ。」
「リタが無事ならいいのです。
野獣をここに放したことを、後から後悔しました。」
「誰が野獣だよ。
ちゃんと言っただろ?
一人にしたくなかったんだよ。」
「カミュン、ただでさえ彼女は、腕輪で自由が制限されているのです。
そんな女性に迫る以上、大切に対応するのは当たり前ですよ。
眠れなかったことくらい引き受けなさい。」
クロスノスにそう言われて、カミュンの目の下にクマがあるのを見つけた。
「だ、大丈夫?
カミュン。」
私は熟睡したのに、申し訳ないな・・・。
「一日くらいは、平気。
少しは寝たんだぜ。」
カミュンは、クロスノスから何か薬を受け取って飲んでいる。
「それは?」
「睡眠不足解消の薬です。
作り方は、疲労回復によい魔界の蟲たちをよく煮込んで・・・。」
「ク、クロスノス。
も、もういいわ。」
私は胸を押さえて、クロスノスを止める。
「リタ。
逢瀬の邪魔をしてまでここに早めにきたのは、あなたの血液サンプルを研究した結果について伝えておくためです。」
と、クロスノスは切り出してきた。
「何かあったの?」
私が尋ねると、カミュンもクロスノスも神妙な顔になる。
「リタの黒竜の力は、変身して力を使うたびにその威力を増します。
最終的には、混沌の神に最も近くなるでしょう。」
と、言ってクロスノスはしゃがむと、目線を合わせてくる。
「神様になるの?
私・・・。」
「最も近くなるだけで、混沌の神になるわけではないですよ。
でも、この世にはとても大きい力です。
あらゆる攻撃も、全てその身に飲み込めるようになったら、もはや黒竜の姿のあなたを倒せるものはいなくなるでしょう。」
と、クロスノスが断言した。
・・・ハーティフより恐ろしい存在になるんだ。
みんなに怖がられるのね。
クロスノスがそっと手を握ってきた。
「リタ、この戦いの後、あなたを殺すという天王の話を、カミュンがティルリッチから聞いたのです。
おそらく、魔王や冥王もそう願うでしょう。」
と言う彼の言葉に、私は目眩を感じた。
戦いが済めば殺される運命・・・。
ハーティフの化身が言った通りなの?
「私の力が恐ろしいから?」
私はクロスノスとカミュンを見る。
「想像以上の力なのです。
あなたの攻撃を三族の王が協力し、原初の精霊の力でシールドを張ることで防ごうとしました。
でも、凌げたのは一撃だけ。
覚醒したばかりにしては、巨大な力です。
王というものは、己の力を超えるものを恐れます。
あなたは、訓練して自我を保てるようにしないといけません。」
と、クロスノスに言われて、私は神妙に頷く。
それも習えるなら習いたいな。
あ、そうだ。
「私の髪の毛を、また渡しておくね。」
カミュンにナイフを借りて、二人に髪を多めに切って渡す。
髪は切るたびに元に戻るから、多めに渡しても大丈夫。
二人とも受け取って、しっかりとしまっていた。
「リタ、私たちはあなたを信じています。
あなたは力に飲まれることなく、破壊神などにはならない、と。
ですが、大きすぎる力は望まぬ結果も引き寄せます。
だから、これを作りました。」
クロスノスが、美しい真紅の薬を私に渡す。
「これは、あなたが覚醒する前の血液を使って作ったものです。
これを飲めば、あなたの中の黒竜に再び己の尾を咥えさせて、以前の状態に戻せます。
どうするかは、あなたに任せます。」
その薬を、私はしっかりと仕舞い込んだ。
「ありがとう、クロスノス。」
私は寝台から降りると、クロスノスに感謝の意を込めて抱きついた。
クロスノスも、優しく返してくれる。
「いいんですよ、リタ。
それに、あなたの髪は私の研究対象でもあります。
定期的に血液サンプルも取りたいし、それから・・・あ、次から次にすみません。」
その言葉に、私はクスッと笑った。
そうだった。
クロスノスにも、いいことがあった方が私も気持ちが楽になるし。
「それに、カミュンとあのお姫様を二人だけにするのは、私も心配でしたしね。
私が一緒に行くことで、彼女を監視することもできました。」
クロスノスからそう聞いて、私はカミュンを見る。
カミュンは寝台から立ち上がると、私たちのそばに来て、
「クロスノス、もういいだろ?
いつまでそうしてる気だ。
リタはこっちがいいよな?」
と、言って自分も両腕を広げた。
クロスノスと二人でその様子に苦笑して、私が離れようとすると、クロスノスは思い出したように、私の耳元に囁きかけた。
「リタ、それから・・・。」
クロスノスの話に、私が頷いていると、
「おう!
起きてるかー?
朝飯の時間だぜー。」
と、ガルンティスの声がして、私たちの朝ごはんを持ってきてくれた。
「ありがとう、ガルンティス。」
私は、クロスノスから離れてそれを受け取ると、ガルンティスがチラリと私を見る。
「リタ、お前があの黒竜だなんて、想像つかんな。
頼むから俺たちをやっつけんなよ。
やるのはハーティフだからな。」
と、言った。
「わかってる。
怖い思いさせてごめんなさい。」
と、私が言うと、ガルンティスは顔を覗き込んでくる。
「魔王様が『結びの間』についたら、すぐに時の精霊の力の使い方を教えるとさ。
くれぐれも粗相するなよ。」
「わかった。」
「虫刺されとかも治しとけよ。
こっちの首の横が赤いぞお前。
クロスノスに薬を貰っとけ。」
そう言うと、ガルンティスはスタスタと戻って行った。
虫刺され?
私は寝台の近くの鏡に自分の姿を写して、首筋を確認する。
「本当だ、痛くも痒くもないのに。」
私がその痕をなぞっていると、今度はアシェリエルがやってきた。
あれ、なんだか暗い顔をしている。
「カミュン、天王様がお呼びだ・・・。
すぐに来い。」
声にも覇気がない。
どうしたんだろう。
アシェリエルはすぐに戻っていった。
何かあったんだ。
カミュンはサッと向かおうとして、足を止めると、
「リタ。」
と、呼ぶ。
なんだろう?と、カミュンの方を見ると、彼は片膝をついて跪き、私の片手の甲に軽く口付けた。
そして、
「大切なリタ。」
と、言われる。
昨日、アシェリエルからされたところと同じところに・・・!
「カ、カミュン・・・。」
私は顔を真っ赤にしながら言うと、彼はふっと笑って立ち上がり、片手を私の頭の後ろに添えて、今度は首筋を強く吸ってくる。
「きゃ!」
「反対側にもつけとかないとな。
虫除けしとく。」
カミュンはそう言うと、牢屋を走り出て行った。
あ、この痕は彼がつけたんだ!
い、いつの間に。
も、もう・・・。
「はあ、やれやれ。
リタ、許してくださいね。
あなたが好き過ぎて、抑えが効かないんです。」
とクロスノスは、苦笑いをしながら言った。
私は熱くなる首筋を押さえながら、カミュンの後姿を見送る。
この時何となく嫌な予感がした。
妖精界で彼を見たのは、これが最後だった。
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追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
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