時の精霊に選ばれし者〜人狼リタは使命があります!

たからかた

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※私は密会現場を見てしまーった(ノアム視点)

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「ふぁっくしょーん!!!」

と、私は大きなくしゃみをしーた。

外は暗くなっていーる。

湖から命からがら這い上がると、私は『ペルシオネの断崖』をなんとかよじ登ろうとしていーた。

このままではおれんではないーか!

まったくリタのやーつ!!

こう、ババっと巨人を倒したら、ババっと戻ればいいものーを!!

ダラダラしているから、あんなことーに。
地団駄踏みながら、足場を探ーす。

それにしても、凄い力だーった。
私など消し炭にもならんだろうーな。

それにしても、カミュン・・・。

リタのために飛んで行ったようだが、あーんなやつのためにそーんなことまでしなくてもよいではないーか!

湖に落ちたカミュンが、人の姿に戻ったリタを抱えて浮かんだ時には嬉しかーった。

羽を持つ妖精たちが、二人を救出して、私も連れて行けと手を振ったのーに、無視しやがーって。

「ちくしょぉぉぉぉ!」

と、いいながら、断崖を上りかけて気付いた。
無茶苦茶高い・・・途中で力尽きーる。

「リタの馬鹿野郎!!」

そう言っていると、何やら話し声が聞こえてきーた。

誰か下にいるのーか!?

助けてくーれ!!

・・・ん?
あれは・・・。

手前の奴の容姿は天族の女ーだ。
あれは・・・確かティルリッチ。

もう一人は、白いローブを纏っていーる。

「どういうことなの?」

ティルリッチは、白いローブを纏った相手に詰めよっていーた。

「リタを一人にしたら、彼の心は私のものになると言ったじゃない!!」

と、叫んでいーる。

なぬ?
リタがどうしーた。

「化身の一人が捕まった。
リタは孤立したわけではなく、化身を捕まえるための芝居、つまり罠だったわけだ。」

「知らなかったの!
王たちだけで進められていたから!!
そ、それでも私のお陰で、リタは黒竜に変わったのよ。」

「確かに、な。
だが、あの男の心はお前に動かなかった。
黒竜に変わるリタを見ても、恐れることなく関わることを選んだ。
今も奴はリタのそばから離れない・・・。」

「嫌、嫌よ!
なんとかして!
三界に淀みを引き込む手引きをしたのも、あなたがカミュンの心をくれるというからよ!!
お兄様も気づき始めて色々聞いてくるの。
こちらも、誤魔化しきれなくなってきてる。」

「ティルリッチ。
それは自分でなんとかしろ。」

白いローブを纏った方が、ティルリッチが掴んでくる手を振り払ーった。

「そ、そんな・・・。 力を貸して。」

ティルリッチが俯いていーる。

「ふふふ、ティルリッチ。
『結びの間の死角』を知るお前のおかげで、三界に入り込んだ淀みは、順調に侵入出来ている。
高次元の連中さえ押さえれば、もはや淀みはリタしか解決できなくなる。」

白いローブを纏った方は、ティルリッチの方に近寄ると、その顔を撫でーる。

「私を利用したの?
カミュンの心はくれないの?
なら、お兄様に全てを・・・!!」

ティルリッチは、脅すように相手を見ていーる。
でも、白いローブを纏った方は、余裕ある態度を見せていーた。

「お前は三界を売った罪人だ。
処分を受ける覚悟がお前にあるのか?
私が『精霊の産み直し』を誘発できれば、全ては原初の精霊に飲み込まれて一つになる。
お前もカミュンもそこで結ばれるのだ。
その方がよかろう?」

「ふざけないで!
精霊の産み直し、て、何?
世界を滅ぼす気なの?
私は・・・。」

ティルリッチは、悔しそうに地面に座り込んーだ。

「彼が欲しかっただけよ・・・。」

白いローブを纏った方が、ティルリッチを覗き込ーむ。

「あの男の心を射止めるために、お前は何をしてきた?
天王の妹という立場で、あの男が逆らえないことをいいことに、勝手に恋人として振る舞っただけだろ?
奴の気持ちは、お前を振ったあの時から変わってないのでは?」

「そんなこと・・・!
もう、いいわ。
自分で『魅了』の魔法をかけて、手に入れてやるんだから!!」

ティルリッチが地団駄を踏みながら、叫んでいーる。

「無駄だ、ティルリッチ。
奴の指には古代魔法がかかっていて、『魅了』の魔法を跳ね返してしまう。
残された方法は一つ。
奴を閉じ込め、奴の複製を作り出すがいい。
本体が封印されている限り、その複製こそ本物だ。」

「所詮、偽物じゃない・・・。」

「奴の複製と、一時の逢瀬を過ごす以外に手に入れる方法はない。
精霊の産み直しが始まるその時まで、本体を逃すな。
それが出来ぬなら、お前はそこまでだ。」

白いローブを纏った方はそう言うと、消えていーった。
そこには、意気消沈したティルリッチが残されていーる。

「私は・・・本物がいいの・・・偽物なんか嫌よ。」

わかる!
わかーる!!
私もカミュンが好きだが、複製とはいえ、それは偽物でしかなーい。

いくら、見た目がそっくりでも、言わせたい言葉を吐かせても、複製だと自分が知っている以上、満足などできーぬ!!

女は嫌いだが、お前は同志だ、ティルリッチ!!

ティルリッチが羽ばたきだしたので、私は慌ててティルリッチの足にしがみついーた。

「きゃー!!
誰!?」

ティルリッチが叫ーぶ。

「私か?
私は泣く子も黙る、ラ・テルス魔法研究所の・・・。」

「離しなさい!
愚か者!!」

そう言われて、振り落とされそうになーる。

ティルリッチが羽ばたくたびに高度が上がり、落ちたら死にそうーだ。

これがカミュンなら落ちても本望だが、同志とはいえ、こいつは違ーう。

「頼むー!
断崖の上まで運んでくれたらいいだけーだ。
もう、お前しかおらんのーだ!!」

必死でしがみついて、叫ぶしかなーい。
矜持など、この場合捨ててやーる。

「この・・・!
こうしてやる!!」

ティルリッチが、ものすごい勢いで空高く舞い上がると、体を一回転させて私を振り飛ばしーた。

「ぎゃー!!」

そのまま私は、断崖の途中に開いた小窓のようなものに突っ込んーだ。

びったぁぁぁぁん!!

派手な音とともに、薄暗い部屋に叩きつけられた。

いた・・・痛ーい。
私の鼻は折れたのではない・・・か?

苦しーい・・・。

こ、ここはどこーだ?

顔をあげると、何やら柵のようなものが見えーる。

まさか・・・ここは牢屋ーか?

「え?
ノアム元理事長?」

聴き慣れた声がすーる。

そこにはテルシャがいーた。

「お前・・・なーぜ?」

「あなたの逃亡を助けたとかで、取り調べを受けていたのです。
どこにいたんですか!」

テルシャは怒りまくっていーる。

「好きでこうなったのでは、ないーわ。」

私は牢屋の中を見回ーす。

「出られんーな。
私たちだけーか。」

「あら、ノアム元理事長、靴はどうしたんですか?」

テルシャが尋ねーる。
何を馬鹿ーな。
ちゃんと履いて・・・。

あ?
な、ない!!

ま、まさか湖のー中?
それとも、さっき振り飛ばされた時に脱げーた?

「ぎゃぁぁぁー靴が!!」

「静かにしてください!
汚れるものがないから、いいでしょう?」

「汚れるよりなくす方がショックは小さいが、それでも・・・。
いやだぁぁぁぁ!!」

「はいはい、看守ー。
眠りの魔法をお願いしまーす。」

テルシャの声に、さっさとやってきた妖精に、眠りの魔法をかけられーた。

わ、私はこれからどうなるのーか。
更なる困難が待ち受けていーた。


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