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襲撃
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「そ・・・そんな。
カ、カミュン、私・・・ごめんなさい。
それ返して!
捨てるから!」
「馬鹿!
危ない!
わかった、後で捨てとくから!」
「ほー、本当に捨てるんですか?
カミュン。」
「クロスノス、お前な・・・!」
「親友のお手伝いをしてるだけですよ、私は。
あ、リタ。
爪書簡の爪の色とその指にも、意味があ・・・。」
「クロスノスー!!
そのくらいにしとけ!
お前、あとで覚えてろよ!」
「はいはい。
わかりました。」
クロスノスはにっこり笑って、私に片目を閉じてみせた。
クロスノスは、穏やかに前を向いているけど、私とカミュンは無言なの。
恥ずかしくてたまらない!
私は顔を両手で覆っていた。
こ、この空気を変えたい!
「し、神殿はどこにあるんです?」
と、私が話題を変える。
「そんなに遠くありませんよ。
あそこに見える音無しの森を抜けて、吊り橋を渡った先にあります。」
「え!
そんなに近くに?」
「神殿は、その日ごとに移動しているのです。
どこに出現するかは、前日にその街に御布令があります。
昨日、ここだと御布令が出ていたのです。」
「神殿が動き回るなんて。」
「転移の魔法ですね。
18年前に、あの神殿で事件が起きてから、1箇所に留まらないようにしているそうです。」
「事件?」
「突然神殿に怪物が現れて、神殿を破壊しながら次元の階段を上がっていったそうです。
我々はそれくらいしか知りません。」
それはどんな・・・。
そう言おうとした時だ。
「何か来るぞ!」
と、カミュンが叫んだ。
クロスノスも馬を止めて、辺りを伺っている。
私も周囲を見回した。
なんだろう・・・この臭い。
変身してからというもの、日に日に嗅覚が鋭くなってくる。
この辺は草原で開けているので、何か来るならすぐにわかる。
すると、前後左右の草の間から、巨大な花が鎌首をもたげてきた。
「食中植物を変化させた、化け花だ!
草木の精霊を使役しているぞ!」
と、カミュンが言って両腕を振ると、その手には文字が刻まれた剣が握られていた。
二刀流なんだ、カミュン。
「これはこれは。
サンプルを取らないと。
見事な化け花だ。」
クロスノスは、一つに結って三つ編みにしている、自分の長い髪を両手を後ろに回して掴んだ。
すると、結び目がカッと光って長い髪の毛が外れ短髪になり、その手に握った長い髪の毛は鞭のような武器に変化している。
「掴まれ、リタ。
振り落とされるなよ!」
カミュンがそう言うと、前に生えた化け物が巨大な口を開いてきた。
カミュンは馬を走らせて、その花を一刀両断にする。
間髪入れずに、残りの花が一斉に向かってきたが、クロスノスの鞭のような武器がさらに伸びて、彼が一振りすると、次々と花が根元から切り取られていく。
つ、強い。
二人ともすごい。
私も戦えたらな・・・。
守られてばかりは申し訳なくて・・・。
そんな考え事をしていた私は、いきなり強い力に引かれて馬から転げ落ちてしまった。
「わぁ!!」
私の叫び声に、カミュンがハッとなって振り向く。
よく見ると、私の腰の辺りに蔓が巻きついていて、そのまま引きずられていった。
「根がまだ、生きていたか!!」
クロスノスが馬を降りると、自分の武器を地面に突き刺して目を閉じでいる。
「土の精霊よ・・・、悪しき根を断つ刃を我に与えよ。
ドン・ウラグ・ダン!!」
その言葉と共に地面が光り、私の腰に巻きついていた蔓がみるみる枯れていく。
「はぁ、はあ。」
私は腰の蔓を外して立ち上がった。
「リタ!!」
カミュンが両手の剣をさっと消すと、馬を降りて走り寄ってくる。
「怪我はないか?」
そう言われて首を振る。
落ちた時に背中を少し打ったくらいだし。
「ありがとう、平気。」
「やっぱり後ろはダメだ。
リタ、前に来いよ。」
「え?」
カミュンはさっと馬を引いて来て、また私を抱ると馬に飛び乗った。
「わ!
もう、今は痺れてもいないし、怪我もしてないから、後ろでもいい・・・。」
「却下。
後ろに乗って落ちたのは、誰だっけ?」
「私・・・です。」
「大人しく前にいろ。
ここなら、そう簡単に奪われることもない。」
それはそうなんだけど・・・。
こう、いつも抱っこされてばかりだと、気まずいというか、恥ずかしいというか。
カミュンの息遣いが近くて、正直ドキドキする。
そこへ、
「カミュン、今の襲撃は明らかにリタを狙ってきましたね。」
と、言ってクロスノスが馬を寄せてきた。
武器に使った髪の毛も元に戻っている。
「あぁ、この間の泥人形の襲撃も、殺そうとしていると言うよりは、連れ去ろうとしている感じだったな。」
「えぇ。
おそらく、リタの力を狙うものの仕業でしょうね。
急ぎましょう。」
二人はそう話し合うと、馬を急がせて音無しの森へと入っていく。
音無しの森はその名の通り、静かであまり音がない。
だからこそ、私たちが立てる音が、どこまでも響いていく感じがする。
木や草は生えてるけど、少しでも触れると灰のように崩れてしまう。
そして湿気がひどい。
「暑いな、ムシムシするぜ。」
カミュンが額を拭う。
「この森は湿度が高いんですよね。
昔はこうじゃなかったそうなんですが、ラ・テルス魔法研究所がこの森を使って、禁断の魔法を実験したらしいのです。
そのせいで生態系が狂い、音が消えていったそうなんです。」
クロスノスもハンカチを取り出して、顔の汗を拭いた。
「禁断の魔法?」
「死者を蘇らせる魔法です。
ノアム理事長が躍起になって、誰かを甦らせようとしたようですね。
しかし、叶わずに秩序が壊された森だけが残りました。」
クロスノスの説明に、私は首を捻る。
「あの、魔法は精霊の力を行使することよね?」
「えぇ、リタ。
使う力の精霊と繋がり、その力を借りて発動するのが魔法です。」
と、言ってクロスノスが、首の後ろに流れる汗を拭き取る。
「いけない魔法なら、どうして精霊と繋がってしまうの?
失敗したとはいえ、こんな自然を破壊するような力を、使わせなければいいのに。
神様だって許さないでしょう?」
「精霊は、流れゆく力そのものだ。
その力がなんに使われようが、精霊たちは関知しない。
流れが滞らなければ、神々も気にしない。」
私の言葉にカミュンが、淡々と答える。
そんな・・・。
私たちは、昔から神様は決して悪をお許しにならないと、教えられている。
精霊の力はそのために使われるのだ、と。
クロスノスが混乱する私を見て、
「今の話は、神殿ではしてはいけませんよ。
私たちといる時だけの話にしましょうね。」
と、言った。
どこか、納得できない気持ちを抱えながら前を見る。
その時、舞い上がった灰の煙を吸い込んでしまったの。
「ハックション!!」
あ、という間にくしゃみが出てしまい、狼に変身しちゃった!
カ、カミュン、私・・・ごめんなさい。
それ返して!
捨てるから!」
「馬鹿!
危ない!
わかった、後で捨てとくから!」
「ほー、本当に捨てるんですか?
カミュン。」
「クロスノス、お前な・・・!」
「親友のお手伝いをしてるだけですよ、私は。
あ、リタ。
爪書簡の爪の色とその指にも、意味があ・・・。」
「クロスノスー!!
そのくらいにしとけ!
お前、あとで覚えてろよ!」
「はいはい。
わかりました。」
クロスノスはにっこり笑って、私に片目を閉じてみせた。
クロスノスは、穏やかに前を向いているけど、私とカミュンは無言なの。
恥ずかしくてたまらない!
私は顔を両手で覆っていた。
こ、この空気を変えたい!
「し、神殿はどこにあるんです?」
と、私が話題を変える。
「そんなに遠くありませんよ。
あそこに見える音無しの森を抜けて、吊り橋を渡った先にあります。」
「え!
そんなに近くに?」
「神殿は、その日ごとに移動しているのです。
どこに出現するかは、前日にその街に御布令があります。
昨日、ここだと御布令が出ていたのです。」
「神殿が動き回るなんて。」
「転移の魔法ですね。
18年前に、あの神殿で事件が起きてから、1箇所に留まらないようにしているそうです。」
「事件?」
「突然神殿に怪物が現れて、神殿を破壊しながら次元の階段を上がっていったそうです。
我々はそれくらいしか知りません。」
それはどんな・・・。
そう言おうとした時だ。
「何か来るぞ!」
と、カミュンが叫んだ。
クロスノスも馬を止めて、辺りを伺っている。
私も周囲を見回した。
なんだろう・・・この臭い。
変身してからというもの、日に日に嗅覚が鋭くなってくる。
この辺は草原で開けているので、何か来るならすぐにわかる。
すると、前後左右の草の間から、巨大な花が鎌首をもたげてきた。
「食中植物を変化させた、化け花だ!
草木の精霊を使役しているぞ!」
と、カミュンが言って両腕を振ると、その手には文字が刻まれた剣が握られていた。
二刀流なんだ、カミュン。
「これはこれは。
サンプルを取らないと。
見事な化け花だ。」
クロスノスは、一つに結って三つ編みにしている、自分の長い髪を両手を後ろに回して掴んだ。
すると、結び目がカッと光って長い髪の毛が外れ短髪になり、その手に握った長い髪の毛は鞭のような武器に変化している。
「掴まれ、リタ。
振り落とされるなよ!」
カミュンがそう言うと、前に生えた化け物が巨大な口を開いてきた。
カミュンは馬を走らせて、その花を一刀両断にする。
間髪入れずに、残りの花が一斉に向かってきたが、クロスノスの鞭のような武器がさらに伸びて、彼が一振りすると、次々と花が根元から切り取られていく。
つ、強い。
二人ともすごい。
私も戦えたらな・・・。
守られてばかりは申し訳なくて・・・。
そんな考え事をしていた私は、いきなり強い力に引かれて馬から転げ落ちてしまった。
「わぁ!!」
私の叫び声に、カミュンがハッとなって振り向く。
よく見ると、私の腰の辺りに蔓が巻きついていて、そのまま引きずられていった。
「根がまだ、生きていたか!!」
クロスノスが馬を降りると、自分の武器を地面に突き刺して目を閉じでいる。
「土の精霊よ・・・、悪しき根を断つ刃を我に与えよ。
ドン・ウラグ・ダン!!」
その言葉と共に地面が光り、私の腰に巻きついていた蔓がみるみる枯れていく。
「はぁ、はあ。」
私は腰の蔓を外して立ち上がった。
「リタ!!」
カミュンが両手の剣をさっと消すと、馬を降りて走り寄ってくる。
「怪我はないか?」
そう言われて首を振る。
落ちた時に背中を少し打ったくらいだし。
「ありがとう、平気。」
「やっぱり後ろはダメだ。
リタ、前に来いよ。」
「え?」
カミュンはさっと馬を引いて来て、また私を抱ると馬に飛び乗った。
「わ!
もう、今は痺れてもいないし、怪我もしてないから、後ろでもいい・・・。」
「却下。
後ろに乗って落ちたのは、誰だっけ?」
「私・・・です。」
「大人しく前にいろ。
ここなら、そう簡単に奪われることもない。」
それはそうなんだけど・・・。
こう、いつも抱っこされてばかりだと、気まずいというか、恥ずかしいというか。
カミュンの息遣いが近くて、正直ドキドキする。
そこへ、
「カミュン、今の襲撃は明らかにリタを狙ってきましたね。」
と、言ってクロスノスが馬を寄せてきた。
武器に使った髪の毛も元に戻っている。
「あぁ、この間の泥人形の襲撃も、殺そうとしていると言うよりは、連れ去ろうとしている感じだったな。」
「えぇ。
おそらく、リタの力を狙うものの仕業でしょうね。
急ぎましょう。」
二人はそう話し合うと、馬を急がせて音無しの森へと入っていく。
音無しの森はその名の通り、静かであまり音がない。
だからこそ、私たちが立てる音が、どこまでも響いていく感じがする。
木や草は生えてるけど、少しでも触れると灰のように崩れてしまう。
そして湿気がひどい。
「暑いな、ムシムシするぜ。」
カミュンが額を拭う。
「この森は湿度が高いんですよね。
昔はこうじゃなかったそうなんですが、ラ・テルス魔法研究所がこの森を使って、禁断の魔法を実験したらしいのです。
そのせいで生態系が狂い、音が消えていったそうなんです。」
クロスノスもハンカチを取り出して、顔の汗を拭いた。
「禁断の魔法?」
「死者を蘇らせる魔法です。
ノアム理事長が躍起になって、誰かを甦らせようとしたようですね。
しかし、叶わずに秩序が壊された森だけが残りました。」
クロスノスの説明に、私は首を捻る。
「あの、魔法は精霊の力を行使することよね?」
「えぇ、リタ。
使う力の精霊と繋がり、その力を借りて発動するのが魔法です。」
と、言ってクロスノスが、首の後ろに流れる汗を拭き取る。
「いけない魔法なら、どうして精霊と繋がってしまうの?
失敗したとはいえ、こんな自然を破壊するような力を、使わせなければいいのに。
神様だって許さないでしょう?」
「精霊は、流れゆく力そのものだ。
その力がなんに使われようが、精霊たちは関知しない。
流れが滞らなければ、神々も気にしない。」
私の言葉にカミュンが、淡々と答える。
そんな・・・。
私たちは、昔から神様は決して悪をお許しにならないと、教えられている。
精霊の力はそのために使われるのだ、と。
クロスノスが混乱する私を見て、
「今の話は、神殿ではしてはいけませんよ。
私たちといる時だけの話にしましょうね。」
と、言った。
どこか、納得できない気持ちを抱えながら前を見る。
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