時の精霊に選ばれし者〜人狼リタは使命があります!

たからかた

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※私の心を奪った背中(ノアム視点)

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今日も私はとても不機嫌なのーだ。
理事長を解任されるなんて、思いもしなかーった。

くそ・・・。
研究所を設立した時は、女王やその周りの大臣どもは、『期待している、一刻も早く数多くの魔法をもたらして国の礎となれ』ともてはやしたのーに!

どれだけ奴らの望む魔法を作り出して、提供してきたと思っているのーだ。

その分国の土地を魔法実験で荒らした分は目を瞑ってきたのだから、つべこべ言うなと言いやがーって!

「ノアム理事長・・・、いえ、ノアム元理事長。
もう、ついてこないでいただけます?」

と、前を歩くテルシャに言われーた。

今、なんと言った?
このー女。

「秘書のくせに生意気な口をきくーな!」

と、私が言うと、

「口を慎んでください。
研究所は解体。
研究所員の雇用は守られましたが、経営体制は一新され私が理事長となりました。
もう、あなたの秘書ではないのです。」

と、スラスラ言いやがーる。

「私の研究所だーぞ!?」

「国立ラ・テルス魔法研究所なのです。
国の補助金で建設され、国の税金で運営されてきました。
しかもウロン様の研究成果のお陰で、他の研究所よりも、潤沢な資金を回していただいていたのです。
あなたは、それに乗っかっていただけですよ。」

「私の開発した魔法も、貢献したのーだ!」

「下手な鉄砲も数撃てば当たります。
寝床に必ずダニやノミが発生して増える魔法、お腹の調子が悪くなる魔法。
いずれも地味に ーーー 戦場で有効でしたから、採用されましたね。」

一時停止を起こしてそう言いながら、テルシャは店に入って行ーく。

「ほれ、みーろ。
私の素晴らしい魔法は、国も無視できないのーだ。
なのに・・・なのになーぜ!
理事長を解任されたのーだ!!
リタも逃げ出してしまって・・・。
私の靴は、自分で ーーー 磨かねばならなくなったではないーか!!」

私は、テルシャの後を追いながら入って行ーった。

「靴くらいなんです。
自分で磨けば、仕上がりに文句ないでしょ。」

テルシャはこちらを見もせずに、服を物色している。

「服を買う気ーか?」

「えぇ。近々精霊の神殿へ、新しい認可を貰いにいくのです。
研究所再建の第一歩ですからね。
服を新調しないと。」

「ふん、お前に大巫女様が認可なんーぞ・・・。」

「通達もいただきました。
私に与えると、大巫女様はおっしゃっているのです。」

「なんだーと!?」

私の大声に、店内の他の客が注目してくーる。
私は軽く咳払いをして、両手を後ろで組んだ。
・・・女ばかりの店だーな。
男は私くらいーか・・・。
そう思っていると、話し声が聞こえてきーた。

「カミュン、いいからほら、これ見て。
この服は彼女に似合うと思うわ。
流行りの服なのよ。
お値段もお手頃ー。」

「女物はわかんねぇけど、流行りなのか?
あんなひどい服着てたんだ。
もうあと二、三枚買うか。」

「同じものばかりなんてダメよ。
これとこれ。
それとあれも。
あと、上の階に下着もあるわ。
流石に恥ずかしいでしょ。
私がお会計するから、お財布貸して。
・・・いいんだよね?」

「あぁ、全部あいつにやるつもりだ。
あんなにボロボロな上に、無理矢理破られた服なんか捨てちまえばいいんだ。」

「でも、乱暴されてなくてよかった。
あんなに綺麗で、可愛らしい女の子だもの。
人狼は獣だからって、人の姿をしてる時、人間に酷い目に遭わされたり ーーー するのよ。
たいてい変身して逃げられるんだけどね。」

「人狼だろうがどんな種族だろうが、許されないことだ。
ぶん殴りてぇよ。
ーーー と、俺たちもやっぱり一時停止するな。」

そんな言葉が聞こえてくーる。
人狼だーと?
声のする方に目を向けると、銀髪の男の後ろ姿と、そいつの周りを飛び回る蝶のような妖精が見えーる。

・・・銀髪?
まさか、天族のあの男ーか?
背中に羽がないが、まさか混血なのーか?

私はこちらを見ようともしないテルシャから離れて、こそこそと奴の後ろに回ってみーる。

奴から妖精が離れて、二階へ上がるのが見えた。
顔は見えないが、背格好は研究所を見ていた、あの美しい男に似ていーる。

なんと話しかけよーか。
そうだ、人狼の話をしていたーな。
リタは10万オーグォで買った人狼だ。
所有物を返ーせと、言おーか。
よし、

「おい、そこの・・・。」

「きゃー、カミュン、来てたのー?」
「あ、本当だ!
カミュン、この間はありがとう。
もう怖いお化けはこなくなったよ。
また、ギルドに依頼しておくね、そうしたらまた会えるもんね?」
「ねぇ、ねぇ!クロスノスは元気?
私もギルドに出したいなー。
でも、今のところ何もないから。」

などと黄色い声を上げる女の集団に、私は突き飛ばされて壁に貼り付いてしまーった。

痛い・・・、苦しい・・・。

「はいはい、みんな静かにな。
依頼はギルドによろしく。
ここには、野暮用で来たんだよ。」

「だってここ、女性用の洋服のお店だよ?
どうしてここにいるの?
プルッポムリンとお買い物?」

「まさか、誰かに服を贈るの?
ええー、カミュン好きな女性ができたの!?」

「ばかっ・・・!
ちが・・・!」

「赤くなってる!」

「やだ、嘘!
カミュン、違うよね?
好きなのは私よね?」

「なんで、あんたなの?
私よ。」

「違う。私に決まってるよ。
ねー?」

「言ってれば?」

「何よ!」

などと、さっきから騒がしいーぞ!!
さっさとお前らどこかへ・・・。

「カミュン、お待たせー。
さ、帰りましょ。
あら、相変わらずモテてるね。」

「そんなんじゃねぇよ、プルッポムリン。
さ、帰ろうぜ。
あいつが目を覚ます前に、戻らないと。」

と、奴の声がする。
待て・・・待て!

お前には私も話があ・・・!

「あいつ!?
やだ、カミュン誰か連れ込 ーーー んでるの?」

「目を覚ます前に、て何?
他人を家に入れるのは ーーー 嫌いだっていつも言ってるのに!
どこの誰!?」

「ひどい!
私が行きたいと ーーー 言った時は、いつも断るくせにー。」

殺気立った女たちが、一時停止を起こしながら、私をさらに押し潰した。

ぐぇ・・・。
女なんか、大嫌いだ・・・。

「時間だ。
みんな、ギルドに依頼したからって俺が行くとは限らないからな。
指名はきかねーぞ。
じゃなー。」

奴の声と足音が遠ざって行ーく。

それに伴い、女たちも後を追うように店を出て行ーった。

私はようやく解放されて、そのまま床に倒れ伏ーす。

「ノアム元理事長、何遊んでるんですか。
店の迷惑になりますので、そこ、どいてください。」

と、そんな私を見つけたテルシャが、呆れたように言い放ーつ。

くそ・・・!
くそ!
女なんざ嫌いーだ!!

そう思いながら、床を拳で殴ーった。
そのまま一時停止して、人に踏まれてしまーった。
くっそー!!

わたしの災難は、まだまだこれからだーった・・・。






















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