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プロローグはバトルシーンから
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――木々が、震えた。
「っ……!」
咆哮をあげ突進してくるのは、この森に生息する竜の一種と思われた。
骨ばって骨と皮の身体は、お世辞にも美しいとは言い難い。黒く、タールのような皮膚に落窪んだ眼窩。
3メートル程の身体に対して、蝙蝠のような大きさと形の羽は卑小で。
「それですっ! そのドラゴンがッ、村を!!」
村娘が叫び、前に進み出た青年は薄く微笑む。
「なるほど、大したことないなぁ」
構えたのは両手大剣。
読んで文字のごとく、人の身長に近いそれはもはや槍に近い。
重さも相当で、大きく振りかぶって叩きつけるように振り下ろすのが一般的であろう。
そう、一般的には。
「三発で仕留める……っ」
青年は駆け出した。
重い、鉄の塊のような武器を持っているとは思えぬ身軽さで。
「ルイト様ッ!?」
暴れ回るドラゴンに、真っ向から突っ込んでいく彼に娘は悲鳴をあげる。
しかしそれは杞憂であると、数秒も立たぬうちにわかるだろう。
「っうぉぉぉぉ!!!」
踏み潰さんと振り上げられたドラゴンの鋭い爪をかいくぐり、まずは一太刀。
深々と刺さった切っ先が、赤黒い血に染まった。
「うわっ、汚れるじゃないか」
返り血をよけて身をかわした彼が、軽口とともに眉をよせる。
しかし隙は見せない。
すぐさま大地を蹴って、背面――不格好な翼の根元に剣を突いた。
「アハハハッ、痛かろう痛かろう」
おどろおどろしい、獣の絶叫もなんのその。愉快そうに笑ってさらに回り込む。
痛みと苦痛にのたちまわるドラゴンの、鱗に覆われた身体。
いびつな棘におおわれた尾が、地面をザリザリと削っていく。
「お、危ね」
立ちのぼる土煙と土塊に、軽く身をひるがえした。しかしすぐに体勢を低くし、両脚を踏ん張った。
「でもな」
小さく口の中で唱えたのは、肉体強化の呪文。
この青年、剣の腕だけでなく。魔法も使えるらしい。
青く光る魔法陣が、地面ごと彼を押し上げた。
「これでトドメだ」
ヒラリと飛んだ先。
一瞬の煌めきと共に、鋭利な刃先がくい込んだ――ドラゴンの喉笛。
『ゥ゙オ゙ォア゙ァ゙ァァァァァッ!!!』
転げ回る巨体を器用に操り、眉間の角を掴む。
そして。
「っ!」
壮絶な光景に息をのむ娘の前で、醜悪なドラゴンの首を見事に掻っ切ってみせたのだ。
「討伐、完了」
青年は満足げに笑う。
その金色の髪の先にも、わずかほどの返り血を浴びることなく。
――この青年こそルイト・カントール。
我が地方で。いや、大国にその名をとどろかせる最強の冒険者であった。
「っ……!」
咆哮をあげ突進してくるのは、この森に生息する竜の一種と思われた。
骨ばって骨と皮の身体は、お世辞にも美しいとは言い難い。黒く、タールのような皮膚に落窪んだ眼窩。
3メートル程の身体に対して、蝙蝠のような大きさと形の羽は卑小で。
「それですっ! そのドラゴンがッ、村を!!」
村娘が叫び、前に進み出た青年は薄く微笑む。
「なるほど、大したことないなぁ」
構えたのは両手大剣。
読んで文字のごとく、人の身長に近いそれはもはや槍に近い。
重さも相当で、大きく振りかぶって叩きつけるように振り下ろすのが一般的であろう。
そう、一般的には。
「三発で仕留める……っ」
青年は駆け出した。
重い、鉄の塊のような武器を持っているとは思えぬ身軽さで。
「ルイト様ッ!?」
暴れ回るドラゴンに、真っ向から突っ込んでいく彼に娘は悲鳴をあげる。
しかしそれは杞憂であると、数秒も立たぬうちにわかるだろう。
「っうぉぉぉぉ!!!」
踏み潰さんと振り上げられたドラゴンの鋭い爪をかいくぐり、まずは一太刀。
深々と刺さった切っ先が、赤黒い血に染まった。
「うわっ、汚れるじゃないか」
返り血をよけて身をかわした彼が、軽口とともに眉をよせる。
しかし隙は見せない。
すぐさま大地を蹴って、背面――不格好な翼の根元に剣を突いた。
「アハハハッ、痛かろう痛かろう」
おどろおどろしい、獣の絶叫もなんのその。愉快そうに笑ってさらに回り込む。
痛みと苦痛にのたちまわるドラゴンの、鱗に覆われた身体。
いびつな棘におおわれた尾が、地面をザリザリと削っていく。
「お、危ね」
立ちのぼる土煙と土塊に、軽く身をひるがえした。しかしすぐに体勢を低くし、両脚を踏ん張った。
「でもな」
小さく口の中で唱えたのは、肉体強化の呪文。
この青年、剣の腕だけでなく。魔法も使えるらしい。
青く光る魔法陣が、地面ごと彼を押し上げた。
「これでトドメだ」
ヒラリと飛んだ先。
一瞬の煌めきと共に、鋭利な刃先がくい込んだ――ドラゴンの喉笛。
『ゥ゙オ゙ォア゙ァ゙ァァァァァッ!!!』
転げ回る巨体を器用に操り、眉間の角を掴む。
そして。
「っ!」
壮絶な光景に息をのむ娘の前で、醜悪なドラゴンの首を見事に掻っ切ってみせたのだ。
「討伐、完了」
青年は満足げに笑う。
その金色の髪の先にも、わずかほどの返り血を浴びることなく。
――この青年こそルイト・カントール。
我が地方で。いや、大国にその名をとどろかせる最強の冒険者であった。
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