転生して性奴隷♂魔王の息子と暴れてきます(仮)

田中 乃那加

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26.女性賛美の僕でも女にはなりたくない

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 冷たい孤独の地下室で、熱く疼く身体を持て余しながら。僕はひたすら考えていた。
 自身の事、この状況からの脱却を。

 結論として、単独の脱出は不可能。そして無傷での解決も望めないと分かった。
 だってここは大国カルディアの城内で、軍人がわんさかいるのだ。この包囲網に対し、今の僕は……ほぼ裸の武器もなし。どーやって対処しろという話だ。無理ゲーに次ぐ無理ゲー。なんならクソゲーだよ、こんなの!

「あ゙ーっ、クソッ。なんでこうなるんだ!」

 手まで縛られているから、頭抱えることすら出来ない。おまけに、無理矢理飲まされた媚薬の効果たるや……こりゃAVやエロ漫画をバカに出来ないぞ。本気で茹だりそうだ、頭が。

 だいたい、僕の人生ってハード過ぎやしないか?
 突然人間じゃないとか。不遇な境遇超えて、もはや奇跡的だよ。前世の死に際でも思ったけど。
 あれは忘れもしない。
 薄れゆく意識の中、僕を刺殺した彼女達(5人が一人一刺しずつしたんだぞ! 痛かった……)が妙に晴々とした顔で肩を組んで犯行現場から去って行く姿。

 ……いや、何この『皆で大プロジェクトやり遂げました』みたいな感じ。一昔前の某国営放送がやってたドキュメンタリー番組、それみたいになってたぞ。
 拍子抜けしたと共に、猛烈に笑えてきて。同時に感動もしたんだ。
『女って強いなぁ』なんて。その時から、僕には女性に対する尊敬が強くある。母親もそうだし、生きとし生けるものの中で『雌』というのは素晴らしいとすら思うようになった。

 殺されたのに、妙な奴だと自覚がないわけじゃない。でも、事実僕が悪いからな。7股はさすがにやり過ぎた……それに、一夜限りは星の数だったし。
 それが今世でこうなるとは。なんだ、罰か。それとも単なる嫌がらせか。
 僕は神に嫉妬でもされたのかもしれん。

 ―――なんて、取り留めなく考えていた時。

「ん゙んっ?」

 なんか、突然気が付いた。何をって言われても、あまりよく表現しないのだが。感触というかというか……。

「な、なんか、おか、しい……い゙ぃ゙!?」

 自身の唯一自由になる部位、首を下に向けた瞬間。僕は驚愕の声を漏らした。

「こ、これ、えっ、え? えぇっ? 」

 人間驚きすぎると『え』しか言えないのかもしれない。それくらい、吃驚したんだ。
 まず見下ろして目に入った、双丘。この部分、通常なら平っべたくてなんの面白みも壮観さもない、胸なんだよ。
 つまり……僕の胸にたわわに実った柔らかな果実。早くいえば『オッパイ』があった訳だ。

 雄っぱいじゃないぞ、オッパイだ。
 そして、心無しか体全体が若干の丸みを帯びている気がする。
 更に言うなら……下が。そりゃ服きてないから、スースーするけどさ。
 そういうのじゃなくて、
 
「ぼ、僕のっ、チ●コが、な、ない!?」

 必死で堪えたが、思わず驚愕は言葉になって溢れる。
 そして状況を総合すると。

 ―――僕は女の身体になっちまったらしい。

「は、は、はぁ? なんなんだよ……ま、魔法? 呪い? えっ?」

 異世界怖い。めっちゃ怖い。本気でビビったよ。叶うならこの時ほど前世に返りたいと思った事はなかった。
 一瞬にして性転換しちまったんだもの。簡単に受け入れる奴なんていないだろ。
 それでも数分、必死にグルグルと考えた。

 そしていくつかの結論を出したんだ。
 まず1つ、魔法か呪い。、なんの為に掛けたのかはこの際不問。
 2つ、薬の効果? 媚薬で火照った身体が何らかの変異を起こしたのか。
 
 ……そして3つ目。結論から言うとこれが正解だったのだが。
 僕が『半神』だから。
 マデウスが言っていた。半神のある意味反則でチート的な能力の一つ。
『自由自在な変身能力』だ。

 ―――そういえば昔、(と言っても前世で)付き合った事のある女の子で。ギリシャ神話とかそっちが好きな子がいてさ。僕も口説くついでに色々聞いた事がある。
 例えば『ゼウス』っていう神様。
 手っ取り早く言えば、ギリシャ神話界における、全知全能のスーパースター的な存在。怖い嫁さんがいるにも関わらず色んな女と浮気しまくり、隠蔽工作もする。
 ……なんとも、親近感が湧くキャラクターじゃないか。

 でも重要なのは、ゼウスは色んな存在に姿を変えて浮気してたこと。
 白い牛や白鳥、果てはなんてモノになって、隠し子を作り続けた。
 まぁあくまで神話だし当時は『えらく盛ったなぁ』なんて、笑い転げたんだが。

「まさか、僕のコレも……?」
 
 女性という存在について考えてたら、変身してたってことなんだろうか。

 ……でも、このままじゃマズい!
 何がまずいって、この姿じゃ。そうなると、色々とヤバいんじゃあないだろうか。
 第一、僕は男。女みたく、組み伏せられてたまるかって思ってる。
 だから身体も女になりたくないんだ。
 前世に引き続き、男として種を撒く側でいたいってこと!

「てか、これどうやって戻すんだ!?」

 いつ奴らが戻ってくるか分からない。焦る中で、懸命に考えた。
  ……自由自在って言ってたよな?
 そうだ。マデウスは確かにそう言ってた。だったら戻る時も。

「男、男、僕は男に戻りたい……戻り……」

 ふと考える。
 もし、僕が女なら。エトと結婚するのも、もっと上手くいっただろうか。『嫁』なんて呼ばれても、むしろ喜んで……ってダメだァァァッ!!
 余計な事を考えちまう! てか、嬉しくないからっ、あんな筋肉バカのアホ童貞の嫁なんて……嫁、なんて。

「こ、子供は、何人くらいが良いかなぁ」

 ……バカバカバカバカッ、僕のバカヤローッ! 
 思考まで女の子になっちまうの!? 僕は男だかから! あんなバカの子供なんて。

「最初はまず女の子、かな。アイツに似るから」

 だからっ、違うってぇぇぇぇッ!!!
  
 ―――そんな感じで、男に戻るまで何度も精神的疲弊を繰り返した。
 ある種、己との戦いに息を切らせた僕。
 散々な目にあったが、それなりに収穫はあったのも確かだ。

「お。出来た」

 男に戻った僕は、自身の指の1本を鋭い刃物に変身させる。
 そう。この自由自在な変身能力で、身体の一部を変える事が出来ると分かったのだ。
 これは、大きな武器を手に入れたと思って良いだろう。
 しかし僕は敢えてそれは使って脱出する事はしなかった。 

 それより効果的な使い方……という魂胆だったから。
 友人や身内を人質に、散々理不尽な要求を飲まされてきたツケを払わせたい。
 バカにされると根に持つタイプだからな、僕は。


■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□

「これが貴方の切り札ってわけですか」

 ミイラ男と化した国王陛下に突きつけた、片手。
 ……白々と輝く刃物が手首からニョキッと生えてる、なんともマヌケなんだかそうじゃないんだか分からない見た目だけど。

「さすがに王様を人質にしたら、ナメた口叩けないだろ」

 さらに頭に血が昇っちまったから、必要以上に大事になったらしい。
 ベッド周りは、瞬く間に屈強な男たちに囲まれていた。

「国王陛下と、その愛人のベッドに集まるとは……少し覗き趣味が過ぎるんじゃないのぉ?」

 嫌味100%込めて鼻でせせら笑う。すると逆に冷ややかな目で見てきたのはアルゲオだった。

「ふん。さっきまでイヤイヤと、女みたいに泣いてた人が。何ナマイキ言ってんですかねぇ」
「お、女みたいって言うな!」

 確かにちょーっと泣いたけど! これはさっきの女体化の名残り? っていうか、あのバカエトのせいっていうか……。

「まぁ衆人環視の前で、ハメ倒して欲しいってオネダリですよね?」
「ハメ……っ!? ンなわけないだろッ。くそっ、この最低ドS変態野郎。国王陛下がどうなってもいいのか!」

 て言うか刃物突きつけられているのに、相変わらずこの布でグルグル巻きの王様は、股間はフル勃起でハァハァしている。
 何コイツ、逆に怖いんだけど!?

「陛下を離せ!」

 兵士たちが叫ぶ。
 でも離せと言われて離すほど、こちとらお人好しじゃないぞ。
 それにこれが国王陛下だと、未だ彼らも信用仕切れてないらしい。チラチラと上官であるアルゲオの方に視線を送っている。

「……騒々しい。何事ですか」

 凛と響く、一声。
 兵士たちはざわつき、そして割れる。まるでモーゼの十戒のように。
 そこを白銀の髪を優雅に靡かせ、人間界の国の女王でありながら美しいエルフ女性が通った。

「あぁ女王陛下、いらっしゃいましたか」
「アルゲオ。これはどういうこと? 貴方がついていながら」

 凍てつくような瞳で、彼女は僕と彼を睨みつける。
 しかし彼は赤毛を掻き上げ、悪びれる素振りひとつなく言ってのけた。

「まぁる不可抗力ってヤツですねぇ。なんせこの方、半神ですし。さすがとしか、ね」
「この……雌猫が」

 女王らしからぬ、舌打ち混じりの呟きに僕の肝が冷える。
 さっきの優美さとか、そんなものは幻だったのか。殺気しか感じられなくて、ここの屈強な男共より怖いんだけど……それとも、僕はちょっと敵に回しちゃいけない女性ひとを敵に回しちゃったか?
 ……いやいや。でもそんな事をいってられない。まずは、ここから出なければならないのだから。

「国王陛下の命が欲しければ、僕と取引しろ」

 出来るだけアルゲオの方を真っ直ぐに見て、脅迫の言葉を吐く。
 表情を無くした彼は、チラリと彼女を伺った後に『言ってみて下さい』とため息混じりで答えた。

「そうだな。まずはこの兵士達ギャラリーを何とかしてもらおう。ここには4人だけ、僕と君と女性陛下。そして……国王陛下だ」

 ビクリ、と腕に抱いたミイラ男の身体が震えた―――。
 
 


 


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