24 / 29
24.変態しかいないの、この世界(R18)
しおりを挟む
「あ゙、ぁっ、は、ぁぅ」
冷たい地下室は石造りだ。なのに身体は火照り、まるで地獄の業火に焼かれるみたい。
「辛いですか? もう少し頑張りましょうねぇ」
男が、アルゲオが楽しそうに言う。
僕はガチガチと歯を合わせながら、身悶え狂ってしまいそうな精神を必死で繋ぎ合わせる。
―――魔城から、犬のように引き摺り出されてその意識を手放す。
そして気が付けば、この地下室。全裸で隠す物のない身体を、縛り上げられていた。
「ぅあ゙ぁっ、あっ、くぅ」
「ほらほら。もっと気持ち良くなりたいでしょう?」
「い、いや、だぁ……も、もう……んひぃぃぃっ」
僕の身体は今、ベタベタに されて性器や乳首を執拗に嬲られている。
三人ほどの男が、僕の身体に群がって愛撫。それを椅子に座ったあの男が、眺めているのだ。
「乳首も、気持ちいいですか? こんなに腰を揺らして。淫乱だな」
「ひ、っう……う、うる、さ……ぃっ」
薬のせいだ。取引で飲まされた小瓶の中身。あれは媚薬なんだろう。地下室で目覚めた時には、既に熱に浮かされた状態だったから。
……首筋を這う舌。ゾクリ、と悪寒にも似た感覚が襲う。同時に弄られた性器への刺激。更には乳首もしつこくこねくり回されて、まるで快感を紐付けされたような気分だ。
女みたいに、上擦った声が止まらない。
「っあ、も、もぅ……っはァ……あっあっあっ……」
「イかせるな」
「んひぃッ!? な、なんで……ぇぇ……」
冷たい声と共に、与えられていた快感が一斉に止まる。渇望感と切なさに、歯噛みしながら僕は浅ましくも声を上げた。
「ふふっ、堪え性のない雌豚じゃないんですから。我慢しましょうよ……壊れるまで」
「こ、壊れ……や、やだっ、離せ、離せぇ……んぉっ、ああっ」
再び与えられる刺激と快楽。
唯一自由になる頭を振って、必死で逃れようとするが。
……だめだ、気持ち良すぎる。抗えない。でも再び達しそうなのを見計らって、今度は根元をキツく締め上げられた。
「あ゙、あっ、や、やめ、ろっ、い゙ぃ、たァ」
痛みすら感じるほど。死ぬほど気持ちいいし、射精したいのに。出口のない快感が身体を苛む。
助けて、と乞うのも躊躇われたのは最後の足掻きだ。
……こんなクソ変態野郎達に、良いようにされてたまるかよ。
惚けそうな頭に叱咤する。息を詰めて、唇を噛み締めて赤毛の馬鹿野郎を睨みつけた。
「ほぅ、まだこんな顔が出来るとは。ますます気に入りましたよ」
猫のような目を爛々と光らせ、アルゲオは歩み寄る。そして。
「ヒィッ!?」
べろり、と頬を舐めたのだ。
ザラザラとしたその舌は、正しく猫のようで。うっかり悲鳴を上げた僕を、笑みを深めて見下ろしていた。
「くっ、変態め……っあ゙ァ!?」
不意に思いもよらない箇所に、小さな違和感。愛撫していた男の指が尻に伸びたのだ。
「っ、ま、まさか……や、やめろっ、死ねッ、このクソ野郎ぉぉッ!!」
くすぐるように、窄まり……早くいえば尻穴をなぞられる。
まずい。ソコだけは、やだ。女にも触らせた事のない場所なのに。必死で抵抗しようにも、媚薬と他の刺激で頭が回らない。
「おやおや、情けを無にするものじゃありませんよ。せっかく解してやろうと言うのに。それとも、無理矢理突っ込まれるのがお好きですか? 案外ドMなんですねぇ」
「つ、突っ込むって……」
「ハァ? カマトトぶって。あの耄碌じ……失礼、国王陛下の祖チンをソコに挿入してぶち犯……」
「ひぃぃぃっ、言うなァァァッ!!」
……聞いただけで耳が腐る!
それにコイツ、さらっと国王陛下のことディスったよな。耄碌ジジイとか祖チンとか。
叫んだ僕に、このゲス顔した変態は嬉しそうに頷く。
「怖いですか? ですよね。あぁ、貴方はなんて虐めがいのある表情をするんでしょう! 素敵です。出来れば、私は最初の相手になりたかった」
「ぐっ、僕は、御免だ! この変態め」
「人類みな変態ですよ。あ、貴方は『半神』なんですよね。天使でないから、両性具有ではないんですねぇ。もっと広げてご覧なさい」
「っあ、や、やめぇっ……くそぉっ、っおぁ」
ガチガチになった陰嚢を揉み込まれ、更には先っぽをほじるように刺激される。目の前に憎しむべき相手がいるのに、みっともなく喘いでしまう。
「フェラは経験あるでしょう。……ほら、して差し上げろ」
笑いを含んだ声で命じられた男が、陰茎を咥え込んだ。途端、覚えのある快感に腰が抜けそうになる。それでも塞き止められて、どうしようもない。
「ふぁっ、はぁっ、ふぅっ、んんぁぁっ」
っ、なんで、こんな奴らに……。
そう言えば、以前エトにもこんな事されたっけ。拙いけど、すごくドキドキして気持ち良くて。でも恥ずかしくて。何故か、殺したいほどは嫌じゃなかった。
後で金蹴りしてやったけど。だってすごくムカついたから、キスもまだなのにそんな事……って。
「考え事出来るとは、余裕ですか」
「ヒギィッ!?」
突然強く乳首を抓られて、悲鳴をあげる。
「ここも、ピアス空けてあげましょうね。知ってます? 男でも、母乳出るようになるらしいですよ。やってみましょうか」
「や、やだッ、そんなっ。ゔッ、やめ……」
僕は女じゃない。それに、たとえ女が相手でも変態趣味は御免こうむる。そう言いたいのに……。
尻穴に入り込もうとする指に、動かぬ身を捩った瞬間。
「ギャァ゙ァ゙ッ!?」
絶叫。群がっていた男のうちの一人だ。
全身を激しく痙攣させて、バタリと倒れこむ。
「チッ……魔王め」
アルゲオは忌々しげに舌打ちすると、倒れて気絶した男を蹴りつけた。他の男たちも、息をのんで手を止める。
「貴方を犯す者は、例外なくこうなるみたいですねぇ」
不機嫌そうにも、面白そうにも思える表情と口調。二人の男たちを鋭利な視線のみで退かせると、彼を僕の顎を掴んだ。
「おおよそ『お姫様からのキスと愛の言葉で、呪いはとける』って寸法でしょう……陳腐な真似をしやがる」
あぁ、そうか。レミエルの呪いか。誰ともセックスできなくなる、魔法。
一角獣が気絶したのも、あれは僕の尻にデカブツをぶち込もうとしたから。さっきも指であろうと、挿入しようとしたからか。
これは命拾いと言うべきか。
「ルベル、貴方とまた取引してあげましょう」
「だれが、お前なんかとッ!」
「まぁまぁ。話は最後までま聞くものですよ……おい、連れてこい。2人とも」
アルゲオが、よく通る声で入口にいる兵士たちに命じた。
そして1分もしないうちに、数人の兵士達に引きずって来られたのは男2人。
「兄さん!」
オリエス・カントール、僕の兄だった。そしてその後ろにいるのは、マデウスだろう。
2人とも、ぐったりとしている。辛うじて意識があるのはマデウスで、兄貴の方は息も絶え絶えといった具合だ。
「貴方の兄上様で、少しばかり遊び過ぎましてね。まぁ命に別状はありませんよ」
「っぐ、き、貴様……」
嘲るように言ったアルゲオに、マデウスが憎悪の目を向ける。そう言えば、彼には恋人がいたって言ってたな。そして、その恋人は。
「貴方達、兄弟で魔王の息子達に絆されるなんて……趣味が合うんですねぇ」
赤毛を掻き上げ、彼は尚も言葉を続ける。
「マデウスも、恋人である貴方の兄上様と父親のジャン・カントールを人質にされては、手も足も出なかったようですねぇ。アハハハッ、なんとも愉快だ」
なんて野郎だ。兄貴も父も、人間界で捕らえられていたのか。しかも、カルディア国の軍に!
「さて、ここで取引ですよ。ルベル」
「ぅぐッ」
掴まれた顎を、強引に上げられ覗き込まれる。
その瞳は、深く陰鬱な赤。赤毛に良く似合う、色だ。
「彼らを助けたいですか?」
「……」
「ならば、今度は心から忠誠を誓いなさい。国王陛下を受け入れ、貴方から愛の言葉と口付けを。そうすれば、彼らは解放してあげましょう。ね? いい話じゃないですか」
「こ、このゲス野郎」
したくない、したい訳が無い。70も超えたジジイに、愛の言葉だと? しかも自分からキスをして、掘られろと!
そして挙句の果てには、用が済んだらこのイカれた変態野郎に玩具にされるなんて……こんな人生聞いてないぞッ!?
前世より酷いじゃないか。これなら、7股して5人に刺殺されてた方がマシだった!
苛立つ僕に答えを急かしたいのか、彼は残酷な言葉を注いでいく。
「オリエスは、非常に……飲み込みの早い子でしたよ。あっという間に、卑しい雌犬のように私のここを咥えこんでね。もう少し調教して、それから兵士達の慰み者にしても良いですねぇ……または、精奴隷として売りにだしてしまいましょうか」
「貴様ァァァっ!」
マデウスが絶叫した。それほ手負いの獣の咆哮の如く。
すぐ様、兵士達に殴り付けられて昏倒する。
「マデウスさん!」
「人の心配より、御自分の事ですよ。ほら、どうしますか? とは言っても、貴方には選択肢はありませんけどね」
そう言って高笑いする男を、僕は呆然と見ていた。
どうやったって地獄だ。これをどうしろって言うんだ……神様ってのが居たら、真っ先にバックブリーカーかましてやる。それか右ストレートでKOだ。クソッタレめ。
「る、ルベル……?」
「兄さん!」
弱々しい声に、視線だけ向けた。
すると兄貴が、薄く目を開けてこちらを見ている。
目に涙が溜まり、あっという間に流れ落ちた。
「ルベル、ごめ、ん……ね」
「兄さんっ、しっかりしろ!」
無数の痣と傷、身体に張り巡らされた縄の痕。相当酷い事をされたのだろう。その目に、深く刻まれた恐怖と絶望。
―――僕は、唇を強く噛んだ。
「愛の言葉とキスだな、お易い御用だ。クソッタレめっ」
「!?」
嫌味ったらしいその顔に、唾を吐く。
兵士はざわめいたが、当の本人はニヤリと大きく笑って言った。
「なんて素敵な人なんだ、貴方は! 人生で初めての恋をしてしまいそうですよ」
「ふんッ、すげなくフッてやる。君みたいな男、大嫌いだからな」
うっとりとした顔しやがって。あの男とはえらい違いだ。
……アイツ、大丈夫だろうか。ちゃんと、手当受けられているかな。
ダメだ、あのアホの事考えてたら決意が鈍る。
「ふふ、楽しみだなぁ」
そう呟いて、アルゲオは兄貴達を連れた兵士と部屋を出て行った。
冷たく、狭い部屋に残されたのは僕だけ。
「くそっ」
そう独りごちる。
……縛られていなかったら、中指のひとつでも立ててやったのに。いや、まずそれこそ右ストレートでKOしてやる!
僕は、絶望なんかしない。這い上がってやる。このクソッタレの変態のチ●ポコ、噛み付いて引きちぎってやるッ!!
そう心に決めながら、先程の兄貴の涙を忘れようと首を振った。
冷たい地下室は石造りだ。なのに身体は火照り、まるで地獄の業火に焼かれるみたい。
「辛いですか? もう少し頑張りましょうねぇ」
男が、アルゲオが楽しそうに言う。
僕はガチガチと歯を合わせながら、身悶え狂ってしまいそうな精神を必死で繋ぎ合わせる。
―――魔城から、犬のように引き摺り出されてその意識を手放す。
そして気が付けば、この地下室。全裸で隠す物のない身体を、縛り上げられていた。
「ぅあ゙ぁっ、あっ、くぅ」
「ほらほら。もっと気持ち良くなりたいでしょう?」
「い、いや、だぁ……も、もう……んひぃぃぃっ」
僕の身体は今、ベタベタに されて性器や乳首を執拗に嬲られている。
三人ほどの男が、僕の身体に群がって愛撫。それを椅子に座ったあの男が、眺めているのだ。
「乳首も、気持ちいいですか? こんなに腰を揺らして。淫乱だな」
「ひ、っう……う、うる、さ……ぃっ」
薬のせいだ。取引で飲まされた小瓶の中身。あれは媚薬なんだろう。地下室で目覚めた時には、既に熱に浮かされた状態だったから。
……首筋を這う舌。ゾクリ、と悪寒にも似た感覚が襲う。同時に弄られた性器への刺激。更には乳首もしつこくこねくり回されて、まるで快感を紐付けされたような気分だ。
女みたいに、上擦った声が止まらない。
「っあ、も、もぅ……っはァ……あっあっあっ……」
「イかせるな」
「んひぃッ!? な、なんで……ぇぇ……」
冷たい声と共に、与えられていた快感が一斉に止まる。渇望感と切なさに、歯噛みしながら僕は浅ましくも声を上げた。
「ふふっ、堪え性のない雌豚じゃないんですから。我慢しましょうよ……壊れるまで」
「こ、壊れ……や、やだっ、離せ、離せぇ……んぉっ、ああっ」
再び与えられる刺激と快楽。
唯一自由になる頭を振って、必死で逃れようとするが。
……だめだ、気持ち良すぎる。抗えない。でも再び達しそうなのを見計らって、今度は根元をキツく締め上げられた。
「あ゙、あっ、や、やめ、ろっ、い゙ぃ、たァ」
痛みすら感じるほど。死ぬほど気持ちいいし、射精したいのに。出口のない快感が身体を苛む。
助けて、と乞うのも躊躇われたのは最後の足掻きだ。
……こんなクソ変態野郎達に、良いようにされてたまるかよ。
惚けそうな頭に叱咤する。息を詰めて、唇を噛み締めて赤毛の馬鹿野郎を睨みつけた。
「ほぅ、まだこんな顔が出来るとは。ますます気に入りましたよ」
猫のような目を爛々と光らせ、アルゲオは歩み寄る。そして。
「ヒィッ!?」
べろり、と頬を舐めたのだ。
ザラザラとしたその舌は、正しく猫のようで。うっかり悲鳴を上げた僕を、笑みを深めて見下ろしていた。
「くっ、変態め……っあ゙ァ!?」
不意に思いもよらない箇所に、小さな違和感。愛撫していた男の指が尻に伸びたのだ。
「っ、ま、まさか……や、やめろっ、死ねッ、このクソ野郎ぉぉッ!!」
くすぐるように、窄まり……早くいえば尻穴をなぞられる。
まずい。ソコだけは、やだ。女にも触らせた事のない場所なのに。必死で抵抗しようにも、媚薬と他の刺激で頭が回らない。
「おやおや、情けを無にするものじゃありませんよ。せっかく解してやろうと言うのに。それとも、無理矢理突っ込まれるのがお好きですか? 案外ドMなんですねぇ」
「つ、突っ込むって……」
「ハァ? カマトトぶって。あの耄碌じ……失礼、国王陛下の祖チンをソコに挿入してぶち犯……」
「ひぃぃぃっ、言うなァァァッ!!」
……聞いただけで耳が腐る!
それにコイツ、さらっと国王陛下のことディスったよな。耄碌ジジイとか祖チンとか。
叫んだ僕に、このゲス顔した変態は嬉しそうに頷く。
「怖いですか? ですよね。あぁ、貴方はなんて虐めがいのある表情をするんでしょう! 素敵です。出来れば、私は最初の相手になりたかった」
「ぐっ、僕は、御免だ! この変態め」
「人類みな変態ですよ。あ、貴方は『半神』なんですよね。天使でないから、両性具有ではないんですねぇ。もっと広げてご覧なさい」
「っあ、や、やめぇっ……くそぉっ、っおぁ」
ガチガチになった陰嚢を揉み込まれ、更には先っぽをほじるように刺激される。目の前に憎しむべき相手がいるのに、みっともなく喘いでしまう。
「フェラは経験あるでしょう。……ほら、して差し上げろ」
笑いを含んだ声で命じられた男が、陰茎を咥え込んだ。途端、覚えのある快感に腰が抜けそうになる。それでも塞き止められて、どうしようもない。
「ふぁっ、はぁっ、ふぅっ、んんぁぁっ」
っ、なんで、こんな奴らに……。
そう言えば、以前エトにもこんな事されたっけ。拙いけど、すごくドキドキして気持ち良くて。でも恥ずかしくて。何故か、殺したいほどは嫌じゃなかった。
後で金蹴りしてやったけど。だってすごくムカついたから、キスもまだなのにそんな事……って。
「考え事出来るとは、余裕ですか」
「ヒギィッ!?」
突然強く乳首を抓られて、悲鳴をあげる。
「ここも、ピアス空けてあげましょうね。知ってます? 男でも、母乳出るようになるらしいですよ。やってみましょうか」
「や、やだッ、そんなっ。ゔッ、やめ……」
僕は女じゃない。それに、たとえ女が相手でも変態趣味は御免こうむる。そう言いたいのに……。
尻穴に入り込もうとする指に、動かぬ身を捩った瞬間。
「ギャァ゙ァ゙ッ!?」
絶叫。群がっていた男のうちの一人だ。
全身を激しく痙攣させて、バタリと倒れこむ。
「チッ……魔王め」
アルゲオは忌々しげに舌打ちすると、倒れて気絶した男を蹴りつけた。他の男たちも、息をのんで手を止める。
「貴方を犯す者は、例外なくこうなるみたいですねぇ」
不機嫌そうにも、面白そうにも思える表情と口調。二人の男たちを鋭利な視線のみで退かせると、彼を僕の顎を掴んだ。
「おおよそ『お姫様からのキスと愛の言葉で、呪いはとける』って寸法でしょう……陳腐な真似をしやがる」
あぁ、そうか。レミエルの呪いか。誰ともセックスできなくなる、魔法。
一角獣が気絶したのも、あれは僕の尻にデカブツをぶち込もうとしたから。さっきも指であろうと、挿入しようとしたからか。
これは命拾いと言うべきか。
「ルベル、貴方とまた取引してあげましょう」
「だれが、お前なんかとッ!」
「まぁまぁ。話は最後までま聞くものですよ……おい、連れてこい。2人とも」
アルゲオが、よく通る声で入口にいる兵士たちに命じた。
そして1分もしないうちに、数人の兵士達に引きずって来られたのは男2人。
「兄さん!」
オリエス・カントール、僕の兄だった。そしてその後ろにいるのは、マデウスだろう。
2人とも、ぐったりとしている。辛うじて意識があるのはマデウスで、兄貴の方は息も絶え絶えといった具合だ。
「貴方の兄上様で、少しばかり遊び過ぎましてね。まぁ命に別状はありませんよ」
「っぐ、き、貴様……」
嘲るように言ったアルゲオに、マデウスが憎悪の目を向ける。そう言えば、彼には恋人がいたって言ってたな。そして、その恋人は。
「貴方達、兄弟で魔王の息子達に絆されるなんて……趣味が合うんですねぇ」
赤毛を掻き上げ、彼は尚も言葉を続ける。
「マデウスも、恋人である貴方の兄上様と父親のジャン・カントールを人質にされては、手も足も出なかったようですねぇ。アハハハッ、なんとも愉快だ」
なんて野郎だ。兄貴も父も、人間界で捕らえられていたのか。しかも、カルディア国の軍に!
「さて、ここで取引ですよ。ルベル」
「ぅぐッ」
掴まれた顎を、強引に上げられ覗き込まれる。
その瞳は、深く陰鬱な赤。赤毛に良く似合う、色だ。
「彼らを助けたいですか?」
「……」
「ならば、今度は心から忠誠を誓いなさい。国王陛下を受け入れ、貴方から愛の言葉と口付けを。そうすれば、彼らは解放してあげましょう。ね? いい話じゃないですか」
「こ、このゲス野郎」
したくない、したい訳が無い。70も超えたジジイに、愛の言葉だと? しかも自分からキスをして、掘られろと!
そして挙句の果てには、用が済んだらこのイカれた変態野郎に玩具にされるなんて……こんな人生聞いてないぞッ!?
前世より酷いじゃないか。これなら、7股して5人に刺殺されてた方がマシだった!
苛立つ僕に答えを急かしたいのか、彼は残酷な言葉を注いでいく。
「オリエスは、非常に……飲み込みの早い子でしたよ。あっという間に、卑しい雌犬のように私のここを咥えこんでね。もう少し調教して、それから兵士達の慰み者にしても良いですねぇ……または、精奴隷として売りにだしてしまいましょうか」
「貴様ァァァっ!」
マデウスが絶叫した。それほ手負いの獣の咆哮の如く。
すぐ様、兵士達に殴り付けられて昏倒する。
「マデウスさん!」
「人の心配より、御自分の事ですよ。ほら、どうしますか? とは言っても、貴方には選択肢はありませんけどね」
そう言って高笑いする男を、僕は呆然と見ていた。
どうやったって地獄だ。これをどうしろって言うんだ……神様ってのが居たら、真っ先にバックブリーカーかましてやる。それか右ストレートでKOだ。クソッタレめ。
「る、ルベル……?」
「兄さん!」
弱々しい声に、視線だけ向けた。
すると兄貴が、薄く目を開けてこちらを見ている。
目に涙が溜まり、あっという間に流れ落ちた。
「ルベル、ごめ、ん……ね」
「兄さんっ、しっかりしろ!」
無数の痣と傷、身体に張り巡らされた縄の痕。相当酷い事をされたのだろう。その目に、深く刻まれた恐怖と絶望。
―――僕は、唇を強く噛んだ。
「愛の言葉とキスだな、お易い御用だ。クソッタレめっ」
「!?」
嫌味ったらしいその顔に、唾を吐く。
兵士はざわめいたが、当の本人はニヤリと大きく笑って言った。
「なんて素敵な人なんだ、貴方は! 人生で初めての恋をしてしまいそうですよ」
「ふんッ、すげなくフッてやる。君みたいな男、大嫌いだからな」
うっとりとした顔しやがって。あの男とはえらい違いだ。
……アイツ、大丈夫だろうか。ちゃんと、手当受けられているかな。
ダメだ、あのアホの事考えてたら決意が鈍る。
「ふふ、楽しみだなぁ」
そう呟いて、アルゲオは兄貴達を連れた兵士と部屋を出て行った。
冷たく、狭い部屋に残されたのは僕だけ。
「くそっ」
そう独りごちる。
……縛られていなかったら、中指のひとつでも立ててやったのに。いや、まずそれこそ右ストレートでKOしてやる!
僕は、絶望なんかしない。這い上がってやる。このクソッタレの変態のチ●ポコ、噛み付いて引きちぎってやるッ!!
そう心に決めながら、先程の兄貴の涙を忘れようと首を振った。
0
お気に入りに追加
242
あなたにおすすめの小説
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
泣いた邪神が問いかけた
小雨路 あんづ
BL
街に根づく都市伝説を消す、それが御縁一族の使命だ。
十年の月日を経て再び街へと戻ってきたアイルは、怪異に追いかけられ朽ちかけた祠の封印を解いてしまう。
そこから現れたのはーー。
だからその声で抱きしめて〖完結〗
華周夏
BL
音大にて、朱鷺(トキ)は知らない男性と憧れの美人ピアノ講師の情事を目撃してしまい、その男に口止めされるが朱鷺の記憶からはその一連の事は抜け落ちる。朱鷺は強いストレスがかかると、その記憶だけを部分的に失ってしまう解離に近い性質をもっていた。そしてある日、教会で歌っているとき、その男と知らずに再会する。それぞれの過去の傷と闇、記憶が絡まった心の傷が絡みあうラブストーリー。
《深谷朱鷺》コンプレックスだらけの音大生。声楽を専攻している。珍しいカウンターテナーの歌声を持つ。巻くほどの自分の癖っ毛が嫌い。瞳は茶色で大きい。
《瀬川雅之》女たらしと、親友の鷹に言われる。眼鏡の黒髪イケメン。常に2、3人の人をキープ。新進気鋭の人気ピアニスト。鷹とは家がお隣さん。鷹と共に音楽一家。父は国際的ピアニスト。母は父の無名時代のパトロンの娘。
《芦崎鷹》瀬川の親友。幼い頃から天才バイオリニストとして有名指揮者の父と演奏旅行にまわる。朱鷺と知り合い、弟のように可愛がる。母は声楽家。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる