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24.変態しかいないの、この世界(R18)

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「あ゙、ぁっ、は、ぁぅ」

 冷たい地下室は石造りだ。なのに身体は火照り、まるで地獄の業火に焼かれるみたい。

「辛いですか? もう少し頑張りましょうねぇ」

 男が、アルゲオが楽しそうに言う。
 僕はガチガチと歯を合わせながら、身悶え狂ってしまいそうな精神を必死で繋ぎ合わせる。

 ―――魔城から、犬のように引き摺り出されてその意識を手放す。
 そして気が付けば、この地下室。全裸で隠す物のない身体を、縛り上げられていた。

「ぅあ゙ぁっ、あっ、くぅ」
「ほらほら。もっと気持ち良くなりたいでしょう?」
「い、いや、だぁ……も、もう……んひぃぃぃっ」

 僕の身体は今、ベタベタに されて性器や乳首を執拗に嬲られている。
 三人ほどの男が、僕の身体に群がって愛撫。それを椅子に座ったあの男が、眺めているのだ。

「乳首も、気持ちいいですか? こんなに腰を揺らして。淫乱だな」
「ひ、っう……う、うる、さ……ぃっ」

 薬のせいだ。で飲まされた小瓶の中身。あれは媚薬なんだろう。地下室で目覚めた時には、既に熱に浮かされた状態だったから。

 ……首筋を這う舌。ゾクリ、と悪寒にも似た感覚が襲う。同時に弄られた性器への刺激。更には乳首もしつこくこねくり回されて、まるで快感を紐付けされたような気分だ。
 女みたいに、上擦った声が止まらない。

「っあ、も、もぅ……っはァ……あっあっあっ……」
「イかせるな」
「んひぃッ!? な、なんで……ぇぇ……」

 冷たい声と共に、与えられていた快感が一斉に止まる。渇望感と切なさに、歯噛みしながら僕は浅ましくも声を上げた。

「ふふっ、堪え性のない雌豚じゃないんですから。我慢しましょうよ……壊れるまで」
「こ、壊れ……や、やだっ、離せ、離せぇ……んぉっ、ああっ」

 再び与えられる刺激と快楽。
 唯一自由になる頭を振って、必死で逃れようとするが。
 ……だめだ、気持ち良すぎる。抗えない。でも再び達しそうなのを見計らって、今度は根元をキツく締め上げられた。

「あ゙、あっ、や、やめ、ろっ、い゙ぃ、たァ」

 痛みすら感じるほど。死ぬほど気持ちいいし、射精したいのに。出口のない快感が身体を苛む。
 助けて、と乞うのも躊躇われたのは最後の足掻きだ。
 ……こんなクソ変態野郎達に、良いようにされてたまるかよ。
 惚けそうな頭に叱咤する。息を詰めて、唇を噛み締めて赤毛の馬鹿野郎を睨みつけた。

「ほぅ、まだこんな顔が出来るとは。ますます気に入りましたよ」

 猫のような目を爛々と光らせ、アルゲオは歩み寄る。そして。

「ヒィッ!?」

 べろり、と頬を舐めたのだ。
 ザラザラとしたその舌は、正しく猫のようで。うっかり悲鳴を上げた僕を、笑みを深めて見下ろしていた。

「くっ、変態め……っあ゙ァ!?」

 不意に思いもよらない箇所に、小さな違和感。愛撫していた男の指が尻に伸びたのだ。
 
「っ、ま、まさか……や、やめろっ、死ねッ、このクソ野郎ぉぉッ!!」

 くすぐるように、窄まり……早くいえば尻穴をなぞられる。
 まずい。ソコだけは、やだ。女にも触らせた事のない場所なのに。必死で抵抗しようにも、媚薬と他の刺激で頭が回らない。
 
「おやおや、情けを無にするものじゃありませんよ。せっかく解してやろうと言うのに。それとも、無理矢理突っ込まれるのがお好きですか? 案外ドMなんですねぇ」
「つ、突っ込むって……」
「ハァ? カマトトぶって。あの耄碌もうろくじ……失礼、国王陛下の祖チンをソコに挿入してぶち犯……」
「ひぃぃぃっ、言うなァァァッ!!」

 ……聞いただけで耳が腐る!
 それにコイツ、さらっと国王陛下のことディスったよな。耄碌ジジイとか祖チンとか。
 叫んだ僕に、このゲス顔した変態は嬉しそうに頷く。

「怖いですか? ですよね。あぁ、貴方はなんて虐めがいのある表情をするんでしょう! 素敵です。出来れば、私は最初の相手になりたかった」
「ぐっ、僕は、御免だ! この変態め」
「人類みな変態ですよ。あ、貴方は『半神』なんですよね。天使でないから、両性具有ではないんですねぇ。もっと広げてご覧なさい」
「っあ、や、やめぇっ……くそぉっ、っおぁ」

 ガチガチになった陰嚢を揉み込まれ、更には先っぽをほじるように刺激される。目の前に憎しむべき相手がいるのに、みっともなく喘いでしまう。
 
「フェラは経験あるでしょう。……ほら、して差し上げろ」

 笑いを含んだ声で命じられた男が、陰茎を咥え込んだ。途端、覚えのある快感に腰が抜けそうになる。それでも塞き止められて、どうしようもない。
 
「ふぁっ、はぁっ、ふぅっ、んんぁぁっ」
 
 っ、なんで、こんな奴らに……。
 そう言えば、以前エトにもこんな事されたっけ。拙いけど、すごくドキドキして気持ち良くて。でも恥ずかしくて。何故か、殺したいほどは嫌じゃなかった。
 後で金蹴りしてやったけど。だってすごくムカついたから、キスもまだなのにそんな事……って。

「考え事出来るとは、余裕ですか」
「ヒギィッ!?」

 突然強く乳首を抓られて、悲鳴をあげる。

「ここも、ピアス空けてあげましょうね。知ってます? 男でも、母乳出るようになるらしいですよ。やってみましょうか」
「や、やだッ、そんなっ。ゔッ、やめ……」

 僕は女じゃない。それに、たとえ女が相手でも変態趣味は御免こうむる。そう言いたいのに……。
 尻穴に入り込もうとする指に、動かぬ身を捩った瞬間。

「ギャァ゙ァ゙ッ!?」

 絶叫。群がっていた男のうちの一人だ。
 全身を激しく痙攣させて、バタリと倒れこむ。

「チッ……魔王め」

 アルゲオは忌々しげに舌打ちすると、倒れて気絶した男を蹴りつけた。他の男たちも、息をのんで手を止める。
 
「貴方を犯す者は、例外なくみたいですねぇ」

 不機嫌そうにも、面白そうにも思える表情と口調。二人の男たちを鋭利な視線のみで退かせると、彼を僕の顎を掴んだ。

「おおよそ『お姫様からのキスと愛の言葉で、呪いはとける』って寸法でしょう……陳腐な真似をしやがる」

 あぁ、そうか。レミエルの呪いか。誰ともセックスできなくなる、魔法。
 一角獣が気絶したのも、あれは僕の尻にデカブツをぶち込もうとしたから。さっきも指であろうと、挿入しようとしたからか。
 これは命拾いと言うべきか。

「ルベル、貴方とまたしてあげましょう」
「だれが、お前なんかとッ!」
「まぁまぁ。話は最後までま聞くものですよ……おい、連れてこい。2人とも」

 アルゲオが、よく通る声で入口にいる兵士たちに命じた。
 そして1分もしないうちに、数人の兵士達に引きずって来られたのは男2人。

「兄さん!」

 オリエス・カントール、僕の兄だった。そしてその後ろにいるのは、マデウスだろう。
 2人とも、ぐったりとしている。辛うじて意識があるのはマデウスで、兄貴の方は息も絶え絶えといった具合だ。

「貴方の兄上様で、少しばかり。まぁ命に別状はありませんよ」
「っぐ、き、貴様……」

 嘲るように言ったアルゲオに、マデウスが憎悪の目を向ける。そう言えば、彼には恋人がいたって言ってたな。そして、その恋人は。

「貴方達、兄弟で魔王の息子達に絆されるなんて……趣味が合うんですねぇ」

 赤毛を掻き上げ、彼は尚も言葉を続ける。
 
「マデウスも、恋人である貴方の兄上様と父親のジャン・カントールを人質にされては、手も足も出なかったようですねぇ。アハハハッ、なんとも愉快だ」
 
 なんて野郎だ。兄貴も父も、人間界で捕らえられていたのか。しかも、カルディア国の軍に!

「さて、ここで取引ですよ。ルベル」
「ぅぐッ」

 掴まれた顎を、強引に上げられ覗き込まれる。
 その瞳は、深く陰鬱な赤。赤毛に良く似合う、色だ。
 
「彼らを助けたいですか?」
「……」
「ならば、今度は心から忠誠を誓いなさい。国王陛下を受け入れ、貴方から愛の言葉と口付けを。そうすれば、彼らは解放してあげましょう。ね? いい話じゃないですか」
「こ、このゲス野郎」

 したくない、したい訳が無い。70も超えたジジイに、愛の言葉だと? しかも自分からキスをして、掘られろと!
 そして挙句の果てには、用が済んだらこのイカれた変態野郎に玩具にされるなんて……こんな人生聞いてないぞッ!?
 前世より酷いじゃないか。これなら、7股して5人に刺殺されてた方がマシだった! 

 苛立つ僕に答えを急かしたいのか、彼は残酷な言葉を注いでいく。

「オリエスは、非常に……飲み込みの早い子でしたよ。あっという間に、卑しい雌犬のように私のを咥えこんでね。もう少し調教して、それから兵士達の慰み者にしても良いですねぇ……または、
「貴様ァァァっ!」

 マデウスが絶叫した。それほ手負いの獣の咆哮の如く。
 すぐ様、兵士達に殴り付けられて昏倒する。

「マデウスさん!」
「人の心配より、御自分の事ですよ。ほら、どうしますか? とは言っても、貴方には選択肢はありませんけどね」

 そう言って高笑いする男を、僕は呆然と見ていた。
 どうやったって地獄だ。これをどうしろって言うんだ……神様ってのが居たら、真っ先にバックブリーカーかましてやる。それか右ストレートでKOだ。クソッタレめ。

「る、ルベル……?」
「兄さん!」

 弱々しい声に、視線だけ向けた。
 すると兄貴が、薄く目を開けてこちらを見ている。
 目に涙が溜まり、あっという間に流れ落ちた。
 
「ルベル、ごめ、ん……ね」
「兄さんっ、しっかりしろ!」

 無数の痣と傷、身体に張り巡らされた縄の痕。相当酷い事をされたのだろう。その目に、深く刻まれた恐怖と絶望。
 ―――僕は、唇を強く噛んだ。

「愛の言葉とキスだな、お易い御用だ。クソッタレめっ」
「!?」

 嫌味ったらしいその顔に、唾を吐く。
 兵士はざわめいたが、当の本人はニヤリと大きく笑って言った。

「なんて素敵な人なんだ、貴方は! 人生で初めての恋をしてしまいそうですよ」
「ふんッ、すげなくフッてやる。君みたいな男、大嫌いだからな」

 うっとりとした顔しやがって。あの男エトとはえらい違いだ。
 ……アイツ、大丈夫だろうか。ちゃんと、手当受けられているかな。
 ダメだ、あのアホの事考えてたら決意が鈍る。

「ふふ、楽しみだなぁ」

 そう呟いて、アルゲオは兄貴達を連れた兵士と部屋を出て行った。
 冷たく、狭い部屋に残されたのは僕だけ。

「くそっ」
 
 そう独りごちる。
 ……縛られていなかったら、中指のひとつでも立ててやったのに。いや、まずそれこそ右ストレートでKOしてやる!
 僕は、絶望なんかしない。這い上がってやる。このクソッタレの変態のチ●ポコ、噛み付いて引きちぎってやるッ!!

 そう心に決めながら、先程の兄貴の涙を忘れようと首を振った。

 

 
 
 
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