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13.異種族からの侵略 (※R18)
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連れていかれたのは、まず馬小屋だった。
……とはいっても。
「やけに広いなぁ」
平民の小屋、何軒分あるだろう?
「魔王様は無類の馬好きでね、色んなタイプのがいるよ……ちょっと待ってて」
ケルタはそう言うと、小走りで馬小屋に駆けて行く。
そして、何やら馬丁(馬の世話をする者)らしき者達と話をしている。
それを見るともなしに、ぼんやり見ていた。
―――次の瞬間。
サッと、上から影が落ちる。
振り返る前に、降ってきた声。
「……こんにちは、お嬢さん」
言葉の主は逞しい半裸の男だ。
精悍な顔に、髭をたくわえている。
「えっ、あ、あのぉ」
思わず『お嬢さん』の訂正を忘れた。
何故なら、その男の姿に目が釘付けだったから。
……ケンタウロス!?
人間の上半身に、馬の胴体と足。
半身半獣の中では広く知られた存在だ。
とは言っても、僕は初めて見たが。
「驚いた顔も素敵だ。どうだい、これから私に乗って散歩と洒落込まないか。大丈夫、これでもなかなか乗り心地は良いんだ」
「ええっ? 」
初めて見る、半獣。
動揺しない方がどうかしている。
しかし困惑している間に、彼(で良いよな?)は長く逞しい腕を僕の腰に回して引き寄せてくる。
そして、耳元でそっと囁いた。
「とても景色の良い場所を知ってるんだ……ねぇ、良いだろう? あぁ君って、とても良い香りがするね。頬にキスしても?」
「いやいやいやっ、ダメに決まって……」
……口ひげの男にキスされる趣味はないぞ!
今更慌てて引き離そうとするが、ビクともしない。
吐息が、耳朶に触れて身動ぎする。
「初心なんだな。君みたいな娘、ケルタには勿体ない」
「……ちょっとアシヌスっ!」
声を荒らげて、ケルタが僕と彼に割って入った。
「なんだ、もう戻って来たのか」
「彼はオレの客人だよ!?」
「彼?」
そこで初めて、僕が『お嬢さん』ではないと気が付いたらしい。
肩を竦め、笑った。
「おやおや! 私としたことが」
「また、奥さんに叱られるよ?」
「ケルタが内密にしてくれれば良いだけさ」
「大人しくしてな。……この前みたいに、尻を蹴られたくなかったらね」
「おぉ、怖い怖い」
おどけた様子で、首を傾げる。
……どうやらこのケンタウロス、根っからの女好き。
その上、妻がいるらしい。
うーん。なんかシンパシー感じるなぁ。
「行こ、ルベル!」
「あ、うん」
言っても無駄だと思ったのか、ケルタが僕の手を引く。
―――通り際に、アシヌスは再び耳元に唇を寄せて言う。
「男の子でも、私は大歓迎だ」
一瞬で立った鳥肌を摩りつつ、身震いする。
……一発ぶん殴っとけば、良かった。
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫
「まさか魔界の奴らって、スタンダードにホモ設定ついるワケじゃないよな?」
苛立ちとウンザリ感で、そんな愚痴も出るのは仕方ないだろ。
「ははっ、ルベルが特別なんだよ」
一方ケルタは、何が楽しいのか。
満面の笑みだ。
「人間がそんなに珍しいかぁ?」
ため息、つくしかない。
この10数分で、何度ナンパされたか。
……しかも全部、男! 雄!
オーガやらゴブリンやら。
猫の妖精にまで、声掛けられた。
長靴をはいた猫、と言えば分かりやすいだろうか。
二本足で、キチンと服を着込んだ猫。
可愛い外見に騙されて近付と、ベロリと首筋を舐められて悲鳴を上げた。
「それだけルベルが、魅力的って事でしょ」
「褒められた気がしない」
「あはははっ、褒めてるんだってば」
あからさまな求愛行動取る奴もいて、寒気がする。
なんだか、うっかりすると食われそう……両方の意味で。
「オレが守ってあげるからね?」
「君も、僕を女扱いかよ……ガキのくせに」
「好きな子を守りたいのは、当たり前でしょ」
……コイツもエトと同じこと言ってら。
本当にバカだな、二人とも。
でも僕は諦めずに、断固拒否だ。後ろの貞操は守り抜くぞ!
「でもまぁ。ルベルって、一角獣にも気にいられるんだねぇ」
「これか? 」
―――僕達は今、馬に乗っている。
馬小屋に居たのは人間界にいる、普通の馬やロバ。あと魔界ならではの生き物もいた。
額に角のある馬。
一角獣ってのは名前と、そのビジュアル位は知識があったが。
いるんだな、ほんとに。
恐る恐る撫でてみると、ブルル……と甘えるように鳴く。
「こいつ、本来無類の処女好きなんだよね」
「しょ、処女?」
「そ。処女でしょ」
「女じゃないし」
「お尻に× × × を× × × × × で……」
「突然、放送禁止用語を羅列すんなッ! 歩く卑猥辞典かッ!」
「あはは、ツッコミが変だよぉ」
「うっさい、自覚しとるわッ」
動揺してんだよ、言わせんな。くそっ。
ともあれ。
「まったく……魔獣ですら、僕を女扱いか!」
魔界ってなんなんだ!?
揃いも揃って、ホモばっかりか。
くそっ。安易な設定の、薄い本かっつーの。
「カッコイイなぁ」
「へ?」
ケルタが眩しそうに言う。
もしや僕のことをカッコイイ、と?
……期待を込めて、振り向く。
「乙女を乗せてる一角獣って、なんか神話的だよねぇ」
「そっちかよ」
むくれた僕を、笑い飛ばす少年。
彼を横目で睨んだ途端、一角獣が嘶いて身体を揺する。
「ぅわっ!?」
振り落とされそうで、必死でその白い馬体にしがみついた。
「ははっ、嫉妬されちゃったねぇ」
「嫉妬? 馬が?」
すると、また嘶く。
「『馬じゃない、一角獣だ』ってさ」
「あぁそうか……ごめんな?」
これでも、動物は嫌いじゃない。
優しく撫でると、また甘えた声を出す。
「へぇ! 一角獣がここまで懐くなんて」
「珍しいのか?」
ケルタが肩を竦めて答えた。
「一角獣は、こう見えて獰猛でね。気に入らないと、蹴られるよ。よっぽど気に入られたんだなぁ……いいなぁ!」
「ふふん、羨ましいのか」
「そりゃあね……いいなぁ。オレはルベルの上に乗りたいけど」
「そっちかよッ!」
二度目のツッコミ。
もうやだ、このショタ……。
―――正直、森の中を馬で散歩しよう。と言われた時は少し不安だった。
……でもまぁ、慣れると楽しいものだな。
鬱蒼と茂る感じじゃなくて、木々の隙間から光が入る。
幻想的とも言える、景色。
「もうすぐ湖畔に出るよ。すごく綺麗だから」
「へぇ」
気晴らしには丁度良いかもしれない。
幸い、一角獣の乗り心地も良いし。
「……ちょっと、待って」
「え?」
唐突に、ケルタが馬を止めた。
そしてじっと、森の奥を見つめ始める。
「オレ、ちょっと見てくる!」
「お、おいケルタ!?」
「そこで待ってて、すぐ戻るから!」
そう言い残すと。
馬を伴って、行ってしまった。
向こうに洞窟があるから、恐らく何か取りに行ったのかもしれない。
……不可解だが、待っていなきゃいけないだろう。
「ったく。理由くらい言って行けよな」
僕は文句言いながらも、一角獣から降りる。
甘え声と擦り寄ってくる、人懐こい魔獣に心癒された。
近くの倒木に座り、改めてこの美しい白馬を眺める。
「お前は綺麗だな」
話し掛ければ、言葉が分かるのか鼻を鳴らす。
ぐいぐい。と鼻面を身体に押し当ててきて、こちらまで倒れそうだ。
「おいおい、何すんだよ」
……大きな動物は、甘えられるのも力仕事だな。
なんて、呑気していると。
「ブルルルッ」
「ちょ、おいっ!?」
いよいよ押し倒されそう……いや、遅かった―――。
「っあ゙!?」
地面に、うつ伏せで倒れ込む。
その上からズシリと掛けられた体重。
「お、おも゙ぃ……っ」
必死で首を傾ければ、白馬が僕の背中を前足で踏みつけている。
完全に押さえつけられた。
「や゙っめ」
……ゔぅ、内蔵出そう。やばい、死ぬ゙。
女性達に刺殺される最期もアレだけど、馬に踏みつけられて死ぬのも嫌だ。
力を振り絞るように、足掻く。
「ひぁッ!?」
スンスンと首筋に鼻息を感じた瞬間。
布が裂ける音。
空気に触れた肌。
まさか……まさか……。
「ちょ、何して、うぁぁぁっ!!」
額に生えた鋭利な角。
それと歯を器用に使って、魔獣はこともあろうに服を剥ぎだした。
当然、湧き上がる恐怖と混乱で暴れ回る。
「やめろ、やだッ……い゙ぃッ!」
すると抵抗するな、とばかりに軽く首筋を噛まれた。
しかし僕の抵抗力を削ぐには、効果的だったようで。
「うぅっ、や、やめ……っ、い、痛いぃぃ」
情けないけど、ガチガチと歯を合わせながら震えるしかない。
大人しくなった僕を、一角獣は慰めるように舐めた。
……耳を。
「ひゃ、ぅっ、ら、めっ……そ、それぇ」
自分の口から、とんでもない声が出る。
まるでエロゲみたいな。舌っ足らずで、頭の悪い声。
……き、気色悪ぃ。ほんとに僕かよ。
そう思ってても、止められないしゾクゾクと悪寒が背中を駆け昇る。
「ブルルルッ」
上機嫌に鳴いた魔獣。
そして、僕の尻に何かが当たった。
「ゔぅっ、ぁ、ま、まさか……えっ? う、嘘だよな!? なぁ!? やめろッ、離せぇぇぇっ!!」
ゴリゴリと当たる、硬いアレ。
位置的に、硬度的に、なんかもう色々と怖い予想しか出来ない。
「ど、どうどうッ、落ち着けって。ひぃ、つ、突っ込むなぁぁぁ、いや゙あ゙ぁ゙ぁぁぁッ!」
尻を振って、何とかその凶器がぶっ刺さるのを回避するが。
……何故か、ヌルヌルしてる?
嘘だろっ!一角獣も先走り出すの!?
それが、さながらローションみたく滑りを良くしているらしい、ってそんな知識要らんッ!
「だめだめだめぇぇぇ! 裂けるぅっ」
出血多量必死だ。
死因が『一角獣により圧死』から『馬並みのイチモツ突っ込まれて出血死』に変更になってしまう!!
「あぁあ゙ぁーッ!」
遂に後ろ足で、がっしり固定される。
……ダメだ、入っちまう! 到底入らない大きさのハズなのに、押し込まれる気がするぅぅぅッ。
絶叫し、既に訪れつつある苦痛を逃がそうと首を振った―――。
「ぎゃぁ゙!」
「ぐぇ゙ッ」
人間のような悲鳴。
途端、鉛のような重さが掛かってカエルのような呻き声を上げる。
「っ、な、なん、だ……!?」
どうやら一角獣が、僕の上で気絶したらしい。
あの人間じみた悲鳴は、コイツだったのか。
……なんとか必死で、その身体から這い出す。
「あぁ、くそっ」
服がもはや服じゃない。
布が、身体に纏わりついてる状態。特に下半身なんて、派手に破られたらしい。
「まさか、一角獣に襲われるとは……」
処女好きなんじゃあないのかよ。
欲求不満だったんだろうか……それにしても。
「え、えらい目に遭った」
改めて、まじまじと眺める。
何をって? そりゃまぁ、馬のナニを。
興味あるじゃん、同じ雄としては。
……うん、死ぬな。これ死ぬわ。
30センチはあるだろうか。
こんなん尻に突き立てられたら……うげぇ、想像しただけで震える。
「どうしよう、これ」
帰ろうにも、こんな姿で歩いてたら危険な気がする。色々と。
それに、ここは森の中だ。
「ケルタ、早く帰って来いよ……」
独りごちる位には、不安だった。
僕は服だった布を掻き集めて、その場にしゃがみこむ。
「っ!?」
―――今、何かが僕に触れた。
慌てて振り向くも、誰もいない。
「き、気のせ……ヒッ!」
べちゃ、と粘着質な水音。
同時に生暖かい『何か』が全身を覆った。
「ぃ゙っ、な、なんだッ、これ、ひぃぃっ、き、気持ち、悪いっ……」
ヌルヌルしてる。
透明な、液状……これは。
「す、スライム!?」
この世界でも1番ポピュラーな魔物。
何故なら、比較的どの地域でも生存しているからだ。
「でもっ、こんな色は……っんぁ!?」
触手のようなモノが、内側から身体をまさぐる。
ぬちゃぬちゃ、とした音が森に響く。
「ぁうぅっ、っはぁ、へ、変なとこぉっ……」
上半身は胸を。
下半身は下腹当たりを、撫でていく。
「んぁっ、や、め……な、なんで」
乳首を執拗に弄りだす触手を、引き離そうと苦心する。
何故がゾクゾクして、女みたいな声が止まらない。
「あっ」
邪魔するな、とばかりに両手両足に無数の触手が絡みつく。
全てを晒すような格好で、地面に転がされた。
「は、離せよぉぉっ……んぉっ!? うっ、ああッ」
ぬるり、と入り込んできたスライム。
その先は。
「んぁあ……っ、またっ、そこぉぉッ!?」
まるで陰茎を握りしめるように絡み、上下に擦ってくる。
性急なその快楽に、そんな場合でないのに腰を揺らして感じてしまう。
「やめっ、許し、てッ……うぁぁっ……!」
助けて、と手を伸ばそうにも。
捕らえるような動きで侵食される。
「く、くそぉ、っ、なんでっ、んァ、こんなっ、めにぃぃ!」
……ま、負けるものか。
ここで女みたいな、声上げて、イったら負けだ。
ギリギリと奥歯を噛み締めて、必死で耐える。
「っぎ、ぃ、あ゙、ぁぁ゙……っはぁ、っう!?」
ぬちゃり、とまた新たに分泌液を出して撫で上げられた感触。
……や、やばい。ヤられる!
無理やり押し入られるのと違い、今度は焦らすような動きだ。
ジリジリと、追い詰めれられた精神。
今にも、泣き叫んでしまいそうで。
「っうぅ、た、助けてぇっ、やだぁっ、こんなのっ」
……怖い怖い怖い。
今にも折れそうな心が叫ぶ。
その時。
「ン?」
ひょい、と目の前に見知らぬ男の顔が覗き込んだ―――。
……とはいっても。
「やけに広いなぁ」
平民の小屋、何軒分あるだろう?
「魔王様は無類の馬好きでね、色んなタイプのがいるよ……ちょっと待ってて」
ケルタはそう言うと、小走りで馬小屋に駆けて行く。
そして、何やら馬丁(馬の世話をする者)らしき者達と話をしている。
それを見るともなしに、ぼんやり見ていた。
―――次の瞬間。
サッと、上から影が落ちる。
振り返る前に、降ってきた声。
「……こんにちは、お嬢さん」
言葉の主は逞しい半裸の男だ。
精悍な顔に、髭をたくわえている。
「えっ、あ、あのぉ」
思わず『お嬢さん』の訂正を忘れた。
何故なら、その男の姿に目が釘付けだったから。
……ケンタウロス!?
人間の上半身に、馬の胴体と足。
半身半獣の中では広く知られた存在だ。
とは言っても、僕は初めて見たが。
「驚いた顔も素敵だ。どうだい、これから私に乗って散歩と洒落込まないか。大丈夫、これでもなかなか乗り心地は良いんだ」
「ええっ? 」
初めて見る、半獣。
動揺しない方がどうかしている。
しかし困惑している間に、彼(で良いよな?)は長く逞しい腕を僕の腰に回して引き寄せてくる。
そして、耳元でそっと囁いた。
「とても景色の良い場所を知ってるんだ……ねぇ、良いだろう? あぁ君って、とても良い香りがするね。頬にキスしても?」
「いやいやいやっ、ダメに決まって……」
……口ひげの男にキスされる趣味はないぞ!
今更慌てて引き離そうとするが、ビクともしない。
吐息が、耳朶に触れて身動ぎする。
「初心なんだな。君みたいな娘、ケルタには勿体ない」
「……ちょっとアシヌスっ!」
声を荒らげて、ケルタが僕と彼に割って入った。
「なんだ、もう戻って来たのか」
「彼はオレの客人だよ!?」
「彼?」
そこで初めて、僕が『お嬢さん』ではないと気が付いたらしい。
肩を竦め、笑った。
「おやおや! 私としたことが」
「また、奥さんに叱られるよ?」
「ケルタが内密にしてくれれば良いだけさ」
「大人しくしてな。……この前みたいに、尻を蹴られたくなかったらね」
「おぉ、怖い怖い」
おどけた様子で、首を傾げる。
……どうやらこのケンタウロス、根っからの女好き。
その上、妻がいるらしい。
うーん。なんかシンパシー感じるなぁ。
「行こ、ルベル!」
「あ、うん」
言っても無駄だと思ったのか、ケルタが僕の手を引く。
―――通り際に、アシヌスは再び耳元に唇を寄せて言う。
「男の子でも、私は大歓迎だ」
一瞬で立った鳥肌を摩りつつ、身震いする。
……一発ぶん殴っとけば、良かった。
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫
「まさか魔界の奴らって、スタンダードにホモ設定ついるワケじゃないよな?」
苛立ちとウンザリ感で、そんな愚痴も出るのは仕方ないだろ。
「ははっ、ルベルが特別なんだよ」
一方ケルタは、何が楽しいのか。
満面の笑みだ。
「人間がそんなに珍しいかぁ?」
ため息、つくしかない。
この10数分で、何度ナンパされたか。
……しかも全部、男! 雄!
オーガやらゴブリンやら。
猫の妖精にまで、声掛けられた。
長靴をはいた猫、と言えば分かりやすいだろうか。
二本足で、キチンと服を着込んだ猫。
可愛い外見に騙されて近付と、ベロリと首筋を舐められて悲鳴を上げた。
「それだけルベルが、魅力的って事でしょ」
「褒められた気がしない」
「あはははっ、褒めてるんだってば」
あからさまな求愛行動取る奴もいて、寒気がする。
なんだか、うっかりすると食われそう……両方の意味で。
「オレが守ってあげるからね?」
「君も、僕を女扱いかよ……ガキのくせに」
「好きな子を守りたいのは、当たり前でしょ」
……コイツもエトと同じこと言ってら。
本当にバカだな、二人とも。
でも僕は諦めずに、断固拒否だ。後ろの貞操は守り抜くぞ!
「でもまぁ。ルベルって、一角獣にも気にいられるんだねぇ」
「これか? 」
―――僕達は今、馬に乗っている。
馬小屋に居たのは人間界にいる、普通の馬やロバ。あと魔界ならではの生き物もいた。
額に角のある馬。
一角獣ってのは名前と、そのビジュアル位は知識があったが。
いるんだな、ほんとに。
恐る恐る撫でてみると、ブルル……と甘えるように鳴く。
「こいつ、本来無類の処女好きなんだよね」
「しょ、処女?」
「そ。処女でしょ」
「女じゃないし」
「お尻に× × × を× × × × × で……」
「突然、放送禁止用語を羅列すんなッ! 歩く卑猥辞典かッ!」
「あはは、ツッコミが変だよぉ」
「うっさい、自覚しとるわッ」
動揺してんだよ、言わせんな。くそっ。
ともあれ。
「まったく……魔獣ですら、僕を女扱いか!」
魔界ってなんなんだ!?
揃いも揃って、ホモばっかりか。
くそっ。安易な設定の、薄い本かっつーの。
「カッコイイなぁ」
「へ?」
ケルタが眩しそうに言う。
もしや僕のことをカッコイイ、と?
……期待を込めて、振り向く。
「乙女を乗せてる一角獣って、なんか神話的だよねぇ」
「そっちかよ」
むくれた僕を、笑い飛ばす少年。
彼を横目で睨んだ途端、一角獣が嘶いて身体を揺する。
「ぅわっ!?」
振り落とされそうで、必死でその白い馬体にしがみついた。
「ははっ、嫉妬されちゃったねぇ」
「嫉妬? 馬が?」
すると、また嘶く。
「『馬じゃない、一角獣だ』ってさ」
「あぁそうか……ごめんな?」
これでも、動物は嫌いじゃない。
優しく撫でると、また甘えた声を出す。
「へぇ! 一角獣がここまで懐くなんて」
「珍しいのか?」
ケルタが肩を竦めて答えた。
「一角獣は、こう見えて獰猛でね。気に入らないと、蹴られるよ。よっぽど気に入られたんだなぁ……いいなぁ!」
「ふふん、羨ましいのか」
「そりゃあね……いいなぁ。オレはルベルの上に乗りたいけど」
「そっちかよッ!」
二度目のツッコミ。
もうやだ、このショタ……。
―――正直、森の中を馬で散歩しよう。と言われた時は少し不安だった。
……でもまぁ、慣れると楽しいものだな。
鬱蒼と茂る感じじゃなくて、木々の隙間から光が入る。
幻想的とも言える、景色。
「もうすぐ湖畔に出るよ。すごく綺麗だから」
「へぇ」
気晴らしには丁度良いかもしれない。
幸い、一角獣の乗り心地も良いし。
「……ちょっと、待って」
「え?」
唐突に、ケルタが馬を止めた。
そしてじっと、森の奥を見つめ始める。
「オレ、ちょっと見てくる!」
「お、おいケルタ!?」
「そこで待ってて、すぐ戻るから!」
そう言い残すと。
馬を伴って、行ってしまった。
向こうに洞窟があるから、恐らく何か取りに行ったのかもしれない。
……不可解だが、待っていなきゃいけないだろう。
「ったく。理由くらい言って行けよな」
僕は文句言いながらも、一角獣から降りる。
甘え声と擦り寄ってくる、人懐こい魔獣に心癒された。
近くの倒木に座り、改めてこの美しい白馬を眺める。
「お前は綺麗だな」
話し掛ければ、言葉が分かるのか鼻を鳴らす。
ぐいぐい。と鼻面を身体に押し当ててきて、こちらまで倒れそうだ。
「おいおい、何すんだよ」
……大きな動物は、甘えられるのも力仕事だな。
なんて、呑気していると。
「ブルルルッ」
「ちょ、おいっ!?」
いよいよ押し倒されそう……いや、遅かった―――。
「っあ゙!?」
地面に、うつ伏せで倒れ込む。
その上からズシリと掛けられた体重。
「お、おも゙ぃ……っ」
必死で首を傾ければ、白馬が僕の背中を前足で踏みつけている。
完全に押さえつけられた。
「や゙っめ」
……ゔぅ、内蔵出そう。やばい、死ぬ゙。
女性達に刺殺される最期もアレだけど、馬に踏みつけられて死ぬのも嫌だ。
力を振り絞るように、足掻く。
「ひぁッ!?」
スンスンと首筋に鼻息を感じた瞬間。
布が裂ける音。
空気に触れた肌。
まさか……まさか……。
「ちょ、何して、うぁぁぁっ!!」
額に生えた鋭利な角。
それと歯を器用に使って、魔獣はこともあろうに服を剥ぎだした。
当然、湧き上がる恐怖と混乱で暴れ回る。
「やめろ、やだッ……い゙ぃッ!」
すると抵抗するな、とばかりに軽く首筋を噛まれた。
しかし僕の抵抗力を削ぐには、効果的だったようで。
「うぅっ、や、やめ……っ、い、痛いぃぃ」
情けないけど、ガチガチと歯を合わせながら震えるしかない。
大人しくなった僕を、一角獣は慰めるように舐めた。
……耳を。
「ひゃ、ぅっ、ら、めっ……そ、それぇ」
自分の口から、とんでもない声が出る。
まるでエロゲみたいな。舌っ足らずで、頭の悪い声。
……き、気色悪ぃ。ほんとに僕かよ。
そう思ってても、止められないしゾクゾクと悪寒が背中を駆け昇る。
「ブルルルッ」
上機嫌に鳴いた魔獣。
そして、僕の尻に何かが当たった。
「ゔぅっ、ぁ、ま、まさか……えっ? う、嘘だよな!? なぁ!? やめろッ、離せぇぇぇっ!!」
ゴリゴリと当たる、硬いアレ。
位置的に、硬度的に、なんかもう色々と怖い予想しか出来ない。
「ど、どうどうッ、落ち着けって。ひぃ、つ、突っ込むなぁぁぁ、いや゙あ゙ぁ゙ぁぁぁッ!」
尻を振って、何とかその凶器がぶっ刺さるのを回避するが。
……何故か、ヌルヌルしてる?
嘘だろっ!一角獣も先走り出すの!?
それが、さながらローションみたく滑りを良くしているらしい、ってそんな知識要らんッ!
「だめだめだめぇぇぇ! 裂けるぅっ」
出血多量必死だ。
死因が『一角獣により圧死』から『馬並みのイチモツ突っ込まれて出血死』に変更になってしまう!!
「あぁあ゙ぁーッ!」
遂に後ろ足で、がっしり固定される。
……ダメだ、入っちまう! 到底入らない大きさのハズなのに、押し込まれる気がするぅぅぅッ。
絶叫し、既に訪れつつある苦痛を逃がそうと首を振った―――。
「ぎゃぁ゙!」
「ぐぇ゙ッ」
人間のような悲鳴。
途端、鉛のような重さが掛かってカエルのような呻き声を上げる。
「っ、な、なん、だ……!?」
どうやら一角獣が、僕の上で気絶したらしい。
あの人間じみた悲鳴は、コイツだったのか。
……なんとか必死で、その身体から這い出す。
「あぁ、くそっ」
服がもはや服じゃない。
布が、身体に纏わりついてる状態。特に下半身なんて、派手に破られたらしい。
「まさか、一角獣に襲われるとは……」
処女好きなんじゃあないのかよ。
欲求不満だったんだろうか……それにしても。
「え、えらい目に遭った」
改めて、まじまじと眺める。
何をって? そりゃまぁ、馬のナニを。
興味あるじゃん、同じ雄としては。
……うん、死ぬな。これ死ぬわ。
30センチはあるだろうか。
こんなん尻に突き立てられたら……うげぇ、想像しただけで震える。
「どうしよう、これ」
帰ろうにも、こんな姿で歩いてたら危険な気がする。色々と。
それに、ここは森の中だ。
「ケルタ、早く帰って来いよ……」
独りごちる位には、不安だった。
僕は服だった布を掻き集めて、その場にしゃがみこむ。
「っ!?」
―――今、何かが僕に触れた。
慌てて振り向くも、誰もいない。
「き、気のせ……ヒッ!」
べちゃ、と粘着質な水音。
同時に生暖かい『何か』が全身を覆った。
「ぃ゙っ、な、なんだッ、これ、ひぃぃっ、き、気持ち、悪いっ……」
ヌルヌルしてる。
透明な、液状……これは。
「す、スライム!?」
この世界でも1番ポピュラーな魔物。
何故なら、比較的どの地域でも生存しているからだ。
「でもっ、こんな色は……っんぁ!?」
触手のようなモノが、内側から身体をまさぐる。
ぬちゃぬちゃ、とした音が森に響く。
「ぁうぅっ、っはぁ、へ、変なとこぉっ……」
上半身は胸を。
下半身は下腹当たりを、撫でていく。
「んぁっ、や、め……な、なんで」
乳首を執拗に弄りだす触手を、引き離そうと苦心する。
何故がゾクゾクして、女みたいな声が止まらない。
「あっ」
邪魔するな、とばかりに両手両足に無数の触手が絡みつく。
全てを晒すような格好で、地面に転がされた。
「は、離せよぉぉっ……んぉっ!? うっ、ああッ」
ぬるり、と入り込んできたスライム。
その先は。
「んぁあ……っ、またっ、そこぉぉッ!?」
まるで陰茎を握りしめるように絡み、上下に擦ってくる。
性急なその快楽に、そんな場合でないのに腰を揺らして感じてしまう。
「やめっ、許し、てッ……うぁぁっ……!」
助けて、と手を伸ばそうにも。
捕らえるような動きで侵食される。
「く、くそぉ、っ、なんでっ、んァ、こんなっ、めにぃぃ!」
……ま、負けるものか。
ここで女みたいな、声上げて、イったら負けだ。
ギリギリと奥歯を噛み締めて、必死で耐える。
「っぎ、ぃ、あ゙、ぁぁ゙……っはぁ、っう!?」
ぬちゃり、とまた新たに分泌液を出して撫で上げられた感触。
……や、やばい。ヤられる!
無理やり押し入られるのと違い、今度は焦らすような動きだ。
ジリジリと、追い詰めれられた精神。
今にも、泣き叫んでしまいそうで。
「っうぅ、た、助けてぇっ、やだぁっ、こんなのっ」
……怖い怖い怖い。
今にも折れそうな心が叫ぶ。
その時。
「ン?」
ひょい、と目の前に見知らぬ男の顔が覗き込んだ―――。
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