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2.性奴隷としてお買い上げされました
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「……あの。すいません」
言葉通り、申し訳無さそうな声。
汚物消毒君が、それにぞんざいに答え振り向く。
「あぁ? 困るなぁお客さん……んん゙ッ!?」
「どうした。あの、お客様。奴隷買いたいなら、表の競売場で……ヒィッ!!」
男達が、何かを見上げて固まっている。
僕の方からは檻と二人が邪魔で見えないが。
「あ、あ、あのっ、何をお探しで……ひぃぃッ!」
「うん。少し奴隷をね、探してて。競売場だと邪魔になっちゃうんだよ……ほら」
男達が腰を抜かしたようにへたり込む。
そこでようやく、声の主の姿が見えた。
「私はこのとおり、大きいからね」
少し屈んでみせたその男。
……で、デカい。
2mは超えてるだろうって身長。
どこの戦闘民族だ? まさか●紋戦士? って程の筋骨隆々な身体。
そしてそこに乗った、穏やかな優男風の顔。
「この子、買いたいんだけど」
僕の目を真っ直ぐに見て、そう言った。
……こっち見んな!
そう腹で思ってても、言葉にでない。
あまりにもデカ過ぎるし、バランス悪すぎだからだ。ぶん殴られたら、首ごと持ってかれそう。
ほら見ろ、汚物消毒君なんて内股で震えてんぞ。
案外カマっぽい奴なんだな、とザマァした。
「し、しかしこれは……まだ仕込み前ですし」
「オイオイオイオイッ! なに仕込もうとしてんだ、この変態オヤジめ!」
思わずカッとなって怒鳴りつける。
すると、穏やかな男の顔が満面の笑みを浮かべた。
「うん。元気がいいね……すぐに欲しいな」
「すぐって……しかし」
「すぐ欲しいな」
戦闘民族モドキの目が、スっと細くなる。
すぐに震えがるチビデブおやじだが、そこは商売人。
難しい顔で切り出した。
「は、はぁ……値段が……」
「通常の三倍は出すよ」
「しかしねぇ。こいつは処女で、この通り見た目だけは良いですから……」
「うーん……そっか。じゃあ」
男の手が、服のポケットを雑に探る。
そしてすぐに、何やら布袋を落とした。
―――ガッシャン!
大きな音。
中には重い金貨がたんまりと詰まった音だ。
「とりあえず、これでどうだろう」
「……」
チビデブおやじは、恐る恐る中を確かめる。
そして数秒俯く。
「譲って貰えるかな?」
「……喜んで」
こうして、僕の買取先が決まってしまった。
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□
「……」
「……」
―――ガタゴトと揺れる、馬車の中。
今、めちゃくちゃ気まずい。
互いがダンマリしてるからだ。
僕をお買い上げしたこの男、さっさと僕を引き取って市場を後にした。
慌てて後をついて行く僕に、一度だけ振り返って『これ着といてね』と掛けられたのが自身が羽織っていたマント。
真っ黒いカラスの羽のような色のそれは、見た目より軽い。
それでいて暖かかった。
「……」
窓の外を眺める男を観察する。
ガタイの良さは別として、とてと特殊な出で立ちだと思う。
服装からすると、なかなか身なりの良い感じ。
どこぞの貴族か、王族か……。
歳は20代後半から30代。
短い黒髪が、風に靡いている。
……ま、まぁ。なかなか良い男風情だ。
前世の僕には負けるけどな!
「ん? 寒いかな」
「えっ、あ、いえ……別に」
突然こっち見た。
すごい勢いで目を逸らしてしまう。
逆に失礼だったかと思うが、何故か怒るわけでもなく楽しそうに話しかけてきた。
「ね……名前まだ聞いてなかったね」
「な、名前? 」
一瞬迷った。
名前を言うべきか。
……奴隷は、この首輪をつけた瞬間から人として扱われなくなる。
言ってみれば家畜やペットと同じ。
名前だって、今までのそれを捨てなければならないんだ。
だから僕のルベル・カントールを名乗って良いものか……。
「私は、君の名前を知りたいんだ」
「っ……ルベル、です」
名前だけにした。
苗字は一応、やめておく。
これも、少し前には家に沢山奴隷がいたから分かることだ。
もっとも。僕自分がその立場になるなんて、思ってもみなかったが。
「ルベルか……素敵な名前だね」
「ど、どうも」
「私はレクス。出来れば、ご主人様なんて呼ばないで欲しいな。良いかい?」
「あ、はぁ……レクス、様?」
なんだた変な人だ。
奴隷に、ご主人様と呼ばせない。なんて。
彼は僕の怪訝な顔に、笑顔で返す。
「様は要らないから」
「レクス……さん?」
「うーん、まぁいいか。よろしくね、ルベル君」
「よ、よろしくお願いします」
気さくな人柄らしい。
そう思えば、この化け物じみたバキバキの肉体も、爽やかなボディビルダーのお兄さんに……見えねぇぇッ!
どう足掻いても、戦闘能力が数百万超のバトル漫画主人公にしか見えん。
なんなんだこいつッ、怖すぎる!
……てか、こっち見んなァァァァッ!!
「な、な、何か!?」
「うん? いや、可愛い子だなぁと」
「え、あー……ど、ども」
「ふふふ」
今度はこっちを凝視しやがる。
なんかもう、舐め回す勢いで。
「……君ってさ。性奴隷なんだよねぇ」
「へ?」
突然、レクスっていう男が言い出した。
性奴隷……あぁそうだ。僕は性奴隷か。
「しかもまだ処女……」
「当たり前でしょう! 男なんだからッ」
古い人間だと言われても構わない。
僕にとって恋愛やセックスは、女と男でするものだ。
男同士でするなんて、天地がひっくり返ってもありえない!
そんな僕がよりにもよって、男娼になんて……。
「ふふ、まだ若いんだねぇ。楽しみだな」
「え゙!?」
わ、忘れてた。
こいつ、僕の事を買ったんだ……と言うことは。
「さ。そろそろ屋敷に着くよ」
ニッコリ微笑まる。
僕は見事な間抜け面で頷いたが、その心は絶望でいっぱいだった―――。
言葉通り、申し訳無さそうな声。
汚物消毒君が、それにぞんざいに答え振り向く。
「あぁ? 困るなぁお客さん……んん゙ッ!?」
「どうした。あの、お客様。奴隷買いたいなら、表の競売場で……ヒィッ!!」
男達が、何かを見上げて固まっている。
僕の方からは檻と二人が邪魔で見えないが。
「あ、あ、あのっ、何をお探しで……ひぃぃッ!」
「うん。少し奴隷をね、探してて。競売場だと邪魔になっちゃうんだよ……ほら」
男達が腰を抜かしたようにへたり込む。
そこでようやく、声の主の姿が見えた。
「私はこのとおり、大きいからね」
少し屈んでみせたその男。
……で、デカい。
2mは超えてるだろうって身長。
どこの戦闘民族だ? まさか●紋戦士? って程の筋骨隆々な身体。
そしてそこに乗った、穏やかな優男風の顔。
「この子、買いたいんだけど」
僕の目を真っ直ぐに見て、そう言った。
……こっち見んな!
そう腹で思ってても、言葉にでない。
あまりにもデカ過ぎるし、バランス悪すぎだからだ。ぶん殴られたら、首ごと持ってかれそう。
ほら見ろ、汚物消毒君なんて内股で震えてんぞ。
案外カマっぽい奴なんだな、とザマァした。
「し、しかしこれは……まだ仕込み前ですし」
「オイオイオイオイッ! なに仕込もうとしてんだ、この変態オヤジめ!」
思わずカッとなって怒鳴りつける。
すると、穏やかな男の顔が満面の笑みを浮かべた。
「うん。元気がいいね……すぐに欲しいな」
「すぐって……しかし」
「すぐ欲しいな」
戦闘民族モドキの目が、スっと細くなる。
すぐに震えがるチビデブおやじだが、そこは商売人。
難しい顔で切り出した。
「は、はぁ……値段が……」
「通常の三倍は出すよ」
「しかしねぇ。こいつは処女で、この通り見た目だけは良いですから……」
「うーん……そっか。じゃあ」
男の手が、服のポケットを雑に探る。
そしてすぐに、何やら布袋を落とした。
―――ガッシャン!
大きな音。
中には重い金貨がたんまりと詰まった音だ。
「とりあえず、これでどうだろう」
「……」
チビデブおやじは、恐る恐る中を確かめる。
そして数秒俯く。
「譲って貰えるかな?」
「……喜んで」
こうして、僕の買取先が決まってしまった。
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□
「……」
「……」
―――ガタゴトと揺れる、馬車の中。
今、めちゃくちゃ気まずい。
互いがダンマリしてるからだ。
僕をお買い上げしたこの男、さっさと僕を引き取って市場を後にした。
慌てて後をついて行く僕に、一度だけ振り返って『これ着といてね』と掛けられたのが自身が羽織っていたマント。
真っ黒いカラスの羽のような色のそれは、見た目より軽い。
それでいて暖かかった。
「……」
窓の外を眺める男を観察する。
ガタイの良さは別として、とてと特殊な出で立ちだと思う。
服装からすると、なかなか身なりの良い感じ。
どこぞの貴族か、王族か……。
歳は20代後半から30代。
短い黒髪が、風に靡いている。
……ま、まぁ。なかなか良い男風情だ。
前世の僕には負けるけどな!
「ん? 寒いかな」
「えっ、あ、いえ……別に」
突然こっち見た。
すごい勢いで目を逸らしてしまう。
逆に失礼だったかと思うが、何故か怒るわけでもなく楽しそうに話しかけてきた。
「ね……名前まだ聞いてなかったね」
「な、名前? 」
一瞬迷った。
名前を言うべきか。
……奴隷は、この首輪をつけた瞬間から人として扱われなくなる。
言ってみれば家畜やペットと同じ。
名前だって、今までのそれを捨てなければならないんだ。
だから僕のルベル・カントールを名乗って良いものか……。
「私は、君の名前を知りたいんだ」
「っ……ルベル、です」
名前だけにした。
苗字は一応、やめておく。
これも、少し前には家に沢山奴隷がいたから分かることだ。
もっとも。僕自分がその立場になるなんて、思ってもみなかったが。
「ルベルか……素敵な名前だね」
「ど、どうも」
「私はレクス。出来れば、ご主人様なんて呼ばないで欲しいな。良いかい?」
「あ、はぁ……レクス、様?」
なんだた変な人だ。
奴隷に、ご主人様と呼ばせない。なんて。
彼は僕の怪訝な顔に、笑顔で返す。
「様は要らないから」
「レクス……さん?」
「うーん、まぁいいか。よろしくね、ルベル君」
「よ、よろしくお願いします」
気さくな人柄らしい。
そう思えば、この化け物じみたバキバキの肉体も、爽やかなボディビルダーのお兄さんに……見えねぇぇッ!
どう足掻いても、戦闘能力が数百万超のバトル漫画主人公にしか見えん。
なんなんだこいつッ、怖すぎる!
……てか、こっち見んなァァァァッ!!
「な、な、何か!?」
「うん? いや、可愛い子だなぁと」
「え、あー……ど、ども」
「ふふふ」
今度はこっちを凝視しやがる。
なんかもう、舐め回す勢いで。
「……君ってさ。性奴隷なんだよねぇ」
「へ?」
突然、レクスっていう男が言い出した。
性奴隷……あぁそうだ。僕は性奴隷か。
「しかもまだ処女……」
「当たり前でしょう! 男なんだからッ」
古い人間だと言われても構わない。
僕にとって恋愛やセックスは、女と男でするものだ。
男同士でするなんて、天地がひっくり返ってもありえない!
そんな僕がよりにもよって、男娼になんて……。
「ふふ、まだ若いんだねぇ。楽しみだな」
「え゙!?」
わ、忘れてた。
こいつ、僕の事を買ったんだ……と言うことは。
「さ。そろそろ屋敷に着くよ」
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僕は見事な間抜け面で頷いたが、その心は絶望でいっぱいだった―――。
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