罰ゲームでパパ活したら美丈夫が釣れました2

田中 乃那加

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Pガチ恋禁止令!?

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 別に好きじゃない。恋なんてしてない。
 イケメンだけどオッサンだし、カッコイイけどスケベだし。スタイル良いけど――。

「咲夜。どうしたのよ。もう授業終わったけど」
「えっ!?」

 退屈な現国の授業中。何の気なしに始めた考え事で、気がつけば時間経ってたらしい。
 覗き込んできたのは、幼なじみ。オレは慌てて、目をそらすと教科書を机に押し込んだ。

「ねぇ、最近おかしいよ? 」
「別に……」

 言えるワケがない。
 パパ活で釣ったオッサンが忘れられない、なんて。
 ……って、いやいや。仕方ないじゃないか、あんなコトされたんだから。
 初めてだったのに、気持ちイイところをたくさん教え込まれて。
 そのくせ、最後は思い切り優しく甘く抱いてくれたっけ。

『あっ……んんっ♡ っそ、そこばっ、か♡♡』
『だが、は私を離したくないと言ってるようだがな』
『ち、ちがっ……んぅぅっ♡♡』

 指を絡めてキスしながら、激しく突かれて。

『咲夜、愛してる』

 そう何度も何度もささやかれたら、オカシイ気持ちにもなるだろ。
 あのイケメンムッツリ変態野郎。声もムダにいいんだ。
 そう。顔も声も、スタイルもいいなんて反則すぎる。
 オレが忘れられないのだって、別に――。

「咲夜ってば!」
「へ?」

 幼なじみの声で、また我に返った。
 あぶねぇ、また思い出すだけで勃っちゃうとこだったぞ。
 いや、もう少しおそくって。腰の奥の方が、キュン♡ってなって落ち着かなくなってきた。
 あーもう、これなんとかならんのか!
 まるでドコでもエッチな気分になっちまう変態みたいじゃないか。
 こんなのオレじゃない。
 ホモじゃないし、女の子が好きなノーマルだ。
 その証拠に、今でもPCの中には秘蔵のエロ画像が――って最近見てないけど。
 あぁぁあ……やっぱりオレ、ホモになっちまったのかな。
 それもこれも、あの残念なイケメン変態のせいだ!

「あのさ」
「なんだよ」
「なんか悩みあるんじゃないの?」

 マジで心配って顔されてる。この女がこんな表情すんのはじめてかもなァ、なんてのんきに思いながらも。やっぱりオレはおかしいのかなとも考え始める。
 普通にありえないだろ。
 だいたい、オレは嘉親の素性も知らないんだぞ?
 この前会った時もと言って手渡そうとしてきた大金も、妙に浮世離れしたカンジも。
 帰り際だって。

『欲しいものがあれば、これを使いなさい』

 って手に握らせてきたカード。多分、受けとっちゃダメなヤツだと思う。
 でも返しそびれたそれは、今も机の引き出しの奥にある。
 得体の知れない金持ち、ミステリアスと言えばそうかもしれない。
 
「咲夜」
「悩みはないけど」

 オレはそこで、大きくため息を吐いた。

「なんか。ここんとこがモヤモヤする、かも?」

 胸を指さしてつぶやけば。

「咲夜、まさか……」

 サッと変わる幼なじみの顔色。
 え? なんかコイツの方が様子おかしくないか。

「も、もしかして」
「なんだよ」

 どんどん曇る表情。
 おいおい。こっちが心配になってどーすんだ。

「なんか脅されたり、してるでしょ」

 …………は?
 今度はオレがポカンとする方だった。

 


※※※


「よぉ、咲夜
「先輩」

 のそのそと靴をはいてるオレに声をかけたのは、ひとつ上の先輩。
 苗字は、ええっと……忘れた。田中だか、伊藤だか。最近変わったって聞いたけど、興味無いから覚えてない。
 そう、オレはこの人に興味が無い。

「えらく帰るの遅いじゃん。帰宅部のクセに」
「別に」
「アハハ、素っ気ないなぁ。でも――」

 背中にしてた下駄箱に、彼が手をつく。つまり、言ってみれば壁ドンというか。

「なんか最近、雰囲気かわったよね?」
「!!!」

 至近距離で見下ろされる。
 なぜか気に入られて、ことあるごとに絡んでくるウザい先輩。なのに、こんなコトされたのは初めてだった。

「せ、先輩……」
「なんかすごく、色っぽく? なったよ」

 色っぽいって。男が男に言うセリフじゃない。
 イジワルそうな表情の先輩は、こうしてみるとイケメンだ。学校中の女子が彼に恋してるなんていう話も、あながちウソじゃないくらいに。
 彫りが深くて、整ってて。チャラい感じもするけど、それもまた良く似合う。
 
「咲夜ちゃん。もしかして――男でもできた?」
「!!!」

 思わぬ言葉に顔がカッと熱くなる。
 その瞬間、ニヤニヤとからかうみたいな顔を思い切り押しのけた。

「っ、そ、そんなワケないだろ!」
「えぇ~? だって、なんかすごく可愛くなったし」
「か、か、可愛い!?」
「そ。メスっぽくなったっつーか」

 めめめめっ、メス!?!?
 いきなり女よばわりされたショックと怒りで、ぶん殴ってやろうかと手を振りあげた。

「いい加減にッ――!」
「俺も分かるよ。
「え゙っ」

 こんなイケメンに、彼氏がいる?
 ビックリするのを通り越して、ポカンだ。
 ピエン超えてパオンみたいな……ってオレ動揺し過ぎだな。
 
「すっごくカッコよくてさ。最高にカワイーんだぜ」
「……」
「お互いよろしくな?」

 彼氏なんていない。パパならいるけど。
 でも、そんな事いったらコイツはどんな反応するかな。
 あ、でも。ヤバいヤツって言いふらされたら最悪だな。
 もう頭ん中がキャパオーバー。だから、先輩がさらに距離を詰めてきたのに気が付かなかった。

「お前んとこの彼氏、どんなオトコなわけ?」

 覗き込んでくる瞳は少し深い翠色。それ、まるで――。

「あれ、電話だ」

 そう言って離れていく先輩を、キツくにらみつけた。
 くそ、驚かせやがって。
 ヘラヘラ笑ってウィンクしながら、スマホ取り出すこの男の言葉。ホントかウソか、いまいちわかんない。
 でもどうだって良かった。
 同じ色の瞳なのに、妙にゾワゾワして落ち着かなかったから。
 イケメンだったら誰でもいいってワケじゃないんだな、オレ……って。ちがう!!! 
 別にホモじゃねーもん! それにっ、別に嘉親のこと別に好きだとか。そーゆーのじゃない。
 確かにかっこいいし、エッチは気持ちよくてオカシクなりそうだったけど。

「あ。嘉親ァ?」
「!」

 おい、今なんつった。
 のんきして電話はじめた先輩が、相変わらずのニヤニヤ笑いで親指立てる。

「うん、あー。今帰るってば。ホント、心配症だな。アンタは」

 まさかその彼氏というヤツとの会話か。後輩の前でおっぱじめるとは、イカレてんのかと思うけど。
 甘えたような声でしゃべり、視線はあいかわらずオレの方で。
 
「あはは。愛してるってば」
「……」

 愛してる。
 そう言った。そして相手の名前は――。

「はいはい。分かった分かった。じゃ、切るよ。ダーリン?」

 息苦しくなるくらい。胸がドキドキと暴れ回ってる。
 身体の芯がスッと冷えてくる感覚といえばいいんだろうか。
 信じたくない言葉だけが頭ん中で、ぐるぐると回る。

「じゃ、俺帰るわ」

 いつの間にかスマホを切った彼が、軽く手を上げて立ち去ったのを。オレは無言で見送っていた。
 
「うそ…………」

 ウソだ。先輩の彼氏って、まさか。

「嘉親」

 そっとその名を口にしたら、涙が溢れてきた。


 


 


 

 
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