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助けに来たのはやぶ蛇でした3

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「相変わらず。キャンキャンとわめいてばかりとは。進歩というものは無いのか」
「まーまー。ぼくはその方が好きだよ。ね、アレン」

 呆れたように毒を吐き、長い髪をかきあげるシセロに対し。ニアが顔を優しげに話しかけてくる。

「ひぅっ、あぁ、あ゙っ、あぁっ」

 言い返すことおろか、睨みつけることすら出来ない。ただひたすら快楽に溺れ、喘いだ。

「はぁっ……はっ、ぁ……も、もうっ」
「なにへばってるんですか。まだまだこれからでしょうが」
「そうそう。アレン、ぼくがイくまで頑張ってね!」
「そ、そんなっ」

 現在の状況。
 二人に、広く豪奢なベッドに引き倒されてから数十分。
 身体中を四本の手で愛撫され、身悶えさせられた後にようやく本番。
 じゃんけんで勝ったらしいニアに、犬のような格好で後から抱かれている。

「ひぃっ、ぃ、ゔ、そこっ、やだァッ」
だよね。ちゃんと覚えてるよ。ほらっ、よく鳴いて」
「んぁ゙、お゙ほっ……お゙、お゙っ、ひぅ゙ぅ」

 前立腺を激しく突きまくられ、舌を出して濁点付きの嬌声を振りまく。
 なにしろ強烈すぎた。
 射精を促す器官をガンガン責められているのにも関わらず、魔王に掛けられた魔法によりイくことすらできないのだから。
 生き地獄は、助け出されても続く。
 そもそも『助け出された』なんて、とんだ間違いなのだろう。
 彼らは自分を、魔王の手から奪ったに過ぎない。
 つまり相変わらず、いや事態は悪化の一途を辿っている。

「やれやれ。前も言ったでしょう。もっと可愛く喘げ、って」
「あ゙っあっ、あ……ひ、ぎゃっ!!」

 ギュッ、と強くつねり上げられた胸の飾り。

「い゙たいっ、の、のび、る」
「嘘おっしゃい、気持ちいいクセに。腰が揺れてますよ」
「ひぃ゙っ、やめっ、ああっ」

 イきたくてもイけないからか。
 本来なら痛みで飛び上がる程の力加減でも、すざましい快感に即座に変換される。
 後ろからの激しい抽挿。
 さらに崩れ気味だった上半身を、乳首をつままれることで持ち上げられている。
 
「アレン。ちゃんと姿勢保たないと、本当に形変わっちゃうよぉ」
「い゙ぃぃっ、するっ、するからぁっ、ちぎれるぅぅっ」

 懇願して必死で半身を立て直す。
 身体は震え、呂律が回らなくなる。
 この快楽に終わりを求め、泣き声をあげることしかできない。

「でもシセロってば。いじわるし過ぎだよ。アレン、泣いちゃったじゃん」

 よしよしと頭を撫でるニアに、シセロはにべもなく『甘い』と一蹴。

「まったく……ね、アレン。こんな鬼畜より、ぼくのモノになりなよ。そしたら朝から晩まで、ずぅぅぅっと優しく気持ちよくしてあげるから!」
「へぇ、そんな貧相なモノでよく言いますね」
「あーっ、シセロひどい!!! セックスはちん〇の大きさじゃなくって、愛情だから!」
「技術もないガキが、なにを言うか」
「それは後からだってば。こう見えて大器晩成型だからさ」
「せいぜいその間に、かっさらってやりますがね」
「若者にゆずりなよっ、この性悪年寄りッ!!!」
「ふん、クソガキ」

 アレンを間に挟みながら喧嘩を始める二人。
 その間も後ろも前 (乳首)も責め立てられている。

「ど、どうっ、でも、いい、から……」

(はやく魔法解いてくれ)

 そうすれば逃げられるかもしれない。
 こんな状況であっても、彼は諦めていなかった。
 早くこんなロクデナシどもから逃げて、自由になりたい。
 魔王だの国王だの花嫁だの。そんなめんどくさいことは、懲り懲りだったのだ。

「あっ、もしかしてイかせて欲しくなっちやった?」

 能天気なニアの言葉に、小さくうなずく。
 恥ずかしさで死にたくなるが、今はガマンだ。
 
「まぁ、さぞ辛かったでしょうね」

 目の前の男が微笑む。
 とてつもなく意地が悪く、腹黒な笑みである。でも今は、それどころじゃない。

「ねえシセロ。アレンの魔法解いてあげてよ」
「ふむ……」
「シセロ」
「そうですね、良いでしょう」

 これでようやくラクになれる、と顔をあげる。
 するとその頬を、ベチンっとが叩いた。

「なっ!?」
「その代わり」

 圧倒的な質量。
 細身の身体には似つかわしくないソレをむき出しにして、シセロは微笑む。

「――ちゃんと、して頂きましょうかね。私が射精するまで」
「ふ、ふざけやがって……っ」
 
 グイグイと口元に押し付けられる肉棒に、吐き気と苛立ちをもよおす。
 よりによって男のソレを舐めさせられるなんて、死んだ方がマシというものだ。
 いっそ噛み付いてやろうか、と殺気のこもった目で睨みつける。

「いい表情だ。貴方はこうでなくては」
「このっ、恥知らずめ。この僕に、こんな汚らしいモノを口にしろって言うのか!」
「他の男に股開くようなビッチが、何を言いますか」
「ぐっ……」

 なんで知ってるんだ、と口にしそうになって、慌てて押し黙る。
 ここで動揺すべきじゃない。
 確かにアレックスに抱かれたが、不可抗力というか。きっとも何かの魔法だか呪いなのだ。
 そうでなきゃ、突然発情して男を誘うなんて――思い出すだけで、羞恥で死ねる。

くわえなさい」
「……」
「色々と説得する材料はありますけどね――ちゃんと私を満足させられたら、まず魔法を解いてあげますよ」
「できるのか!? 」
「ふっ、私をなんだと思っているのですか」

 顔をあげたアレンに、嘲笑の視線が注がれる。
 
「どうします?」
「……」

 もう限界だった。
 連続絶頂させられるのもキツいが、ガマンさせられ続ける方がもっと辛い。
 このままでは、冗談抜きで発狂してしまいそうだ。
 アレンは思い切り顔をしかめると、ゆっくり口を開ける。

(ええいっ、この変態野郎め!)

「良い子だ。ほら、歯を立てないで。以前教えたでしょう? 舌を転がすように這わせて――」

 確かに花嫁修業と称して、散々仕込まれたことがあった。しかしそれも玩具を使ったもので、同性のソレを。しかも世界一いけ好かない男の性器を、咥内に迎えることになるとは。
 屈辱と酸欠で顔が赤くなる。
 それでも必死で、肉棒にむしゃぶりついた。
 魔法を解くため。
 そのハズだった。
 でも気が付けば、そんなことは頭の中から消え失せて単純に夢中になっている。
 わずかに味わう先走りや、時折頭上で聞こえる息を詰める声。
 褒めるように頭を撫でる、意外に大きな手も。それらが妙にアレンを興奮させた。

(なんか変だ、なんか)

 酷い言葉を投げつけたりする、Sっ気満載。ほとんどDV野郎なのに。
 なぜかつぶやくように掛けられた言葉は、心が震える程に優しかった。

「そう、良い子……気持ちいいですよ、あぁ。可愛い人……」
「っう、んんっ、むぅ」

(可愛いとか言うな、ヘドが出る)

 心の中では悪態三昧。
 でも耳の後ろに触れられた指に、無意識に擦り寄ってしまう。
 まるで懐いた飼い猫のよう。
 
「アレン。私から逃げられると思いましたか。もう離しません――誰にもわたさない。魔王にも、国王にも」
「ううっ、んぐぅ、ぅゔ」

 もうワケが分からない。
 最初は国王の花嫁だの、花嫁修業だの言って処女を散らしておきながら。
 倒したハズの魔王が生きていて、国王でもあると言っている。
 結局、誰が童帝なのか。
 ノンケだった自分が、男たちに抱かれ翻弄されていく。
 混乱と恥辱と快楽と。
 今もフェラチオさせられながら、後ろは後ろでガン掘りされている。
 まるで男狂いか、娼婦のようだと自嘲したくもなるものだ。

「くっ、しっかりと全部飲みなさい……っ」
「ぅんーッ、んんんッ!」

 限界が近くなったのだろう。
 頭を掴んで打ち付けるように前後させてくる。
 嘔吐こうにも、そのいささか乱暴な様子にくぐもった悲鳴をあげるしかない。
 冷静沈着で激情とは無縁に思えたこの男には珍しい、激しい行為。
 そして勢いよく流し込まれた精液の味に、慌てて吐き出そうとする。

「ゔぐっ、んんっ! ん゙ーっ」

 それは許されず、固定された頭。息苦しさが勝り、ごくりと音を立てて青臭い体液を飲み干してしまった。

「っ、げほっ……な、なにすんだ、変態!」
「次からは、ちゃんと味わってから飲みなさい」
「つ、次なんてあるか。さっさと魔法解きやがれっ。この早漏野郎が!!!」

 口元を強く拭いながら切った啖呵たんか
 これが墓穴を掘ることに、彼自身が気がついたのは数秒後。

「――なるほど」
「ヒッ!」

(や、やばい)

 シセロの満面の笑み。
 しかしよくよく見ると、目が笑っていない。
 距離を取ろうにも、後ろでは。

「あーあ。ぼく、しーらないっと」

 そういいながら、こちらは楽しそうな笑みを浮かべるニア。

「お望み通り、魔法は解いてあげますよ。こんなモノ、私にかかれば朝メシ前ですからね。だけど今度は――」

 耳に唇を近づけ、低い声で囁きを吹き込まれた。
 
「イき狂わせてやるから、覚悟してろよ。このメス豚め」
「あっ、え、そ、それは……や、め……」

 短い呪文と共に、薄赤い光が全身を包む。
 同時にこれから受けるであろう仕打ちに、怯え真っ青になるアレンであった。

 
 



 
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