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もう一人の転生者
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その男の名は、脆木 作
いささか変わった名前であるが、それは単に彼の父親が無類の日本酒好きだからだ。
まるでワインのような口当たりと香りで……と、この辺りはどうでもいい。
彼が死んだのは、高校生の頃である。
『――脆木君ッ!』
朝の通学路で、鋭い声が名を叫んだ時には遅かった。
『あ』
目の前に迫ってくる鉄骨。
工事中のビル横を通っていた時のことである。大きな鉄の柱が、見上げた先から猛スピードで落ちてくる。
……それはきっと一瞬だっただろう。
ぐしゃりと音を立てたのはわかった。しかしそれが頭蓋骨だったか背骨か、それとも身体の他の部位か。
常日頃からマイペースで動じない男は、そのまま圧死したのだ。
衝撃的で悲劇。
若き生命が失われたことで、この事故は一瞬だけ大きく報じられてすぐに芸能人不倫疑惑のニュースに取って代わられたことなど――彼は知らない。
『な~んて感じでっ、貴方は死にましたぁ!』
「そうか」
『ちょ、反応うすっ!死んだんですってば。今さっき、鉄骨にぺちゃんこにされて!』
「そうか」
『またまたぁ~。ショック受けて泣いちゃっていいんですよ? このボインボイン♡ の豊満なお胸に!』
「……」
『えっ、えぇぇ? なに、このリアクション。めっちゃ塩やん』
空回ってわめくのは女神。
そしてここは死んだ後の場所。便宜上、あの世としておこう。
ぬぼーっと立っている男は、死にたてホヤホヤの脆木。
その表情は茫然自失ってわけでもない。ただただ、悟りきった顔であった。
「で、オレはこれからどうなるんだ」
『えっ。あ、ああ。それはですねぇ――』
そこで女神は背中に隠し持ってたクラッカーを用意。
パァァンッ、と景気よくぶち鳴らした。
『おめでとうございます! 最強勇者に転生して、異世界で魔王を倒してもらいま~す』
「……」
『だからっ、黙りこまないでくださいよ~。こういう反応が、女神の繊細でデリケートな心を傷付けるんですからねっ』
「デリケートにも、傷ついてるようにも見えねぇが」
むしろ心臓には鋼鉄の毛がモサモサ生えているようだ。
ぷぅーっと頬を膨らませた女神は、腰に手を当てる。
『もうっ、こういうトコですよ? 貴方が女の子にモテないってのは……って知らんけど』
「まぁそうだろうな」
この男。モテないどころか、どこの漫画世界だよってほどに女にキャーキャー言われる。
まずとにかく、恐ろしく顔が良い。
ハーフのような彫りの深い美形で、さらにスタイルが良く足も長い。
筋トレが趣味でガタイが良いところも、ワイルド系のイケメンだと評判なのだ。
しかし問題は本人の性格である。
鬱陶しいのは嫌い。煩わしいのも気に食わないもので、愛想も素っ気も無い。
選び放題のクセに恋人ひとつ作らない彼に、周囲の男友達には『名前 (作)のくせに』とからかわれる始末。
本人はそれすら気にせず、飄々と生きてきた。
「なんでオレの事を知らねぇアンタが、オレが転生して勇者になるだの。魔王を倒すだの知ってんだ」
『い、いや~……それは……』
彼女は視線をツツ、と逸らし引きつった笑いを浮かべる。
ぶっちゃけここで死人を待ち伏せして適当に決めただけです、と言わんばかりの態度に彼は『なるほど』とつぶやいた。
「まぁ勇者云々は知らんが、とにかく転生するのか。そこでは筋トレが出来るだろうか」
『き、筋トレ?』
「出来ればトレーニングジムなんて物があればいいんだがな。マシンがないと鍛えるのが難しい筋肉もあるだろう。オレが目指すのは、世界だ」
『へ?』
そう自信満々に言い放ち、女神はポカーン顔だ。
しかし彼の頭の中には趣味であった筋トレと、あとは飼い猫の東洋美人 (猫の名前、これも酒からとった)の心配だけである。
「とりあえず男に転生できるんだろうな?」
『そりゃまぁ、魔王倒してもらわなきゃですし……』
「魔王ってのは (肉体的に、またはボディビルダー的に) 強いのか」
『ま、まぁそうでしょうね (魔力は) 強いです。魔王ですから』
「そうか」
彼は大きくうなずく。
「じゃあ転生してやろうじゃねぇか」
『な、なんかよく分かんないけどやる気になってくれて嬉しいです!』
お分かり頂けただろうか。
両者の間には、この時点から大きな思い違いが出来たのだ――。
※※※
「と、いうことだ」
「君って、ほんとにバカなんだな。よく理解出来たよ」
アレンのしみじみとした罵倒に、アレックスは頬を緩ませる。
誤解が無いように言うが、別にこの男がドMだとかそういう特殊性癖の持ち主ではない。
ただただ、自分のブカブカの服を着てふんぞり返っているアレンがカワイイ……という事だけだ。
確かにバカなのかもしれない。
「しかしなぜ魔王を倒さなかったんだ」
「うむ。それはな――」
彼の質問に、ちいさくうなずいた。
「忘れてたのだ。フィットネスクラブを経営してたらな」
「君の頭って、中身無いのか?」
「いや。恐らくお前と同じ臓器構造だ。その質量の多少の差があるかもしれんが」
「そーゆーコトじゃない。アホゴリラ」
言いたい放題である。
「君だって一応チートな能力とやらを、授かってんだろ? だったらなんで……」
「!」
居心地悪そうに足を動かした時、大きなシャツのすそから覗いた生足にゴクリと唾が鳴る。
「おいおいおい、顔真っ赤だぞ」
「うぐっ……なんたる殺傷能力」
「ハァ?」
状況としては、ほぼ全裸状態のアレンを古い教会から助け出した後。
近くにある、自分の寝泊まり用の小屋へ彼を連れて行った。そして少ない服の中から、何とか着れそうな服を与えて温かい茶を出したところである。
「い、いや。なんでもねぇ」
「そうか?」
――ギシリ、とベッドが鳴った。
ここには来客用の椅子なんてモノはない。だからベッドに腰掛けてもらっているのだが。
「さっきの話だけど。アレックスはどんな能力なんだ?」
「オレか。オレは、この拳だ」
大きな右手を握ってみせる。
「鋼鉄をも砕く。そして」
今度は左手。開いた状態で手のひらを向けた。
「右手で壊したものは、左手で直すことができる」
「それは、すごい能力じゃないか!」
アレンが感嘆の滲んだ声をあげる。
「まさしく最強の勇者だ。これがあれば、魔王なんてイチコロだろうな」
「いや、そんなことはねぇよ。その代わり、オレはまるきり魔法が使えねぇ。魔法耐性も弱いしな」
「そうなのか。でも武器さえあれば」
「あれば脆くていけねぇぜ。すぐに壊れちまう」
「……」
元々腕力の強すぎる男だ。
武器や防具は、すぐに壊してしまうらしい。
「そもそもオレには、戦いだのなんだのってのが合わねぇんだ。それより大事な使命がある」
「使命?」
見上げてくるアレンが可憐すぎ (アレックス視点)て理性が弾け飛びそうになりながら、彼は窓の外に視線を向けた。
「全世界のだらしない体型の村人達を、もれなくバキバキでムキムキの良い身体にしてやることだ」
「……」
「筋肉はウソをつかねぇ。そして筋肉は美しい」
と言い切った後で慌てて。
「お前にはその美しさも可愛さも、完全に負けるがな」
と愛おしそうに顔を撫でるのだ。
「っ、は、恥ずかしいコト言ってんじゃないよ!股間膨らませやがって……変態っ!!」
「ゔぉ」
今度はアレンが真っ赤になって怒鳴りつける。
その言う通り、彼のズボンの前はモッコリとキツそうに張り詰めていた。
「す、すまん」
「ったく、男に欲情するなんて。どいつもこいつも……」
「それは違うぞ」
何とか鎮めようとしていた彼は、掛けられた言葉に首を横に振る。
「え?」
「違う、全然違う。オレは確かに欲情している。チ〇コが勃起状態だ」
「堂々と言うなっ! そして見せんな!!!」
「だがな、オレはお前が男だからって興奮してんじゃねぇぜ。お前が好きだから。好きなやつを一目見てチ〇コ勃たねぇヤツは、男じゃねぇかEDだ」
「同じ男でも、それは賛同しかねるが……」
これじゃあ男性諸君が、人生の大部分を股間を熱くさせている変態のようだ。
しかしアレックスの想いは止まらない。
「そもそも男とか女とか関係ねぇ。オレはお前の事を、本気で好きだ。それに大切にしたいとも思っている」
「……ケッ、なにが『大切にしたい』だ」
苦々しい顔でアレンが吐き捨てた。
「どうせ君も、僕をぐちゃぐちゃにレイプするんだろ。雌犬だの雌豚だの罵ってさァ」
「っ、そんなことはしねぇぜ」
「ふん。どうだか。さっきは散々人を触りやがって。あと『初夜』とかなんとかほざいてたよな? 語るに落ちるってやつだな」
「初夜はするが――」
彼はやおらにアレンの手からカップを取る。
そして左頬に手を添え、そっと右頬に口付けた。
「!」
「今はまだだ。……だが、確かに少し舞い上がっていたらしい。すまない。本当に大切にする」
真っ直ぐな瞳で覗き込む。
股間をフル勃起させながら。
「君さ、ほんとバカだよな」
「……」
アレンには呆れたようにため息をつかれ、肩を落とす。
恋なんて前世も今世も、ほぼした事の無い男だ。浮き足立ったり、暴走したりは多少仕方ないのかもしれない。
「とはいえ、もう少しはここにいてやるよ。僕だって、城には戻りたくないからな」
「アレン……」
「勘違いすんな。僕は誰のものにもならない」
「愛してる。オレの花嫁」
「だから話を聞けっ!」
アレンのスラリと長い足が、アレックスの股間をクリティカルヒットした。
「ぐふっ!!!」
いくら女神の加護を持つチート能力者でも、金蹴りの前には無力であった――。
いささか変わった名前であるが、それは単に彼の父親が無類の日本酒好きだからだ。
まるでワインのような口当たりと香りで……と、この辺りはどうでもいい。
彼が死んだのは、高校生の頃である。
『――脆木君ッ!』
朝の通学路で、鋭い声が名を叫んだ時には遅かった。
『あ』
目の前に迫ってくる鉄骨。
工事中のビル横を通っていた時のことである。大きな鉄の柱が、見上げた先から猛スピードで落ちてくる。
……それはきっと一瞬だっただろう。
ぐしゃりと音を立てたのはわかった。しかしそれが頭蓋骨だったか背骨か、それとも身体の他の部位か。
常日頃からマイペースで動じない男は、そのまま圧死したのだ。
衝撃的で悲劇。
若き生命が失われたことで、この事故は一瞬だけ大きく報じられてすぐに芸能人不倫疑惑のニュースに取って代わられたことなど――彼は知らない。
『な~んて感じでっ、貴方は死にましたぁ!』
「そうか」
『ちょ、反応うすっ!死んだんですってば。今さっき、鉄骨にぺちゃんこにされて!』
「そうか」
『またまたぁ~。ショック受けて泣いちゃっていいんですよ? このボインボイン♡ の豊満なお胸に!』
「……」
『えっ、えぇぇ? なに、このリアクション。めっちゃ塩やん』
空回ってわめくのは女神。
そしてここは死んだ後の場所。便宜上、あの世としておこう。
ぬぼーっと立っている男は、死にたてホヤホヤの脆木。
その表情は茫然自失ってわけでもない。ただただ、悟りきった顔であった。
「で、オレはこれからどうなるんだ」
『えっ。あ、ああ。それはですねぇ――』
そこで女神は背中に隠し持ってたクラッカーを用意。
パァァンッ、と景気よくぶち鳴らした。
『おめでとうございます! 最強勇者に転生して、異世界で魔王を倒してもらいま~す』
「……」
『だからっ、黙りこまないでくださいよ~。こういう反応が、女神の繊細でデリケートな心を傷付けるんですからねっ』
「デリケートにも、傷ついてるようにも見えねぇが」
むしろ心臓には鋼鉄の毛がモサモサ生えているようだ。
ぷぅーっと頬を膨らませた女神は、腰に手を当てる。
『もうっ、こういうトコですよ? 貴方が女の子にモテないってのは……って知らんけど』
「まぁそうだろうな」
この男。モテないどころか、どこの漫画世界だよってほどに女にキャーキャー言われる。
まずとにかく、恐ろしく顔が良い。
ハーフのような彫りの深い美形で、さらにスタイルが良く足も長い。
筋トレが趣味でガタイが良いところも、ワイルド系のイケメンだと評判なのだ。
しかし問題は本人の性格である。
鬱陶しいのは嫌い。煩わしいのも気に食わないもので、愛想も素っ気も無い。
選び放題のクセに恋人ひとつ作らない彼に、周囲の男友達には『名前 (作)のくせに』とからかわれる始末。
本人はそれすら気にせず、飄々と生きてきた。
「なんでオレの事を知らねぇアンタが、オレが転生して勇者になるだの。魔王を倒すだの知ってんだ」
『い、いや~……それは……』
彼女は視線をツツ、と逸らし引きつった笑いを浮かべる。
ぶっちゃけここで死人を待ち伏せして適当に決めただけです、と言わんばかりの態度に彼は『なるほど』とつぶやいた。
「まぁ勇者云々は知らんが、とにかく転生するのか。そこでは筋トレが出来るだろうか」
『き、筋トレ?』
「出来ればトレーニングジムなんて物があればいいんだがな。マシンがないと鍛えるのが難しい筋肉もあるだろう。オレが目指すのは、世界だ」
『へ?』
そう自信満々に言い放ち、女神はポカーン顔だ。
しかし彼の頭の中には趣味であった筋トレと、あとは飼い猫の東洋美人 (猫の名前、これも酒からとった)の心配だけである。
「とりあえず男に転生できるんだろうな?」
『そりゃまぁ、魔王倒してもらわなきゃですし……』
「魔王ってのは (肉体的に、またはボディビルダー的に) 強いのか」
『ま、まぁそうでしょうね (魔力は) 強いです。魔王ですから』
「そうか」
彼は大きくうなずく。
「じゃあ転生してやろうじゃねぇか」
『な、なんかよく分かんないけどやる気になってくれて嬉しいです!』
お分かり頂けただろうか。
両者の間には、この時点から大きな思い違いが出来たのだ――。
※※※
「と、いうことだ」
「君って、ほんとにバカなんだな。よく理解出来たよ」
アレンのしみじみとした罵倒に、アレックスは頬を緩ませる。
誤解が無いように言うが、別にこの男がドMだとかそういう特殊性癖の持ち主ではない。
ただただ、自分のブカブカの服を着てふんぞり返っているアレンがカワイイ……という事だけだ。
確かにバカなのかもしれない。
「しかしなぜ魔王を倒さなかったんだ」
「うむ。それはな――」
彼の質問に、ちいさくうなずいた。
「忘れてたのだ。フィットネスクラブを経営してたらな」
「君の頭って、中身無いのか?」
「いや。恐らくお前と同じ臓器構造だ。その質量の多少の差があるかもしれんが」
「そーゆーコトじゃない。アホゴリラ」
言いたい放題である。
「君だって一応チートな能力とやらを、授かってんだろ? だったらなんで……」
「!」
居心地悪そうに足を動かした時、大きなシャツのすそから覗いた生足にゴクリと唾が鳴る。
「おいおいおい、顔真っ赤だぞ」
「うぐっ……なんたる殺傷能力」
「ハァ?」
状況としては、ほぼ全裸状態のアレンを古い教会から助け出した後。
近くにある、自分の寝泊まり用の小屋へ彼を連れて行った。そして少ない服の中から、何とか着れそうな服を与えて温かい茶を出したところである。
「い、いや。なんでもねぇ」
「そうか?」
――ギシリ、とベッドが鳴った。
ここには来客用の椅子なんてモノはない。だからベッドに腰掛けてもらっているのだが。
「さっきの話だけど。アレックスはどんな能力なんだ?」
「オレか。オレは、この拳だ」
大きな右手を握ってみせる。
「鋼鉄をも砕く。そして」
今度は左手。開いた状態で手のひらを向けた。
「右手で壊したものは、左手で直すことができる」
「それは、すごい能力じゃないか!」
アレンが感嘆の滲んだ声をあげる。
「まさしく最強の勇者だ。これがあれば、魔王なんてイチコロだろうな」
「いや、そんなことはねぇよ。その代わり、オレはまるきり魔法が使えねぇ。魔法耐性も弱いしな」
「そうなのか。でも武器さえあれば」
「あれば脆くていけねぇぜ。すぐに壊れちまう」
「……」
元々腕力の強すぎる男だ。
武器や防具は、すぐに壊してしまうらしい。
「そもそもオレには、戦いだのなんだのってのが合わねぇんだ。それより大事な使命がある」
「使命?」
見上げてくるアレンが可憐すぎ (アレックス視点)て理性が弾け飛びそうになりながら、彼は窓の外に視線を向けた。
「全世界のだらしない体型の村人達を、もれなくバキバキでムキムキの良い身体にしてやることだ」
「……」
「筋肉はウソをつかねぇ。そして筋肉は美しい」
と言い切った後で慌てて。
「お前にはその美しさも可愛さも、完全に負けるがな」
と愛おしそうに顔を撫でるのだ。
「っ、は、恥ずかしいコト言ってんじゃないよ!股間膨らませやがって……変態っ!!」
「ゔぉ」
今度はアレンが真っ赤になって怒鳴りつける。
その言う通り、彼のズボンの前はモッコリとキツそうに張り詰めていた。
「す、すまん」
「ったく、男に欲情するなんて。どいつもこいつも……」
「それは違うぞ」
何とか鎮めようとしていた彼は、掛けられた言葉に首を横に振る。
「え?」
「違う、全然違う。オレは確かに欲情している。チ〇コが勃起状態だ」
「堂々と言うなっ! そして見せんな!!!」
「だがな、オレはお前が男だからって興奮してんじゃねぇぜ。お前が好きだから。好きなやつを一目見てチ〇コ勃たねぇヤツは、男じゃねぇかEDだ」
「同じ男でも、それは賛同しかねるが……」
これじゃあ男性諸君が、人生の大部分を股間を熱くさせている変態のようだ。
しかしアレックスの想いは止まらない。
「そもそも男とか女とか関係ねぇ。オレはお前の事を、本気で好きだ。それに大切にしたいとも思っている」
「……ケッ、なにが『大切にしたい』だ」
苦々しい顔でアレンが吐き捨てた。
「どうせ君も、僕をぐちゃぐちゃにレイプするんだろ。雌犬だの雌豚だの罵ってさァ」
「っ、そんなことはしねぇぜ」
「ふん。どうだか。さっきは散々人を触りやがって。あと『初夜』とかなんとかほざいてたよな? 語るに落ちるってやつだな」
「初夜はするが――」
彼はやおらにアレンの手からカップを取る。
そして左頬に手を添え、そっと右頬に口付けた。
「!」
「今はまだだ。……だが、確かに少し舞い上がっていたらしい。すまない。本当に大切にする」
真っ直ぐな瞳で覗き込む。
股間をフル勃起させながら。
「君さ、ほんとバカだよな」
「……」
アレンには呆れたようにため息をつかれ、肩を落とす。
恋なんて前世も今世も、ほぼした事の無い男だ。浮き足立ったり、暴走したりは多少仕方ないのかもしれない。
「とはいえ、もう少しはここにいてやるよ。僕だって、城には戻りたくないからな」
「アレン……」
「勘違いすんな。僕は誰のものにもならない」
「愛してる。オレの花嫁」
「だから話を聞けっ!」
アレンのスラリと長い足が、アレックスの股間をクリティカルヒットした。
「ぐふっ!!!」
いくら女神の加護を持つチート能力者でも、金蹴りの前には無力であった――。
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