2 / 94
チート終了勇者様
しおりを挟む
「い、今、なんて……」
アレンは耳を疑った。
しかし目の前の男。王の側近であって大臣、さらに偉大な魔法使いのシセロがため息をつく。
「貴方の顔にくっついているソレは飾り物ですか?」
実にイヤミっぽい物言いである。
常に神経質そうな表情を浮かべ、人を馬鹿にした態度と普通に繰り出してくる罵倒。
アレンは彼のことが、苦手だった。
女と違って、この男には能力が通じない。
しかもやたら突っかかってきて、うっとおしい他ないのだ。
この国の実権は、この大臣が持っている。
だから冒険中は何度も呼び出され、つまらない用事を命じられウンザリしたものだった。
「やれやれ、仕方ない。もう一回だけ言ってあげましょう。感謝して私の足にキスしていいですよ。このメスブタ」
「う、うるさい。さっさと言え、このイヤミ野郎!」
ついつい口調が荒くなる。
そんな動揺している様も楽しげに、シセロが口を開いた。
「――貴方には次期国王、ビルガ様と結婚していただきます」
「は、ハァァァ!?」
次期国王、つまり現在王子のビルガはまだ10歳の少年。
去年即位したばかりである。
「お前っ、自分が何言ってんのかわかってんのかよ!」
「貴方こそ、なぜ驚くのか理解に苦しみますね。むしろ光栄だと、泣いて嬉ションするべきでしょうに」
「しねぇよッ! 僕をなんだと思ってんだ」
「国の――いや、私の忠実なるメスブタですけど?」
「そこがそもそも間違ってるッ!! 誰がお前のだよ」
掴みかからんばかりに、怒鳴りつける。
それを周りはいつもの事だと、呆れて眺めた。
この二人はいつもこんな感じなのだ。
常に馬鹿にし、上から目線のシセロに剣士であり勇者でもあるアレンがブチ切れる。
しかしなんだかんだで、有能なこの大臣が一枚も二枚も上手で丸め込まれる……それがいつものお約束であった。
「だいたい、国王って男だろ。なんで同じ男の僕が結婚するんだよ。ンなもん、そこらの貴族の女か隣国の王女をつかまえてくりゃいいだろ」
「ハァ、これだから庶民は……国王たるもの、結婚相手に男も女もないのですよ。結婚は異性とするべき、は生殖に必死こいてるネズミと同等の文化ですよ」
「おいおい。今、国民の大多数を敵に回しやがったな」
「気の所為じゃないですか?」
シレッと言い放ち、シセロは跪くこともしないアレンの前に進み出た。
「とにかく国王陛下の命令です。貴方は今日から、童帝ビルガ様の婚約者として花嫁修業をしてもらいます」
「ど、童貞?」
「失礼なことをおっしゃい。童帝、です」
錯乱のあまり、つまらないボケをしてしまう。
彼の頭では理解不能だったのだ。
国の英雄、伝説の勇者、最強の剣士。そんな自分が男と、しかも10歳のガキと結婚するなんて。
「これは決定事項です。逆らうなら、それ相応の処罰を受けて頂きますが?」
「処罰だと……この僕が? この国を魔王から救ったのは誰だと思ってんだッ!」
「やれやれ。それがなんですか」
「!?」
何を些細な、と馬鹿にしたように鼻で笑う男に驚愕する。
「ここにいる限り、貴方は国王の命令に背くことは許されないのです」
「っ、横暴だ!」
「なんとでもおっしゃい」
なぜこんな仕打ちを――アレンは夢であれば早く覚めてくれと願った。
チート能力が効かない男相手に、いくら媚びを売ったとてムダだと反抗し過ぎたか。
だからシセロはとんでもないイヤガラセを思いついたに違いない。
だとすればコレは嘘かドッキリか。どちらにせよ、少年王と男剣士が結婚するなんて前代未聞でありえない。
この魔法と剣の世界であっても人間は男と女しかないし、男が身ごもるなんてありえない。
(いいじゃないか。そのクソッタレなイヤガラセに乗ってやる。んでもって、今度はこのムカつく野郎を大臣から引きずり下ろしてやるッ!!!)
そう決意してアレンは唇を噛む。
異世界転生者の意地を見せてやる、と。
「おや? まさか怖いのですか。勇者とあろうお人が、国王と結婚するのが」
「ンなワケないだろっ。お前こそヘタな策略で僕をハメようったって、簡単にいかないぞ」
早速、全力で煽りにかかるシセロに中指立てて言い返した。
すると待ってました、とばかりに彼は大きく頷く。
「ハメられるのも、イかされるのも貴方ですけどね。アレン」
「!!!」
すました顔して、とんだ下ネタをぶち込んでくる。
思わず怒りと羞恥で赤面したアレンは、睨みつけた。
サラサラとした長い銀髪から覗く耳は尖っている。
この魔法使いであり大臣は、エルフなのだ。エルフの容姿はおしなべて美しい。
涼し気な目元を細め、薄く形の良い唇を不敵に歪め。
実に腹黒い笑みを浮かべる男。
「今日から、花嫁修業をしましょうね」
「チッ……このクソ外道が」
ここからが、アレンの受難の始まりである。
アレンは耳を疑った。
しかし目の前の男。王の側近であって大臣、さらに偉大な魔法使いのシセロがため息をつく。
「貴方の顔にくっついているソレは飾り物ですか?」
実にイヤミっぽい物言いである。
常に神経質そうな表情を浮かべ、人を馬鹿にした態度と普通に繰り出してくる罵倒。
アレンは彼のことが、苦手だった。
女と違って、この男には能力が通じない。
しかもやたら突っかかってきて、うっとおしい他ないのだ。
この国の実権は、この大臣が持っている。
だから冒険中は何度も呼び出され、つまらない用事を命じられウンザリしたものだった。
「やれやれ、仕方ない。もう一回だけ言ってあげましょう。感謝して私の足にキスしていいですよ。このメスブタ」
「う、うるさい。さっさと言え、このイヤミ野郎!」
ついつい口調が荒くなる。
そんな動揺している様も楽しげに、シセロが口を開いた。
「――貴方には次期国王、ビルガ様と結婚していただきます」
「は、ハァァァ!?」
次期国王、つまり現在王子のビルガはまだ10歳の少年。
去年即位したばかりである。
「お前っ、自分が何言ってんのかわかってんのかよ!」
「貴方こそ、なぜ驚くのか理解に苦しみますね。むしろ光栄だと、泣いて嬉ションするべきでしょうに」
「しねぇよッ! 僕をなんだと思ってんだ」
「国の――いや、私の忠実なるメスブタですけど?」
「そこがそもそも間違ってるッ!! 誰がお前のだよ」
掴みかからんばかりに、怒鳴りつける。
それを周りはいつもの事だと、呆れて眺めた。
この二人はいつもこんな感じなのだ。
常に馬鹿にし、上から目線のシセロに剣士であり勇者でもあるアレンがブチ切れる。
しかしなんだかんだで、有能なこの大臣が一枚も二枚も上手で丸め込まれる……それがいつものお約束であった。
「だいたい、国王って男だろ。なんで同じ男の僕が結婚するんだよ。ンなもん、そこらの貴族の女か隣国の王女をつかまえてくりゃいいだろ」
「ハァ、これだから庶民は……国王たるもの、結婚相手に男も女もないのですよ。結婚は異性とするべき、は生殖に必死こいてるネズミと同等の文化ですよ」
「おいおい。今、国民の大多数を敵に回しやがったな」
「気の所為じゃないですか?」
シレッと言い放ち、シセロは跪くこともしないアレンの前に進み出た。
「とにかく国王陛下の命令です。貴方は今日から、童帝ビルガ様の婚約者として花嫁修業をしてもらいます」
「ど、童貞?」
「失礼なことをおっしゃい。童帝、です」
錯乱のあまり、つまらないボケをしてしまう。
彼の頭では理解不能だったのだ。
国の英雄、伝説の勇者、最強の剣士。そんな自分が男と、しかも10歳のガキと結婚するなんて。
「これは決定事項です。逆らうなら、それ相応の処罰を受けて頂きますが?」
「処罰だと……この僕が? この国を魔王から救ったのは誰だと思ってんだッ!」
「やれやれ。それがなんですか」
「!?」
何を些細な、と馬鹿にしたように鼻で笑う男に驚愕する。
「ここにいる限り、貴方は国王の命令に背くことは許されないのです」
「っ、横暴だ!」
「なんとでもおっしゃい」
なぜこんな仕打ちを――アレンは夢であれば早く覚めてくれと願った。
チート能力が効かない男相手に、いくら媚びを売ったとてムダだと反抗し過ぎたか。
だからシセロはとんでもないイヤガラセを思いついたに違いない。
だとすればコレは嘘かドッキリか。どちらにせよ、少年王と男剣士が結婚するなんて前代未聞でありえない。
この魔法と剣の世界であっても人間は男と女しかないし、男が身ごもるなんてありえない。
(いいじゃないか。そのクソッタレなイヤガラセに乗ってやる。んでもって、今度はこのムカつく野郎を大臣から引きずり下ろしてやるッ!!!)
そう決意してアレンは唇を噛む。
異世界転生者の意地を見せてやる、と。
「おや? まさか怖いのですか。勇者とあろうお人が、国王と結婚するのが」
「ンなワケないだろっ。お前こそヘタな策略で僕をハメようったって、簡単にいかないぞ」
早速、全力で煽りにかかるシセロに中指立てて言い返した。
すると待ってました、とばかりに彼は大きく頷く。
「ハメられるのも、イかされるのも貴方ですけどね。アレン」
「!!!」
すました顔して、とんだ下ネタをぶち込んでくる。
思わず怒りと羞恥で赤面したアレンは、睨みつけた。
サラサラとした長い銀髪から覗く耳は尖っている。
この魔法使いであり大臣は、エルフなのだ。エルフの容姿はおしなべて美しい。
涼し気な目元を細め、薄く形の良い唇を不敵に歪め。
実に腹黒い笑みを浮かべる男。
「今日から、花嫁修業をしましょうね」
「チッ……このクソ外道が」
ここからが、アレンの受難の始まりである。
10
お気に入りに追加
353
あなたにおすすめの小説
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
【完結】【R18BL】極上オメガ、いろいろあるけどなんだかんだで毎日楽しく過ごしてます
ちゃっぷす
BL
顔良しスタイル良し口悪し!極上Ωの主人公、圭吾のイベントストーリー。社会人になってからも、相変わらずアレなαとβの夫ふたりに溺愛欲情されまくり。イチャラブあり喧嘩あり変態プレイにレイプあり。今シリーズからピーター参戦。倫理観一切なしの頭の悪いあほあほえろBL。(※更新予定がないので完結としています※)
「異世界転移したオメガ、貴族兄弟に飼われることになりました」の転生編です。
アカウント移行のため再投稿しました。
ベースそのままに加筆修正入っています。
※イチャラブ、3P、4P、レイプ、♂×♀など、歪んだ性癖爆発してる作品です※
※倫理観など一切なし※
※アホエロ※
※色気のないセックス描写※
※特にレイプが苦手な方は閲覧をおススメしません※
※それでもOKという許容範囲ガバガバの方はどうぞおいでくださいませ※
【圭吾シリーズ】
「異世界転移したオメガ、貴族兄弟に飼われることになりました」(本編)
「極上オメガ、前世の恋人2人に今世も溺愛されています」(転生編)
「極上オメガ、いろいろあるけどなんだかんだで毎日楽しく過ごしてます」(イベントストーリー編)←イマココ
変態村♂〜俺、やられます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。
そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。
暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。
必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。
その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。
果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?
おっさん家政夫は自警団独身寮で溺愛される
月歌(ツキウタ)
BL
妻に浮気された上、離婚宣告されたおっさんの話。ショックか何かで、異世界に転移してた。異世界の自警団で、家政夫を始めたおっさんが、色々溺愛される話。
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。
オークなんかにメス墜ちさせられるわけがない!
空倉改称
BL
異世界転生した少年、茂宮ミノル。彼は目覚めてみると、オークの腕の中にいた。そして群れのリーダーだったオークに、無理やりながらに性行為へと発展する。
しかしやはりと言うべきか、ミノルがオークに敵うはずがなく。ミノルはメス墜ちしてしまった。そしてオークの中でも名器という噂が広まり、なんやかんやでミノルは彼らの中でも立場が上になっていく。
そしてある日、リーダーのオークがミノルに結婚を申し入れた。しかしそれをキッカケに、オークの中でミノルの奪い合いが始まってしまい……。
(のんびりペースで更新してます、すみません(汗))
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる