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友情宣言1
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「お前よくもまあ、一緒に住もうなんて言えたな。自分はこんな部屋に住んでおきながら」
「め、面目ない」
叶芽の呆れた様子に、こうべを垂れる光雄。
市販薬の過剰摂取でパキっていたところを見つかり。
『お前を更生させる』
と宣言されて唖然とした。てっきり呆れられるかヤバい人間扱いで距離を取られるかと思ったのだ。
それが甘かった。
「荷解きすら出来てないじゃん」
未だダンボールの散乱する部屋。中途半端に開けられた物も、中身がそこらに放置されているために足の踏み場がない状態になっている。
そもそもなぜ彼の部屋にいるのか。
心配のあまり(?) 押しかけ同棲をしようとする光雄を必死で止めた。
そしてなにがどうなったか、叶芽が光雄の部屋に行くことになってしまったのだ。
「いやその忙しくて……」
「人の部屋に顔出す押しかけるヒマはあるのに?」
「それは」
なにやらモゴモゴと言っているが要約するに。
『昔から片付けが壊滅的に出来ず実家にいる時はそれで良かったが、一人暮らしをはじめてすぐに汚部屋になる』
とのこと。
「それで叶芽のとこが居心地よくてさ」
「入り浸ろうとしたわけか」
見た目より図々しい青年である。光雄はあわてて。
「い、いや。手ぶらでってわけじゃないぞ! それに片付ける気はあるんだ。一人じゃどうにも無理ってだけで」
つまりさっき訪ねてきたのも、部屋の掃除を手伝って欲しいと頼みにきたという事だ。
「そしたらお前がぶっ倒れてたから驚いた」
「倒れてないし、別に大丈夫だから」
今度は叶芽の方がきまり悪そうな顔をする。
まさか堂々と入ってくるとは思わなかったのだ。
「でもあれはダメだぞ。下手すりゃ死ぬ」
「……の方がいいけどな」
「?」
「いや、なんでもない」
最初の吐き気さえ乗り切ればあとはふわふわと気持ちよくなれる。そのままあの世にいけたらどれだけ幸福だろう。
まだ重篤な後遺症を知らない叶芽は、そんな事を考えていた。
「とにかく」
怒ったような、でもすごく悲しい目をして光雄がまっすぐ見つめてくる。
「もうやめてくれ。心臓に悪い」
「お前は僕のなんなんだよ」
叶芽の言葉に彼は少し戸惑ったように首をかしげる。そして。
「なにって友達だろ」
「と……?」
「友達が薬やってたら心配するだろうが」
単なるお隣さんの認識だったのは叶芽だけのようだ。
「なんか悩みとかあるのか」
深刻な顔で訊ねてくる光雄に視線を逸らす。
「そりゃな。でも誰しもあるだろうよ」
「俺は叶芽の悩みが聴きたい」
「お前なぁ」
どこまで距離感がおかしくお人好しなのだ、と呆れてしまう。
たかがアパートの隣人ではないか。アクシデントのせいでここまで付き合いはあったが、それもドアが直ればまた元の無関心な関係にもどる。
そう思っていた。
「そ、そんなことより。片付けるんだろ、もたもたしてたら終わらない」
これ以上掘り下げたら具合が悪い。だから足元のダンボールを指さして言った。
「ほらまずは全部出して、話はそれから」
「え?」
「どうせ不要な物溜め込んでるんだろ。あと空きダンボールにゴミ袋入れて。そこに明らかなゴミは入れていけ。あ、保留するものはこっちの空きダンボールに」
「あ、ええっと」
「さっさとしな、日が暮れる!」
「はいっ!!」
叶芽の怒声で光雄がビクッとしたあと、あわてて動き出す。
そしてこのあと数時間、黙々と二人は部屋の片付けに勤しむのであった。
「め、面目ない」
叶芽の呆れた様子に、こうべを垂れる光雄。
市販薬の過剰摂取でパキっていたところを見つかり。
『お前を更生させる』
と宣言されて唖然とした。てっきり呆れられるかヤバい人間扱いで距離を取られるかと思ったのだ。
それが甘かった。
「荷解きすら出来てないじゃん」
未だダンボールの散乱する部屋。中途半端に開けられた物も、中身がそこらに放置されているために足の踏み場がない状態になっている。
そもそもなぜ彼の部屋にいるのか。
心配のあまり(?) 押しかけ同棲をしようとする光雄を必死で止めた。
そしてなにがどうなったか、叶芽が光雄の部屋に行くことになってしまったのだ。
「いやその忙しくて……」
「人の部屋に顔出す押しかけるヒマはあるのに?」
「それは」
なにやらモゴモゴと言っているが要約するに。
『昔から片付けが壊滅的に出来ず実家にいる時はそれで良かったが、一人暮らしをはじめてすぐに汚部屋になる』
とのこと。
「それで叶芽のとこが居心地よくてさ」
「入り浸ろうとしたわけか」
見た目より図々しい青年である。光雄はあわてて。
「い、いや。手ぶらでってわけじゃないぞ! それに片付ける気はあるんだ。一人じゃどうにも無理ってだけで」
つまりさっき訪ねてきたのも、部屋の掃除を手伝って欲しいと頼みにきたという事だ。
「そしたらお前がぶっ倒れてたから驚いた」
「倒れてないし、別に大丈夫だから」
今度は叶芽の方がきまり悪そうな顔をする。
まさか堂々と入ってくるとは思わなかったのだ。
「でもあれはダメだぞ。下手すりゃ死ぬ」
「……の方がいいけどな」
「?」
「いや、なんでもない」
最初の吐き気さえ乗り切ればあとはふわふわと気持ちよくなれる。そのままあの世にいけたらどれだけ幸福だろう。
まだ重篤な後遺症を知らない叶芽は、そんな事を考えていた。
「とにかく」
怒ったような、でもすごく悲しい目をして光雄がまっすぐ見つめてくる。
「もうやめてくれ。心臓に悪い」
「お前は僕のなんなんだよ」
叶芽の言葉に彼は少し戸惑ったように首をかしげる。そして。
「なにって友達だろ」
「と……?」
「友達が薬やってたら心配するだろうが」
単なるお隣さんの認識だったのは叶芽だけのようだ。
「なんか悩みとかあるのか」
深刻な顔で訊ねてくる光雄に視線を逸らす。
「そりゃな。でも誰しもあるだろうよ」
「俺は叶芽の悩みが聴きたい」
「お前なぁ」
どこまで距離感がおかしくお人好しなのだ、と呆れてしまう。
たかがアパートの隣人ではないか。アクシデントのせいでここまで付き合いはあったが、それもドアが直ればまた元の無関心な関係にもどる。
そう思っていた。
「そ、そんなことより。片付けるんだろ、もたもたしてたら終わらない」
これ以上掘り下げたら具合が悪い。だから足元のダンボールを指さして言った。
「ほらまずは全部出して、話はそれから」
「え?」
「どうせ不要な物溜め込んでるんだろ。あと空きダンボールにゴミ袋入れて。そこに明らかなゴミは入れていけ。あ、保留するものはこっちの空きダンボールに」
「あ、ええっと」
「さっさとしな、日が暮れる!」
「はいっ!!」
叶芽の怒声で光雄がビクッとしたあと、あわてて動き出す。
そしてこのあと数時間、黙々と二人は部屋の片付けに勤しむのであった。
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