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サイコパスの善悪

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「あっ♡ あ゙っ♡ んぅ♡♡」
「思ったより仕上がっちゃったなあ」

 は目の前で身悶える彼を眺めてつぶやく。
 
「泰雅君みたいなタイプって、あんがい快楽に弱いのかな」
「んひっ♡ し、しりゃないっ、わかんない♡ 」
「知らないことないでしょ。こんなにメス犬みたく腰振って玩具くわえて」
「お゙ぅ♡ きゅ、きゅうにっ、うごかすなぁっ♡♡」

 ノンケにはまずケツ穴からってね。まあ知らないけど。
 僕は鼻歌混じりに、今度はどこを開発してあげようか考えていた。





 ――人の善悪って所詮は自己防衛なんだと思うわけだ。
 というと飛躍しすぎかな。
 
 子供が『どうして人を殺してはいけないの?』と聞くとする。
 大人たちはない知恵を絞って必死に考ええるだろう。
 法律だから? 自分が殺されるのは嫌だから?
 でもその答えってあんがい簡単な気がする。

 善悪という基準ってそもそもが曖昧で、自分を守るための薄っぺらい盾にしかならないと思うんだよね。
 言葉の通じる人間、しかもごく一部の相手にしか通用しない。そいつの善悪なんて全く別の文明の者達や猛獣どもにはにすらなりゃしないんだから。

 そして考えたのが、この世に蔓延する善悪の区別っていうのは強者が考えたそれなわけ。

 だったら僕が決めた善悪を、弱者である者に守らせてもいいんじゃないかって。
 というのはただの言い訳で屁理屈なのは自覚してるつもり。

「泰雅君」

 死んだように眠る彼の頬に唇を寄せる。
 覚えて無いかもしれないけど、僕はずっと前から君を知っているよ。小学四年生で転校してきた僕と。あまり学校に来なくなっていた、来ても学年の問題児で鼻つまみ者の君とは接点がまるでなかったね。

 万引きや置き引き。喧嘩、カツアゲなんて日常茶飯事の不良少年はずっと同じような道を歩み続けてきたんだろう。
 
 その母親だってロクでもなかったと聞いている。
 そして実際そうだった。
 話を聞けばいかに自分が不幸な女で、男に虐げられてきたかってことを熱心に僕に話すんだ。
 
 その実は、単になにも考えず男と避妊なしセックスをして孕んで相手に捨てられたってだけ。
 水商売だけじゃなく風俗にまで身を落としたのを我が子のせいにする、とんでもないクソ女だ。

 だから僕は彼を救ってあげようと思った。
 僕には、経済的にも社会的にも余裕があるからね。つまり強者だ。弱者である彼の善悪は僕が決めていい。

「君は覚えてないだろうな」

 喧嘩で目の上にアザをつくっても平気な顔をしていたくせに、母親に頬を打たれて家を追い出されたら途方に暮れた顔でたたずむ君の横顔を見てしまった僕を。

 見てはいけないモノを見たと思った。
 とても興奮した。初めて勃起した瞬間だったりもする。

「僕が君を導いてあげるね」

 泣き腫らした目元。どんな夢を見ているのか、時折息を乱す様に愛しさが込み上げた。
 だから、たまらずその唇に口付けた。
 
 ……僕の善悪を叩き込んだ時、僕と彼は本当に結ばれるのだと信じて。

 
 
 
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