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悪人肩透かし1
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「泰雅君、おはよう」
「……」
男が部屋に入ってくる。その手にはお盆、さらにそこにはトーストとサラダの乗った皿とリンゴジュースの入ったグラス。
つまり朝食を持ってきた。
「外は天気いいよ」
「……」
「でも夕方から小雨だって。」
「……」
「風も気持ちいいね、窓開けようか」
「……」
「いいお出かけ日和だよねえ」
一人で喋りながらタツオはサイドテーブルに朝食を置く。
「まあ、君は外に出さないんだけどね」
ああ嫌がらせのつもりなのか。
俺はなにも応えない。応えるほどお人好しでもバカでもプライド皆無のクズでもない。
「うーん、すっかり嫌われちゃったかなあ」
頭をかきながらも、奴の表情はずっと笑顔だ。貼り付けたような笑顔。ゾッとする、見たくもない。
「ねえ泰雅君、そんなに怒らないでよ。昨晩は君に少し痛い思いさせちゃったかもしれない。でも、これも僕なりの愛のムチっていうかね……うーん、確かにめちゃくちゃ興奮したけども」
最低だ、この変態野郎。とんだドSじゃねえか。
でもあれから俺の腹にできた火傷跡に軟膏を塗って、部屋の中にあるシャワーを浴びることだけは許可された。
とはいっても、ろくに動けなかったからこいつに抱えられるようにして行ったんだった。
服まで脱がされた時はもうダメだと思った。
でもズブ濡れになるのも構わず、俺の髪やら身体やらを洗っただけ。その後はもう人形みたいに新しい服を着せられて、髪を乾かされて。
またベッドに寝かされた。
『おやすみ』
と電気を消して出ていったタツオを呆然と眺めるしか出来なかった。
何したいのか、本当に理解できない。
「君はオレンジジュースが苦手だから、ちゃんとリンゴジュースにしたよ。好きだったよね、確か家の冷蔵庫にも先週の月曜日から水曜まで一リットルパックが入ってた」
「あ?」
俺の家の冷蔵庫のことなんで知ってんだ。まさかストーカーか? まさかじゃなくて普通にストーカーだよな。
マジで気持ち悪いし、ヤバい奴じゃん。
「ようやく返事してくれたね。泰雅君」
「っ、こっち見んな変態!」
にじり寄ってきそうな男を必死で拒絶する。
何が目的かわからんが、とにかくこいつは何から何までおかしい。
でも拒絶しすぎるとまたあのおしおきがあると思うと身体が震える。
「怖いの? 震えてる」
「ひ……っ……く、来るな」
思った以上に昨夜のことがこたえてたらしい。
同じ空間にいるのも怖い。そうだ怖いんだよ、悪いか。あんなことされて、ビビらない奴がいるかってんだ。
「ごめんね、もう痛いことはしないから。約束するよ」
タツオは寂しげに目を伏せて言った。
そして。
「朝ごはん、ちゃんと食べるんだよ」
と立ち上がった。
「あ、そうそう。部屋の中は動けるようにするね。手錠も外してあげる」
「え?」
「ここにはトイレもシャワールームも、飲み物なら冷蔵庫に入ってるからね。ああ、テレビのリモコンはこれ。スマホはあげられないけど、ネットがしたかったらパソコンは検討しようかな。何があったら、内線電話にかけてね? 僕はこの家にいるから」
そんなことを一方的にまくし立てて、部屋を出ていった。
「これ」
取り残されたのは途方に暮れた俺。
空腹訴えて鳴った腹に手を当てて頭を悩ませた。
「食って……いいのか?」
毒とか変な薬とか入ってたりしないのか。
「……」
男が部屋に入ってくる。その手にはお盆、さらにそこにはトーストとサラダの乗った皿とリンゴジュースの入ったグラス。
つまり朝食を持ってきた。
「外は天気いいよ」
「……」
「でも夕方から小雨だって。」
「……」
「風も気持ちいいね、窓開けようか」
「……」
「いいお出かけ日和だよねえ」
一人で喋りながらタツオはサイドテーブルに朝食を置く。
「まあ、君は外に出さないんだけどね」
ああ嫌がらせのつもりなのか。
俺はなにも応えない。応えるほどお人好しでもバカでもプライド皆無のクズでもない。
「うーん、すっかり嫌われちゃったかなあ」
頭をかきながらも、奴の表情はずっと笑顔だ。貼り付けたような笑顔。ゾッとする、見たくもない。
「ねえ泰雅君、そんなに怒らないでよ。昨晩は君に少し痛い思いさせちゃったかもしれない。でも、これも僕なりの愛のムチっていうかね……うーん、確かにめちゃくちゃ興奮したけども」
最低だ、この変態野郎。とんだドSじゃねえか。
でもあれから俺の腹にできた火傷跡に軟膏を塗って、部屋の中にあるシャワーを浴びることだけは許可された。
とはいっても、ろくに動けなかったからこいつに抱えられるようにして行ったんだった。
服まで脱がされた時はもうダメだと思った。
でもズブ濡れになるのも構わず、俺の髪やら身体やらを洗っただけ。その後はもう人形みたいに新しい服を着せられて、髪を乾かされて。
またベッドに寝かされた。
『おやすみ』
と電気を消して出ていったタツオを呆然と眺めるしか出来なかった。
何したいのか、本当に理解できない。
「君はオレンジジュースが苦手だから、ちゃんとリンゴジュースにしたよ。好きだったよね、確か家の冷蔵庫にも先週の月曜日から水曜まで一リットルパックが入ってた」
「あ?」
俺の家の冷蔵庫のことなんで知ってんだ。まさかストーカーか? まさかじゃなくて普通にストーカーだよな。
マジで気持ち悪いし、ヤバい奴じゃん。
「ようやく返事してくれたね。泰雅君」
「っ、こっち見んな変態!」
にじり寄ってきそうな男を必死で拒絶する。
何が目的かわからんが、とにかくこいつは何から何までおかしい。
でも拒絶しすぎるとまたあのおしおきがあると思うと身体が震える。
「怖いの? 震えてる」
「ひ……っ……く、来るな」
思った以上に昨夜のことがこたえてたらしい。
同じ空間にいるのも怖い。そうだ怖いんだよ、悪いか。あんなことされて、ビビらない奴がいるかってんだ。
「ごめんね、もう痛いことはしないから。約束するよ」
タツオは寂しげに目を伏せて言った。
そして。
「朝ごはん、ちゃんと食べるんだよ」
と立ち上がった。
「あ、そうそう。部屋の中は動けるようにするね。手錠も外してあげる」
「え?」
「ここにはトイレもシャワールームも、飲み物なら冷蔵庫に入ってるからね。ああ、テレビのリモコンはこれ。スマホはあげられないけど、ネットがしたかったらパソコンは検討しようかな。何があったら、内線電話にかけてね? 僕はこの家にいるから」
そんなことを一方的にまくし立てて、部屋を出ていった。
「これ」
取り残されたのは途方に暮れた俺。
空腹訴えて鳴った腹に手を当てて頭を悩ませた。
「食って……いいのか?」
毒とか変な薬とか入ってたりしないのか。
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