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18.凌辱と殺戮の森(※R18G)性暴力、グロ表現あり
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馬に鞭をくれて、森をひた走る。
雨季明けのむせ返るような、草の匂い。
立った土埃で、視界がぼやけた。
―――薄くなった空気に、二頭の馬が鳥のように駆けていく。
2人は今、森の中を懸命に逃げていた。
「っ、速い」
テトラは視界の端に、矢が飛んでくるのを確認する。
前方を走るケルタが叫ぶ。
『二手に別れろ!』といったらしい。
らしい。とは蹄の音と、追ってくる大勢の者達の怒声でかき消されるから。
彼らは、オーガ達に追い回されていた。
―――数十分前に遡る。
馬に乗って、森の奥にある洞窟に薬草を取りに行く。
それだけだった。
森も洞窟も、魔城の領地内だからさほど強力な魔物もでない。
……はずだったのに。
十数人のオーガ。
前と後ろを挟み撃ちされていたのに気が付いたのは、森に入ってそう経たない頃だった。
各々武器を持ち、彼らも馬を使って追ってくる。
知能は高いようで、従来のオーガとは異なるタイプだ。
しかしなにも彼らが大人しく追いかけられていた訳ではない。
ここら辺の森を知りつくしたケルタが先導し、抜け道まで突っ走るつもりだった。
「っ!!」
放たれた矢が、テトラの肩を掠る。
小さな痛みより先はまだか、という焦りに顔を顰めた。
『オレが叫んだら、右に行け』
疾走する前、そう囁かれた言葉。
一瞬の迷いも許されず、手網を操り右の小道に入る。
目の前に木々が立ち並び、まるで同じ所を走っているようだ。
振り返るなどしないが、怒声や馬の蹄音が先程より減った気がする。それでもひたすら馬の尻に鞭を打つ。
風よりも速く、と願いながら。
「!」
今度は頬に掠めた。
空気に触れてチリ、と痛む。
すぐ後ろに聞こえるのは、異国語のような言葉。オーガ語だろう。
彼は必死に目をこらす。
……道を。森を抜けるまでに、捕まれば万事休すだ。
「っうあッ!?」
パァァン、という破裂音。
舞う火花。
半拍遅れで、ひときわ高く馬が嘶いた。
前足を跳ね上げ、咄嗟にその首にしがみつくがすでに遅し。
背から転げ落ち、強かに身体を地に打ち付けた。
「ゔぅっ、ぁ」
息が詰まり、悲鳴どころか呻き声しか出ない。
無様な芋虫のように、土を這い回る。
オーガ達が放ったのは間違いなく、魔法だ。本来、彼らが魔法を使って攻撃してくるなんて聞いた事がない。
魔力もさることながら、魔法を使うには最低限の知能がいる。
彼らは、知能が低い種族だと言われてきたのだ。
「っはぁ……ぅ」
馬具や、甲冑の音が近付いてきた。
重々しい足音が幾つもこちらへ。落馬したテトラを囲むように、オーガ達が集まってくる。
彼らは、嘲るように喉を震わせた。けたたましくい重低音が、森に響く。
槍や棍棒で、痛みで動けない彼を小突き始める。
「マダ、死ンで、ナい」
一人のオーガが言った。
知能が高いのだろう。たどたどしいが、異種族の言葉を喋っている。
「オイ、お前。人間、カ?」
「ゔぐぅッ……っぁ゙」
思い切り、彼の腹を蹴り上げて問いかけた。
背を丸めもがき苦しむ彼を、残酷な幾つも目が見下ろしている。
「な゙、なん゙、で……っ」
ここはオーガの住む場所じゃないはずだ。しかも突然襲ってくるなんて。
彼の質問も、途中で途切れる。
「質問、ヲ、質問デ、返スな」
「あ゙ぁぁぁぁぁぁッ……!」
負傷したであろう足を、思い切り踏み付けられたのだ。
痛みと、骨の折れる音で絶叫した。
「人間、ダな?」
「あ゙……あ、あ」
力なく頷く姿に、オーガは満足そうに鼻を鳴らす。
「魔王ノ、生贄、意趣返シダ」
意趣返し。
つまり仕返しということ。
このオーガ達、魔王とその息子レガリアに恨みがある。
半年前。オーガ族の中で内戦があった。
魔王に反旗をひるがえす者達と、それを良しとしない者たちの戦い。
魔王としては当然のごとく反乱軍の方を、制圧しようと考える。
その命令を受けたのが、レガリアだ。
彼は数人の配下を引き連れ、またたく間に鎮圧した。
こうして敗走した者達の『意趣返し』というわけなのだろう。
「お前人質ニすル。適当ニ、痛めツケる」
「い、痛めつけるって……」
もう充分痛めつけられている気がする。
右足は完全に折れて、左も挫いていた。腕だけは折れてないが、その代わり肋骨は数本ヒビが入っている。
満身創痍なテトラは、指ひとつ動かせず呟いた。
「ウマソウ、だナ」
強引に顔を掴み、ニヤリと笑う。
周りのオーガ共も、下卑た視線を投げかけた―――。
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫
荒い息。火照って、こもる熱に身動ぎする。
「っはぁ……ふっ、な、何を、飲ませ、た」
無理やり口移しされたのは、強力な催淫作用のあるポーション。
どろり、とした甘い味に吐き出そうとしたが。鼻をつままれ、長い舌で流し込まれた液を飲み込んでしまった。
「ヘヘヘ、気持チ、良クなれル」
「うあっ……さ、触ら、ないで」
服の上からさぐる数本の腕を、弱々しく身をよじって拒絶する。
しかしそれがかえって彼らを煽っているのを、テトラは知らない。
「っひぃ……ん、ぁ、い、痛ぁ……」
胸の飾りを探り当てられ、強くつままれる。
ぎりぎりと抓られれ弾かれ痛いはずなのに。口から漏れるのは甘い喘ぎ。
痛みすら、不快感すら激しい快感に上書きされてしまう。
彼を追い詰め、苛んでいく。
「物足りナいか、淫乱め」
意地悪く囁かれた言葉に睨みつけるも、さっさと服を引き裂かれてしまう。
やめろと抵抗すれば、容赦なく殴りつけられる。白い肌が、またたく間にアザだらけになった。
「あ゙、あぁっ、やめっ」
薬と胸への愛撫で、ゆるやかだが勃ち上がった性器を乱暴に掴まれる。
「ウるさい、口だ」
そう言われると同時に、口に突っ込まれた。オーガの性器を咥えさせられ、喉奥を強引にさすられる。
「噛んダら、潰ス」
「ん゙ん゙ん゙ーッ、ぉ゙お゙む゙……っぅ゙」
嘔吐いても、窒息しそうになってもお構い無しだ。
まるで玩具のように、はちみつ色の髪を掴んで乱暴に腰を揺すっている。
その間も伸びてた幾本もの腕は、彼の両手に性器を握らせる。さらに胴体や膝等にも肉棒が擦り付けられ、乳首や尻穴にも手は伸びる。
そんな扱いをされても、媚薬は彼に途切れぬ快楽を与え続ける。
喉奥に流し込まれた精液も、飲めと強要されて零せば引っ張たかれた。
「っあ゙、や、それ、き、気持ちわる……」
尻穴に差し込まれた指が、気付いた時には三本になっていた。
異物感と、痛み。
なによりも、これから起こる事を想起させられ絶望で叫び出しそうだった。
「もう、ガマン、デキん」
「んぁッ……あ、な、なに……まさか……や、やめて」
指を引き抜かれすぐ様、熱い猛りを窄まりに押し付けられる。
侵入さられる、犯されるという事実に、心が恐怖に染まった。
「や、やだぁっ、助けてっ、誰か……っ、れ、レガリア……レガリアッ……!!」
頭に浮かんだ者の名を、泣き叫び呼ぶ。
何度も何度も。
オーガ達は、その様を歪んだ笑みと雄叫びを上げて見つめていた。
憎き相手の、大切なモノを破壊する喜びであった。
「あっ、あ、ああああああぁぁぁ」
激痛。
それは身体の痛みだけであらず。
心は絶望、悲しみ、恐怖と怒りで塗りつぶされる。
忌まわしき者達に支配され、侵入される事に全身で拒絶するが無駄だった。
(やめてやめてやめてやめて)
このまま殺して欲しい、とすら思う。
オーガの肉棒をねじ込まれたそこは、紅い血が滴っていた。
「ぁ゙、あ゙……っあ……」
揺さぶられ、人形のような彼は力なく瞳を閉じる。
小さくあいた口からは、喘ぎとも呻きともつかぬ声。
再びオーガ達が群がった。
白濁液にまみれ、辺りは性臭に包まれる。
「あ゙ーっ……ぁあっ、あ、あ」
華奢な身体が、何度目かの痙攣をした時。
「許さない」
―――男の低い呟きが、森に響く。
大きな黒い影。
いや、黒ずくめの男だ。拳を握り、そこからおびただしい魔力が溢れている。
「許さない」
黒く長い髪を靡かせ、オーガ達への呪詛を吐く。
「……死ね」
一番近い者の頭部を掴み、刹那。
グシャッ、と熟れ切ったトマトのように潰した。
飛び散る血と脳漿。
無様にも裸の身体を蹴り倒し、隣の男の首を掴み放り投げる。
まるで赤子を投げ飛ばすかのようだ。
あっけなく飛んで行ったソレを振り返る事なく、次々と拳を叩き込んでいく。
骨は砕け、血は飛び、脳は弾ける。
性の香りはまたたく間に、死と暴力に塗りつぶされていく。
叫び声さえ、上げさせなかった。
まるで時を止めたかのように、オーガ達を数秒にして打ち倒していったのだ。
「れ、レガリア……?」
薄ら目を開けたテトラを、男は見つめた。
その瞳は―――。
「テトラ」
夢遊病者の足取りで、レガリアは彼に駆け寄る。
先程の殺戮が嘘のように、震える手でその白い頬に触れた。
「痣が」
「レガリア……レガリア……」
薬が見せる幻覚でないか。絶望が見せた夢ではないか、と彼は何度もその名を呼んだ。
身動ぎすれば、身体が痛む。
呻けば『俺だ』と返事が返ってきた。
(あぁ。助けに来てくれた)
ようやく安堵した彼は、薄く微笑みかける。
「テトラ、すまない」
苦しげな声で応えた彼に、抱きすくめられた。
香るのは濃い血の香り。
覗き込むその瞳の色は……燃えるような、赤であった。
雨季明けのむせ返るような、草の匂い。
立った土埃で、視界がぼやけた。
―――薄くなった空気に、二頭の馬が鳥のように駆けていく。
2人は今、森の中を懸命に逃げていた。
「っ、速い」
テトラは視界の端に、矢が飛んでくるのを確認する。
前方を走るケルタが叫ぶ。
『二手に別れろ!』といったらしい。
らしい。とは蹄の音と、追ってくる大勢の者達の怒声でかき消されるから。
彼らは、オーガ達に追い回されていた。
―――数十分前に遡る。
馬に乗って、森の奥にある洞窟に薬草を取りに行く。
それだけだった。
森も洞窟も、魔城の領地内だからさほど強力な魔物もでない。
……はずだったのに。
十数人のオーガ。
前と後ろを挟み撃ちされていたのに気が付いたのは、森に入ってそう経たない頃だった。
各々武器を持ち、彼らも馬を使って追ってくる。
知能は高いようで、従来のオーガとは異なるタイプだ。
しかしなにも彼らが大人しく追いかけられていた訳ではない。
ここら辺の森を知りつくしたケルタが先導し、抜け道まで突っ走るつもりだった。
「っ!!」
放たれた矢が、テトラの肩を掠る。
小さな痛みより先はまだか、という焦りに顔を顰めた。
『オレが叫んだら、右に行け』
疾走する前、そう囁かれた言葉。
一瞬の迷いも許されず、手網を操り右の小道に入る。
目の前に木々が立ち並び、まるで同じ所を走っているようだ。
振り返るなどしないが、怒声や馬の蹄音が先程より減った気がする。それでもひたすら馬の尻に鞭を打つ。
風よりも速く、と願いながら。
「!」
今度は頬に掠めた。
空気に触れてチリ、と痛む。
すぐ後ろに聞こえるのは、異国語のような言葉。オーガ語だろう。
彼は必死に目をこらす。
……道を。森を抜けるまでに、捕まれば万事休すだ。
「っうあッ!?」
パァァン、という破裂音。
舞う火花。
半拍遅れで、ひときわ高く馬が嘶いた。
前足を跳ね上げ、咄嗟にその首にしがみつくがすでに遅し。
背から転げ落ち、強かに身体を地に打ち付けた。
「ゔぅっ、ぁ」
息が詰まり、悲鳴どころか呻き声しか出ない。
無様な芋虫のように、土を這い回る。
オーガ達が放ったのは間違いなく、魔法だ。本来、彼らが魔法を使って攻撃してくるなんて聞いた事がない。
魔力もさることながら、魔法を使うには最低限の知能がいる。
彼らは、知能が低い種族だと言われてきたのだ。
「っはぁ……ぅ」
馬具や、甲冑の音が近付いてきた。
重々しい足音が幾つもこちらへ。落馬したテトラを囲むように、オーガ達が集まってくる。
彼らは、嘲るように喉を震わせた。けたたましくい重低音が、森に響く。
槍や棍棒で、痛みで動けない彼を小突き始める。
「マダ、死ンで、ナい」
一人のオーガが言った。
知能が高いのだろう。たどたどしいが、異種族の言葉を喋っている。
「オイ、お前。人間、カ?」
「ゔぐぅッ……っぁ゙」
思い切り、彼の腹を蹴り上げて問いかけた。
背を丸めもがき苦しむ彼を、残酷な幾つも目が見下ろしている。
「な゙、なん゙、で……っ」
ここはオーガの住む場所じゃないはずだ。しかも突然襲ってくるなんて。
彼の質問も、途中で途切れる。
「質問、ヲ、質問デ、返スな」
「あ゙ぁぁぁぁぁぁッ……!」
負傷したであろう足を、思い切り踏み付けられたのだ。
痛みと、骨の折れる音で絶叫した。
「人間、ダな?」
「あ゙……あ、あ」
力なく頷く姿に、オーガは満足そうに鼻を鳴らす。
「魔王ノ、生贄、意趣返シダ」
意趣返し。
つまり仕返しということ。
このオーガ達、魔王とその息子レガリアに恨みがある。
半年前。オーガ族の中で内戦があった。
魔王に反旗をひるがえす者達と、それを良しとしない者たちの戦い。
魔王としては当然のごとく反乱軍の方を、制圧しようと考える。
その命令を受けたのが、レガリアだ。
彼は数人の配下を引き連れ、またたく間に鎮圧した。
こうして敗走した者達の『意趣返し』というわけなのだろう。
「お前人質ニすル。適当ニ、痛めツケる」
「い、痛めつけるって……」
もう充分痛めつけられている気がする。
右足は完全に折れて、左も挫いていた。腕だけは折れてないが、その代わり肋骨は数本ヒビが入っている。
満身創痍なテトラは、指ひとつ動かせず呟いた。
「ウマソウ、だナ」
強引に顔を掴み、ニヤリと笑う。
周りのオーガ共も、下卑た視線を投げかけた―――。
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫
荒い息。火照って、こもる熱に身動ぎする。
「っはぁ……ふっ、な、何を、飲ませ、た」
無理やり口移しされたのは、強力な催淫作用のあるポーション。
どろり、とした甘い味に吐き出そうとしたが。鼻をつままれ、長い舌で流し込まれた液を飲み込んでしまった。
「ヘヘヘ、気持チ、良クなれル」
「うあっ……さ、触ら、ないで」
服の上からさぐる数本の腕を、弱々しく身をよじって拒絶する。
しかしそれがかえって彼らを煽っているのを、テトラは知らない。
「っひぃ……ん、ぁ、い、痛ぁ……」
胸の飾りを探り当てられ、強くつままれる。
ぎりぎりと抓られれ弾かれ痛いはずなのに。口から漏れるのは甘い喘ぎ。
痛みすら、不快感すら激しい快感に上書きされてしまう。
彼を追い詰め、苛んでいく。
「物足りナいか、淫乱め」
意地悪く囁かれた言葉に睨みつけるも、さっさと服を引き裂かれてしまう。
やめろと抵抗すれば、容赦なく殴りつけられる。白い肌が、またたく間にアザだらけになった。
「あ゙、あぁっ、やめっ」
薬と胸への愛撫で、ゆるやかだが勃ち上がった性器を乱暴に掴まれる。
「ウるさい、口だ」
そう言われると同時に、口に突っ込まれた。オーガの性器を咥えさせられ、喉奥を強引にさすられる。
「噛んダら、潰ス」
「ん゙ん゙ん゙ーッ、ぉ゙お゙む゙……っぅ゙」
嘔吐いても、窒息しそうになってもお構い無しだ。
まるで玩具のように、はちみつ色の髪を掴んで乱暴に腰を揺すっている。
その間も伸びてた幾本もの腕は、彼の両手に性器を握らせる。さらに胴体や膝等にも肉棒が擦り付けられ、乳首や尻穴にも手は伸びる。
そんな扱いをされても、媚薬は彼に途切れぬ快楽を与え続ける。
喉奥に流し込まれた精液も、飲めと強要されて零せば引っ張たかれた。
「っあ゙、や、それ、き、気持ちわる……」
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なによりも、これから起こる事を想起させられ絶望で叫び出しそうだった。
「もう、ガマン、デキん」
「んぁッ……あ、な、なに……まさか……や、やめて」
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侵入さられる、犯されるという事実に、心が恐怖に染まった。
「や、やだぁっ、助けてっ、誰か……っ、れ、レガリア……レガリアッ……!!」
頭に浮かんだ者の名を、泣き叫び呼ぶ。
何度も何度も。
オーガ達は、その様を歪んだ笑みと雄叫びを上げて見つめていた。
憎き相手の、大切なモノを破壊する喜びであった。
「あっ、あ、ああああああぁぁぁ」
激痛。
それは身体の痛みだけであらず。
心は絶望、悲しみ、恐怖と怒りで塗りつぶされる。
忌まわしき者達に支配され、侵入される事に全身で拒絶するが無駄だった。
(やめてやめてやめてやめて)
このまま殺して欲しい、とすら思う。
オーガの肉棒をねじ込まれたそこは、紅い血が滴っていた。
「ぁ゙、あ゙……っあ……」
揺さぶられ、人形のような彼は力なく瞳を閉じる。
小さくあいた口からは、喘ぎとも呻きともつかぬ声。
再びオーガ達が群がった。
白濁液にまみれ、辺りは性臭に包まれる。
「あ゙ーっ……ぁあっ、あ、あ」
華奢な身体が、何度目かの痙攣をした時。
「許さない」
―――男の低い呟きが、森に響く。
大きな黒い影。
いや、黒ずくめの男だ。拳を握り、そこからおびただしい魔力が溢れている。
「許さない」
黒く長い髪を靡かせ、オーガ達への呪詛を吐く。
「……死ね」
一番近い者の頭部を掴み、刹那。
グシャッ、と熟れ切ったトマトのように潰した。
飛び散る血と脳漿。
無様にも裸の身体を蹴り倒し、隣の男の首を掴み放り投げる。
まるで赤子を投げ飛ばすかのようだ。
あっけなく飛んで行ったソレを振り返る事なく、次々と拳を叩き込んでいく。
骨は砕け、血は飛び、脳は弾ける。
性の香りはまたたく間に、死と暴力に塗りつぶされていく。
叫び声さえ、上げさせなかった。
まるで時を止めたかのように、オーガ達を数秒にして打ち倒していったのだ。
「れ、レガリア……?」
薄ら目を開けたテトラを、男は見つめた。
その瞳は―――。
「テトラ」
夢遊病者の足取りで、レガリアは彼に駆け寄る。
先程の殺戮が嘘のように、震える手でその白い頬に触れた。
「痣が」
「レガリア……レガリア……」
薬が見せる幻覚でないか。絶望が見せた夢ではないか、と彼は何度もその名を呼んだ。
身動ぎすれば、身体が痛む。
呻けば『俺だ』と返事が返ってきた。
(あぁ。助けに来てくれた)
ようやく安堵した彼は、薄く微笑みかける。
「テトラ、すまない」
苦しげな声で応えた彼に、抱きすくめられた。
香るのは濃い血の香り。
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