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蛇足は初夜で(R18)
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※書きたかった蛇足、というオマケ。
――待たせたという自覚はあった。
「っ、あんま、り……」
喰われるようなキスのあとにしては優しくベッドに押し倒され、見つめ合う。
「あんまり、なに?」
色素の薄い瞳がジッと覗き込んでくるのが、どうも慣れることができない。
恥ずかしがっている場合ではないのはわかっていた。これからさらに恥ずかしいことをするのだから。
「あ、あんまり、がっつくな、よ」
酷い経験からすでに一年経った。最後までされてはいないものの、性行為そのものに積極的にはなれなかった。
「わかってる」
龍也は微笑んでうなずく。
ほんの一年前に比べればまた大人びたと思う。
身体つきこそすでに出来上がっていたが、顔立ちや仕草にいちいちドキドキさせられるようになったのは恋人だからだろうか。
「怖がらせたくない」
見れば見るほど綺麗な顔だ。声も低く、優しく囁かれると腰砕けてしまうほど色気もある。
そんな男に我慢させてしまった。
『せめて十八歳になるまではセックスしない』
これはかなりお互いに妥協した結果だ。
奏汰としては社会人になるまではと思っていたが、それに強く反対したのが龍也の方で。
『それなら今すぐ無理矢理にでも番にしてやる』
と、脅されて大喧嘩になった。
番にはなりたくない。
別に恋人の事が嫌いな訳ではなくむしろ逆で、彼の未来を束縛したくないからに他ならないのだが。
結局、十八歳での解禁になった。
「別に怖いなんて言ってない」
「はいはい。わかったからキスしよ」
「くそ、ムカつく」
軽くいなされているのが悔しい。どんどん成長して置いていかれているような気さえして、奏汰は小さくため息をついた。
「……っん、ぅ、んん、はぁ……ぅ」
まずは軽く、ついばむような口付けから。それがどんどん深くなって、お互いに舌をからめ合う。
それだけで訳が分からなくなるし脳までトロトロに溶けてしまいそうで、思わず彼の服をにぎって引きはがそうとする。
「も、も……う、いい」
キスは何度もした。そのたびに罪悪感でどうにかなりそうだったが、それも昨日まで。
気付けばこれだけでは足りないとばかりに、彼にすがりついていた。
「じゃあ脱がすから。怖かったらちゃんと言えよ」
どこまでも優しい手つきだった。しかしボタンを外す指が、かすかに震えているのを目にして奏汰まで赤面した。
「すごく綺麗だ」
上半身を脱がされ素肌を晒すと、龍也がぽつりつぶやく。
「……」
気恥ずかしくて黙っていれば、その白い胸にもまた口付けられた。
「んぅ」
ちゅ、ちゅ、とリップ音が部屋に響く。
やはりいたたまれない。しかしがっつくなと行った手前、先をねだるようなこともできず。
「かわいい。奏汰ってばすごくエロい顔してる」
「ばっ、バカなこというな!」
その反応も恥じらいにまみれていて、まさしく生娘だ。
気を良くしたのか龍也が笑みを深くして胸の飾りに触れると、ハッとしてその手を振り払う。
「っ、そこ、は触らなくていい」
「なんで」
「なんでって……いっ!?」
無遠慮につねられ鈍い痛みに悲鳴をあげた。
「おまっ、なにしやがる!」
「ごめんごめん。でもまんざらでもなさそう」
「ンなわけあるか。そんなとこ感じるわけ……」
「じゃあマッサージしてやるよ」
「!」
そう言って取り出されたのがローション。中身を直接上半身にぶちまけられて、また悲鳴をあげる。
「冷たっ!? なにすんだよっ、アホガキ!」
「あ、ごめんな」
「この野郎……」
前言撤回。やはり一年程度ではガキはガキだ。
しかし、ねちねちと湿った音とともに乳首をこねくり回してくる指使いには知らず知らずのうちに息が上がってくる。
「んぁっ、う……はぁ」
気持ちいいはずなんかない。なのに妙な疼きが胸から腰にかけてくるのがたまらなくなる。
「なん、で」
「そりゃあ俺の地道な努力の賜物というか」
「どういうことだ!」
嫌な予感がして怒鳴りつけると、彼はにへらと笑う。
「あんたが寝てる時にちょっとね。予習っつーか、調教っつーか」
「ふざけんなッ!!!」
龍也のことだ。寝てる時というより眠らされてる時だろう。
眠姦まがいのことをされていたとは。
「いつからそんなことを」
「んー、一ヶ月くらい?」
「ハァァァ!?」
半年間も気づかなかった自分も自分である。
ただ完全に自覚症状がなかった訳でもなく、ここ数週間ずっと乳首がヒリヒリしていたりむず痒がったりしていたのだ。
「やっぱり初夜はスムーズにしたいじゃん」
「なにが初夜だ、エロガキ……あ゙っ!?」
罵倒を封じるようにくりゅくりゅと乳首をこねくり回してくる。
「あひっ、あ゙、あっ、ひぃ゙っ、やめ、やめろっ、へんに、なる!」
「お、やっぱりちゃんと起きてる時の方が反応いいんだな」
「んぉ゙!? ひ、ひっぱらないでぇ゙っ、のびちゃ゙ぅ、ちくびっ、のびちゃうからぁぁ゙」
気付かず開発された身体が頭まで蕩けさせにかかる。
必死に抵抗しようにもすっかり力が抜けてどうしようもない。
「ほら触ってないのにもう濡れてる」
スボンの前をくつろげられると、下着越しでも先走りで濡れぼそっているのがわかる。
Ωであれば本来そこは排尿以外では使わない器官で、精液なんぞ出るはずはない。しかしβであった名残りだろう、まだメスになりきれていない身体に奏汰はどこか安堵した。
しかし彼はそうでないらしい。
「ふうん」
面白くなさげに鼻をならすと。
「ま、でも俺が奏汰を作り替えるって考えるとすごく興奮するよな」
などと聞き捨てならないことを言う。
「じゃあここはどうかな」
「ぅわっ!」
ズボンを下着ごと下げられ、あっという間に脱がされた。
やはり体格差では勝てないらしい。両膝を合わせてせめて下半身を隠そうとするが、またそれが恋人をよろこばせてしまうのだが。
「暴れるなって」
「やめろっ、このド変態!」
「好きな子のエロい格好を見たくない奴なんていないだろ」
「すっ……!?」
一瞬で顔が茹でタコみたく真っ赤になる。日に日に思考がΩ寄りになるのか、それとも男の恋人ができた影響か。以前なら顔を歪めて拒否していた愛情表現にいちいち赤面して照れてしまう。
「愛してる、奏汰」
「うぅっ」
良いツラと声で言うなと顔を覆うが。
「隙あり」
「ひゃぁっ!!」
脚を大きく広げられてご開帳させられる。
慌てて閉じようと暴れるがもう遅い。
「おー、ちゃんと濡れてるじゃん」
「ひぃ゙っ……ば、バカ! い、いきなり入れるやつがあるかっ!!」
指一本であれど、無遠慮に差し込まれるとは思わず猛抗議する。
「ごめんごめん。でもちゃんと濡れててよかったな。少し慣らすぞ」
「だから待てっ――ひぁ゙ッ、や゙だ、くぅぅっ」
今度はゆっくり入れられて探られる。痛みこそないものの、異物感と違和感にうめき声が漏れた。
「いや?」
「い、い、いや……じゃ、なぃ」
決して嫌ではない。奏汰だってちゃんと腹をくくってこの日を迎えたのだから。
それでも怖気づきそうな胸中を叱咤しながら、ゆっくり脚の力を抜いた。
「嫌じゃないから、大丈夫」
愛してる雄に初めて抱かれる。これが嬉しくないわけがあるか。
自分に言い聞かせながら、龍也を見上げる。
「でも、もう一回キス……してくれ」
軽く瞼を閉じてねだれば、心得たとばかりに優しい口付けが降ってきた。
※※※
汗ばんだ肌と肌のぶつかり合う音、そして水音と乱れた息づかい。
「ん゙ぉっ、あ゙、あ゙ッ、あ゙ァっ」
何度イかされただろう。
もう数えられないくらいの絶頂に、狂ってしまいそうだと怯える。
「も゙うっ、や゙だぁ、お゙わ゙りっ! おわり゙に゙する゙ぅぅっ」
「……なんでそんなこと言うの。俺はまだあんたとセックスしたいんだけど」
「せっくす、や゙め゙ぇ、じぬ゙っ、しん゙じゃ゙ゔぅ」
奏汰はαとの性行為をナメていた。特にこの男の執着をあらわすような時に激しく、時にねちっこい性技。
そして若いのもあって絶倫ともいえる体力と持続力に、文字通り息も絶え絶えなのだ。
「奏汰が大好きなトコロ、いっぱい突いてあげるから」
「あ゙ぁ゙~っ、だめ゙ンにな゙る゙ッ、しょ゙れ゙、やら゙っ、こわい゙!」
「よしよし。もっと頑張れよ」
普段の彼なんて見る影もない。泣きじゃくり喘ぎまくりで、恋人にすがりついている。
イってもイっても終わらない。快楽地獄ともいえる時間。
つい数時間前まで処女だったのに酷い有り様だ、と酸欠気味の頭の片すみでぼんやり考える。
しかしそれを見逃してくれる相手ではなかった。
「ふうん、ずいぶん余裕そうだな」
「ひんっ!?」
腰を掴まれる。
挿入されたまま器用に体勢を変えられて後ろから覆いかぶさる形、いわゆるバックに体位にさせられた。
ぞわ、と嫌な予感に背筋が凍ったのも一瞬。
「子宮まで届いちまうよな、これ」
「な、なに、を――お゙ッ!?!?」
ばちゅんっ、と一際大きな音とともに奥まで穿たれたのだ。
訳が分かららないとばかりに大きく見開かれた瞳と同時に。
「あ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ッ!!!」
獣めいた悲鳴がほとばしる。
これほど暴力的な快感、はじめてだった。
「ひぎッ、お゙っ、あ゙ぁ、んぉ゙っ」
イってはまたイく。
大きな波に攫われ揺さぶられ飲まれていくような感覚。
前立腺なんて比にならない。胎全体がうねり、キュンキュンと甘く締めつけ。
男の精子をねだり媚びているのがわかる。
「ん゙お゙っ、お゙~ッ、も゙、や゙べでっ、ゆ゙る゙じでぇぇ」
「だーめ。さっき別のこと考えてただろ、許さないからな」
「ぢがっ、ちがゔから゙ぁ゙っ!」
なんと独占欲の強い男だ。
遠慮なく奥をぶち抜きいたぶりながら、恋人のうなじに舌を這わせる。
「なあ、番になろうぜ」
「ひっ……ら゙、らめ゙、かむ゙な」
「へえ? 噛むなって。俺と番になりたくないの」
彼の目が剣呑に光る。
小さく息を吐いたのを感じたのが最後。
「じゃあ――」
爪が食い込むほど強く、腰をつかまれた。
ゆっくり竿が引き抜かれて思わず甘い声が漏れる、が次の瞬間。
「ちゃんと言質とるまで頑張らないとな」
「ん゙ひぃ゙ぃぃっ!?」
一転して激しい突きに悲鳴をあげてまたイかされた。
だがそんなもので止まるわけがない。
「イ゙っでる゙っ、イ゙ってるから゙ぁ! 」
「なあ噛んでいい?」
「だめ゙っ! や゙……あ゙ぁぁ、んぉ゙っ、も゙、お゙がじぐな゙る゙ぅぅぅ」
髪を振り乱して泣く。どれだけイっても許してもらえない。
たまらなくなって逃げ出そうと這い出でるも、また捕まって引き戻される。
「逃げるな」
「ご、ごべん゙な゙さぃ゙っ、ゆ゙るじて」
「仕方ねぇな。あ、ゴムつけたっけ」
「んあ゙っ、つ、つけろよ!」
慌てて暴れると彼はなだめるように抱きついてきて。
「大丈夫大丈夫、つけたから。ほら、さっき一緒につけただろ?」
と囁かれて安堵する。
そういえばそうだった。絶対に妊娠したくないって言うのを、龍也はわかったと優しくうなずいたのだ。
「奏汰」
頬にちゅ、と口付けられる。
「俺の事は好き?」
「ん……」
当たり前だと口に出すのも億劫で、緩慢にふりかえって彼の唇にキスをした。
「可愛すぎかよ」
龍也が嬉しそうに微笑むものだからこちらも気が良くなる。
「俺、今すごく幸せだわ」
「んぁっ、ぅ」
そう言いつつ腰を揺すられる。そのたびに壊れた玩具みたく声が出て恥ずかしい。
事後の甘い空気になりかけたが、どうやらそう思っているのは奏汰だけなようで。
「もっとヤろうな」
「え……っ、ちょ、まて! もゔ、だめだってぇ゙、あ゙ぁぁっ、いくいくいくっ! イ゙ぐぅ!!!」
「お、すごい締め付け。持ってかれそう」
「ん゙お゙ぉっ、イ゙っでる゙のに゙ぃ~!」
「もうちょい頑張れよ」
「ぉ゙ひぃぃっ」
「あはは」
余裕そうに笑っているが、龍也もまた数度目の射精を迎えそうだった。
「……ま、あれから何度もしてるからゴム抜けたり破れちゃってるかもしれないけどいいよな」
よくない今すぐやめろ、付け直せ。
と怒鳴りつける者はいない。
――待たせたという自覚はあった。
「っ、あんま、り……」
喰われるようなキスのあとにしては優しくベッドに押し倒され、見つめ合う。
「あんまり、なに?」
色素の薄い瞳がジッと覗き込んでくるのが、どうも慣れることができない。
恥ずかしがっている場合ではないのはわかっていた。これからさらに恥ずかしいことをするのだから。
「あ、あんまり、がっつくな、よ」
酷い経験からすでに一年経った。最後までされてはいないものの、性行為そのものに積極的にはなれなかった。
「わかってる」
龍也は微笑んでうなずく。
ほんの一年前に比べればまた大人びたと思う。
身体つきこそすでに出来上がっていたが、顔立ちや仕草にいちいちドキドキさせられるようになったのは恋人だからだろうか。
「怖がらせたくない」
見れば見るほど綺麗な顔だ。声も低く、優しく囁かれると腰砕けてしまうほど色気もある。
そんな男に我慢させてしまった。
『せめて十八歳になるまではセックスしない』
これはかなりお互いに妥協した結果だ。
奏汰としては社会人になるまではと思っていたが、それに強く反対したのが龍也の方で。
『それなら今すぐ無理矢理にでも番にしてやる』
と、脅されて大喧嘩になった。
番にはなりたくない。
別に恋人の事が嫌いな訳ではなくむしろ逆で、彼の未来を束縛したくないからに他ならないのだが。
結局、十八歳での解禁になった。
「別に怖いなんて言ってない」
「はいはい。わかったからキスしよ」
「くそ、ムカつく」
軽くいなされているのが悔しい。どんどん成長して置いていかれているような気さえして、奏汰は小さくため息をついた。
「……っん、ぅ、んん、はぁ……ぅ」
まずは軽く、ついばむような口付けから。それがどんどん深くなって、お互いに舌をからめ合う。
それだけで訳が分からなくなるし脳までトロトロに溶けてしまいそうで、思わず彼の服をにぎって引きはがそうとする。
「も、も……う、いい」
キスは何度もした。そのたびに罪悪感でどうにかなりそうだったが、それも昨日まで。
気付けばこれだけでは足りないとばかりに、彼にすがりついていた。
「じゃあ脱がすから。怖かったらちゃんと言えよ」
どこまでも優しい手つきだった。しかしボタンを外す指が、かすかに震えているのを目にして奏汰まで赤面した。
「すごく綺麗だ」
上半身を脱がされ素肌を晒すと、龍也がぽつりつぶやく。
「……」
気恥ずかしくて黙っていれば、その白い胸にもまた口付けられた。
「んぅ」
ちゅ、ちゅ、とリップ音が部屋に響く。
やはりいたたまれない。しかしがっつくなと行った手前、先をねだるようなこともできず。
「かわいい。奏汰ってばすごくエロい顔してる」
「ばっ、バカなこというな!」
その反応も恥じらいにまみれていて、まさしく生娘だ。
気を良くしたのか龍也が笑みを深くして胸の飾りに触れると、ハッとしてその手を振り払う。
「っ、そこ、は触らなくていい」
「なんで」
「なんでって……いっ!?」
無遠慮につねられ鈍い痛みに悲鳴をあげた。
「おまっ、なにしやがる!」
「ごめんごめん。でもまんざらでもなさそう」
「ンなわけあるか。そんなとこ感じるわけ……」
「じゃあマッサージしてやるよ」
「!」
そう言って取り出されたのがローション。中身を直接上半身にぶちまけられて、また悲鳴をあげる。
「冷たっ!? なにすんだよっ、アホガキ!」
「あ、ごめんな」
「この野郎……」
前言撤回。やはり一年程度ではガキはガキだ。
しかし、ねちねちと湿った音とともに乳首をこねくり回してくる指使いには知らず知らずのうちに息が上がってくる。
「んぁっ、う……はぁ」
気持ちいいはずなんかない。なのに妙な疼きが胸から腰にかけてくるのがたまらなくなる。
「なん、で」
「そりゃあ俺の地道な努力の賜物というか」
「どういうことだ!」
嫌な予感がして怒鳴りつけると、彼はにへらと笑う。
「あんたが寝てる時にちょっとね。予習っつーか、調教っつーか」
「ふざけんなッ!!!」
龍也のことだ。寝てる時というより眠らされてる時だろう。
眠姦まがいのことをされていたとは。
「いつからそんなことを」
「んー、一ヶ月くらい?」
「ハァァァ!?」
半年間も気づかなかった自分も自分である。
ただ完全に自覚症状がなかった訳でもなく、ここ数週間ずっと乳首がヒリヒリしていたりむず痒がったりしていたのだ。
「やっぱり初夜はスムーズにしたいじゃん」
「なにが初夜だ、エロガキ……あ゙っ!?」
罵倒を封じるようにくりゅくりゅと乳首をこねくり回してくる。
「あひっ、あ゙、あっ、ひぃ゙っ、やめ、やめろっ、へんに、なる!」
「お、やっぱりちゃんと起きてる時の方が反応いいんだな」
「んぉ゙!? ひ、ひっぱらないでぇ゙っ、のびちゃ゙ぅ、ちくびっ、のびちゃうからぁぁ゙」
気付かず開発された身体が頭まで蕩けさせにかかる。
必死に抵抗しようにもすっかり力が抜けてどうしようもない。
「ほら触ってないのにもう濡れてる」
スボンの前をくつろげられると、下着越しでも先走りで濡れぼそっているのがわかる。
Ωであれば本来そこは排尿以外では使わない器官で、精液なんぞ出るはずはない。しかしβであった名残りだろう、まだメスになりきれていない身体に奏汰はどこか安堵した。
しかし彼はそうでないらしい。
「ふうん」
面白くなさげに鼻をならすと。
「ま、でも俺が奏汰を作り替えるって考えるとすごく興奮するよな」
などと聞き捨てならないことを言う。
「じゃあここはどうかな」
「ぅわっ!」
ズボンを下着ごと下げられ、あっという間に脱がされた。
やはり体格差では勝てないらしい。両膝を合わせてせめて下半身を隠そうとするが、またそれが恋人をよろこばせてしまうのだが。
「暴れるなって」
「やめろっ、このド変態!」
「好きな子のエロい格好を見たくない奴なんていないだろ」
「すっ……!?」
一瞬で顔が茹でタコみたく真っ赤になる。日に日に思考がΩ寄りになるのか、それとも男の恋人ができた影響か。以前なら顔を歪めて拒否していた愛情表現にいちいち赤面して照れてしまう。
「愛してる、奏汰」
「うぅっ」
良いツラと声で言うなと顔を覆うが。
「隙あり」
「ひゃぁっ!!」
脚を大きく広げられてご開帳させられる。
慌てて閉じようと暴れるがもう遅い。
「おー、ちゃんと濡れてるじゃん」
「ひぃ゙っ……ば、バカ! い、いきなり入れるやつがあるかっ!!」
指一本であれど、無遠慮に差し込まれるとは思わず猛抗議する。
「ごめんごめん。でもちゃんと濡れててよかったな。少し慣らすぞ」
「だから待てっ――ひぁ゙ッ、や゙だ、くぅぅっ」
今度はゆっくり入れられて探られる。痛みこそないものの、異物感と違和感にうめき声が漏れた。
「いや?」
「い、い、いや……じゃ、なぃ」
決して嫌ではない。奏汰だってちゃんと腹をくくってこの日を迎えたのだから。
それでも怖気づきそうな胸中を叱咤しながら、ゆっくり脚の力を抜いた。
「嫌じゃないから、大丈夫」
愛してる雄に初めて抱かれる。これが嬉しくないわけがあるか。
自分に言い聞かせながら、龍也を見上げる。
「でも、もう一回キス……してくれ」
軽く瞼を閉じてねだれば、心得たとばかりに優しい口付けが降ってきた。
※※※
汗ばんだ肌と肌のぶつかり合う音、そして水音と乱れた息づかい。
「ん゙ぉっ、あ゙、あ゙ッ、あ゙ァっ」
何度イかされただろう。
もう数えられないくらいの絶頂に、狂ってしまいそうだと怯える。
「も゙うっ、や゙だぁ、お゙わ゙りっ! おわり゙に゙する゙ぅぅっ」
「……なんでそんなこと言うの。俺はまだあんたとセックスしたいんだけど」
「せっくす、や゙め゙ぇ、じぬ゙っ、しん゙じゃ゙ゔぅ」
奏汰はαとの性行為をナメていた。特にこの男の執着をあらわすような時に激しく、時にねちっこい性技。
そして若いのもあって絶倫ともいえる体力と持続力に、文字通り息も絶え絶えなのだ。
「奏汰が大好きなトコロ、いっぱい突いてあげるから」
「あ゙ぁ゙~っ、だめ゙ンにな゙る゙ッ、しょ゙れ゙、やら゙っ、こわい゙!」
「よしよし。もっと頑張れよ」
普段の彼なんて見る影もない。泣きじゃくり喘ぎまくりで、恋人にすがりついている。
イってもイっても終わらない。快楽地獄ともいえる時間。
つい数時間前まで処女だったのに酷い有り様だ、と酸欠気味の頭の片すみでぼんやり考える。
しかしそれを見逃してくれる相手ではなかった。
「ふうん、ずいぶん余裕そうだな」
「ひんっ!?」
腰を掴まれる。
挿入されたまま器用に体勢を変えられて後ろから覆いかぶさる形、いわゆるバックに体位にさせられた。
ぞわ、と嫌な予感に背筋が凍ったのも一瞬。
「子宮まで届いちまうよな、これ」
「な、なに、を――お゙ッ!?!?」
ばちゅんっ、と一際大きな音とともに奥まで穿たれたのだ。
訳が分かららないとばかりに大きく見開かれた瞳と同時に。
「あ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ッ!!!」
獣めいた悲鳴がほとばしる。
これほど暴力的な快感、はじめてだった。
「ひぎッ、お゙っ、あ゙ぁ、んぉ゙っ」
イってはまたイく。
大きな波に攫われ揺さぶられ飲まれていくような感覚。
前立腺なんて比にならない。胎全体がうねり、キュンキュンと甘く締めつけ。
男の精子をねだり媚びているのがわかる。
「ん゙お゙っ、お゙~ッ、も゙、や゙べでっ、ゆ゙る゙じでぇぇ」
「だーめ。さっき別のこと考えてただろ、許さないからな」
「ぢがっ、ちがゔから゙ぁ゙っ!」
なんと独占欲の強い男だ。
遠慮なく奥をぶち抜きいたぶりながら、恋人のうなじに舌を這わせる。
「なあ、番になろうぜ」
「ひっ……ら゙、らめ゙、かむ゙な」
「へえ? 噛むなって。俺と番になりたくないの」
彼の目が剣呑に光る。
小さく息を吐いたのを感じたのが最後。
「じゃあ――」
爪が食い込むほど強く、腰をつかまれた。
ゆっくり竿が引き抜かれて思わず甘い声が漏れる、が次の瞬間。
「ちゃんと言質とるまで頑張らないとな」
「ん゙ひぃ゙ぃぃっ!?」
一転して激しい突きに悲鳴をあげてまたイかされた。
だがそんなもので止まるわけがない。
「イ゙っでる゙っ、イ゙ってるから゙ぁ! 」
「なあ噛んでいい?」
「だめ゙っ! や゙……あ゙ぁぁ、んぉ゙っ、も゙、お゙がじぐな゙る゙ぅぅぅ」
髪を振り乱して泣く。どれだけイっても許してもらえない。
たまらなくなって逃げ出そうと這い出でるも、また捕まって引き戻される。
「逃げるな」
「ご、ごべん゙な゙さぃ゙っ、ゆ゙るじて」
「仕方ねぇな。あ、ゴムつけたっけ」
「んあ゙っ、つ、つけろよ!」
慌てて暴れると彼はなだめるように抱きついてきて。
「大丈夫大丈夫、つけたから。ほら、さっき一緒につけただろ?」
と囁かれて安堵する。
そういえばそうだった。絶対に妊娠したくないって言うのを、龍也はわかったと優しくうなずいたのだ。
「奏汰」
頬にちゅ、と口付けられる。
「俺の事は好き?」
「ん……」
当たり前だと口に出すのも億劫で、緩慢にふりかえって彼の唇にキスをした。
「可愛すぎかよ」
龍也が嬉しそうに微笑むものだからこちらも気が良くなる。
「俺、今すごく幸せだわ」
「んぁっ、ぅ」
そう言いつつ腰を揺すられる。そのたびに壊れた玩具みたく声が出て恥ずかしい。
事後の甘い空気になりかけたが、どうやらそう思っているのは奏汰だけなようで。
「もっとヤろうな」
「え……っ、ちょ、まて! もゔ、だめだってぇ゙、あ゙ぁぁっ、いくいくいくっ! イ゙ぐぅ!!!」
「お、すごい締め付け。持ってかれそう」
「ん゙お゙ぉっ、イ゙っでる゙のに゙ぃ~!」
「もうちょい頑張れよ」
「ぉ゙ひぃぃっ」
「あはは」
余裕そうに笑っているが、龍也もまた数度目の射精を迎えそうだった。
「……ま、あれから何度もしてるからゴム抜けたり破れちゃってるかもしれないけどいいよな」
よくない今すぐやめろ、付け直せ。
と怒鳴りつける者はいない。
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BL
塔に閉じ込められた居場所のない妾腹の王子は、15歳になってもバース性が判明していなかった。美少女のような彼を、父親はオメガと決め付けて遠い異国の後宮に入れる。
異国の王は孤独だった。誰もが彼をアルファと信じているのに、本当はオメガでそのことを明かすことができない。
筋骨隆々としたアルファらしい孤独なオメガの王と、美少女のようなオメガらしいアルファの王子は、互いの孤独を埋め合い、愛し合う。
※ムーンライトノベルズ様にも投稿しています。
※完結まで予約投稿しています。
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こんばんは。楽しく作品を読ませて頂きました!
会話のテンポもストーリー展開もテンポが良く一気に読ませて頂き
終わってしまうのが寂しかったです。
主人公や他のキャラもとても好感が持てて素敵な作品に出会えて良かったです。
今後の作品も楽しみにしています。
ありがとうございます。
身に余るお褒めの感想、すごく嬉しいです。
のんびりではありますがこれからも楽しく書いていこうと思います。