7 / 9
魔王様は人柱
しおりを挟む
やめろと怒鳴っても、やめてくれと泣いたって事態は変わらないだろう。だから。
「死ねぇぇぇッ、このド変態鬼畜野郎!!!」
ナイフを手にこの露出男に突進するしかなくてだな。
「おいおい、叫ぶな」
「ぐっ!?」
易々と手刀で叩き落とされて、そのまま羽交い締めにされた。
笑っちまうだろ、これでも魔王なんだ。魔法がなきゃ、俺もこんなもんなのかもしれない。
頭の隅はやけに冷静で、こんな自嘲めいたことを考えているわけだが。
「ぐぬぬ……薄汚い手を離せ!」
「離したら逃げるだろうが」
うわ、なにこのデジャブ。
そもそもなんでこんなに強いんだ、人間のクセに!
そう怒鳴りつければ。
「そりゃ俺も一応、勇者だからな」
なんて小首をかしげる姿は可愛くもなんともない。むしろ不気味ですらある。
だってコイツ、やたら筋骨隆々なんだぞ。そりゃオーガどもとケンカして勝つはずだわ。
あとから分かったのだが、やはり先にふっかけてきたのはオーガ達らしい。おおかた、ノコノコと現れたひ弱 (と見られる)人間でストレス解消しようとでも思ったんだろう。
気の毒ではあるから、こっちからは高価回復薬の詰め合わせ送ったがこれは自業自得だな。
「アンタこそか弱すぎるんじゃねぇのか」
「なっ……」
キィィィッ!! 人間ごときに言われたァァァッ!!!
悔しさと怒りで顔が熱くなる。
「でも安心しろ」
「なにを言って――あ!?」
軽々と男、アレスは体勢を変えて僕をお姫様抱っこしやがった。
言っとくが今の僕は、それなりの体格の姿だ。少年姿でならいざ知らず。
だから慌てふためいて思わずその逞しい首にすがりついてしまう。
「ふむ、熱烈だな」
「うるさい!」
「むしろ大歓迎だぜ。ところで結婚式はいつにする? ハネムーンの場所も決めなきゃな。あと子供は十人は欲しい。男女ともに五人ずつ。あ、心配しなくても育児は俺に任せろよ。なぁに、昔は近所のガキのお守りを一手に担ってきたからな。子供の扱いは自信あるぜ。ミルク育児にも理解あるつもりだ。だがなんならその母乳は俺専用ということで、毎晩授乳プレイを(ry」
「……」
なにコイツこわい。めちゃくちゃこわい。
凄くいい笑顔で、何一つ理解できないこと言ってる。こっわ、怖すぎる。なんなのこの意味不明な生き物。
声を出すことすら出来ず固まる僕に、恐怖の変態サイコホモ野郎はやっぱり意味の分からない戯言を言い続けている。
「今世をかけてアンタを守るからな。もちろん、来世も言わずもがなだが」
「ア゙ァッ?」
ほんと何言ってんだコイツ。頭おかしいのだろうか。まさか魔力の浴びすぎ&性欲でぶっ壊れたとか。
だとしたらほんとどうしようもない。
「とにかくッ、さっさと人間界へ帰れ!」
こんなモンスターよりモンスターな男、魔界にとっては驚異にしかならん。
脳内には、道行く魔界の住人たちを無差別でレイプしまくる性犯罪者の姿が。
これは何がなんでも止めなければならない。
だって僕は魔王だぞ。王としてやるべき事がある。
――唇を軽く噛んで、意を決して口を開く。
「なにが望みだ」
あまりにも声が小さく震えていたからだろうか。
アレスは小さく笑った。
「分かりきった事を聞くもんじゃないぜ。マイハニー?」
「!!!」
ま、まさか。また抱かせろってことか!?
舐め回すようなイヤラシイ視線に、寒気が走る。同時に別の感覚が湧き上がるのは無視するとして。
昨晩あれだけの狼藉を働いておいて。またこの身体を貪ろうってか。なんてスケベ野郎なんだ!
くそっ、悔しい。悔しいけど。
「アンタが欲しい」
「な、なん、だと」
やっぱりぃぃぃっ!! またヤられるんだ。この絶倫野郎に。
歯がガチガチとなるのを必死で抑えながら、あらためて自分の状況を思い出した。
「とりあえず離せっ、バカ!」
暴れ回る意気込みで怒鳴りつければ、あっさりと床に降ろされる。拍子抜けしたような、少しガッカリ……なんて断じてないが。
それでもそんな考えすらもう甘かったと知ったのは、彼が僕の頬に指を這わせた時。
「本当に美しい男だな」
「え゙っ」
やばい、これはやばいやつ。触れられた部分がやけに熱い。いやちがうな、身体全体が熱い。
もしやなんか変な魔法でもかけられたのか? いやいやいや、この魔法アレルギーの男が???
もう何が何だかわからない。ただ昨晩あれだけ突っ込まれまくったアソコが、まるで女のそれみたく濡れそうな。
も、もちろん。そんなことは生物学上ないんだけれども! でも、でも……なんか……。
「末永く、よろしく頼むぜ」
この先、僕はこの男に脅され続けるってことかよ。
魔界の平和のために。人々の貞操のために。
正直、めちゃくちゃ嫌だ。なんか見つめられるだけで身体が熱くなるのも、この変態クソ野郎がどんどんイケメンに見えてくるのも理解不能だし。
でも、怖気付くワケにはいかない。
僕だって男だ。そして魔王なんだぞ。これも職務の一環と思えばいい。
「御託はもういい」
僕は服に手をかけた。そして何故かひどく驚いた様子のアレスを睨みつける。
「さっさと、やれよ」
目の前の男の瞳は深い翠色。
――ゆっくりその場に押し倒されてる瞬間、僕はたしかに息を荒らげていた。
それを知られたくなくて顔を背ける。
「死ねぇぇぇッ、このド変態鬼畜野郎!!!」
ナイフを手にこの露出男に突進するしかなくてだな。
「おいおい、叫ぶな」
「ぐっ!?」
易々と手刀で叩き落とされて、そのまま羽交い締めにされた。
笑っちまうだろ、これでも魔王なんだ。魔法がなきゃ、俺もこんなもんなのかもしれない。
頭の隅はやけに冷静で、こんな自嘲めいたことを考えているわけだが。
「ぐぬぬ……薄汚い手を離せ!」
「離したら逃げるだろうが」
うわ、なにこのデジャブ。
そもそもなんでこんなに強いんだ、人間のクセに!
そう怒鳴りつければ。
「そりゃ俺も一応、勇者だからな」
なんて小首をかしげる姿は可愛くもなんともない。むしろ不気味ですらある。
だってコイツ、やたら筋骨隆々なんだぞ。そりゃオーガどもとケンカして勝つはずだわ。
あとから分かったのだが、やはり先にふっかけてきたのはオーガ達らしい。おおかた、ノコノコと現れたひ弱 (と見られる)人間でストレス解消しようとでも思ったんだろう。
気の毒ではあるから、こっちからは高価回復薬の詰め合わせ送ったがこれは自業自得だな。
「アンタこそか弱すぎるんじゃねぇのか」
「なっ……」
キィィィッ!! 人間ごときに言われたァァァッ!!!
悔しさと怒りで顔が熱くなる。
「でも安心しろ」
「なにを言って――あ!?」
軽々と男、アレスは体勢を変えて僕をお姫様抱っこしやがった。
言っとくが今の僕は、それなりの体格の姿だ。少年姿でならいざ知らず。
だから慌てふためいて思わずその逞しい首にすがりついてしまう。
「ふむ、熱烈だな」
「うるさい!」
「むしろ大歓迎だぜ。ところで結婚式はいつにする? ハネムーンの場所も決めなきゃな。あと子供は十人は欲しい。男女ともに五人ずつ。あ、心配しなくても育児は俺に任せろよ。なぁに、昔は近所のガキのお守りを一手に担ってきたからな。子供の扱いは自信あるぜ。ミルク育児にも理解あるつもりだ。だがなんならその母乳は俺専用ということで、毎晩授乳プレイを(ry」
「……」
なにコイツこわい。めちゃくちゃこわい。
凄くいい笑顔で、何一つ理解できないこと言ってる。こっわ、怖すぎる。なんなのこの意味不明な生き物。
声を出すことすら出来ず固まる僕に、恐怖の変態サイコホモ野郎はやっぱり意味の分からない戯言を言い続けている。
「今世をかけてアンタを守るからな。もちろん、来世も言わずもがなだが」
「ア゙ァッ?」
ほんと何言ってんだコイツ。頭おかしいのだろうか。まさか魔力の浴びすぎ&性欲でぶっ壊れたとか。
だとしたらほんとどうしようもない。
「とにかくッ、さっさと人間界へ帰れ!」
こんなモンスターよりモンスターな男、魔界にとっては驚異にしかならん。
脳内には、道行く魔界の住人たちを無差別でレイプしまくる性犯罪者の姿が。
これは何がなんでも止めなければならない。
だって僕は魔王だぞ。王としてやるべき事がある。
――唇を軽く噛んで、意を決して口を開く。
「なにが望みだ」
あまりにも声が小さく震えていたからだろうか。
アレスは小さく笑った。
「分かりきった事を聞くもんじゃないぜ。マイハニー?」
「!!!」
ま、まさか。また抱かせろってことか!?
舐め回すようなイヤラシイ視線に、寒気が走る。同時に別の感覚が湧き上がるのは無視するとして。
昨晩あれだけの狼藉を働いておいて。またこの身体を貪ろうってか。なんてスケベ野郎なんだ!
くそっ、悔しい。悔しいけど。
「アンタが欲しい」
「な、なん、だと」
やっぱりぃぃぃっ!! またヤられるんだ。この絶倫野郎に。
歯がガチガチとなるのを必死で抑えながら、あらためて自分の状況を思い出した。
「とりあえず離せっ、バカ!」
暴れ回る意気込みで怒鳴りつければ、あっさりと床に降ろされる。拍子抜けしたような、少しガッカリ……なんて断じてないが。
それでもそんな考えすらもう甘かったと知ったのは、彼が僕の頬に指を這わせた時。
「本当に美しい男だな」
「え゙っ」
やばい、これはやばいやつ。触れられた部分がやけに熱い。いやちがうな、身体全体が熱い。
もしやなんか変な魔法でもかけられたのか? いやいやいや、この魔法アレルギーの男が???
もう何が何だかわからない。ただ昨晩あれだけ突っ込まれまくったアソコが、まるで女のそれみたく濡れそうな。
も、もちろん。そんなことは生物学上ないんだけれども! でも、でも……なんか……。
「末永く、よろしく頼むぜ」
この先、僕はこの男に脅され続けるってことかよ。
魔界の平和のために。人々の貞操のために。
正直、めちゃくちゃ嫌だ。なんか見つめられるだけで身体が熱くなるのも、この変態クソ野郎がどんどんイケメンに見えてくるのも理解不能だし。
でも、怖気付くワケにはいかない。
僕だって男だ。そして魔王なんだぞ。これも職務の一環と思えばいい。
「御託はもういい」
僕は服に手をかけた。そして何故かひどく驚いた様子のアレスを睨みつける。
「さっさと、やれよ」
目の前の男の瞳は深い翠色。
――ゆっくりその場に押し倒されてる瞬間、僕はたしかに息を荒らげていた。
それを知られたくなくて顔を背ける。
1
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
くず勇者にざまあ。虐げられた聖者に一目ぼれした魔王の側近はやり直す
竜鳴躍
BL
私の名前はカルディ=カフィ。魔王ルシフェル様の側近。漆黒の死神と恐れられた悪魔である。ある日、魔王討伐に来た人間の勇者パーティーに全滅させられるが、私はその時恋に落ちてしまった。
ぐるぐる眼鏡で地味な灰色のローブを着ていたけれど、とっても素敵な聖気に満ち溢れていた勇者の下僕…ではない…回復役の聖者に。魔族の私にとってどんな身づくろいをしていようが、本当のすばらしさは一目瞭然なのだ。
やり直したい。
魔王コレクションの宝玉が起動し、私は5歳に戻っていた。
よっしゃあ!待っててね、ダーリン!
不憫な聖者(攻)を前世で魔王の側近として殺された受が癒して、時間逆行でラブラブになる話。
☆8話から主人公とヒーローが合流します。
☆クズ勇者にざまあします。
改題しました。
王子様のご帰還です
小都
BL
目が覚めたらそこは、知らない国だった。
平凡に日々を過ごし無事高校3年間を終えた翌日、何もかもが違う場所で目が覚めた。
そして言われる。「おかえりなさい、王子」と・・・。
何も知らない僕に皆が強引に王子と言い、迎えに来た強引な婚約者は・・・男!?
異世界転移 王子×王子・・・?
こちらは個人サイトからの再録になります。
十年以上前の作品をそのまま移してますので変だったらすみません。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
生まれ変わったら知ってるモブだった
マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。
貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。
毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。
この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。
その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。
その瞬間に思い出したんだ。
僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。
弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!
灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」
そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。
リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。
だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。
みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。
追いかけてくるまで説明ハイリマァス
※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!
※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました! 時間有る時にでも読んでください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる