罰ゲームでパパ活したら美丈夫が釣れました

田中 乃那加

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得体の知れないパパ

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 ケツ痛てぇ――ってワケじゃない。でも限りなく違和感。
 なんていうか、ほんと処女喪失ってこういうことなんだなぁって。

「咲夜」
「うるさい、ド変態」

 回してくる手を叩いて、そっぽ向きたくなるのも無理ないだろうよ。

 お互い素っ裸。
 事後の気だるさだけを残して、ボーッと微妙な時間にやってる二時間ドラマを眺めている。
 ちなみにテレビ付けた時。いきなりAV (しかも、どぎついゲイビ)が大音量で流れて、悲鳴をあげちまった。
 ……あーあ。確かにこのホテル、男性専用だって言ってたけどさ。

「お、また人が死んだな」

 嘉親はさっきから、興味津々といった具合でこのドラマを見てる。
 なんか京都を舞台にしたシリーズ物のサスペンスドラマで。検察やら刑事やら、果ては科捜研が入れ替わり立ち代りするゴチャゴチャしたやつだ。

「このドラマの人間は、どうしてこうも簡単に死ぬのだろうな」
「そりゃまぁ。ドラマだし?」

 ……うわぁ。この人、めんどくさいこと考えるな。
 っていうか。
 すごく楽しんでるじゃないかよ。どうせ毎回お決まりのパターンなのに。
 何人か死んでさ。最終的に崖とかで犯人逮捕でおしまい。
 あれ、なんであんな危険なところなんだろうな。
 普通に転落事故、おきるだろうが。

「おおっ。見てくれ! 今度は、ナイフが尻に刺さって死んだぞ」
「んなアホな――ってマジだ」

 前言撤回。最近の二時間ドラマ、攻めてるじゃねぇか。
 むしろ攻めすぎて怖いわ。

「……犯人は誰だろう」
「知らねぇよ」

 知りたくもない。
 でも嘉親は、テレビに目が釘付け。
 いい歳したオッサンのクセに、なんか子どもみたいだ。
 オレは呆れ果てながらも、まぁヒマつぶしに観察していた。
 別に、することもないしさ。

「――ほぅ! この通行人が犯人だったのか」

 数十分後。
 ぽん。とヒザを打って、ヤツが声をあげた。

「まさか三番目の死体発見現場で、三秒ほど写った人物が犯人とは」

 おかしいだろ。
 絶対に当てられねぇよ、その犯人。
 
「咲夜! この二時間ドラマというのは、実に面白いものだな」

 オレはアンタの方が面白いと思うけどね。
 よくよく観察したから分かる。
 この男、やっぱりすごく変なヤツだ。イケメン顔にダマされるけど、実は子どもっぽい表情もするし。考えることも、しょーもない。
 なんだろ。オレが言うのもアレだけど、それがその……ギャップ萌え? ってやつなのかもしれない。

「咲夜は、楽しかったかい?」
「別に」

 こんなアホみたいなドラマより、楽しいモノなんていくらでも――。

、と思ってね」
「~~~っ!?」

 ……ば、バレてる!
 カッと顔が熱くなって、めまいもした。
 おもわず、頭抱えたら。

「可愛い君に見つめられて、私は大満足だよ」

 なんて甘い声で囁いてきやがった。

「う、うるさいっ」

 怒鳴りつけたけど、恥ずかしさは治らないし悔しくて仕方ない。
 やっぱりこんなに残念でも、大人なんだなって。
 くそっ、ド変態のくせに!

「やれやれ。お姫様はご機嫌ナナメだな」
「お姫様じゃねぇし。この残念なイケメンが!」
「うむ?」
「はぁぁぁぁ」

 ダメだ。このオッサン、やっぱり中身がめちゃくちゃ変態で変人だ。
 オレは深いため息ついて、ベッドのシーツに突っ伏した。

「……もしや私は、君に無理をさせてしまったのだろうか」
「へ?」

 なんだ今さら。
 会話の流れがおかしいぞ。

「さっきから君は、立ち上がってシャワーを浴びる素振りがない。もしや足腰が立たないんじゃないのか」

 心配そうに聞いてくる嘉親の顔は、やっぱりムカつくくらいに整っている。
 シワもシミも全然ないし、たるんだところもひとつも無い。
 でもどっか仕草とか言うことが、オッサン臭いんだよなぁ。なんだろ、こういうのが年齢不詳なんだろうな。

「カン違いすんな、無理なんてさせられてないし」

 悔しくて悔しくて、あとすげぇムカついてるのはあるけどな!
 ノンケだったオレが処女奪われて、頭バカになるくらいアヘらされて。でもそれが嫌じゃなかった。それが、すっごくムカつくし悔しいだけ。

「咲夜」
「オレもまぁ。そのぉ……パパ活っての? ナメてたかもだし」

 確かに、こんなことされると思ってなかった。
 せいぜい食事くらいでお金もらえるなんて、女って得だなぁってくらいしか思ってなかったんだ。
 
「ああ。そうだ」

 そこで嘉親は、思い出したかのように立ち上がる。

だ」

 そう言って手渡されたのは、やたら分厚い封筒だ。
 報酬、ってなぁ。しかもこの厚みは相当入ってるぞ。
 チラリとのぞいたら、やっぱりえげつない分量の万札。
 
「ちょ、待てよ。こんなにもらえるワケないだろ!」

 こんなん、明らかにで稼ぐ金額だ。
 高校生おろか。学生が手にする金じゃない。
 慌てて、つっ返そうとする。

「いや、私の気持ちだ。君はよくやってくれた」
「そ、そんなこと言ってもなぁ……」

 だいたい今回のことも、本当はダマそうとしてただけだし。こんな事になるなんて、オレも女友達も想定外で――。

「その代わり、また君とさせてくれないか」
「ハァァァ!?」

 つまり、またパパ活しろってことか?
 
「もちろん。同じか、それ以上の金額は出そう。足りなければ、君の言い値で良い。金ならいくら出しても惜しくないからな」
「アンタ、いったい何者なんだよ……」

 だんだん怖くなってきたぞ。色んな意味で。
 引きつったオレの表情を見て、嘉親は悲しそうに目を伏せた。
 って、どうでもいいけど。ほんと綺麗だよな。その翠色の瞳。
 まさかカラコンじゃないよな? 宝石みたいだし、その彫りの深い顔に合ってるっていうか。

「私の素性が知りたければ、いくらでも教えてあげよう」
「へ?」

 嘉親の顔が、近づいてきた。
 んでもって軽いキスが、頬に。
 なんの抵抗も出来ずにポカーンとしているオレに、アイツはなんとも言えない顔をしている。

「だから君の時間を、また私にくれないか」
「あ、アンタ……」
「頼む。なんでも差し出すから」

 いい歳したオッサンが、ガキのオレにおねだりしてやがる。
 切ないような悲しいような必死な表情で。
 バカみたいな光景だ。これがパパ活、なんだろうか。

「私は、君のパパであり続けたい」

 な、なんかヒドイ告白だな。
 いや、告白じゃないのか? どっちにしても、オレの答えはもう決まっていたりする。

「嘉親、こっち見て」

 そのイケメン面を両手でつかむ。
 あーもー、なんか見れば見るほど顔が良いな。

「金とか、要らないから」
「ン?」
「そういう関係、結ぶつもり無い」
「そ、そうか……」
「でもっ!」

 しょぼくれたオッサン。
 人の話をあんまり聞かない、得体の知れない男。
 パパ活してなかったら、出会わなかっただろうな。
 オレはその、ぽってりとした唇に自分のそれをぶつけた。

「たまになら、あー……その、アンタに……つ、付き合ってやっても、いい、かも……?」

 バッチリとキメたかったのに。最後の方、声小さくなっちゃった。
 でもオレの気持ちは、ちゃんと伝わったらしい。
 嘉親は、何度もまばたきをしてから。

「大切にする」

 そう囁いて、オレの唇にむしゃぶりついてきた。

「ふぅ……ぅ、んんっ♡」
「早速だが。もう一回、いや三回ほど。付き合ってくれ」
「!?」

 すでに、腰をガッツリ掴まれてる。
 
「ちょ、待っ……えぇぇっ」

 おいおいおいおいっ、大切にするんじゃないのかよ!
 そう言ってぶん殴ってやりたかった。
 でも。

「一緒に、気持ちよくなろうな?」

 オレの尻が――いや。が、キュンキュンとうずく。
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