2 / 7
ガテンOKです♡
しおりを挟む
「あっ、あの……!」
「ン? もしや緊張しているのだろうか」
――にこにこにこにこにこ。
さっきからずっと、この男の表情がコレだ。
オレを見て、笑顔を崩さない。と言うより、視線がずっと離れない。
『場所を変えよう』
ぬぁぁんて、言っときながら。連れてこられたのがカフェ。
しかもめちゃくちゃオシャレなとこでさ。定員や客は、ほぼ若い女。彼女たちの視線の痛かったこと!
そんな空気も意に返さず、オッサンはこっちをあの眩しい笑顔でみつめてくるワケだ。
……オレの心境は、これ以上ないってほどに最悪だった。
「お、オレは――」
「心配しなくていい。私も、とても緊張している」
「へ?」
オッサン (のくせにイケメン)は無駄に並びの良い白い歯をキラリと見せながら。
「こんな美しく麗し君を目の前にして、緊張しない男なんていないだろう?」
「~~~っ!!!」
な、なに言っちゃってんだコイツぅぅぅ!
恥ずかしくないのか!? あ、イケメンだからか。イケメンはそんな奥歯ガタガタ浮きそうな言葉、平気で言っちまうのか!?
怖っ、イケメンって怖い!!
「ああ、頬を赤らめる君も素敵だ」
ヒィィィッ、追い打ちをかけるなァァァ!
周りの視線が痛い。控えめながら、黄色い声も聞こえた気がする。
なんなら店員の目も♡だし、なにやらヒソヒソとささやきあってたし。
「そ、そういうことは……」
「すまなかった。私は正直な男なんだ。綺麗なものは綺麗、といいたくてね」
とろけるような、っていえばいいのか。ウットリとした表情もまたイケメンだから腹が立つ。
なんなんだよコイツ、さっきから。
「おいっ、オッサン!!!」
オレはついにキレた。というか、今キレなきゃいつキレたらいいんだよ。
このままでズルズルて、このよくわかんねぇイケメンのペースでいてたまるかってんだ。
「分かってると思うけど、オレは男だから」
「ふむ」
「おいおいおいおい……アンタほんとに分かってのか!?」
『ハナコちゃん』じゃねぇの! れっきとした男で、男子高校生。しかもホモじゃねぇから、このイケメンに対してもドキッ♡ なんてありえない。
「うむ。分かってるつもりだが」
「ホントかよ」
そのわりには、あいかわらずの熱っぽい視線を寄越してうっとおしい。
マッチ棒何本乗るのかっていう、濃くて長い睫毛の奥の瞳は翠色。素直に『宝石みたいでキレイだ』なんて思ってしまう。
「しかし、私には分からんな」
「分かんねぇのかよ」
どっちだ。
なんかこの人、しゃべればしゃべるほどに調子狂っちまうな。
いわゆる残念なイケメンってやつか? イマイチ、ずれてるっつーか。いや、そっちじゃねぇよ。
アッシュ系のブラウンカラーを入れた、オールバックはオシャレで余裕のあるオジサマってかんじだ。
……そもそもこんなヤツがくるなんて、オレは聞いてない。
当初の予定では、待ち合わせ場所に来たキモいオヤジを笑ってやるつもりだったんだ。
可愛い (加工してるから) 女装したオレを思い描いて、のこのこやってきたキモ男が約束の赤いチョーカーをつけた男 (未加工)を見てアタフタする様をさ。
なのに、だ。
「君はなぜ、パパ活なるものをやっているんだ?」
「ブフォッ!!!」
思わずお冷の水を吹いちまった。
「ゴホッ、ゴホッ、ッ、な゙、なん゙で、ことを゙っ……」
よりにもよって、こんな所で出す単語じゃない。
ほら見ろ、カフェの客達の半数も飲み物吹いてんじゃねぇか!
「ンン? 大丈夫か。可哀想に、むせてしまったか。今、店員を呼ん――」
「らめぇっ! だ、大丈夫、だからぁ」
慌てて止める。
そんなことされたら、オレの精神的ダメージは計り知れない。
そして店員のねーちゃん達が、すごい聞き耳立ててるのがわかってツラいんだけど。
息も絶え絶えに、でも必死に止めれば。
「そうか」
突然、目を見開いたイケメンは黙り込んでましまう。
ようやく理解したか。パパ活っていわれて来たのが、美少女でもなんでもない男子高校生だと。
頭の中身はそうとうボケた男っぽいが、さすがにこのままでいられるほどにアホじゃないらしい。
「君、すまないが……」
おっ、いいぞいいぞ。さっさとフッてくれ。ダマされたと、ブチ切れられたらさすがに困るが、イヤミの一つや二つくらいなら許してやるからさ。
ほらほら、早く。
「予定変更だ。場所を変えようじゃないか」
「へ?」
目が点になるって、こういうことだよな。
……予定変更? 場所を変えよう? どういうことだ?
頭の中が『???』でいっぱいになった時には、再び手を引かれていた。
「うへぇっ? ちょ、な、なんなんだ!?」
「君が悪いんだぞ」
「お、オレぇ!?」
なんでっ、オレのなにが悪いってんだ!
確かにパパ活女子になりすまして (正しく言うとあのアホ女がやりとりしてたんだけど) イタズラしようとしてたけど。
だからって、こんな得体の知れない変なイケメンに恥かかされたり連れ回されたりしなきゃいけないんだよ!
「……君がこんなに、可愛いのがいけないんだ」
「なんだそれぇぇぇッ!?!?!?」
思っきりツッコミ入れたが、ヤツは相変わらず頭のネジが腐って抜け落ちてんじゃねぇのって甘い表情でオレの手をにぎりしめる。
そして、やっぱりイイ声で囁いてきた。
「さぁ、大人の関係になろう」
「……」
オレは背後で『ァンギャァァ!!!』と黄色い歓声 (?)がたくさん上がったのを、他人事みたいに聞いていた。
「ン? もしや緊張しているのだろうか」
――にこにこにこにこにこ。
さっきからずっと、この男の表情がコレだ。
オレを見て、笑顔を崩さない。と言うより、視線がずっと離れない。
『場所を変えよう』
ぬぁぁんて、言っときながら。連れてこられたのがカフェ。
しかもめちゃくちゃオシャレなとこでさ。定員や客は、ほぼ若い女。彼女たちの視線の痛かったこと!
そんな空気も意に返さず、オッサンはこっちをあの眩しい笑顔でみつめてくるワケだ。
……オレの心境は、これ以上ないってほどに最悪だった。
「お、オレは――」
「心配しなくていい。私も、とても緊張している」
「へ?」
オッサン (のくせにイケメン)は無駄に並びの良い白い歯をキラリと見せながら。
「こんな美しく麗し君を目の前にして、緊張しない男なんていないだろう?」
「~~~っ!!!」
な、なに言っちゃってんだコイツぅぅぅ!
恥ずかしくないのか!? あ、イケメンだからか。イケメンはそんな奥歯ガタガタ浮きそうな言葉、平気で言っちまうのか!?
怖っ、イケメンって怖い!!
「ああ、頬を赤らめる君も素敵だ」
ヒィィィッ、追い打ちをかけるなァァァ!
周りの視線が痛い。控えめながら、黄色い声も聞こえた気がする。
なんなら店員の目も♡だし、なにやらヒソヒソとささやきあってたし。
「そ、そういうことは……」
「すまなかった。私は正直な男なんだ。綺麗なものは綺麗、といいたくてね」
とろけるような、っていえばいいのか。ウットリとした表情もまたイケメンだから腹が立つ。
なんなんだよコイツ、さっきから。
「おいっ、オッサン!!!」
オレはついにキレた。というか、今キレなきゃいつキレたらいいんだよ。
このままでズルズルて、このよくわかんねぇイケメンのペースでいてたまるかってんだ。
「分かってると思うけど、オレは男だから」
「ふむ」
「おいおいおいおい……アンタほんとに分かってのか!?」
『ハナコちゃん』じゃねぇの! れっきとした男で、男子高校生。しかもホモじゃねぇから、このイケメンに対してもドキッ♡ なんてありえない。
「うむ。分かってるつもりだが」
「ホントかよ」
そのわりには、あいかわらずの熱っぽい視線を寄越してうっとおしい。
マッチ棒何本乗るのかっていう、濃くて長い睫毛の奥の瞳は翠色。素直に『宝石みたいでキレイだ』なんて思ってしまう。
「しかし、私には分からんな」
「分かんねぇのかよ」
どっちだ。
なんかこの人、しゃべればしゃべるほどに調子狂っちまうな。
いわゆる残念なイケメンってやつか? イマイチ、ずれてるっつーか。いや、そっちじゃねぇよ。
アッシュ系のブラウンカラーを入れた、オールバックはオシャレで余裕のあるオジサマってかんじだ。
……そもそもこんなヤツがくるなんて、オレは聞いてない。
当初の予定では、待ち合わせ場所に来たキモいオヤジを笑ってやるつもりだったんだ。
可愛い (加工してるから) 女装したオレを思い描いて、のこのこやってきたキモ男が約束の赤いチョーカーをつけた男 (未加工)を見てアタフタする様をさ。
なのに、だ。
「君はなぜ、パパ活なるものをやっているんだ?」
「ブフォッ!!!」
思わずお冷の水を吹いちまった。
「ゴホッ、ゴホッ、ッ、な゙、なん゙で、ことを゙っ……」
よりにもよって、こんな所で出す単語じゃない。
ほら見ろ、カフェの客達の半数も飲み物吹いてんじゃねぇか!
「ンン? 大丈夫か。可哀想に、むせてしまったか。今、店員を呼ん――」
「らめぇっ! だ、大丈夫、だからぁ」
慌てて止める。
そんなことされたら、オレの精神的ダメージは計り知れない。
そして店員のねーちゃん達が、すごい聞き耳立ててるのがわかってツラいんだけど。
息も絶え絶えに、でも必死に止めれば。
「そうか」
突然、目を見開いたイケメンは黙り込んでましまう。
ようやく理解したか。パパ活っていわれて来たのが、美少女でもなんでもない男子高校生だと。
頭の中身はそうとうボケた男っぽいが、さすがにこのままでいられるほどにアホじゃないらしい。
「君、すまないが……」
おっ、いいぞいいぞ。さっさとフッてくれ。ダマされたと、ブチ切れられたらさすがに困るが、イヤミの一つや二つくらいなら許してやるからさ。
ほらほら、早く。
「予定変更だ。場所を変えようじゃないか」
「へ?」
目が点になるって、こういうことだよな。
……予定変更? 場所を変えよう? どういうことだ?
頭の中が『???』でいっぱいになった時には、再び手を引かれていた。
「うへぇっ? ちょ、な、なんなんだ!?」
「君が悪いんだぞ」
「お、オレぇ!?」
なんでっ、オレのなにが悪いってんだ!
確かにパパ活女子になりすまして (正しく言うとあのアホ女がやりとりしてたんだけど) イタズラしようとしてたけど。
だからって、こんな得体の知れない変なイケメンに恥かかされたり連れ回されたりしなきゃいけないんだよ!
「……君がこんなに、可愛いのがいけないんだ」
「なんだそれぇぇぇッ!?!?!?」
思っきりツッコミ入れたが、ヤツは相変わらず頭のネジが腐って抜け落ちてんじゃねぇのって甘い表情でオレの手をにぎりしめる。
そして、やっぱりイイ声で囁いてきた。
「さぁ、大人の関係になろう」
「……」
オレは背後で『ァンギャァァ!!!』と黄色い歓声 (?)がたくさん上がったのを、他人事みたいに聞いていた。
53
お気に入りに追加
411
あなたにおすすめの小説
【完結】催眠なんてかかるはずないと思っていた時が俺にもありました!
隅枝 輝羽
BL
大学の同期生が催眠音声とやらを作っているのを知った。なにそれって思うじゃん。でも、試し聞きしてもこんなもんかーって感じ。催眠なんてそう簡単にかかるわけないよな。って、なんだよこれー!!
ムーンさんでも投稿してます。


優しくて知的な彼氏とサークルの合宿中我慢できなくて車でこっそりしたら、優しい彼氏が野獣になってしまった話
ゆなな
BL
Twitterで連載していたタイトルそのまんまのお話です。大学のサークルの先輩×後輩。千聖はいろさん@9kuiroが描いて下さったTwitterとpixivのアイコン、理央はアルファポリスのアイコンをモデルに書かせてもらいました。
【R18+BL】ハデな彼に、躾けられた、地味な僕
hosimure
BL
僕、大祇(たいし)永河(えいが)は自分で自覚するほど、地味で平凡だ。
それは容姿にも性格にも表れていた。
なのに…そんな僕を傍に置いているのは、学校で強いカリスマ性を持つ新真(しんま)紗神(さがみ)。
一年前から強制的に同棲までさせて…彼は僕を躾ける。
僕は彼のことが好きだけど、彼のことを本気で思うのならば別れた方が良いんじゃないだろうか?
★BL&R18です。
執着男に勤務先を特定された上に、なんなら後輩として入社して来られちゃった
パイ生地製作委員会
BL
【登場人物】
陰原 月夜(カゲハラ ツキヤ):受け
社会人として気丈に頑張っているが、恋愛面に関しては後ろ暗い過去を持つ。晴陽とは過去に高校で出会い、恋に落ちて付き合っていた。しかし、晴陽からの度重なる縛り付けが苦しくなり、大学入学を機に逃げ、遠距離を理由に自然消滅で晴陽と別れた。
太陽 晴陽(タイヨウ ハルヒ):攻め
明るく元気な性格で、周囲からの人気が高い。しかしその実、月夜との関係を大切にするあまり、執着してしまう面もある。大学卒業後、月夜と同じ会社に入社した。
【あらすじ】
晴陽と月夜は、高校時代に出会い、互いに深い愛情を育んだ。しかし、海が大学進学のため遠くに引っ越すことになり、二人の間には別れが訪れた。遠距離恋愛は困難を伴い、やがて二人は別れることを決断した。
それから数年後、月夜は大学を卒業し、有名企業に就職した。ある日、偶然の再会があった。晴陽が新入社員として月夜の勤務先を訪れ、再び二人の心は交わる。時間が経ち、お互いが成長し変わったことを認識しながらも、彼らの愛は再燃する。しかし、遠距離恋愛の過去の痛みが未だに彼らの心に影を落としていた。
更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です
X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl
制作秘話ブログ: https://piedough.fanbox.cc/
メッセージもらえると泣いて喜びます:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion
孤狼のSubは王に愛され跪く
ゆなな
BL
旧題:あなたのものにはなりたくない
Dom/Subユニバース設定のお話です。
氷の美貌を持つ暗殺者であり情報屋でもあるシンだが実は他人に支配されることに悦びを覚える性を持つSubであった。その性衝動を抑えるために特殊な強い抑制剤を服用していたため周囲にはSubであるということをうまく隠せていたが、地下組織『アビス』のボス、レオンはDomの中でもとびきり強い力を持つ男であったためシンはSubであることがばれないよう特に慎重に行動していた。自分を拾い、育ててくれた如月の病気の治療のため金が必要なシンは、いつも高額の仕事を依頼してくるレオンとは縁を切れずにいた。ある日任務に手こずり抑制剤の効き目が切れた状態でレオンに会わなくてはならなくなったシン。以前から美しく気高いシンを狙っていたレオンにSubであるということがバレてしまった。レオンがそれを見逃す筈はなく、シンはベッドに引きずり込まれ圧倒的に支配されながら抱かれる快楽を教え込まれてしまう───
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;

ナイトプールが出会いの場だと知らずに友達に連れてこられた地味な大学生がド派手な美しい男にナンパされて口説かれる話
ゆなな
BL
高級ホテルのナイトプールが出会いの場だと知らずに大学の友達に連れて来れられた平凡な大学生海斗。
海斗はその場で自分が浮いていることに気が付き帰ろうとしたが、見たことがないくらい美しい男に声を掛けられる。
夏の夜のプールで甘くかき口説かれた海斗は、これが美しい男の一夜の気まぐれだとわかっていても夢中にならずにはいられなかった。
ホテルに宿泊していた男に流れるように部屋に連れ込まれた海斗。
翌朝逃げるようにホテルの部屋を出た海斗はようやく男の驚くべき正体に気が付き、目を瞠った……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる