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性職者の罪1

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「お゙っ♡ おっ♡♡ あ゙ーっ♡」
「アンタ、すっかりメスだな」

 揶揄する言葉とは裏腹に、悪魔の声は優しい。

 今日も、部屋には三人。
 人形のように眠る少年と、その横で絡み合う男たち。

「ほら、しっかりつかまっていろよ」
「お゙ぁ゙♡ んほっ♡♡ ひぅっ♡ つきあげ、ちゃ、らめぇぇ♡」

 騎乗位でガツガツと突かれて、下品なおほ声あげる姿はもはや聖職者とは程遠い。

(ああっ、きもちいい、きもちいいよぉ)

 純潔であった身体は雄を咥え込むことを覚え、淫らに開発されつつあった。
 
「んひぃっ♡」

 揺さぶられながらの乳首責めにも、色っぽい声をあげる始末。
 
(これも、あの呪文のせいだ)

 悪魔が使う卑劣な魔法。快感を引きずりだす、淫魔のまやかし。
 それを心支えにしながらも、一度ハマりこんだこの性感には抗えないでいた。

「もっと奥にくれてやる」
「ひぎぁっ♡ いやっ、そごぉっ♡♡ くるっちゃゔぅぅ♡♡♡」

 奥にねじ込むように、でも最初はノックしながらの突き進みに身体中の力が抜ける。
 雄の子宮口とも表現されながらも、そこを刺激されれば受け入れるしかない。そしてその快楽は壊れてしまいそうなほどに、強いものだった。

「あ゙ーっ……あ゙っ♡ お゙ぉぉ♡♡ 」

 獣じみた嬌声にも、サマエルは目を細める。
 仰け反る身体を抱きしめながら、巨根ともいえるペニスを彼の身体におさめた。

「あ゙ー……ぅ……♡ ぜんぶっ……入っ……たぁ……♡♡」
「っ、うれしそうじゃねぇか」

 アダムにも分からない。
 なぜこんなに多福感を覚えているのだろう。
 少年の命を人質にされて、無理矢理身体を繋げられているはずなのに。
 
「おい。まだ気絶するなよ」
「え…………んぎっ♡ お゙っ♡ お゙ほぉぉぉ♡♡♡」

 また始まった抽挿に、ピンク一色に染まる頭を振り乱した。




※※※

「もう帰るのか」
「……」

 奥歯を食いしばりながら、必死で散らばる服を集める。そんな彼に、呑気なサマエルの声。

「おい」
「やめなさい」
 
 後ろから抱きついてくる腕を叩く。
 今日の行為は終わったのだ。これから、明日の礼拝の準備をしなければ。
 それにジェレミーのこともある。

「彼を家に送っていく」
「ハァ? 要らねぇだろ、そこら転がしとけよ」
「そんなわけにはいかないだろう」

 大切な子だ。自分が、この身を汚してでも守りたい命。そして、彼の両親も待っている。

「なぁアンタ。そんなにそのガキが大切なのか」
「……当たり前だろう」

 神の前ではすべての者が等しく尊い。
 同じ宗教の中でも、命の重さに差をつける者がいるのは知っている。しかし、アダムはそれに反発していた。
 大人も子供も、異教徒でさえ。彼は隣人を愛せよと言う教えを守る。
 しかし他の神父や牧師の中には、金品を受け取り命の選択をするものや。異教徒は殺せと平気で口にする者達がいる。

 彼らの言う、神とはなんなのだろう。
 考えだすと憂鬱な気分になってしまう。

「人間ってのは、変な生き物だな」

 懲りずに彼の腰に手を回すサマエル。もう一度叩いてやろうかと向けば。

「あ、あれ……」
「治してやったぜ。神父様」

 先程まであった、腰やら身体の痛みがなくなっていた。
 驚いていると彼がニヤリと笑う。

「これでも俺、悪魔だぜ」

 得意げである。
 思わず、吹き出してしまうほど。

「……」

 今度は彼の方が黙りこんだ。
 そして数秒後、一言。

「アンタさ。笑った顔も悪く、ねぇな」
「へ?」

 その思いもかけない言葉に目をぱちくりさせる。
 
(なんだこの悪魔)

 よくよく見れば、うっすら赤面しているではないか。褐色の肌であってもそれが分かる。
 きまり悪そうに頬をかいている姿は、先程まで自分を好き勝手犯していた者とは思えない。

「あと一週間。せいぜい頑張れよ」

 小さな声が質素な空間に響く。ここは、悪魔祓い用の部屋だ。
 最低限のものしかない。普段ならば、悪意と瘴気と罵声の満ちるこの場所が性行為に使われるようになって、もう三週間になる。
 
(あと一週間、か)

 アダムは無言でジェレミーの身体を抱えた。


※※※


「神父様!」

 安息日である、日曜の礼拝。無事に終えて、片付けをしていると。

「ジェレミー」

 少年が扉から顔をのぞかせていた。
 礼拝にも両親と参加していた彼は、ニコニコと無邪気な笑みを浮かべている。

「やあ、元気かい」
「おかげさまで」

 礼儀正しく。それでいて、まだ幼い子ども。最初に出会った頃は、虚ろで悲しげな目をしていた。
 しかしアダムのの効果もあってか、彼の顔色は日に日に良くなっていった。

「ねぇ神父様。あの、これ……」
「ん? なんだい」

 小さな包みのようなものが、手のひらにそっと置かれる。
 かすかに甘い匂いのするそれは。

「もしかして、君が?」
「うん」

 それは焼き菓子。そっと包み紙を広げてみると、中には色んな形のクッキーがいい香りをたてていた。

「メイドのマリアに頼んで、作り方教えてもらったんだ」

 少し失敗しちゃったけど……というそれは、確かに形は多少いびつなものもある。
 しかし。

「いただいていいかな?」
「うん!」

 一つ、つまんでかじる。
 香ばしくて程よい甘さが、口の中に広がっていく。おもわず笑みがこぼれた。

「美味しい……」
「ほんとに!?」
「ああ。本当に美味しいよ。ありがとう」

 パァァッと表情を明るくする少年もまた、なんといじらしいのだろう。
 自らの身体で守っている命であるということを差し引いても、喜びが胸を満たすのを感じた。

「あのね。神父様」

 少年は一瞬だけ恥ずかしそうに視線をそらしたが、すぐに意を決したように見上げてくる。

「ぼく、ちゃんとお礼が言いたかったんだ」
「そんな。私は神父として当然のことをしているだけだよ」

 そう。自分は悪魔に脅されて、抱かれているだけ。
 自己犠牲のはずなのに、胸に痛みが走るのはなぜか。
 
(今日も、私は――)

 暗澹たる気持ちになった時である。

「ジェレミー! ここにいたのかよ。遊ぼうぜ」
「あっ、うん!」

 近くの町の子達だろうか。
 その子どもたちの名を嬉しそうに呼ぶと、彼はこちらに小さく一礼して走り去って行った。
 軽やかな足音が去った後、アダムは自らの身体を抱きしめる。

(ああ、今日も)

 あの性熱にさらされるのだろう。
 
「あと一週間……」

 いや一週間もない。その間、耐え抜けばいいのだ。
 
(もう遅いかもしれない)

 あの男のことを考えるだけで、腰の奥が小さく疼いた。
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