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聖職者ならぬ性職者

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「今日もよろしくお願いします」

 深々と頭をさげる夫婦に、目を伏せることもしなくなった。
 
(すっかり汚れてしまったな)

 自嘲するも、表情は努めて穏やかに。

「はい。悪魔は絶対に追い払います」

 とロザリオを手にうなずく。
 いくらこの身を堕とそうが、やり遂げなければならない。悪魔が約束なんて守るのか? と言われればそれまでだが、そんなことも考えていられない。
 
 今日でようやく二週間。
 悪魔サマエルの要求どおり、毎日彼に身体を委ねてきた。そうすれば頻繁にあったポルターガイストや、少年の奇行もおさまるのだ。
 しかし時折。

『俺は契約をわすれていないぞ』と、しゃがれた声で少年の口を借りて暴言を吐くのだからたまらない。
 少年の両親は、怯えながらも教会に日参するしかないのだ。

「じゃあ行こうか」

 ジェレミーの肩をそっと叩く。彼はきっと何も覚えていまい。最中は、ぐったりとして眠り続けているようだから。

「はい。神父様」

 汚れなき瞳。
 アダムはそれを守りたかった。




※※※

「ったく、アンタもたいがい強情だよな」
「ゔぅ! ……はぁ……ぁ」

 組み伏せる男がため息まじりで言う。
 今日も正上位で抱かれていた。大きく開かされた足の間。
 アヌスには、太くグロテスクな男根を突き入れられている。大きく揺すぶられる度に、アダムの噛み締めた口の端からくぐもった嬌声が盛れた。

(心まで堕ちてなるものか)

 必死で守るもの。それは少年の命だけではない。自らの心もだ。
 神に許しを乞いつつ、それでもこれ以上の堕落を防ごうと躍起になる。
 まさしく心清き聖職者。しかしそれがこの悪魔の欲望に火をつけることを、彼はしらなかった。

「そろそろ初級編は卒業だな」
「な、なに」

 アダムは呆然と目の前の男をみつめる。
 
「これ以上なにをしろと――」
「まぁ黙って感じてろよ」
「!?」

 男が何事か唱えた。すると。

「ひ……っ!! あ゙がっ、かっ、かゆぃぃぃっ!!!!」

 突然、身体の猛烈に痒くなったのだ。しおかも数箇所だけ。

「おっと動くな」
「い゙ぃぃぃっ!!!」

 まずは胸、両方の乳首に異常な程の痒みが発生する。
 なんとか掻きむしろうにも、どこから取り出したのか麻縄で手首を縛り上げられた。
 陸にあげられた魚のようにもんどり打って、暴れ回るアダムを笑いながら易々と押さえつける。

「が、かゆ゙いぃっ、あ゙ぁぁぁ!!!」

 気が狂いそうだった。痛みよりある種、耐えるのが難しい。
 
「へぇ。これもなかなか効果的だな」

 もがく彼を見下ろす瞳は、残忍な猫のように細くなる。

「もう少し増やしてみるか」
「あがっ……ひ、ひぃぃぃっ!?!?!?」

 胸に加えて下腹部。つまり尻穴の奥に鋭い痒みが差し込む。

(痒い痒い痒い痒い痒い)

 なおいっそう強くなる苦痛。身体中を虫が這い回るような幻覚さえ見そうだ。
 身をくねらせて、ベッドは悲鳴のような軋みをあげる。

「か、かかせて……たのむ、から……あぁぁ」
「そんなに辛いか」
「づ、つらい、辛いからっ、たのむ、んぎぃぃぃっ」

 今すぐ血が出てもいいから掻きむしりたい。
 アヌスに自らの指を突っ込んで刺激し、その痒みを沈めたい。その一心で、腰と胸をガクつかせて懇願した。

「ほぉ、なかなかすごいな」

 感心したように呟き、サマエルはなにか思案するように首をかしげる。
 その間も絶え間なく訪れる痒みに、翻弄されるしかない。

(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい)

 何に対して謝っているのか。神か、それとも悪魔サマエルに対してか。

「ひ……っ、ぎ……ぁ゙ぁ……っ」

 正気を失う一歩手前だった。
 目からはとめどない涙。口の端からヨダレが垂れているのも、自覚している。なのに、どんどん蝕まれていく心をどうにも出来ない。
 そこへ、まさしくが聞こえた。

「ちゃんとねだることが出来れば、与えてやる」
「……ね、ねだ、る?」

 急激に与えられた痒みに、言語理解もおぼつかない。
 それでもサマエルは辛抱強く言葉をつむいだ。

「悪魔である俺に、礼儀正しく乞うんだ」

 そしてそのあと続いた言葉に、アダムは虚ろになった目を大きく見開く。

(そんな)

 聖職者の自分が口にするには、あまりにも卑猥で下品な言葉。貧民街の落ちぶれた売女や、色情狂の淫売のようなあけすけな言葉遣いに躊躇する。
 しかし、それを口にしなければ間違いなくここで彼は壊れるだろう。
 そうすればこの少年も――。

「わ、わかっ、た」

 なんとか目の焦点を合わせる。
 裸の胸にさげられたロザリオを握りしめて、恐る恐る口を開いた。

「わ、私、の……胸、を……」
「違う。教えたことはちゃんと聞けよ、バカ人間め」
「くっ……」

 速攻罵倒され、唇を噛む。しかしいっそう痒みが酷くなって、息を吸い込んだ。

「私の……お、おっぱい……と、お、お尻……の……」
「こんなんじゃあ、萎えちまうぜ」
「そ、そんな!」

 心底呆れた様子で身体を離す悪魔に、彼は慌てた叫んだ。

「私のおっぱいとっ……お、お、おまん、こを……たくさんっ……かわいがってぇぇぇっ!!!」
「もう一声だ」
「んひぃぃっ……かゆいっ、痒くてっ、死んじゃうぅぅっ! おっぱい、ちゅぱちゅぱしてっ、甘噛みしてっ、吸ってほしいのぉぉぉぉっ♡♡♡」

(い、いっちゃった)

 心が潰されんばかりの罪悪感とは別に、次の瞬間。

「んおぉぉぉっ♡♡ 」

 勢いよく右の乳首に吸いつかれた。
 左は乱暴に摘みあげられ、こねくり回され。吸われた方も、時折カリカリと甘噛みされて腰がガクつく。

「んひゃぁぁぁっ♡ ぎも゙ぢっ♡ ちくびっ、ちくびっ、とけぢゃうぅぅぅ♡♡♡」

 散々痒いまま焦らされたあとの、強烈な快感。文字通り、アヘ顔さらして喘ぎ続ける。しかし。

(足りないっ、足りないよぉ)

 今度は下が疼く。いや、疼くなんてもんじゃない。
 我慢できないくらいに痒くて仕方なくなる。

「これでいいか?」
「んひっ、ぃ……ま、まだゃっ、ああっ、べつのっ、とこ!」
「ハァ? なんてワガママなんだ。神父様とあろう者が」
「うぅっ」

 神に仕える存在なのに、悪魔にこんな姿を見せて。
 与えられる快楽に浅ましく感じてしまうなんて。
 
(でも、とめられない)

 アダムは股を大きく開いてみせた。

「おまんこっ、犯してっ、いっぱい、奥まで掻き回してぇぇ♡♡」
「……ほぅ」

 悪魔が満面の笑みを浮かべる。

「吐いた唾飲むなよ」

 そう言って、覆いかぶさってきた男の瞳はやけに優しかった。

 
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