淫魔は夢にて

田中 乃那加

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入須君の錯乱

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『あっ♡ あっ♡ あっ♡』
『んひぃぃっ♡♡ しょこっ、もっとぉ♡ おくまでっ♡♡ ほしいのぉぉ♡♡♡』
『んぅっ♡ おいし♡♡ かたくて、おっきなおちんぽ様ぁ♡♡♡』

「な、なんだこれ」

 目の前で見せられた光景に、オレはへたり込む。

 ――引きずってこられた家の中は、案外普通だった。
 いや、外観的にもすこし斬新? なだけだったけどさ。内装はそれ以上に普通というか。何の変哲もない感じでむしろビックリしたな。
 
 でもそこじゃなかった。

「よく撮れてるでしょう。?」
「っ……!」

 後ろからかけられた声に、振り向くことすらできない。
 
「かわいく俺を挑発して。散々、搾り取ってくれたんですよね」

 普段しない呼び方。そして言葉の内容に、意味がわからなくなる。だってオレはここに来たことすらないし、だいたい嫌いな男にこんなことを許す人間じゃないはずだ。
 でも目の前で見せられている映像には、オレが映っている。
 上半身には露出狂でコスプレみたいな服を着て、コイツの上で腰をふっている姿が。
 その顔はアホみたいに惚けていて、口からは自分のとは思えない媚びた喘ぎ声と言葉を垂れ流している。

『んほぉぉ♡♡ しゅ、しゅごいぃぃぃっ♡♡♡ おくにっ、おくっ、ごりごりってぇぇ♡♡ イくぅぅぅぅっ♡♡♡』

 ……つーか、うるせぇ。なにこれ、こんなのAVでもなかなかないんじゃないのか。
 オマケに服として意味をなさない変態服から乳首をつねられて、口をとがらせたマヌケ顔してイったと思われる映像の中のオレ。

「もっとみます? 」

 ニヤニヤ顔が癪に障る仁露が、オレの肩を抱く。

「や、やめろ」

 もう見たくないし、触るなと言う意味を込めてにらみつける。しかし。

「ふふ、自分の痴態を見て興奮してるなんて」
「!」

 言われて気がつく。自分の股間が窮屈なのを。
 慌てて隠すも、遅かった。

「恥ずかしい人だ。これはなんですよ?」
「しょ、証拠……?」
「そう。洋真がオレのモノだっていう証拠」

 どういうことだ。オレは本当に記憶にない。あったら、絶対に生きていられないだろう。
 どんなヤバイ薬を盛られたのか。いや、前後不覚になってもここまでおかしくなるだろうか。
 そしてその記憶すらない。
 戸惑うオレに、アイツは小さく笑った。

「じゃあ思い出してもらおうかな」

 そうしてまた外国語のような。でもさっきとはなんか少し違うそれを、囁いてきた。
 その途端。

「ゔっ」

 まただ。頭がぼーっとして、発熱したみたいな感じ。でもちがう。
 
「か、身体あつ、い」

 熱い。服なんて着てられないくらいに。でもそれが身体の内側。奥からって言った方がいいかかもしれない。
 自分の心臓の音が聞こえてきて、同時に変な震えがくる。

「うぁ……っ」
「先輩」

 やめろ、先輩なんて呼ぶな。いつもは洋真って呼び捨てするだろう。そんな冷静な目で、オレを見下ろさないで。
 そんな目で、そんな、目、そんな――。

「んぇ♡♡」

 ゾクゾクッと、背中をかけあがってくる感覚。
 直接、股間に響くそれに震えちまう。

「相変わらずのドMですね、先輩」
「んぁ……っ、そ、それやめ……っ♡」

 コイツにそう呼ばれると、なんだかめちゃくちゃ興奮する♡
 恥ずかしい変態を見る目で蔑まれて、先輩呼びされて。先輩なのにっ♡ 後輩にそんな態度とられて、無様に感じてるオレってぇ♡♡♡

「はぁっ……あっ♡ あっ♡」
「指一本触れてないのに、こんなことになって」
「んおっ!? 」

 手を股ぐらに突っ込まれて股間をギュッと握られて悲鳴をあげた。

「ほら、抵抗しないとダメになりますよ」
「んぎっ……つ、つぶれ、ちゃ……っ」

 男の大事なとこを握り潰される恐怖と痛み。それに認めたくないけど。

「痛いのも好きですもんね。先輩」
「んひぃぃっ♡♡ しゅき、じゃ、ないぃぃっ♡♡♡」
 
 嘘だ。心臓がうるさいくらいドキドキして、痛くて恥ずかしくて嫌なハズなのに。なんかすごく気持ちよくって。もっとしてほし――。

「口ごたえしてるんじゃない、メスブタが」
「ひぎゅぅっ♡♡♡ 」

 服の上から、乳首をつねりあげやがった!
 手加減なしのそれに痛みと、それ以上の衝撃で何かが弾ける。

「んへぇ……♡」
「これだけでイってしまうんですよね」

 い、イった、のか? オレは。
 腰が抜けたみたいにガクガクする。ハッハッハッと犬みたいな息を吐きながら、だらしなく開けてた口にアイツが顔を近づけのを見た。

「んぅっ!?」

 キス、されてた。一気に頭の中にかかってたモヤみたいなのが晴れて、正気にかえったというか。
 でも、もう遅い。

「うぅ……っ、んーっ! ……ふぁ……ぁ」

 キスって、こんなに気持ちいいのか。
 口ん中に舌入れられて舐められてるだけなのに頭フワフワして、もどかしくって。オレもって、夢中で舌を絡めた。

「っ、寝室、いきましょうか。洋真」

 シンシツ? 寝室、か。寝るのか? 眠たくないのに。
 なんか頭が回らなくて、不思議そうなオレの頭をアイツは少し乱暴に撫でた。

「その顔は反則」
「?」

 そしてみたことないくらい優しい表情で、また顔がこっちに寄ってくる。

「ん……ぅ♡」

 ついに頭おかしくなっちまったのかな。コイツにキスされても、全然イヤじゃない。
 それどろか。

「俺に、抱かれてくれますか?」

 やってる事はめちゃくちゃなのに。やけに丁寧にや優しげに問いかけてくる仁露の言葉に、オレは小さくうなづいた。
 
 
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