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優柔不断ですが
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「本当に助かったよ、瑠衣さん」
駅前のカフェで礼を言うと。
「いや、久しぶりに暁歩君と喋りたかったしな」
なんて。
優しい人なんだよね。
「学生生活はどう? やっぱり忙しいだろ」
「ん、まあね」
そこで僕は人間関係にはあまり触れず、勉強や実習について話して聞かせた。
「偉いよな、暁歩君は」
「え?」
珈琲の湯気を目で追うようにしながら、瑠衣さんは少し目を細める。
「オレなんてお前くらいの時、そんなちゃんと将来のことなんて考えてなかったぞ」
「そうなの?」
「ああ。だってオレ、婚活して歳上ハイスペαとの玉の輿狙ってたもん」
「ええっ!?」
瑠衣さんか婚活ってなんかイメージ湧かないな。
だからてっきり冗談かとおもいきや。
「高卒フリーターでさァ。日々、マッチングアプリで男漁りしてたな。まぁそもそも、あんなところにαなんてほとんどいないっていうね」
でもいないことはなかった。なんて言うからビックリした。
「まあ色々と痛い目にあってさ、今に至るってわけ」
「いやそこが聞きたいんだけど」
だって瑠衣さんの旦那さんって幼なじみで歳下のαだったよね。
痛い目って、どんな事があったんだろ。でも彼は笑って。
「ガキに教えられるかよ。オレが怒られちまう」
と聞かせてくれなかった。
「でもな、いくつか学んだことがある」
テーブル越しに顔を寄せ、小声で。
「人は見かけに寄らない、ってのと。あとは、男を見る目は養っとけってこと」
「え?」
「暁歩君もオレみたく、男見る目無さそうだもんな。特に処女だと」
「ちょっ……どういう意味なのそれ!?」
「あはは! 怒るなよ、からかっただけだって」
まったく。そんなこと言ったら旦那さん悲しむよ。
僕も何度も会ったことあるけど、寡黙で表情があまり変わらない感じの人だ。でもよく見れば優しいし、なにより瑠衣さんと娘の千遥ちゃんを可愛がってるのがよく分かる。
それを言うと。
「あいつはオレに惚れてるからな。気の毒なくらい」
そう答えた後で。
「でもオレだって負けてない」
なんて返ってくるから、やっぱり愛し合ってるんだと思う。
「結婚ってやっぱりいいものなの?」
つい口からついて出た質問だった。
響介さんが僕にしたのって、いわゆる告白でありプロポーズだよね。
あんな人のたくさんいる所でされるなんて驚いたけど。
「なんだよ、暁歩君も婚活するのか」
「また、からかわないでよ。僕は別に――」
「あの男が好き?」
「!?」
投げかけられた質問の答えに窮した。
「よく、わかんない……」
好きが人間的なものなら、多分。でもそれだってさっきは少しドン引きしたし、怖かったすらある。
疎まれた事こそあれ、あんなに好意をストレートにぶつけられたことなんてなかったからかも。
「わかんないうちはやめとけば?」
バッサリ言われて黙るしかない。そんな僕に彼はメニュー表を突き出す。
「ケーキも奢ってやる。ほら、これ期間限定だって」
「えっ、いいの?」
甘党な僕としては嬉しい。自然と顔が綻ぶのが自分でもわかった。
だってメニューの写真から見た目も可愛いんだもん。
思わず真剣に選ぶ僕に、瑠衣さんはちょっとだけ笑って。
「ま、ゆっくり考えな」
とコーヒーを口にする。
「ええっと。これ……うーん、やっぱりこれかなぁ?」
ほんとに悩む。こういう時って色々と目移りして、結局は無難なの選んじゃうっていう。
うー、優柔不断って良くないよね。
「暁歩君はガキの頃と変わらないな」
「そうかなぁ」
「そうだよ。昔からアホで優しい子だし」
「アホは余計だよ」
もう、褒められてるのか貶されてるのか。
「でもな」
彼の手が、僕の前髪に触れる。
「あんまりオジサンを心配させるんじゃないぜ」
「瑠衣さん……」
もしかしてバレてる? 僕があの時、すごく落ち込んで現実逃避しかけたこと。
正直、少しだけ思ってしまったんだ。
『短大辞めてしまおうか』って。
そうしたら少なくとも、今の辛すぎる状況からは抜け出せる気がしたから。
みんなから陰口叩かれるのもだし、友達だと思ってた子にあんな態度されてショックだった。
だからあんなウソみたいなプロポーズに乗っかろうとしたんだ。
学校辞めて、響介さんと付き合って結婚して。そしたら辛かったことから全部、逃げられるって。
どうせΩなんだ。αと番になって生かしてもらったら楽じゃないか、なんて。
「っ……ぅ」
「あ、暁歩君!?」
彼が少し慌てた様子で声を上げた。でも止まらなかった。
「瑠衣さん、僕……僕……」
「あーあ。せっかく可愛い顔が、ってお前は泣いても可愛いか」
気付くと瑠衣さんは僕の隣に座っていて、優しく抱きしめてくれていた。
「なにがあったか知らないけどさ。思いっきり泣いちまえよな」
そう言って僕の額にキスする。
優しいのは瑠衣さんだし。やっぱり綺麗な人だな、なんてぼんやりと思った。
「今日はごめん。あと、ありがとう」
慰めてもらっただけじゃなく、全部奢ってもらった僕は頭を下げた。
「気にすんな。オレと暁歩ちゃんの仲だろ」
なんて冗談めかしてるけど、本当に全部受け止めてくれたんだよね。
あの後、泣きながらぶちまけた。
学校での辛いこと。これまでΩであることを言い訳したくなくて頑張ってきたつもりだけど、それも挫けてしまいそうなこと。
『別に挫けたっていいと思うけどね』
そう言いながらも、頭を撫でてくれながら。
『それが嫌っていうなら、我慢せずオレの所には泣きわめきに来いよな』
って。
イケメンすぎるでしょ、この人。そりゃ旦那さんも惚れるし、心配もするだろうなって。
僕も何度も会ったことあるけど、背が高くてこれまた驚くくらいハーフで美形で。あと口数が少ない人だからか最初は少し怖く感じてたけど、瑠衣さんと娘の千遥ちゃんのこと大好きなのは言動でよく伝わってきたのを覚えてる。
「今度また、うちに遊びに来いよ。千遥が会いたがってたぞ」
千遥ちゃんも小さい頃からよく懐いてくれてて、すごく可愛い。
「あと」
ほんのちょっと躊躇うように間をあけた。
「オレは別にどんな道を選んでもいいと思う。どんなに精一杯悩んだって後悔する時はするんだから、むしろあんまり考え込まない方がいい」
「うん……」
「ただ、ほんと男関係は慎重にな? マジで痛い目にあうから」
瑠衣さん。昔、どんな目に遭ってきたんだろ。少し心配になってきた。
でもパッといつもの明るい顔に戻って。
「ま、恋人できたらオレに会わせろよな! 見定めてやるから」
「あはは、厳しそう」
「そりゃそうだ、大事な子の相手だ」
まるで親みたいな事言う。でも実際、親じゃなくても歳の離れたお兄ちゃんみたいな感覚なんだよね。
「ありがとう、瑠衣さん」
「ん」
また頭をポンポンされて、その場は別れた。
「……」
なんか少し元気出たかも。
甘いもの食べたし話聞いてもらったし。問題はほとんど解決してないけど、それだけで乗り切れる気がした。
――あとは響介さんのことか。
あの人と付き合う? 結婚は……うん、早いよね。そもそも僕は保育士になる夢は諦められない。
いずれそういう事があっても、それは今じゃない。
そもそも恋愛なんて。
「おい」
「痛ッ!? ……って、凪由斗!」
いきなり後頭部を軽くどつかれて振り返った。
「今の誰だ」
「へ?」
なんだ藪から棒に。
何故かすこぶる機嫌悪そうな彼は、僕をとうせんぼするようにたちはだかる。
「今のヤツは誰だって聞いてる」
「誰って、親戚のお兄さんだけど」
「ふん」
なんだその態度! 聞かれたから答えてやったのに!!!
「……まあΩならいいか」
「何言ってんのさ」
もしかして瑠衣さんのことを良からぬ目で見てるのか、こいつ。だとしたら許さないぞ。
「言っとくけど、あの人に手ださないでね」
「あ?」
険しい顔で睨まれたけど、僕は怯まない。
「だいたい人妻だし、旦那さんはめちゃくちゃ怖いんだからね!」
実はすごくヘタレなんだぞって瑠衣さんは言ってたけど。でも第一印象は間違ってないもんな。
僕がした精一杯の威嚇にも、このムカつく男はビクともしない。鼻で笑われた。
「相変わらずのアホだな、お前」
「アホとはなんだっ、アホとは!」
「あきほ、略してアホ」
「だからアホっていうなぁぁっ!!」
変なアダ名みたいになってんじゃん。しかもそれ少し気に入ったみたいで。
「暁歩……略してアホ。うん、いいな」
なんてニヤニヤしながらうなずいてるし!
「よくないっ、バカ」
「アホにバカ呼ばわりされたくねぇよ」
「だからアホじゃないってば!」
ほんっとにムカつく。
でも。
「もういい、帰る」
なんか今日はあんまり怒る気分じゃないかも。
というかむしろ、その変わらない態度にホッとしたというか。自分でも変だなって思ってる。
「待て」
「うぐッ!?」
そしてなんか察したのか、背を向けて行こうとした僕の首根っこが引っ掴まれた。
「やめてよ! 猫じゃないんだから」
「おいこら暴れんな」
僕よりずっと背が高くて腕力もありそうな凪由斗に適うはずもなく、引きずられるように連れていかれる。
「離してってばぁぁぁっ!!」
「うるさい」
ムカつくやら苦しいやら。だから目立つのもお構い無しに怒鳴る。
でもやっぱり無駄な抵抗だった。
駅前のカフェで礼を言うと。
「いや、久しぶりに暁歩君と喋りたかったしな」
なんて。
優しい人なんだよね。
「学生生活はどう? やっぱり忙しいだろ」
「ん、まあね」
そこで僕は人間関係にはあまり触れず、勉強や実習について話して聞かせた。
「偉いよな、暁歩君は」
「え?」
珈琲の湯気を目で追うようにしながら、瑠衣さんは少し目を細める。
「オレなんてお前くらいの時、そんなちゃんと将来のことなんて考えてなかったぞ」
「そうなの?」
「ああ。だってオレ、婚活して歳上ハイスペαとの玉の輿狙ってたもん」
「ええっ!?」
瑠衣さんか婚活ってなんかイメージ湧かないな。
だからてっきり冗談かとおもいきや。
「高卒フリーターでさァ。日々、マッチングアプリで男漁りしてたな。まぁそもそも、あんなところにαなんてほとんどいないっていうね」
でもいないことはなかった。なんて言うからビックリした。
「まあ色々と痛い目にあってさ、今に至るってわけ」
「いやそこが聞きたいんだけど」
だって瑠衣さんの旦那さんって幼なじみで歳下のαだったよね。
痛い目って、どんな事があったんだろ。でも彼は笑って。
「ガキに教えられるかよ。オレが怒られちまう」
と聞かせてくれなかった。
「でもな、いくつか学んだことがある」
テーブル越しに顔を寄せ、小声で。
「人は見かけに寄らない、ってのと。あとは、男を見る目は養っとけってこと」
「え?」
「暁歩君もオレみたく、男見る目無さそうだもんな。特に処女だと」
「ちょっ……どういう意味なのそれ!?」
「あはは! 怒るなよ、からかっただけだって」
まったく。そんなこと言ったら旦那さん悲しむよ。
僕も何度も会ったことあるけど、寡黙で表情があまり変わらない感じの人だ。でもよく見れば優しいし、なにより瑠衣さんと娘の千遥ちゃんを可愛がってるのがよく分かる。
それを言うと。
「あいつはオレに惚れてるからな。気の毒なくらい」
そう答えた後で。
「でもオレだって負けてない」
なんて返ってくるから、やっぱり愛し合ってるんだと思う。
「結婚ってやっぱりいいものなの?」
つい口からついて出た質問だった。
響介さんが僕にしたのって、いわゆる告白でありプロポーズだよね。
あんな人のたくさんいる所でされるなんて驚いたけど。
「なんだよ、暁歩君も婚活するのか」
「また、からかわないでよ。僕は別に――」
「あの男が好き?」
「!?」
投げかけられた質問の答えに窮した。
「よく、わかんない……」
好きが人間的なものなら、多分。でもそれだってさっきは少しドン引きしたし、怖かったすらある。
疎まれた事こそあれ、あんなに好意をストレートにぶつけられたことなんてなかったからかも。
「わかんないうちはやめとけば?」
バッサリ言われて黙るしかない。そんな僕に彼はメニュー表を突き出す。
「ケーキも奢ってやる。ほら、これ期間限定だって」
「えっ、いいの?」
甘党な僕としては嬉しい。自然と顔が綻ぶのが自分でもわかった。
だってメニューの写真から見た目も可愛いんだもん。
思わず真剣に選ぶ僕に、瑠衣さんはちょっとだけ笑って。
「ま、ゆっくり考えな」
とコーヒーを口にする。
「ええっと。これ……うーん、やっぱりこれかなぁ?」
ほんとに悩む。こういう時って色々と目移りして、結局は無難なの選んじゃうっていう。
うー、優柔不断って良くないよね。
「暁歩君はガキの頃と変わらないな」
「そうかなぁ」
「そうだよ。昔からアホで優しい子だし」
「アホは余計だよ」
もう、褒められてるのか貶されてるのか。
「でもな」
彼の手が、僕の前髪に触れる。
「あんまりオジサンを心配させるんじゃないぜ」
「瑠衣さん……」
もしかしてバレてる? 僕があの時、すごく落ち込んで現実逃避しかけたこと。
正直、少しだけ思ってしまったんだ。
『短大辞めてしまおうか』って。
そうしたら少なくとも、今の辛すぎる状況からは抜け出せる気がしたから。
みんなから陰口叩かれるのもだし、友達だと思ってた子にあんな態度されてショックだった。
だからあんなウソみたいなプロポーズに乗っかろうとしたんだ。
学校辞めて、響介さんと付き合って結婚して。そしたら辛かったことから全部、逃げられるって。
どうせΩなんだ。αと番になって生かしてもらったら楽じゃないか、なんて。
「っ……ぅ」
「あ、暁歩君!?」
彼が少し慌てた様子で声を上げた。でも止まらなかった。
「瑠衣さん、僕……僕……」
「あーあ。せっかく可愛い顔が、ってお前は泣いても可愛いか」
気付くと瑠衣さんは僕の隣に座っていて、優しく抱きしめてくれていた。
「なにがあったか知らないけどさ。思いっきり泣いちまえよな」
そう言って僕の額にキスする。
優しいのは瑠衣さんだし。やっぱり綺麗な人だな、なんてぼんやりと思った。
「今日はごめん。あと、ありがとう」
慰めてもらっただけじゃなく、全部奢ってもらった僕は頭を下げた。
「気にすんな。オレと暁歩ちゃんの仲だろ」
なんて冗談めかしてるけど、本当に全部受け止めてくれたんだよね。
あの後、泣きながらぶちまけた。
学校での辛いこと。これまでΩであることを言い訳したくなくて頑張ってきたつもりだけど、それも挫けてしまいそうなこと。
『別に挫けたっていいと思うけどね』
そう言いながらも、頭を撫でてくれながら。
『それが嫌っていうなら、我慢せずオレの所には泣きわめきに来いよな』
って。
イケメンすぎるでしょ、この人。そりゃ旦那さんも惚れるし、心配もするだろうなって。
僕も何度も会ったことあるけど、背が高くてこれまた驚くくらいハーフで美形で。あと口数が少ない人だからか最初は少し怖く感じてたけど、瑠衣さんと娘の千遥ちゃんのこと大好きなのは言動でよく伝わってきたのを覚えてる。
「今度また、うちに遊びに来いよ。千遥が会いたがってたぞ」
千遥ちゃんも小さい頃からよく懐いてくれてて、すごく可愛い。
「あと」
ほんのちょっと躊躇うように間をあけた。
「オレは別にどんな道を選んでもいいと思う。どんなに精一杯悩んだって後悔する時はするんだから、むしろあんまり考え込まない方がいい」
「うん……」
「ただ、ほんと男関係は慎重にな? マジで痛い目にあうから」
瑠衣さん。昔、どんな目に遭ってきたんだろ。少し心配になってきた。
でもパッといつもの明るい顔に戻って。
「ま、恋人できたらオレに会わせろよな! 見定めてやるから」
「あはは、厳しそう」
「そりゃそうだ、大事な子の相手だ」
まるで親みたいな事言う。でも実際、親じゃなくても歳の離れたお兄ちゃんみたいな感覚なんだよね。
「ありがとう、瑠衣さん」
「ん」
また頭をポンポンされて、その場は別れた。
「……」
なんか少し元気出たかも。
甘いもの食べたし話聞いてもらったし。問題はほとんど解決してないけど、それだけで乗り切れる気がした。
――あとは響介さんのことか。
あの人と付き合う? 結婚は……うん、早いよね。そもそも僕は保育士になる夢は諦められない。
いずれそういう事があっても、それは今じゃない。
そもそも恋愛なんて。
「おい」
「痛ッ!? ……って、凪由斗!」
いきなり後頭部を軽くどつかれて振り返った。
「今の誰だ」
「へ?」
なんだ藪から棒に。
何故かすこぶる機嫌悪そうな彼は、僕をとうせんぼするようにたちはだかる。
「今のヤツは誰だって聞いてる」
「誰って、親戚のお兄さんだけど」
「ふん」
なんだその態度! 聞かれたから答えてやったのに!!!
「……まあΩならいいか」
「何言ってんのさ」
もしかして瑠衣さんのことを良からぬ目で見てるのか、こいつ。だとしたら許さないぞ。
「言っとくけど、あの人に手ださないでね」
「あ?」
険しい顔で睨まれたけど、僕は怯まない。
「だいたい人妻だし、旦那さんはめちゃくちゃ怖いんだからね!」
実はすごくヘタレなんだぞって瑠衣さんは言ってたけど。でも第一印象は間違ってないもんな。
僕がした精一杯の威嚇にも、このムカつく男はビクともしない。鼻で笑われた。
「相変わらずのアホだな、お前」
「アホとはなんだっ、アホとは!」
「あきほ、略してアホ」
「だからアホっていうなぁぁっ!!」
変なアダ名みたいになってんじゃん。しかもそれ少し気に入ったみたいで。
「暁歩……略してアホ。うん、いいな」
なんてニヤニヤしながらうなずいてるし!
「よくないっ、バカ」
「アホにバカ呼ばわりされたくねぇよ」
「だからアホじゃないってば!」
ほんっとにムカつく。
でも。
「もういい、帰る」
なんか今日はあんまり怒る気分じゃないかも。
というかむしろ、その変わらない態度にホッとしたというか。自分でも変だなって思ってる。
「待て」
「うぐッ!?」
そしてなんか察したのか、背を向けて行こうとした僕の首根っこが引っ掴まれた。
「やめてよ! 猫じゃないんだから」
「おいこら暴れんな」
僕よりずっと背が高くて腕力もありそうな凪由斗に適うはずもなく、引きずられるように連れていかれる。
「離してってばぁぁぁっ!!」
「うるさい」
ムカつくやら苦しいやら。だから目立つのもお構い無しに怒鳴る。
でもやっぱり無駄な抵抗だった。
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