鬼村という作家

篠崎マーティ

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五話「ノック」

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 締切間近で原稿の完成を待っていた私は、時刻が遅い事もあり鬼村の言葉に甘えて仮眠をとらせてもらっていた。
 意識を手放してから一体どれくらい経ったのか、不意に目が覚めたのは物音が聞こえたからだった。コンコンとノックする音がどこからか聞こえる。音の出所を探してこうべを巡らせると、はたと窓の外に居る少年と目があった。
 少年は窓を叩いていた手を止め、起きた私に向かって楽しそうに手を振り始める。彼の口が動き、窓越しに微かに何か言っているのが聞こえるが、何を言っているかまでは分からない。
「ここ二階」
 横で机に向かっていた鬼村がぞんざいに言った。
「無視して」
 私は何も言わず静かに掛け布団を頭の上まで引き上げた。
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