食いつなぎ探索者〜隠れてた【捕食】スキルが悪さして気付いたらエロスキルを獲得していたけど、純愛主義主の俺は抗います。

四季 訪

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37.断たれる退路

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 退路を断たれた。

 森の中に逃げ込もうと考えたが、その中にすら敵の気配が感じ取れる。

 この森からあの元のダンジョンに逃げ込むためには複数体の豚鬼オークを倒さなければ叶わない。

 奥へ逃げ込もうにもそこには豚鬼の異常個体が立ち塞がっている。

 いや、その個体は今、高見の見物を決め込むかのように岩に腰掛けた。

 舐めた真似を。

 杏はその異常個体である豚鬼の人間臭い行動に苛立ちを覚えるも、だからと言って豚鬼の居座る方向の道を抜けるとも思えなかった。

 だからこそ余計に腹立たしい。

 涎を垂らしながら下卑た表情を浮かべる豚鬼共が杏へとにじり寄ってくる。

 「くっ……」

 足並みを揃えて間を詰める豚鬼達に付け入る隙が見当たらない。

 やはり、後ろでふんぞり返る個体だけではない。

 普通に見えるこの豚鬼達の知能も普通ではない。

 いや、知能というよりも、どこか訓練されたような印象を杏は感じ取れた。

 どっちにしろ異常だ。

 詰め寄る豚鬼達の足並みを崩そうと端の豚鬼に向かって矢を放つ。

 思惑通り、痛みに吠える豚鬼の足は止まり、足並みは簡単に崩れた。

 「やっぱり獣は獣ね」

 目を充血させて欲望に支配されている他の二体は端の豚鬼に気付かずに進み続けている。

 そして、堪えきれなかった真ん中の豚鬼が我先にと抜け駆けし、雄たけびを挙げながら杏へと走る。

 「ほんと安いメッキ」

 突出した豚鬼に合わせるように前に出る杏。

 これなら一瞬だが一対一の状況に持ち込める。

 おもちゃを鷲掴みするように伸びた豚鬼の手を掻い潜り、彼女の小剣が豚鬼の首へとすれ違いざまに斬りつける。

 「どんだけ脂のってんのよ」

 皮膚が厚いだけでなく、その舌の脂肪分厚い豚鬼の体はちょっとやそっとの刃では満足に傷つけることは出来ないようだ。

 情欲から怒りに変わった豚鬼の荒げた声に呼応するように他の豚鬼の表情も変化。

 獲物を綺麗に捕まえる捕猟から、生死を問わない狩猟へと切り替えたかのように、豚鬼達の動きに荒々しさが加わった。

 その様子に後ろの異常個体の豚鬼もやれやれち言いたげに首を振っている。

 「自分たちがハンター側であると勘違いしないことね!」

 「ぶもぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!」

 別の豚鬼が杏を襲う。

 それを軽快な動きで避ける。

 矢が刺さったまま傷の塞がった豚鬼がすぐさま加わり攻撃は苛烈になってゆく。

 通常の個体よりもこの豚鬼の動きは俊敏だ。

 こうまで囲まれてしまえばさすがの杏も反撃に移るだけの余裕はない。

 しかし、前を塞ぐ壁は明らかに減った。

 壁のように一列だった豚鬼の並びは、前後の配置に変わった。

 後ろに一体、横に一体。

 退路の塞いでいるのは一体のみ。

 隙を見てこの囲みから出ることが出来れば、逃げ足の速い彼女ならここから逃げるだけの自信があった。

 けど、

 (思ったよりも攻撃に穴がないっ)

 偶然か、それともこういった連携を得意としているのか、簡単に抜け出せるほどに甘くなく、杏の動きに合わせた豚鬼の攻撃は杏が逃げるための隙を与えてはくれなかった。

 「……っ!」

 遂に豚鬼の振るうこん棒が杏を掠める。

 掠めただけにも関わらず鈍い痛みが腕から全身へと響く。

 そこから杏の動きは精彩を欠いて幾つもの豚鬼の攻撃が杏の体を捉え始めた。

 徐々に増えていく痣。

 次第に衰えていく動き。

 「ハァ、ハァ……」

 体力には自信があった筈の彼女の呼吸は既に切れ始めていた。

 豚鬼の表情も既に変化している。

 もう終わりが見えたのか、顔は怒りから再び獣欲を覗かせていた。

 三体の中央で荒い息を吐きながら立ち止まる杏。

 その様子に囲む豚鬼達の表情がにやりと歪んだ。

 にやにやと様子を伺い、互いを見合う豚鬼。

 その人間臭い動きからくる小さな隙を見逃さず、彼女は腰に下げた投擲ナイフを前に豚鬼の足に投げ放った。

 見事に深々と突き刺さったナイフは矢が刺さっている脚と同じ脚だった。

 再びの痛みに泣き声を上げて蹲る豚鬼の横を抜けるため残していた脚をここで一気に使う。

 クラウチングの体勢からスタートダッシュを決めた。

 (やっとこいつらから逃げ切れる!)

 蹲る豚鬼を横目で見ながらその横を過ぎ、成功を確信した。

 ゴッ───!

 鈍い音。

 地面が抜けたような浮遊感。

 急落下する視界。

 「あがっ……」

 何が何だかわからないうちに、杏は地面に顔を打ち付けてしまっていた。

 「なん……で」

 脚を見た。

 「うそ……」

 脚のひざ下半分が折れ曲がり、ひしゃげてしまっている。

 「うっ……ぐぅ、あぁぁぁぁぁあああああああああああああ!」

 悲惨な現状を視界に収め、認識した瞬間遅れてやってくる激痛。

 そして、この脚では逃げる事などできないという現実にさらされた絶望が混ざり合い嘆きの絶叫が森に響いた。

 それをいやらしい笑みで見る豚鬼と異常個体。

 近くに転がるこぶし大の石には彼女の血がべっとりとくっついていた。

 忘れていたわけではない。

 だからこそ、豚鬼達を自分を囲うように密集させて、抜け出したときのための遮蔽物代わりにして奴の射線から隠れるつもりだった。

 念のため、うずくまる豚鬼を越した時僅かに横に移動してこの豚鬼も遮蔽代わりに利用したのだ。

 しかし、奴らから大きく離れて豚鬼が遮蔽として役目を果たさなくなるほどに距離が開いたこの場所まで、奴の投げた石は正確に杏の脚を捉えて見せた。

 まさかここまで正確に投擲できるとは思っていなかった。

 最初の投石はわざと掠めさせたものだった。

 奴らの性格を考えればその可能性を頭に入れておくべきだった。

 単なる魔物だから。

 所詮は不器用な豚鬼オークだから。

 これだけ精確な投石はできないと高を括ってしまっていた。

 その油断が、この末路を招いたのだ。

 「あがっ」

 近寄ってきた豚鬼の一体に髪を掴まれて持ち上げられる。

 耳にぶちぶちと嫌な音が伝わった。

 地面に勢いよく顔を打ち付けた彼女の頬は赤黒く滲み、切れた唇から血が流れていた。

 彼女の顔を良く覗き込むように豚鬼の醜い豚面が近づいてくる。

 臭い息が顔に掛かった。

 「ぶっさいくなツラ近づけないでくれる?」

 絞り出すように掠れた声はしかし余裕を演じていた。

 その挑発の言葉は分からずとも嘲りだと理解できた豚鬼は腹を立て、彼女の腹を一発殴りつけた。

 「うぐっ!!」

 息が止まる程の鈍痛。

 豚鬼の膂力を初めてその身に食らった杏の視界がチカチカと歪む。

 おとなしくなった彼女を引きずっていく豚鬼。

 上の立場である異常個体の豚鬼の前に投げ出された。

 「ぶざま、だなぁ」

 膝に頬杖をついて杏を見下ろす異常個体。

 「おまえ、のような、おんなが、ぶざまをざらずのが、いぢばん、ぞぞる」

 「如何にも女に、モテた試しの無い奴の末路ね。……がっっ」

 その言葉が気に入らなかったのか、異常個体の豚鬼は彼女の顔を蹴り上げた。

 「ぞいづ、で、あぞんで、いいぞ」

 その言葉に豚鬼達が杏へと群がる。

 杏と戦った三体だけではない。

 森の中に散っていた豚鬼達もこぞって杏へと群がってきた。

 「や、め……」

 豚鬼の大きな手が彼女の革鎧を不器用に剥いでいく。

 あまりの乱暴さに体のあちらこちらに痣が刻まれるが、確実に彼女を剥いていく。

 肌の露出に満足いったのか、それとももうこれ以上我慢が出来ないのか、豚鬼の一体が彼女の柔肌をねぶり始めた。

 「汚い!やめなさい!」

 他の一体が彼女の胸に指を沈めてゆっくりと指を動かした。

 「変なとこっ触んないで!!」

 さらに他の豚鬼が下半身へと手を伸ばす。

 「噓でしょっそこだけは絶対に嫌よ!」

 強い拒絶の金切り声が耳に触ったのか、それともそいつの趣味か、別の一体が彼女の顔を殴りつける。

 「ぅ……ぐ……んむぅっ!!」

 彼女の呻き声は豚鬼の太い指をねじ込まれて封じられる。

 股間に伸びた手はもったいぶるように彼女の尻を揉むようにして撫でつけていた。

 微かな抵抗も空しく彼女の貞操は下卑た豚共によって蹂躙されていく。

 (こんなの……いや、家族と平穏に暮らしたいだけなのに……みんな……お母さん)

 脳裏に浮かんだのは血の繋がらない大家族、そして養母だった。

 ぬるりと口腔から抜き出された豚鬼の指。

 そしてその濡れた指を丁度良いと言わんばかりに彼女の股間へと伸ばし、下着に指がかかった。

 「だれか…………助けてっ……」

 絶望に染まる心とは裏腹に、豚鬼の分泌液によって性感を高ぶらされた彼女の声の端々には甘い響きが混ざっていた。

 頭の中がおかしくなりそうな中、最後の言葉と共に浮かんだのは霞んで朧げな男の姿だった。
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