アイズwithスターダスト 〜神聖力(エーテル)に愛された神の継承者〜

優陽 yûhi

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第4最終章

93 殲滅

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 戦いの準備は、ほぼ整った。
 アルティスの下に集った十万の軍隊の一人一人も、
 自分がどんどん強くなるのが楽しくなってきた様で、訓練は順調。
 武器の他にも、防具の用意もなんとか間に合った。見違える程の軍隊が出来上がりつつある。

 悪魔軍が現れるであろう地点は特定出来ている。
 そもそも、次元転移装置を稼働させるには、色々な条件が揃わなければならない。
 その条件に合う場所は限られている。
 更に大人数の部隊を纏めて出現させられる場所は、そう多くはなく、
 7箇所にまで絞り込む事が出来た。
 その7箇所の先は全て同じ所、すなわち悪魔の領域だ。
 各所に、部隊を配置し、戦いの準備は完了する。
「間も無くだよ?皆んな準備は良いかい?」

「で、アル。1200年厄災はいよいよ明日に迫っておる。いよいよだな。
 悪魔共が1200年厄災を狙う理由だがな、そろそろ教えてくれても良いのではないか?」

 1200年厄災。それはエーテルが1200年に一度、1ヶ月間冬眠状態になる事で、
 マナ供給が極端に減り、天変地異……災害が1ヶ月続く厄災であった。
「ま、そう言うのが1200年厄災なんだって。エーテルが原因で災害が起きてたんだね」
 エーテルが冬眠に入るその時、神々やアルティスは力が出せなくなる……
 そこを悪魔が狙うのは必然と言える。
 1200年に一度の事なのに、その時期が近々に迫っていたのが、アルティス達にとっては不運だったと……
 逆に悪魔にとっては絶好のタイミングだったのだ。

「エーテルが冬眠状態になるのか?アルティスも力が出せなくなる……そんな状態で戦えるのか?」
 不安そうに顔を曇らせるリヴァルド王。
「壁に耳ありってね、これ以上は話せない。でも心配しなくても良いよ?
 奴らにも、分かっていない事がある」
「うむ。これ程の不利が分かっているのに、アルティスはまるで動じる様子がないな?
 わしらはお前を信じるしかな様だな」


 アルティスの瞳の星がふらふらと泳ぎはじめた。エーテルが冬眠状態に入る様だ。
 いよいよ1200年厄災の幕が上がる。
「さあ皆んな!次元転移の穴を開け、一斉に攻め込むぞ!」
「あ、アル貴方こっちから攻め込む気?」
「驚いた?」
「あなたいつも受け身だもの。やられない限り、此方からは手を出さないかと思ってたわ」
「もう宣戦布告されてるからね?わざわざこっちで戦い、民に犠牲を出す事はない……そう思わない?」
「でもどうやって、悪魔の次元に行くの?」
「まえに、世界樹の近くの悪魔の拠点から、次元転移装置を持ってきたんだ。
 それを、カインが仕組みを解明して、何台か複製してくれたんだよ。
 まさかこっちから来るとは思ってないでしょ?あいつらきっと慌てるよ?
 さ~て……そろそろ始めるとしますか?用意は良いか~?全部隊突撃~!!」

 いよいよ戦闘開始だ……いや、結果的には殲滅せんめつでしかなかった。
 先頭を切って入ってみると、目の前に数え切れない程居るのは、最下級の悪魔ガーゴイルだった。
 ガーゴイル達は、未だ心の準備が出来ていないところに、7方向から突如現れた敵軍に慌て、
 更に統率が乱れていた。
 しかし、最下級の悪魔ガーゴイルとはいえ、肌が闇の様にどす黒く、蝙蝠コウモリみたいな翼に、2本の角。
 見慣れない者には非常に不気味で、威圧感がある。
(皆んな、ちょっと足がすくんじゃってるかな?俺だって初見は〝気持ち悪!〝だったもんな。
 先ずは俺が、戦いの火蓋を切るか?〝

 軍の先頭に立ったアルティスは、ガーゴイルの足元に、無数の大きな法術陣を浮かび上がらせる。
 瞬時に魔方陣から、青白い光の炎が巻き上がった。耳を劈く風切り音を残し、
 聖なる炎は上空1000m近く迄到達する。
 ガーゴイルは、漆黒の翼を広げ空中に逃れ様とするが、一瞬で炎に焼かれ、跡形もなくなる。
 ガーゴイルの身体の細胞から、邪気で埋め尽くされた魂までを、
 聖なる力の光で消滅させる。その攻撃だけで1万近くのガーゴイルが消えた。

「す……すげ……アルの奴、エーテルが使えないんじゃなかったのか?
 いつもと変わらないじゃないか?どうなってる」
 アルティスの友人、副団長のカーマイルが、目を丸くして呟く。

「ん?今のは、俺が構築して皆んなに伝えた、あの聖なる魔法だよ?効果抜群だったろ?
 魔法騎士団の皆んなも出来る様になったじゃ無い。一つずつで良いからやってみようか?さあ、打てっ!!」
 アルティスの見せた攻撃魔法……いやこれはもはや殲滅せんめつ魔法……

 〝〝〝〝おおおおおお~~~~!!!!〝〝〝〝
 萎縮しかかっていたアルティスの軍隊の目に輝きが戻り、雄叫びが上がった。
 皆んなの心に戦う魂が甦った様だ。
 〝ズゴ~ン!ズゴ~ン!ズズズズゴ~ン!〝見る見る数を減らす悪魔の軍勢。

 形勢を巻き返そうと、地面から続々湧き出てくる人型メフィストフェレス。
「さあ~て、今度は俺の出番かな~」
 そう言うと、伝説の魔王アシュリーは走り出し、一瞬で音速を超える。
 音もなくアシュリーの後には、メフィストフェレスどころか、何も残らなかった。

「さっすが、アシュリー。ルシファーの代行とまで言われるフェストメレスを、ああも簡単に……」
「メフィストフェレスな?アルティス?」
「そ?アシュリーが勢いをつけてくれた今がチャンス!お前達も続け~!剣士軍団の出番だぞ!
 正のエネルギーの光魔法が付与された剣を存分に使ってな」

 〝シュンシュン!ズシャン!〝
「うひゃ~何なん?この剣?すんげえ切れ味!」
「切っても切っても、直ぐ再生しやがってた悪魔が、再生せずに消えやがる!」
 正のエネルギーの光魔法を付与した剣の威力は絶大だった。
 拮抗するかと思われていた戦いだが、蓋を開ければアルティス達の圧倒的優勢。
 悪魔達は次第に防戦一方になる。

「アルティス様の言ってた事は本当だったな?」
「当たり前だ!俺のダチだぞ?あんな純粋な奴は他にはいね~!
 嘘なんてつくもんかよ?あいつが嘘つくのは、フィオナ姫にだけだぞ?バレバレの嘘だけどな?」
 バカ話が出来る程余裕の人族。今まで人族の攻撃が、悪魔に全く通用しなかった事で、油断しまくりの悪魔。
 当然の結果だった。
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