アイズwithスターダスト 〜神聖力(エーテル)に愛された神の継承者〜

優陽 yûhi

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第1章

38 じゃ、そゆ事で……お化け退治

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「アルよ、すまんが、王国の東、スノタールの、魔法騎士団の拠点迄、行ってもらえんか?」
「うん良いけど、何かあった?」
「スノタール支部の魔法騎士団の者達から、あの地の地脈の流れが、何かおかしいと報告が来ておるのだよ」
「地脈の流れが?」
「あそこには世界樹も有って、我が王国の農作物の収穫を左右する重要な地域でな?
 少々気掛かりなんだよ。地脈もエーテルの恵みなんだろ?
 お前なら……いや、お前にしか、調査出来ないんじゃないかと思ってな」


「あ、居た。アル。あのね、ソフィヤが居る教会なんだけど、
 あそこの霊園の森に、お化けが出るって騒ぎになっているの。
 あの森には薬草畑が有って、お化け騒動のおかげで、
 ポーション作りに、支障が出てきてるらしいのよ。一緒に行ってくれない?」


「今日は次から次へと、何だか忙しいな? よし分かった。そんじゃあスノタールまで行ってくるよ」
「ちょっと待ってよ?聞いたわよ?地脈の件でしょ?それって急を要する事?まだ何も支障は出ていないんでしょ?」
「さあ?でもポーションだって、他でも作ってるんだろ?そんなに急ぎか?」
「薬草から作るポーションは、生物なまものに近くて有効期限の短いのが結構有るのよ。
 だから王都で使われるのは、大半が教会で作られた物なの」
「ふ~ん……そうなんだ? じゃ、そゆ事でスノタールに行ってくる」
「何が〝そゆ事で〝よ? 何んでスノタールになるのよ…………
 ねえ?貴方もしかして、お化けが怖いんじゃないの?」
「はぁ~?……な訳あるかい!父さん母さんだって霊だし。
 いつも会ってたし……霊は……霊は……怖いもんじゃないし……霊はな……
 分かったよ教会に行けば良いんだろ行けば……」
(お化け?そんなの居る訳ない。そんな訳ないんだ。死ねば必ず魂の故郷に飛ぶ。
 お化けとか……そんな気持ち悪いもの、居るわけないんだ!
 決して怖いわけじゃないぞ?怖いわけじゃ……)


「こ、ここ?真っ暗じゃん?な、何でこんな夜遅くに……明日の朝出直そ?な?」
「バカなの?お化けよ?夜にしか出ないんだから、夜に来るしかないでしょ?
 そんなに汗かいて、貴方やっぱり何か変よ?」

「あっ、あっ、あっ?何か居る!あそこあそこ……あの木の後ろ……」
 フィオナの後ろに隠れて、しがみつくアルティス。汗が流れ落ちている。
「ちょ……どこ触って……あっ?本当だ!行ってみましょ」

「あれ? う~ん……何もいないわね?」
「いるいる、そこそこ。人だよ人。あれは霊でもなく、魔物でもなく……やっぱ、人じゃん」
「どこよ? あ、ほんとだ……ねえ?そこの人!貴方何してるの?」

 後ろを振り向く人影。顔の皮膚はただれ、片目は腐ったかの様に垂れ下がっている。
(う~わ~何あれ?寒気を誘う程の不気味な顔だぞ。やっぱあれは絶対人じゃない。
 お化けってあんな感じだっけ?ゾンビってやつじゃないか?
 それにしてもキモい……お化けなの?お化けなのか~~!)
「キャ~キャ~キャ~~」
 アルティスが大騒ぎしながら逃げまどう……
「アル?どこ行くのよ? なっ……アルティス?逃げないでよ~」

(キッ……キモッ!あの顔……怖え~ハアハア ビックリした)
「ちょっと待ってよ!アルなら指一本で倒せる魔物でしょ?
 まあ、でも確かにあの顔は……怖い……かも……
 でもでも、クスクスクス……キャ~とか言ってなかった?」
「死んだら別世界に行くの!ここには残らないの!何か変なの~ ハアハアハア……」

「ぐふふふふ……」
「わ~追いかけてきた~ く…くそ~ も~切れた! きっちり殺してやる~ 簡単に死ねると思うなよ~」
「あ~いや……おで……もう多分だぶんじんんでるんだけど……」
「しゃ……喋りやがった」

 〝ドクッ……ドクッ……ドクッ……ドクッ……〝
「……  あ、あれ?今、あいつの方から心臓の音が……お前?もしや?死んでないんじゃない?
 お前の心臓動いてるぞ。俺、めちゃ耳良いからさ、
 お前から心音聞こえる……たぶんまだ生きてるぞ?」
「ねえ?あの人?もしかしてだけど、何かの病気なんじゃないの?腐る寸前って感じだけど…」
「病気の人? だったらヒール掛けてみよか?
 あ、ちょ……たんま!だからたんま‼︎ 近寄んな~こっちから行くからさ……
 だ~か~ら~こっち来んなって!ストップ、スト~ップ」

 へっぴり腰で、恐る恐る近づくアルティス。チキンかよ?
 アルティスはエキストラヒールを掛けてみた。
 魔法が効いたのか、ゾンビ顔がちょっと汚れた、ただのおじさんの顔になった。

「ありがとありがと!本当にありがと! 助け求めても皆んな逃げちゃうし……
 昼間ならと思って外に出ると、陽が当たって肌が焼けて痛くて……」
 握手を求めるおじさん。
「ちょ……待って!来ないで来ないで」
「な、何で?もう普通の人に戻ってるんですよね?」
「ごめん、おじさん臭い…… 腐った匂いが残って……俺、鼻も良すぎるんで……」

 お化け騒ぎは、お墓参りに来て突然具合が悪くなり、病気で血の巡りが悪くなり、
 生きたまま腐りかけた、おじさんの仕業だったとさ。
 目が飛び出してただけに、めでたしめでたし。


「アル。ソフィアも一緒に行くって。もちろん私も行くわよ?」
「なして?俺一人で良いよ。ちょっと空から、地脈の様子を探ってくるだけだから」
「スノタールの北には世界樹が有るのよ。枯れたら大変なの。
 農作物の収穫に大きな影響があるのよ?心配だから私達も行って確認したいのよ」
「ふ~ん。リヴァルド父さんもそんな事言ってたな?
 ま、良いけど?2人いっぺんには抱けないよ……」
「抱かないと転移出来ないの?」
「…………うん」
「その間は嘘よね?そもそも魔法陣で行けるでしょ?」
「魔法陣は、行った事あるところしか行けないの。
 俺、そこには行った事ないから、人の気配を探りながら行くしかないんだよ。
 地上に転移して、そこに何か有ったり、誰か居たら、それと混ざっちゃって、
 ミックスジュースになっちゃうよ?空中に飛ぶしかないんだよ?」
「そう言われると、そうかも……でも抱かないと転移出来ないってのは嘘よね?」
「手……繋げば行ける……かも?」
「ハイ解決!それじゃ早速行きますか~」
「かも?って言ったんだけど……」
「うん聞いたよ?じゃ行きますか~」
「……はい……」
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