アイズwithスターダスト 〜神聖力(エーテル)に愛された神の継承者〜

優陽 yûhi

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第1章

27 魔王の一人、バートランドにゃん

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「たっだいま~~」
 アルティスが、1人の男の首根っこを掴み、引きりながら戻って来た。
 先ほどアルティスが、不機嫌そうに座ってたと言っていたあの男だ。
 その男の姿は、先程とは違い、立派な角が生えていて、魔族だと分かる。

「ねえ皆んな、ストゥールの王城に帰る?」
「えっ?あそこは魔族だらけでは?」
「ん?もう誰も居ないよ?すっからかん。
 それはそれで、不用心だから、帰った方が良いんじゃない?大切な物、色々有るんじゃない?」
「未だ、30分も経ってないじゃない?まさか、もう全部の魔族倒したとか、言わないわよね?」
「終わったよ。なあ?魔王さん」
 腕を上げて魔族の体を持ち上げると、魔王と言われた男が、コクコクと怯えながら頷いている。

「あの?貴方がアルティス様? 私はフィオナの幼い頃からの友人で、
 ストゥール王国の、第一王女エレノアと申します」
「そだよ。ボクはアルティス、人間ニャン♡」
 アルティスが、可愛らしく猫耳で微笑む。
「プッ……ププププッ……」
 下を向き、真っ赤な顔で、肩を振るわせ、笑いを堪えるエレノア。
 いや、堪えてないか?笑っちゃってるし?
「ごめんなさい。フィオナから聞いてた通りの、自己紹介だったもので……
 アルティス様、なんて可愛いらしいお方」
 違う意味で、顔を赤くして、アルティスを見上げるエレノア。
「私のアルティスだってば……」
 小さな声で、抗議こうぎするフィオナ。
「ねえアル。説明してくれる?何があったの?」

「た、大変です!地下の人間共が、全員、居なくなっております!」
「は~~あ~~?何を言ってる貴様……  鍵はどうした?」
「掛かったままです!」
「地下の大ホールに、鉄格子を付けただけの急拵きゅうごしらえだったが、簡単には脱出出来んだろ。
 隠し通路でも有ったのか?さっさと確認しろ!」
「いえ、ノルマン陛下!違います。その寸前まで、大勢の声がしていました。
 突如、静かになり、不審に思い見てみると、
 中が霧の様な光で満たされており、それが消えると、誰一人居なくなっていたのです」
「寝ぼけてるのか?何をふざけた事を!」
 ノルマンが地下に降りると、やはりそこは、もぬけの殻だった。

「千人近くの人間が、忽然と消えるわけないだろうが!見張りすら満足に出来んのか?
 この無能共!虱潰しらみつぶしに探せ!」
 手を振り上げ、殴りかからんばかりに怒鳴る。
 〝ドガンッ!〝
 しかし突如、誰もいなかった筈の、ノルマンの背後から後頭部を殴られ、
 ゴロゴロと吹き飛ばされる。壁に半身がのめり込むんでしまった。

「グワァアアア……」
「ハハハハッ……手加減したとは言え、お前、結構頑丈な?さすが魔王ってか?」
「ううううぅぅぅ……」
 アルティスの横では、更にもう一人うずくまっていた。

「お、お前は先程の……」
 残りの1人がいう。
「もう自己紹介はしないよ?ん~と、そうだな、お前からは、色々聞きたいから、ここに居て、な?」
 アルティスが、指を2本、チョンと男の額にれると、男は身動きが取れなくなった。
「ほ、他の者はどうした?」
「ん?もう誰もいないぞ」
「あれだけの人数だぞ……この短時間に、お、お前まさか全部、こ、殺したのか?」
「へ~~……お前、仲間の事、心配するんだ?」

 そう言うと、後の2人を掴み、アルティスは消えた。
 国境迄、転移すると、魔族領との結界を、いとも簡単にスルッと通り抜け、2人をポイっと投げ出す。
「生きてる? ん?大丈夫ね? バイバ~イ」

「さ~て、お前にはもう少し聞きたい事があるんで、
 我らの王の元に、一緒に来てもらおうか」
「ふざけるな!絶対行かんぞ」
「いや、お前に拒否権はないから……そもそもどうやって拒否ろうと?」
「……ぐっ……」


「……て事で、連れて来た」
 ストゥール王城に戻ったアルティスが言う。
「ほ、本当に、この魔族は魔王なの?」
「そだよ?」
「で、お前は、8人居ると言われる、魔王の一人なのか?」
「そ、そうだ。俺が魔王の一人、バートランドだ……な、勝手に口が動く!」
 先程の2本指のチョンで、アルティスの言いなりになってしまっている様だ。

「違うだろ?バートランドにゃん!だろ?」
「バートランドにゃん……」
「プ~プププ~ お前、俺の友達になんない? 仲間を心配したりして、けっこう良い奴ぽいし」
「……ぐぐっ……」
「あ、嫌?あそ、それは悪かった。で、お前達は何しにストゥールに行って、
 王城の皆んなを、拘束したんだ?目的は?
 それとフィオナを、どうするつもりだったんだ?」
「人族に攻め入る拠点にする為だ……ぐっ……くそっ……
 ハ、ハルステインでは、上手くいかなかったからな……
 こ、この姫さんは、ノルマン……あ、あそこにいた魔王の一人なんだが、
 人質にとれば、何か使い道が有るんじゃないか?そ、そう言ってな……」
「何故、攻め入る必要があるんだ?」
「し……知らんよ。我らは、別に今の生活に、満足しているからな。
 わ、わざわざ危険を冒してまで、人族の地に攻め入る必要なんてない……」
「ん?お前の言ってる事は、矛盾してないか?」
「い、いや……だ、だから……我らは、そんな事をしたい訳ではない……
 魔族の国、8国は、互いに揉める事もなく、平和だったのだが、
 ここ最近、何故か最大の国、シャトレの魔王が、人が変わった様に攻撃的になってな。
 我らエレノア王国などの、小さな国は、従わざるを得なかっただけだ。
 お前が連れて行った、あの2人の魔王の国も、似たり寄ったりの事情さ」
 だんだんと抵抗する事を諦め話し出す魔王バートランド。
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