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第1章
14 俺、お金、全く持ってない
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エリザベスに光をかざし、呪縛を解いた翌朝、
彼女が目を覚ましたとの事で、部屋に呼ばれた。
ベットに座るエリザベスは、笑みを浮かべ、こちらを見ていた。
優しげに目を細め、静かに近付くアルティス。
「昨日より顔色が良くなったみたい……気分はどう?」
アルティスは、答えも聞かず、エリザベスの両頬に手を添え、神聖力を流し込む。
エリザベスの顔が、血色が良くなり、薄っすらとピンク色に染まる。
「暖かい……」
そう言うと、突然、涙を流しながらその胸に強くアルティスを抱きしめた。
「良かった……アルティス君……貴方、無事だったのね!
まあまあ!こんなに素敵な青年になっていたなんてね……
本当に……本当に良かったわ!」
命を救ってくれた感謝の涙なのかと皆は思ったが、
行方不明だったアルティスが、無事帰った事を、喜んでくれての涙だった。
エリザベスが、心から心配してくれていた事を知ると、
アルティスは少し照れくさそうに顔を赤らめ下を向いた。
何故ならば上を向くと髑髏顔が、ちょっとだけ怖かったのだ。
アルティスも涙が少し流れた。
嬉しかったからか、怖かったからかは分からない。
アルティスが地上に戻り、早1ヶ月が過ぎた。
少し平和な日々が続いている。
行く宛の無いアルティスは、王城に部屋を貰って、
そこで、生活する様になっていた。
平静を取り戻しつつある王都では、魔族軍討伐の、
お祝いの祭りが始まっていた。
王都まで魔族軍に攻め入れられた訳ではなく、
建物や施設に被害がなかった事が幸いし、早めに討伐の祝いが出来たのだ。
被害と言えば、犠牲になったと思われていた、大勢の騎士の事だが、
あの事件の後、間もなくすると騎士全員が、無事帰って来た。
何万人もの犠牲が出ていると、聞いていた家族や友人は、
気が気ではなかっただろう。
それが大挙、無事に帰ってきたのだ。誰もが驚きを隠せなかった。
皆んな泣いて再会を喜んだ。
「騎士団はとっくに蘇生しているから心配しなくても良い」
そう言っていたアルティス。
実は最初の戦いを収めたあの時、
アルティスは、犠牲になった人々を救おうとしたのだが、
近くに、神界で別れたばかりの女神ミリアの気配を感じた。
何故ここに?
〝アル……ここは私に任せて、
貴方は当初の予定通り王都に向かいなさい〝
頭の中に直接、女神ミリアの声が響いた。
何で?と思うのだが、アルティスにとって女神ミリアの言葉は絶対だ。
今迄、一度も間違った事がなかった。
“了~”
ミリアの事だ……何か自分には、先を急ぐ必要が有ると言う事だろう。
その時、空からは沢山のキラキラ光る粒が、
雪が舞う様に、ゆっくりと降り落ちて来ていた。
それは女神の癒しだった。
(ミリア姉さんの癒しか……これなら大丈夫だな……)
後に、こちらの襲撃は囮で、北の砦が本来の目的……
という事を見越しての指示だったと気付く。
怪我人と犠牲者は、女神ミリアの女神の癒しによって救われていたのだった。
本来は、余り下界の出来事に干渉しない神々。
その為のアルティスでは有るのだが……
下界に降りた途端、あまりに多くの事が起きてしまう。
少しだけ過保護な、女神ミリアの手助けだった。
祭りに向かったアルティスとフィオナ。
この国の王家は、王族の行動を、あまり制限しない。大らかなのだ。
庶民の様な振る舞いも許される。
遠巻きに、隠密やら、騎士やらが護衛しているとは言え、
初めての、2人だけのデートだ。
2人は、王都の街並みを見下ろす、高台の公園を歩いていた。
「……それでね…… あれ? アル?」
10年前に戻った様に、親しそうに、仲睦まじく話す様になった2人。
視線を向けると、横を歩いていたはずの、アルティスが居なくなっていた。
数m後ろで、立ち止まり、
サファイア色の瞳が、下の広場を見下ろしている。
「どうかした?アル。何かあったの?」
魔族の気配を感じた時と、同じ顔にドキッとするフィオナ。
「ま、まさかまた魔族!?」
フィオナに振り向き、アルティスは、少し悲しそうな顔をした。
アルティスの見つめていた先には、
美味しそうに屋台の串焼きを食べている、家族連れが沢山いて、
良い香りが漂ってきていた。
「フィナ、気付いてしまった……俺、お金、全く持ってない……」
食べたいのね。
「アル?沢山報奨金貰ったじゃない?」
魔族撃退2度、更に王妃の命を救い、
一生使いきれない程のお金、白金貨1000枚を貰っていた。
「貰ってない……」
「貰っていたわよ?大きな木箱で」
「木箱?」
「玉座の間で、色々な褒章の品と一緒に、大きな木箱貰ったでしょ?
あそこに、お金も、た~くさん入っていたでしょ?」
「あの木箱?お金も入ってたの?
……木箱、テーブルにしてた……どうりで重いと思った……」
「も~ お父様達の話、全然聞いてないな?とは思ってたけど……」
「俺、戻って、お金取ってくる…… って、フィナを1人にできないか……」
アルティスはフィオナの事をフィナと呼ぶ様になった。
流石にヒナでは子供っぽ過ぎるからとフィオナに懇願されては仕方ない。
あまり変わらない気もするのだが…… ヒナは鳥の雛みたいで嫌らしい。
「お金なら私が持ってるわよ。大体貴方、白金貨しか持っていないんでしょ?
そんなんじゃ何も買えないわよ。
1枚で大きな家が買える様な白金貨を、屋台とかで使える訳ないじゃない」
彼女が目を覚ましたとの事で、部屋に呼ばれた。
ベットに座るエリザベスは、笑みを浮かべ、こちらを見ていた。
優しげに目を細め、静かに近付くアルティス。
「昨日より顔色が良くなったみたい……気分はどう?」
アルティスは、答えも聞かず、エリザベスの両頬に手を添え、神聖力を流し込む。
エリザベスの顔が、血色が良くなり、薄っすらとピンク色に染まる。
「暖かい……」
そう言うと、突然、涙を流しながらその胸に強くアルティスを抱きしめた。
「良かった……アルティス君……貴方、無事だったのね!
まあまあ!こんなに素敵な青年になっていたなんてね……
本当に……本当に良かったわ!」
命を救ってくれた感謝の涙なのかと皆は思ったが、
行方不明だったアルティスが、無事帰った事を、喜んでくれての涙だった。
エリザベスが、心から心配してくれていた事を知ると、
アルティスは少し照れくさそうに顔を赤らめ下を向いた。
何故ならば上を向くと髑髏顔が、ちょっとだけ怖かったのだ。
アルティスも涙が少し流れた。
嬉しかったからか、怖かったからかは分からない。
アルティスが地上に戻り、早1ヶ月が過ぎた。
少し平和な日々が続いている。
行く宛の無いアルティスは、王城に部屋を貰って、
そこで、生活する様になっていた。
平静を取り戻しつつある王都では、魔族軍討伐の、
お祝いの祭りが始まっていた。
王都まで魔族軍に攻め入れられた訳ではなく、
建物や施設に被害がなかった事が幸いし、早めに討伐の祝いが出来たのだ。
被害と言えば、犠牲になったと思われていた、大勢の騎士の事だが、
あの事件の後、間もなくすると騎士全員が、無事帰って来た。
何万人もの犠牲が出ていると、聞いていた家族や友人は、
気が気ではなかっただろう。
それが大挙、無事に帰ってきたのだ。誰もが驚きを隠せなかった。
皆んな泣いて再会を喜んだ。
「騎士団はとっくに蘇生しているから心配しなくても良い」
そう言っていたアルティス。
実は最初の戦いを収めたあの時、
アルティスは、犠牲になった人々を救おうとしたのだが、
近くに、神界で別れたばかりの女神ミリアの気配を感じた。
何故ここに?
〝アル……ここは私に任せて、
貴方は当初の予定通り王都に向かいなさい〝
頭の中に直接、女神ミリアの声が響いた。
何で?と思うのだが、アルティスにとって女神ミリアの言葉は絶対だ。
今迄、一度も間違った事がなかった。
“了~”
ミリアの事だ……何か自分には、先を急ぐ必要が有ると言う事だろう。
その時、空からは沢山のキラキラ光る粒が、
雪が舞う様に、ゆっくりと降り落ちて来ていた。
それは女神の癒しだった。
(ミリア姉さんの癒しか……これなら大丈夫だな……)
後に、こちらの襲撃は囮で、北の砦が本来の目的……
という事を見越しての指示だったと気付く。
怪我人と犠牲者は、女神ミリアの女神の癒しによって救われていたのだった。
本来は、余り下界の出来事に干渉しない神々。
その為のアルティスでは有るのだが……
下界に降りた途端、あまりに多くの事が起きてしまう。
少しだけ過保護な、女神ミリアの手助けだった。
祭りに向かったアルティスとフィオナ。
この国の王家は、王族の行動を、あまり制限しない。大らかなのだ。
庶民の様な振る舞いも許される。
遠巻きに、隠密やら、騎士やらが護衛しているとは言え、
初めての、2人だけのデートだ。
2人は、王都の街並みを見下ろす、高台の公園を歩いていた。
「……それでね…… あれ? アル?」
10年前に戻った様に、親しそうに、仲睦まじく話す様になった2人。
視線を向けると、横を歩いていたはずの、アルティスが居なくなっていた。
数m後ろで、立ち止まり、
サファイア色の瞳が、下の広場を見下ろしている。
「どうかした?アル。何かあったの?」
魔族の気配を感じた時と、同じ顔にドキッとするフィオナ。
「ま、まさかまた魔族!?」
フィオナに振り向き、アルティスは、少し悲しそうな顔をした。
アルティスの見つめていた先には、
美味しそうに屋台の串焼きを食べている、家族連れが沢山いて、
良い香りが漂ってきていた。
「フィナ、気付いてしまった……俺、お金、全く持ってない……」
食べたいのね。
「アル?沢山報奨金貰ったじゃない?」
魔族撃退2度、更に王妃の命を救い、
一生使いきれない程のお金、白金貨1000枚を貰っていた。
「貰ってない……」
「貰っていたわよ?大きな木箱で」
「木箱?」
「玉座の間で、色々な褒章の品と一緒に、大きな木箱貰ったでしょ?
あそこに、お金も、た~くさん入っていたでしょ?」
「あの木箱?お金も入ってたの?
……木箱、テーブルにしてた……どうりで重いと思った……」
「も~ お父様達の話、全然聞いてないな?とは思ってたけど……」
「俺、戻って、お金取ってくる…… って、フィナを1人にできないか……」
アルティスはフィオナの事をフィナと呼ぶ様になった。
流石にヒナでは子供っぽ過ぎるからとフィオナに懇願されては仕方ない。
あまり変わらない気もするのだが…… ヒナは鳥の雛みたいで嫌らしい。
「お金なら私が持ってるわよ。大体貴方、白金貨しか持っていないんでしょ?
そんなんじゃ何も買えないわよ。
1枚で大きな家が買える様な白金貨を、屋台とかで使える訳ないじゃない」
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