6 / 97
第1章
06 おっぱい少女
しおりを挟む「ネエ?おっぱい少女。
もう障壁張らなくても大丈夫だよ?十分頑張ったから後は俺に任せて」
「えっ? あれ? 貴方は? おっぱい少女?私? あれれれっ?」
思考が追いつかないソフィヤ。
ソフィアは驚いた。
ここにはもう誰もいないはず?
いつの間にか、横にサファイア色の瞳の少年が、静かに立っていた。
前方を見ると、魔族の全ての攻撃が、広範囲に光の壁に跳ね返され、防がれている。
日が暮れて暗くなった夜空が、眩しい程の光の壁。
信じられない光景が広がっていた。
50人もの魔導師が張った障壁でも防ぎきれず、多くの犠牲を出してしまっている。
今はソフィア1人で、ボロボロになりながらも抵抗していた。
それを……澄ました顔をして、世間話でもしているかの様に、私に話しかけながら?
「それにしても魔族逹多くね?食事冷めちゃわないうちに、いっぺんに片付けて早く帰ろ~~」
片付ける?何を?この魔族達?
ソフィアは混乱した。
アルティスの身体が光り出し、その光る手を此方にかざす。
その光に包まれるソフィア。
あっ……とっても暖かい……
そう思ったら身体中傷だらけだったはずが、痛みが消えている。
そして何故か魔力まで回復してる様だった。
手を見てみると、やはり傷は跡形も無く消えている。
この少年が治してくれた?
そうとしか思えない……でもどうやって?
回復魔法だとしても何の詠唱もない。
何故か自分の魔力さえ回復している。
こんな聖魔法、聞いた事もない。
何が起きているのか分からない。
ソフィアは考える事をやめた。
今はそれどころでは無い。
気付くと何故か横が眩しい!
見ると少年の放つ光が更に増し、身体全体が銀色に眩しく輝いていた。
そして魔族の長い隊列に向けその手をかざす。
すると、魔族の足下に大きな魔法陣が、幾重にも浮き上がり、数キロに渡って青く光出す。
やがて目の前に出来ていた障壁が消え、魔法陣から幾何学模様を纏ったドームが浮かび上がり、魔族を包囲している。
「よし、これで外には漏れないかな?」
そう言うと、アルティスのサファイアの瞳が、銀河の星々の様に輝く。
それに呼応する様にドームの中に、明るい光の粒が、小さな飴玉程の大きさで、無数に浮かび上がる。
「殲滅」指をピンと鳴らすのを合図に、無数の光の粒は、ギラギラ光りながら超高速で動き出し、次々と魔族を貫いていく。
直進して線を描き、静止して光る粒になる、そして又、光の線になり魔族を貫く…それを繰り返す。
大きな音をたてるでもなく、ドームの中は、無数の線香花火が現れたかの様に煌めく。
光に貫かれた魔族は、霧の様に光の粒となり、ドームの中は更に煌めきを増す。
血や肉が飛び散らないとは言え、魔族を殲滅しているのだ。これは残酷な景色なのだろう。
しかしその光の美しさに目を奪われてしまう。
夜なのに昼間の様な明るさに、高まる胸を抑え切れない。
そして目の前は眩い白に染まる。
10分程経っただろうか?光の輝きは徐々におさまる。
視界が回復してくると、先程まで埋め尽くされた魔族の姿は一切消え、静寂に包まれていた。
「光は外に漏れて無いよな?うん……」
キョロキョロ周りを見渡すアルティス。
「おっぱいの子……
地下の皆んななの所に案内してくれる?」
「おっぱいの子じゃありません……」
顔を赤らめながら、小さな声で抗議するソフィア。
あのドームは、光を外に出さない為?魔族以外に被害を出さない為の障壁なのだろうか?
それにしても何故地下に人がいる事を知っているのだろう?
「あの?可愛い?おっぱいの子?」
「可愛い……を付けられても……じゃなくて、おっぱいから一度離れて…………私はソフィアと申します」
可愛いと言われ、更に顔が赤くなる。
「ボクはアルティス、人間ニャン♡」
……ポカン?とするソフィア。
ソフィアにも「人間ニャン♡」は効かなかった。
創造神が腹を抱えて笑っている姿が目に浮かんだ。“ チェッ……”
地下に案内されると、そこは地獄絵そのものだった。
「酷いな……」
そう言いながら、ソフィアの後ろを歩くアルティス。
鼻をつんざく血の……そして皮膚の焦げた匂い。あちこちに落ちている血痕。騎士団の損傷は激しい。
暗いはずの地下が、神聖力を纏ったアルティスから、滲み出る霧の様な光の粒で、明るく輝きだした。
暫くすると地下全体が、光で満たされる。
「おっぱ……ソフィア?俺は急ぎ王城に帰らなければならない。
もう既に、こっちに人が向かっているはずだから、安心して待っていて」
「し、城に?貴方は王城から来られたのですか? ちょっ……ちょっとお待ち下さい。
アルティス様は、私にして下さった様に、上位回復魔法が使えるのですよね?
私には、あの様な強力な聖魔法は使えません。
お願いです、ここの人達を助けて……」
聞こえたのか聞こえなかったのか?
アルティスの姿はもうそこにはなかった。
そそくさと消えてしまったアルティス。
どんだけ腹が減ってんだい!
「ソフィア」
絶望に膝を崩すソフィアを後ろで呼ぶ声がした。
「何が一体どうなってるんだ?ソフィア?」
振り返ると、虫の息だったはずの魔法騎士団長のスパイクが、元気そうに立っている。
いや、団長だけじゃ無い?皆、怪我が治っている様だ!
「ソフィア……」
又も、後ろから声が掛かり、振り返るソフィア。
「きゃ~~~お化け~!!!」
そう叫ぶと、物凄い速さで逃げだした。
それもそのはず。
その声は、火魔法を直撃され、全身丸焦げで、即死だったはずのカリンだったから。
ドン!!誰かにぶつかり尻餅をつく。
見上げると、そこには水魔法で凍らされ、バラバラに砕けたはずのサーシャが!
「どうなってるのよ~?!」
泣きそうな声でそう叫ぶ。
「いやいや、こっちが聞きたいよ。何がどうなってる?」
「まさか、い……生き返ったの?死んじゃってたよね~?」
「いや?死んだの?私?……う~ん?よく分からない……」
「貴方は丸焦げ……貴方は凍ってバラバラ……やっぱ、お化け!?」
「落ち着け……ソフィア」
団長が声をかけてきた。
「怪我人はおろか、死んだ奴も生き返った様だ……さっきの光る霧は何だったんだ?
攻撃の音が止まった様だが、魔族はどうした?教えてくれ」
「教えてくれも何も、私にも何が何やら……でも魔族はもういません。全部消えて無くなりました……」
きっとあの少年が、何かしてくれたのだろう。
と~~ってもお腹が空いてたみたいだけど……
バレバレだよね。食事が冷めないうちに早く戻りたいって言ってたし……
10
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました
向原 行人
ファンタジー
僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。
実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。
そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。
なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!
そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。
だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。
どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。
一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!
僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!
それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?
待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる