アイズwithスターダスト 〜神聖力(エーテル)に愛された神の継承者〜

優陽 yûhi

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第1章

01 魔王軍襲来 勇者パーティーなす術なし

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 我が物顔で空を飛び交い、勇者パーティーを見下す魔王軍……
 その数、千!

 一見いっけんすると人の様にも見えるが、肌の色は青っぽく、頭から角、背中に羽の生えている者も居る。

 眼下には息も絶え絶え、ボロボロの勇者パーティー5人。
 帯同した3万もの騎士団は為す術もなく、蹂躙じゅうりんされ壊滅かいめつ寸前。
 物言わぬしかばねが無数に散らばっている。

「ぐうぅぅっ……魔王が、これ程強いとは……アイナ!ヒール!ヒールを!」
 いいようにやられ、自分の力が、まるで通用しない事に怯え、逃げ腰の勇者セシルが、顔を歪め聖女アイナに向かって叫ぶ。
「もう魔力が残ってないわよ……アレック!……姫様はどこ?助けて……」
 消え入りそうな程小さく震える声で、岩場の影に隠れている聖女アイナ。

 魔王軍が王都に向かって進軍しているとの知らせを受け、撃退すべく盛大な見送りを受けながら向かった、勇者パーティーと魔王討伐隊。

「あの勇者パーティーで、本当に大丈夫なのか?」
「いや、全員、腕は確からしいぞ」
「しかし、我儘わがままで自分勝手……
 贅沢し放題……やりたい放題らしいじゃないか?」

 盛大な見送りだったにもかかわらず、勇者パーティーの評判は、すこぶる悪い。
 そして、残念な事に、そんな人々の不安は当たってしまう。
 帯同した騎士団も、今や数える程しか残っていない。

 そんな騎士団の最精鋭に囲まれて、ハルステイン王国の王女フィオナが居た。
 

 キラキラと輝くブルーがかった髪、透き通る様な白い肌に、少しだけピンクがかった紫色の瞳。
 その美しさに誰もが心を奪われ、
 平民にすら気さくに接する性格もあって、国中から愛されている王女、それがフィオナだった。

 聖魔法を得意とするフィオナは、人一倍正義感が強く、少しでも討伐隊の力になりたい……
 そんな思いで、父王を始め皆んなの反対を押し切り、討伐隊に参加していた。

 考えが甘かった自分への後悔……そして絶望……

 誰もが息を呑む程の美少女は、見る影もなく、涙と土埃でグシャグシャになった顔で
「ヒール!」「ヒール!」「ヒール!」
 叫にも似た声で、傷ついた騎士達に回復魔法を掛け続ける。
 この王女、勇者パーティーの聖女よりも遥かに魔力量が多い様だ。
 だがそれも尽きかけている……

「お前が勇者?”魔王がこれ程強いとは~♡ “って言ったのか?
 俺様が魔王? ガーハハハハハッ!勇者がこれほど弱いとはな~!
 下等な人族共が我ら魔族に勝てるとでも思ったのか?」

 勇者アレックに魔王と呼ばれた魔族……その名はゴッズ。
 3mをゆうに超す身長。立派な角に、額にはもう1つの目が有り、計3つの目を持つ。
 腕は2対4本。羽は生えていないが、魔力で優々と浮かんで勇者を見下している。

 しかし、この魔族は、千の魔王軍のリーダーでしか無い。
 魔王軍の最前列で薄笑いを浮かべる。

「ヒィーリ……」
 フィオナが言いかけた瞬間、突如として目前に現れたゴッズに抱えられ、上空に連れさらわれた。

「クックックこの娘が姫?この娘を殺ったらこれで終わりか……? 
 後は、本隊が、ろくに騎士も残っていない王都に攻めるだけ?
 こんな作戦必要だったのか?人族、弱すぎじゃね?」
 そう言いながら、フィオナの首に剣を突きつける。

「離れろ!無礼者!姫を離せ!」
 王女を先頭で守っていた騎士団長のマイルが叫ぶ。

「離して欲しければ降伏しろ! 何て言うと思うか?バーカ!
 クックックッ……皆殺しに決まってるだろ?先ずはこの姫から……」

 と、言い終わろうかというその時、ゴッズの身体の横を光が通り抜けた。

「あああっ……ゴッズ様!」
 魔王軍副官のザッシュが叫ぶ。

 あれっ?景色がゆっくりと回る?遠ざかってく物……あれはオレの体?
 ゴッズは薄れゆく意識の中で、光の粒となって、消えていく自分の姿を見ていた。

 今の光に身体を両断されてしまったのか……?
 だが不思議と痛みを感じる事は無かった。
 やがて意識が途絶え、その頭も光の粒となり消えていく。

 ゴッズを両断した、その光が騎士団の元に届く。
 輝く光はスピードを落とすと、薄らとした人影となり、土埃を上げながら、ふわりと着地。
 立ち込めた土埃が晴れると、そこには黒いロングコートを風にはためかせ、フィオナを抱いた少年が立っていた。

 サラサラと白銀の髪を風になびかせ、吸い込まれん程に透き通ったサファイア色の瞳。
 瞳の中には沢山の小さな光の粒が煌めいている。
 それはまるで夜空に輝く銀河の様で神秘的だ。
 胸にはその瞳とよく似たサファイア色のネックレスが輝いている。

 眩しい程に整った顔立ちをしているものの、余り感情を表に出さないその顔からは、一見すると冷たい印象を受ける。



 その美しさにフィオナは目が釘付けになった。
 なんて綺麗な顔……そしてその瞳。
 でもどこかで会った事がある様な?懐かしさを感じる……

 男だが中性的な整った顔立ちは、美しいと表現するのが一番適しているだろう。
 身長も180㎝近く有り、その冷たく見える顔もあって、少し大人びて見える。
 その少年の名はアルティス……15歳。

 フィオナをそっと降ろす。

 何が起きているのか分からず、狼狽うろたえ固まる魔族達……

「姫っ!今です!一旦、引きましょう!魔王軍が混乱している今しかチャンスはありません!」
 引きっつった声で騎士団副団長のキースが叫ぶ。
「逃げられない……この力の差……奴等は直ぐに正気を取り戻す……逃げるのは不可能だ……」
 騎士団長のマイルが肩を震わせつぶやく。

「あっ、あの……」
  すがる様な目でアルティスを見上げるフィオナ。
 この少年なら、この状況を何とかしてくれるのでは?根拠は無いのに何故かそんな風に思える。

 ”ニコッ“フィオナに向かってアルティスが微笑む。
 冷たく見られがちなその顔が、笑うと可愛らしい少年の顔になる。
 その顔には優しさが溢れている。このカオスの中でなんとも落ち着いたその表情。
 何も言わないアルティスだが、安心して……と言わんばかりの、その笑顔に思わず涙があふれた。
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