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前菜 開店準備に大車輪!
第26話 ハートにズキュンっ!?
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夜間限定で最強の警備員が加入したことはおれたち五人よりも従業員たちにとって好意的に受け入れられた。
この店にいる限りはそうそう危険な目には遭わないと思うが、戦う術をもたない一般人にとって、やはり夜は恐怖の対象なんだ。
最初、案の定リエルとヒューレがウィラのことを飲食店につきもののアレを見るような目で見ていたが、本人からちらっと聞いた生い立ちを話すとものすごく複雑な顔をした。
あいつらにとってウィラはおれの命を狙った憎むべき刺客であり、しかももとから大嫌いなクレアの手先になっちまったもんだから好意的になれる理由がないのは仕方ない。
しかしおれもそうだったように、ラジェル商会のあまりに非人道的なやり口には同情を禁じえなかったようだ。
麻薬は世界にゃいくらでも出回っているが、その中毒性の高さは魔法治療すら跳ね除けてしまうほどに救いがない。この町にも中毒者はいるから、これ以上増やさないためにも改めて麻薬の取扱いは即刻死刑だと通達しておこう。
たとえごく一部でも救えた人間がいたことだけが唯一の救いだな。
で……
この町で救ったことになる孤児たちは、すっかりおれの仲間たちに懐いていた。
日々武者修行に励む子供たちはゼルーグのことを師匠と呼んでべったりだし、うちの従業員も男はヒューレに、女はリエルにくっついて取り合いの毎日だ。
リエルをホテルリーダーに任命したら少女たちがこぞってそっちに異動したがったのには参ったね。おれだってそう悪くはないと思うんだが……
まあ、それはいつもおれのそばにいようとするこの怪物のせいか。
若者は若者としての豊かな感受性があるからか、クレアの根本の恐ろしさを察して絶対に口答えしないんだよな。
で、そのクレアが服従してるおれはそれ以上の化け物と。
外のやつらにそう思われるのは構わんが、身内の、しかも若者たちに恐れられるのは……ちょっと悲しい。
だいたい一番怖いのはクレアだっての。
「飽きたわ」
ほらきた。
「そろそろ別のが食べたい」
現在、午後二時。
おやつの時間に向けて今日も今日とてクレア含む調理担当者が厨房で雁首揃えてお菓子作りに精を出す時間。
クレアはおれたちが食べるような食事はあまりとらず、しかし甘味は毎日必ず食べたがるため、ヒューレ、グストー、サロの三人に日替わりで担当してもらいながらフセッタスを主とした数種類の甘味をローテーションで提供していたんだが……
ついにきてしまったか、このときが。
まあ、よく何ヶ月もったもんだというべきだろう。おれなら一週間で飽きる。
「ねえ、ダーリン、私チョコレートが飲みたい」
「誰がダーリンだ。チョコレートってあのくっそ甘い黒い飲み物だろ、同じ黒ならおれはコーヒーのほうがいいな」
「あれは苦いからイヤよ! チョコレートが飲みたいのっ!」
「コーヒー飲んで死ね」
とは今日の担当者ヒューレ嬢の偽りなきお言葉。
「いや~ん、ヒューちゃん冷たーい!」
「寄るな、化け物!」
ヒューレは相変わらずクレアを嫌っているが、クレアのほうはすっかり餌付けされておれの次に心を許している。なにせおれ以外で唯一キスをする相手だ。今もヒューレの機嫌を直そうと懸命に薄紅色の唇を尖らせて迫っている。
おれは思うんだ。
本当はこいつらとっくに仲いいんじゃないかって。
でもとりあえず厨房で暴れるのはやめような。
「ヒューレ、カカオの在庫は?」
「まだありますが、ラジェル商会が潰れた影響で南方の商品はかなり値段が不安定になっていて、取引先も安定していませんので……」
「落ち着くまでは無駄遣いできないか」
「じゃあクレープ! カスタード! なんなら他のお店のでも!」
「貴様、私の作った物では不満だというのか!」
「だってヒューちゃん冷たいし~」
「だからといってルシエドさまに抱きつくな! 汚らわしい!」
「妻が主人に抱きついてなにが悪いっていうの~?」
「誰が妻だッ!」
ヒューレの華麗なる包丁さばきが人体相手に披露される機会を難なく奪い取ったクレアは、おれにまとわりつきながら出口のほうへ引っ張る。
「ヒューちゃん怒っちゃったし外に食べに行きましょう~」
すまん、ヒューレ。
おれでもこいつの食に対する執念を腕力で振り払うことはできないんだ。
……というわけでやってきましたるは、大通りの北側。その東西はどちらも住宅地が主がゆえに庶民向けの飲食店が立ち並ぶ、うちのライバル地区だ。
ライバルの視察は必要不可欠だからして定期的に見回らねばならない――
というのがクレアの建前。
本音をいえば毎日でも回りたいんだろうが、こいつもけっこう料理の腕を上げて楽しくなってきてるようで、前ほど頻繁に行こうとはいわなくなった。
「今日はルイスのところのフルーツタルトにしようかしら。それともジャッハのとこでカリカリワッフルかしら」
どちらも既に常連。両店のみならずこのへんの甘味を出す店には二人セットで覚えられてしまった。
最初はどこに行っても真っ青な顔で「お代はけっこうですから!」と差し出されていたのが今じゃ、
「あら奥さん、今日もお二人で食べ歩きですか?」
なんて気軽に声をかけてもらえるようになった。ごく一部からだけどな。
しかし、甘味の食べ歩きといってもその専門店というものは存在していない。
バリザードに限らず甘味はあくまでデザートやお菓子であって、それを主力商品として売り出したところで食事ほどの需要がないから採算が取れないんだ。調味料ってけっこう高いからな。
だからルイスの店もジャッハの店も本業はパン屋だ。
「ワッフル……うん、ワッフルね! ああでもカスタードもしばらく食べてないし、うーん……」
「どっちも食べればいいだろ」
クレアが赤黒い瞳を見開いておれを見上げた。
「あなた……天才?」
「だといいんだがなあ」
「いいえ、そうよ、天才よ! ワッフルとカスタード、絶対に合うわ!」
「えっ、両方同時に食べるってことか?」
「そうよ、絶対に美味しいわ!」
おれは聞くだけで胸焼けしそうなんだが……
と、前方から怒鳴り声が聞こえた。
「おい、なにしやがる!」
怒鳴ったのは男。
怒鳴られたのは少女だ。
まだ十歳かそこらだろう。
「ああ、ああ、くそっ、思いっきり汚してくれやがって……ちゃんと前見て歩けよなあ」
どうやら少女が手にもっていたクレープを男にぶつけてしまったらしい。男のほうは声のでかさのわりには激怒しているというほどではないようで、少女が泣き出しそうになると慌ててとめに入った。
そういやあいつ、見覚えがあるな。確かゼルーグに任せてる衛兵候補の一人じゃなかったか?
なんて思いながらとおりすぎようとすると、クレアがとまった。
腕を組んでいるのでおれもとまらざるをえない。
……とっても嫌な予感がした。
「あなた……」
ほら、この声。
おれを呼ぶ「あなた」とはマグマと凍土ほどの温度差がある。
「ヒッ! 奥方……!?」
こいつもこいつでよくわかってる。
商工会の件から二日間、ゼルーグたち三人には敵わないと見た雑魚どもがおれとクレアならと外にいる間ひっきりなしに襲いかかってきてはクレアに血祭りにされているから、その恐ろしさは町の誰もが知ってるはずなんだ。
真紅の悪魔とか呼ばれてたしな。
「いやっ、これはホラっ、いきなりぶつかったから驚いただけで、別におれが泣かしたわけじゃあ……!」
「そんなことはどうでもいいのよ」
「へっ?」
「せっかくのクレープが台無しじゃないッ!!」
「待てクレア!」
ちょいとばかり遅かったか。
なんとか即時挽き肉の刑だけは防げたが、全身に穴が開いちまった。しかも血を使いやがって……
「こいつは死刑よ。ひとつの甘味は人間一人の命より重いの」
なんつう暴論……
せっかくごくごく一部の人が慣れてくれたのに、見ろ、ルイスパンの夫婦も完全に逆戻りしちまってるじゃねえか……
「気持ちはわかるが落ち着け。甘味はいくらでも替えが利くが、命はそうじゃないんだ」
おれも馬鹿なこといってるな~
こいつにこんな常識論が通じないのは誰より知ってるはずなのになあ~
「人間だっていくらでも替えが利くわ」
ほらな……
ええい、しょうがない!
せっかく安定し始めた町の秩序をおれたちの手でぶち壊すのは絶対にできん!
こうなったらもうひとつのとっておき、禁じ手の封印を解くしか、ない……ッ!
「クレア」
ぐっと肩を引き寄せ、
「んッ?」
してやったよ……
ついに、とうとう、おれから……
クレアがとろんと脱力するまで続けて、
「とりあえず穴を塞いでやれ」
「うん……」
従順になったクレアは即座に実行し、男を放してやった。
「災難だったな、ひとまずこいつの視界に入らないところまで逃げて、医者を呼んでもらえ」
「へ、へい……」
「あなた、もう一回」
「だめだ」
「なんでっ!」
あ、もう復活しやがった。
やっぱ心臓一突きよりは効果が薄いか。
「ほら、ワッフルとカスタードを食べに行くんだろ」
「いいじゃない、キスぐらい! 減らないんだから!」
「減るんだよ」
おれのメンタルがな。
「ほら、ちゃんと傘を差せ、日に当たっちまうぞ」
「ああんッ、冷たいのに優しい~っ!」
この日からしばらく、猛烈な「キスして攻撃」がやまなかった……
この店にいる限りはそうそう危険な目には遭わないと思うが、戦う術をもたない一般人にとって、やはり夜は恐怖の対象なんだ。
最初、案の定リエルとヒューレがウィラのことを飲食店につきもののアレを見るような目で見ていたが、本人からちらっと聞いた生い立ちを話すとものすごく複雑な顔をした。
あいつらにとってウィラはおれの命を狙った憎むべき刺客であり、しかももとから大嫌いなクレアの手先になっちまったもんだから好意的になれる理由がないのは仕方ない。
しかしおれもそうだったように、ラジェル商会のあまりに非人道的なやり口には同情を禁じえなかったようだ。
麻薬は世界にゃいくらでも出回っているが、その中毒性の高さは魔法治療すら跳ね除けてしまうほどに救いがない。この町にも中毒者はいるから、これ以上増やさないためにも改めて麻薬の取扱いは即刻死刑だと通達しておこう。
たとえごく一部でも救えた人間がいたことだけが唯一の救いだな。
で……
この町で救ったことになる孤児たちは、すっかりおれの仲間たちに懐いていた。
日々武者修行に励む子供たちはゼルーグのことを師匠と呼んでべったりだし、うちの従業員も男はヒューレに、女はリエルにくっついて取り合いの毎日だ。
リエルをホテルリーダーに任命したら少女たちがこぞってそっちに異動したがったのには参ったね。おれだってそう悪くはないと思うんだが……
まあ、それはいつもおれのそばにいようとするこの怪物のせいか。
若者は若者としての豊かな感受性があるからか、クレアの根本の恐ろしさを察して絶対に口答えしないんだよな。
で、そのクレアが服従してるおれはそれ以上の化け物と。
外のやつらにそう思われるのは構わんが、身内の、しかも若者たちに恐れられるのは……ちょっと悲しい。
だいたい一番怖いのはクレアだっての。
「飽きたわ」
ほらきた。
「そろそろ別のが食べたい」
現在、午後二時。
おやつの時間に向けて今日も今日とてクレア含む調理担当者が厨房で雁首揃えてお菓子作りに精を出す時間。
クレアはおれたちが食べるような食事はあまりとらず、しかし甘味は毎日必ず食べたがるため、ヒューレ、グストー、サロの三人に日替わりで担当してもらいながらフセッタスを主とした数種類の甘味をローテーションで提供していたんだが……
ついにきてしまったか、このときが。
まあ、よく何ヶ月もったもんだというべきだろう。おれなら一週間で飽きる。
「ねえ、ダーリン、私チョコレートが飲みたい」
「誰がダーリンだ。チョコレートってあのくっそ甘い黒い飲み物だろ、同じ黒ならおれはコーヒーのほうがいいな」
「あれは苦いからイヤよ! チョコレートが飲みたいのっ!」
「コーヒー飲んで死ね」
とは今日の担当者ヒューレ嬢の偽りなきお言葉。
「いや~ん、ヒューちゃん冷たーい!」
「寄るな、化け物!」
ヒューレは相変わらずクレアを嫌っているが、クレアのほうはすっかり餌付けされておれの次に心を許している。なにせおれ以外で唯一キスをする相手だ。今もヒューレの機嫌を直そうと懸命に薄紅色の唇を尖らせて迫っている。
おれは思うんだ。
本当はこいつらとっくに仲いいんじゃないかって。
でもとりあえず厨房で暴れるのはやめような。
「ヒューレ、カカオの在庫は?」
「まだありますが、ラジェル商会が潰れた影響で南方の商品はかなり値段が不安定になっていて、取引先も安定していませんので……」
「落ち着くまでは無駄遣いできないか」
「じゃあクレープ! カスタード! なんなら他のお店のでも!」
「貴様、私の作った物では不満だというのか!」
「だってヒューちゃん冷たいし~」
「だからといってルシエドさまに抱きつくな! 汚らわしい!」
「妻が主人に抱きついてなにが悪いっていうの~?」
「誰が妻だッ!」
ヒューレの華麗なる包丁さばきが人体相手に披露される機会を難なく奪い取ったクレアは、おれにまとわりつきながら出口のほうへ引っ張る。
「ヒューちゃん怒っちゃったし外に食べに行きましょう~」
すまん、ヒューレ。
おれでもこいつの食に対する執念を腕力で振り払うことはできないんだ。
……というわけでやってきましたるは、大通りの北側。その東西はどちらも住宅地が主がゆえに庶民向けの飲食店が立ち並ぶ、うちのライバル地区だ。
ライバルの視察は必要不可欠だからして定期的に見回らねばならない――
というのがクレアの建前。
本音をいえば毎日でも回りたいんだろうが、こいつもけっこう料理の腕を上げて楽しくなってきてるようで、前ほど頻繁に行こうとはいわなくなった。
「今日はルイスのところのフルーツタルトにしようかしら。それともジャッハのとこでカリカリワッフルかしら」
どちらも既に常連。両店のみならずこのへんの甘味を出す店には二人セットで覚えられてしまった。
最初はどこに行っても真っ青な顔で「お代はけっこうですから!」と差し出されていたのが今じゃ、
「あら奥さん、今日もお二人で食べ歩きですか?」
なんて気軽に声をかけてもらえるようになった。ごく一部からだけどな。
しかし、甘味の食べ歩きといってもその専門店というものは存在していない。
バリザードに限らず甘味はあくまでデザートやお菓子であって、それを主力商品として売り出したところで食事ほどの需要がないから採算が取れないんだ。調味料ってけっこう高いからな。
だからルイスの店もジャッハの店も本業はパン屋だ。
「ワッフル……うん、ワッフルね! ああでもカスタードもしばらく食べてないし、うーん……」
「どっちも食べればいいだろ」
クレアが赤黒い瞳を見開いておれを見上げた。
「あなた……天才?」
「だといいんだがなあ」
「いいえ、そうよ、天才よ! ワッフルとカスタード、絶対に合うわ!」
「えっ、両方同時に食べるってことか?」
「そうよ、絶対に美味しいわ!」
おれは聞くだけで胸焼けしそうなんだが……
と、前方から怒鳴り声が聞こえた。
「おい、なにしやがる!」
怒鳴ったのは男。
怒鳴られたのは少女だ。
まだ十歳かそこらだろう。
「ああ、ああ、くそっ、思いっきり汚してくれやがって……ちゃんと前見て歩けよなあ」
どうやら少女が手にもっていたクレープを男にぶつけてしまったらしい。男のほうは声のでかさのわりには激怒しているというほどではないようで、少女が泣き出しそうになると慌ててとめに入った。
そういやあいつ、見覚えがあるな。確かゼルーグに任せてる衛兵候補の一人じゃなかったか?
なんて思いながらとおりすぎようとすると、クレアがとまった。
腕を組んでいるのでおれもとまらざるをえない。
……とっても嫌な予感がした。
「あなた……」
ほら、この声。
おれを呼ぶ「あなた」とはマグマと凍土ほどの温度差がある。
「ヒッ! 奥方……!?」
こいつもこいつでよくわかってる。
商工会の件から二日間、ゼルーグたち三人には敵わないと見た雑魚どもがおれとクレアならと外にいる間ひっきりなしに襲いかかってきてはクレアに血祭りにされているから、その恐ろしさは町の誰もが知ってるはずなんだ。
真紅の悪魔とか呼ばれてたしな。
「いやっ、これはホラっ、いきなりぶつかったから驚いただけで、別におれが泣かしたわけじゃあ……!」
「そんなことはどうでもいいのよ」
「へっ?」
「せっかくのクレープが台無しじゃないッ!!」
「待てクレア!」
ちょいとばかり遅かったか。
なんとか即時挽き肉の刑だけは防げたが、全身に穴が開いちまった。しかも血を使いやがって……
「こいつは死刑よ。ひとつの甘味は人間一人の命より重いの」
なんつう暴論……
せっかくごくごく一部の人が慣れてくれたのに、見ろ、ルイスパンの夫婦も完全に逆戻りしちまってるじゃねえか……
「気持ちはわかるが落ち着け。甘味はいくらでも替えが利くが、命はそうじゃないんだ」
おれも馬鹿なこといってるな~
こいつにこんな常識論が通じないのは誰より知ってるはずなのになあ~
「人間だっていくらでも替えが利くわ」
ほらな……
ええい、しょうがない!
せっかく安定し始めた町の秩序をおれたちの手でぶち壊すのは絶対にできん!
こうなったらもうひとつのとっておき、禁じ手の封印を解くしか、ない……ッ!
「クレア」
ぐっと肩を引き寄せ、
「んッ?」
してやったよ……
ついに、とうとう、おれから……
クレアがとろんと脱力するまで続けて、
「とりあえず穴を塞いでやれ」
「うん……」
従順になったクレアは即座に実行し、男を放してやった。
「災難だったな、ひとまずこいつの視界に入らないところまで逃げて、医者を呼んでもらえ」
「へ、へい……」
「あなた、もう一回」
「だめだ」
「なんでっ!」
あ、もう復活しやがった。
やっぱ心臓一突きよりは効果が薄いか。
「ほら、ワッフルとカスタードを食べに行くんだろ」
「いいじゃない、キスぐらい! 減らないんだから!」
「減るんだよ」
おれのメンタルがな。
「ほら、ちゃんと傘を差せ、日に当たっちまうぞ」
「ああんッ、冷たいのに優しい~っ!」
この日からしばらく、猛烈な「キスして攻撃」がやまなかった……
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