虐待と闇と幸福

千夜 すう

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社会人

第15話

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憧れてる職場の同期の人に誘われ、約束をした当日の待ち合わせの2時間前に隣人の家を訪ねる。

私のオシャレな洋服に驚いていた。

「洋服を貸そうと思ってたけど...」

祖母が選んでくれた洋服は隣人からオシャレだと太鼓判を押された。

メイク道具を持参と言われたから持ってきて隣人に渡すと、慣れた手つきで下地とファンデーションを私の顔に塗る。

「肌荒れ一つも無いの羨ましい!!これなら、薄く伸ばす程度でいける」

丁寧にポンポンと軽く叩き伸ばす感じだった。

「濃すぎない感じだけど、会社と違う感じはやりたいなぁ」

私に問いかける感じではなく独り言。

「出来た!!」   

「見たい」

鏡を見ようとしたら止められた。何故なら、まだ完成してないダメらしい...出来たって言ってたのにと頭の中で?マークを浮かべてたら、髪の毛が残ってると言った。

選んだ髪飾りでポニーテールにしたけど...ダメだったのかな?と思ったら、足りないと言われた。

「軽く巻いた方が全体的の雰囲気に合うと思う」

そう言われて、コテを温めると言って数分間を待った。

私の家にはこういったオシャレをする用のコテはなかった。自分の中でオシャレの順位度が低くてなるべく貯金をしたいと思って、社会人として必要最低限なのしか揃えてこなかった。

コテが温まるのを待ってる間に髪飾りを外されてクシで髪を丁寧に梳かされた。130度に温まった熱で少量の髪の毛を巻かれる。初めての経験で顔の近くに火傷する高熱があると怖いって思ってしまう。固まってるうちに巻き終えたみたいで、コテを閉まってドライヤーに変わって冷風を当てられる。 

髪の毛の保護の為にオイルを塗られながら手で纏まった髪を梳かされ、保つ為にスタイリング剤も軽く髪につけてくれた。髪飾りを手に取って髪を結う。

私を見て満足そうに頷き鏡を渡された。

そこには、いつもよりも化粧の色が濃いけど、それは良い意味で顔色が良い血色感のある濃さだった。チークがいつもより濃いけど綺麗にぼかされてるからナチュラル。

目のアイライナーがピンッと跳ね上がってて眼力がプラスされて、目頭の形に沿って軽く「くの字」でハイライトが塗られて華やかな印象に...大人っぽいけど可愛いピンクのアイシャドウが凄くナチュラルに塗られていた。
 
手持ちの薄めのピンクの口紅も筆で綺麗に縁取って塗ると上品な仕上がりとなった。筆は新品ので100円で変える安さと聞く。仕事柄で大量にあるみたいで私に使ったのはプレゼントされた。

「我ながらにカンペキな仕事をした!!猫系の可愛い感じ」

大きめの鏡を渡されると、まるで自分ではないみたいだ...。化粧をしても地味さが変わらないと思っていた。地味さを隠そうとしたら濃くしたら可笑しくなっただけで...私の勉強不足だった事に気づいたのと同時に隣人の技術が凄いなと思った。なんの面白みもない地味な顔が若くて可愛い女の子に変身した。

「凄い...本当に?」


なんの面白みもない地味な顔だった私が...可愛いく変身するとは思わなかった。

「いつも自分に自信が無さそうな所が気になってたんだ。ほら、磨けば可愛いって...自分に自信を持ちな」

鏡越しで励ましてくれる。

「ありがとう...!!自分がこんなにも変身出来るとは思わなかった。可愛い従姉妹と違って地味な顔がコンプレックスで着飾っても無駄だと思ってた...オシャレを勉強しようと思う」

やっぱり、貯金したい気持ちで優先度が高い。それでも、何一つ努力しないで探求をしないで諦めて無関心でいるのを諦めると決めた。

私の発言に隣人は嬉しくなって満面の笑みを浮かべる。

「少しずつ、自分に似合ってるのを知ろうね。ようこそ、乙女の道へ」

自分を知らないのは寂しい事で、知っていく過程を楽しんで自分を好きになって欲しいと隣人は思っていた。

「時間は大丈夫なの?」

「あっ、もう行かなきゃ」

「うん。行ってらっしゃい」

「本当にありがとう。行ってきます!」

待ち合わせ時間まで充分に間に合うけど、自然と早歩きになるのは浮き立つ感情に合わさっていた。ふと横を見るとガラスに反射した自分の全体像を見て、少し足を止める

(まるで、若くて可愛い女の子みたい...本当に魔法が掛ったみたい)

一般的にみれば、今の彼女は若い女性である。普段の地味な化粧は血色感が無く、焦った感情を出さずに淡々とこなして冷静に見られるから、実年齢よりも上に見られることが多かった。

改めて、隣人と実の祖母に感謝して歩みを進める。

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