虐待と闇と幸福

千夜 すう

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学生編

第2話

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父は、私に必要最低限のお金しか使わなくなった。

お小遣いも無くなって焦った私は、新聞配達を始めた。

今の時代では考えられないが、小学校6年生でも新聞を配達してお金を貰ってた。

新聞配達をする事を、両親は気に停めなかった。

お金を使う事に厳しかったが、生み出す分には害は無いからであった。

朝4:00に起きて、家族が寝静まってる中で、ある程度の身嗜みを整え、自転車で新聞屋に行く。

新聞屋で配達する場所を紙で確認して、新聞を自転車のカゴに入れて配達をする。

収入は微々なるものだが、無いよりマシだと思って、学生時代は続けた。

中学までは新聞屋しか雇って貰えないから、新聞配達1本で頑張った。

暑い日、寒い日、雨が強い日、風が強い日体調を崩した日、眠くて仕方ない日でも、一日を欠かさずに皆勤賞で働いた。

近所に住んでて、我が家の事をある程度に察して、私を雇ってくれた恰幅が良いおじさんは、私が子供だからと甘やかさなかった。

渡される新聞の量が多すぎて、落としそうになった。

「馬鹿者」

凄い、形相で怒鳴りつける雇い主。

「お前さんは、その新聞を運ぶことでお金を貰ってるんだろ?ダメにするな。俺や届けられた先からの信用を無くすぞ。そしたら、俺はお前さんを辞めさせるからな」

鼻がツーンとなるのを感じる。

「次から気をつけます」

「泣くなよ。紙が汚れる」

私は、涙が溢れそうになるのを我慢する。

「はい」

「1円でもお金を貰うなら責任を持て」

「はい」

私は先程よりも力強く返事をする。

気をつけていても、やらかしそうになる事があって、その度に新聞をダメにしそうな時は恐ろしい程に怒っていた。

実際に、雨に濡れてしまってダメにした時は、容赦なく給料から引かれ、信用を取り戻すのに時間をかけた。

働く事について、1番大事な事を教わった。


そんなある時、新聞を配達し終わって、ベンチがあって座って休める休憩場所で、体力を回復させていた

「お前さんは大変だな。親がクズで」

面と向かって親をクズと言われたら、例え自分が同じく思ってたとしても、たじろいでしまう。

「お前はクズになるなよ」

「はい」

「金を貯めろ。しっかり勉強して、あの家から自立した方が、お前さんの為だ」 

その言葉は、私が理不尽から脱出する道標であった。


お金、無駄遣いをせずに将来の為に貯金をしていた。

高校に進学をしてからは、彼氏は疎か友達を作らずに勉強とバイト生活に力を入れた。      

娯楽を両親から買ってもらう事も無く、流行りとは無縁で、友達が出来ずらいのである。  
放課後や休日を人と遊ぶ時間も金の余裕も無かった。

私は、友を作ることを最初から諦めて、虐められないように適度な距離感を保ちながら、学校では本業の勉強をしっかりとやった。

誰よりも真面目に授業を聞いて、誰よりも先生に質問をしに行った。


時には、授業と関係がなくても資格を取るために分からない事は、分かりそうな先生に話しかけに行って、教えてもらうのが私の日常である。   


働ける年齢になって私は、バイトを同時期に何個も掛け持ちするのが当たり前で、睡眠不足になる日が多々あっても、こなしていた。

飲食店のバイトをした時は、料理の仕方や敬語の使い方を学んだ。
 
「おい、料理はまだなのか?」 
 
空腹で、イライラとされて威圧的だった。

「申し訳ございません。揚げ物の料理は、揚げる時間が掛かります。少々、お待ち下さい。」

面倒臭い人のあしらい方、皿を同時に持つ技術とメニューを一気に言われても脳内で処理出来る能力を鍛えられた。


コールセンターのバイトをした時は、タイピングの速さと正確さを学んだ。

クレームを受け付ける仕事内容で

「欠陥品を送り付けるな」

怒鳴られる事に慣れた。

「聞いてくれてありがとうね」

中には、優しい言葉で救われる事もあった。

介護のバイトをした時は、力仕事、人との繋がりや儚さを知った。

清掃員のバイトでは、汚れを綺麗にする技術と汚さないようにしようって精神を教わった。
 
生きる事や将来に役に立ちそうな事を経験しながら、お金を得られて良いことがあった反面、大変で辛い事も沢山あった。

その一方で、従姉妹は私と間逆での人生を充実とさせていた。
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