今日も誰かのMydol(マイドル)

流リカナ

文字の大きさ
上 下
6 / 7

5 予感

しおりを挟む




――いつの間にGPSなんて付けていたんだ…

自分でも知らない事が行われていた事に驚きつつも『あぁ』と返事をする。


芹名の声が次第に遠のいているような気がして、何とか意識を保とうと必死に手元の砂を握った。

悠長に電話で話していられるほど、今の龍司に余裕などない。
腹部を銃弾が貫通しているのだ。
頭や心臓に比べると腹部は致命傷という訳ではなく即死はしないが、この状態が長く続けば何が起きても不思議ではない。


これなら、なにも感じず一発で死んだ方がまだ楽だとさえ思った。


「龍司様!大丈夫ですか?ボクたちがそちらに到着するまで、おおよそ20分程かかります。龍司様のご容態を推測すると腹部を撃たれ、血が止まらないという事なので恐らく肝臓か腹大動脈どちらかをかすめている可能性が高いと考えられます。どちらも大量の血液が循環している場所になりますので、今この状態も非常に危険な状況ですっ!…龍司様のジャケットの内ポケットの奥に、止血用と鎮痛剤が一緒になったカプセルが入っています。ボクが開発したものですが、効果は即効性のものなのですぐ使用してください!」

「はぁっ…ッ!ハァッ…!ハァ…ッ!くッ…カプ、セル…?」

「はい!もしもの時の為に入れさせてもらいました。救急車にはボクから電話して龍司様の所へ急いで行って貰うように手配致します!龍司様、お怪我で動ける状況ではないと重々承知ですが…なるべくそこの場所から離れるようにしてください!まだ、龍司様を狙っている人間は近くにいるはず…再び撃たれる可能性がかなり高いです!」

「はぁ…ッ!…分かった…ッ」


龍司は言われた通り、ジャケットの内ポケットの奥を探す。

奥からは小さなプラスチックの容器が出てきた。
恐らくこの中に芹那が開発した薬が入っているのだろう。

振れば、カラカラと中から音がする。

容器についてあるボタンらしき突起物を押すと、引き出しのようにカプセルが1つ乗って出てきた。
指先で掴み押し込むように口に入れると歯で噛み砕く。
中からはドロリとした液体状のものが出てきて、口内へと溶けていく。
龍司は喉を鳴らして液体を飲み込んだ。
味は薬特有の苦みは全くなく、無味無臭と言ったところだ。


「今―…薬を飲んだ…そろそろ、切る…ッ」

「…かしこまりました…。龍司様、どうかご無事で――。」


電話を切るとジャケットの横ポケットに仕舞い、手元の砂を握る。
芹名が即効性と言っていただけの事はある。

薬を飲む前と比べ、少しではあるが痛みが幾分和らいだ気がした。
変わらず腹部から下は、流れた血で真っ赤だが、流れたまま一向に止まることがなかった血液の流れが、薬を飲む前に比べて若干遅くなった気がする。



腕に力を入れて匍匐前進で体を前へと移動させる。


龍司が前に進むたびに砂が体中へばりつき、砂浜が赤く染まった



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

彼は罰ゲームでおれと付き合った

和泉奏
BL
「全部嘘だったなんて、知りたくなかった」

学園の天使は今日も嘘を吐く

まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」 家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

知らないだけで。

どんころ
BL
名家育ちのαとΩが政略結婚した話。 最初は切ない展開が続きますが、ハッピーエンドです。 10話程で完結の短編です。

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…

東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で…… だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?! ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に? 攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

処理中です...