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テラフォーミング
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ハイパー・ドライブ・スペースを抜けると、青い宝石が輝いていた。青い光輝に包まれ、白い雲の衣をまといつかせた豊かな水と緑の惑星。漆黒の宇宙に浮かぶそれは美しく、ヒルデガルド・クルーの新兵は思わず歓声をあげた。
「うわー、きれー」(スタン)
「美しい。まさしく大自然は芸術だ」(ラリック)
「ほぅ、まあまあじゃないか」(コンラット)
「あそこかぁ、楽そう」(ハインリッヒ)
「ひゅー、ひゅー」(ブレッド)
「ハインリッヒ、座標を確認しろ! ヒルダ、着陸は中止! 衛星軌道上に待機! スタン、捜査機を出せ! 大気圏到達しだいデータをリアル・タイムで回せ! 至急だ!」
浮かれた空気を切りつけるように、アルカードが指示をとばした。
「ラ、ラジャー、座標確認します」
「ラジャー、探査機射出しまぁすぅぅ」
「アルカード、どうしたの? 予定と違うわよぉ」
ハインリッヒとスタン叱り付けられた気分になって慌てて指示にしたがった。目の前の光景に気をとられ、やるべきことを怠ったため、アルカードが怒ったと思ったのだ。
その点ヒルダは、指示に従いつつも質問するという、大胆なことをやらかした。付き合いの長さの違いというものだろう。
「確認できました。間違いなく惑星ミシュカです」
「データ、転送しますぅ。怒らないでくださぁい」
ハインリッヒが内心ほっとしつつ、スタンは怖々、報告した。
報告を聞いたアルカードの表情がいっそう厳しくなった。
やるべきことをやれば、多少は機嫌も直るのではないかという、クルーの期待は脆くもくずれ、減点を覚悟した。しかし、減点よりもアルカードのしかめ面の方がいまのクルーには恐かった。
張り詰めた空気にブレッドが爆発した。
「なんなんだよ、ちょっと、報告が送れたくらいで――」
「教官どの、何か気になる事でも」
ブレッドの暴言を最期まで言わせず、ラリックが割り込んだ。上官への反抗は重大な問題行為なのだ。
アルカードは切りつけるような視線を全員に送り、自ら操作してメインモニターにミシュカのデータを表示させた。
「不審な点をあげてみろ」
全員訳も分からずデータと美しいミシュカを見直した。ラリックが弾かれたように顔をあげる。
「データが、いえ、おかしいです。ミシュカの以前のデータとまったく異なります。ミシュカはこのような豊かな星ではないはずです!」
悲痛な声を上げるラリックに、ブレッドが怪訝な顔をする。
「ミシュカのデータ? なんでそんなもん知ってんだ」
「ブレッド……目的地のデータはあらかじめ全員に配布されているはずだ。目的地到達までにチェックするように指示したはずだが、していなかったな」
アルカードの刃より鋭く氷より冷たい声に背中をなでられ、ブレッドは竦み上がった。ラリックをのぞく他のクルーも肩をすくめる。
「訓練だと思って、行けば何とかなるなどと侮ったな。くだらん悪戯をする時間があったのなら、やるべきことをしておくように。繰り返すが、確かにこれは訓練だが、何らかの不測の事態が起こった場合、すぐさま実戦となる。絶対的に経験が不足しているのなら、それを補う努力をするように。余裕と慢心は別物だ。また、勇敢なのと、恐い物知らずなのも、別物だ。恐ろしさを知らない者は、臆病よりたちが悪い。物事を侮るくせがつくからな」
声に怒気はなかった。全くの正論を述べているだけなのだが、それだけに怒鳴り散らすよりも心に響いた。あまりにも他のクルーが震え上がっているので、唯一配布されたデータをまめにチェックしていたラリックは、逆に肩身が狭いような気がした。
「ねーえ、アルカード。このデータって偶然じゃないわよねえ。このデータってテランの、そうねえ、機械文明のないテランと言った方が正しいかしら? の、データに類似しているわよ」
ヒルダが場違いな甘ったるいキャピキャピ声で意見を述べる。
「教官殿、まさか、我々を試すため、偽のデータを配布したのでは無いでしょうね」
「コンラット、口を謹みたまえ」
仲間の数々の暴言に、ラリックが悲鳴を上げた。
「いい子ぶってんじゃねぇよ、ラリック。なんだぁ、さっきからえっらそーに。コンラットの言い分が正しいかもしれねーじゃねーかよ」
「ブレッドォォ、そういう反抗的な態度は、問題になりかねないんだよぉ」
「だぁから、点数かせいでんじゃねーよ」
「ケンカはぁやめてくださぁいいい。仲間なんですから、仲良くうぅぅ」
「はぁ、手間暇かけたテストでんなぁ」
「静粛に!」
起こりかけたトラブルを一瞬で静めてしまったのは、アルカードの実戦をくぐり抜けたもののみが持つ貫禄と重みだったのだろうか。直立不動で硬直するクルーにアルカードは言った。
「配布されたデータは偽物ではない。また、諸君らのデータと私のデータは同一だ。そして、これはテストではない。コンラット、用心深いのもひとつの貴重な資質だが、信じるべきものを信じなければ、それはただの猜疑心だ。ブレッド、目新しい意見だからといって、考えもなしに飛びつかないように。また、自分の意見と違うからといって、深く考えず非難するのもやめたまえ。他人の意見は悪まで参考でしか無い。自分で考え、また、他人の意見の意味を吟味したまえ」
コンラットはかるく肩をすくめた。コンラットはデータはチェク済みだったが、あまりにも眼前の光景とは異なるため、データの方を否定してしまったのだ。そして、それが注意力を試すためのテストかと判断した。その確認のつもりだったのだが、考えてみれば、そこまでひねくれたテストをしても意味はない。不測の事態という奴に遭遇したのだ。まわりを疑う前に、その可能性を考慮しなかったのは、やはり軽率だったのだろう。そして、上官への侮辱ではなく、用心深さの現れと判断したアルカードを評価した。
ブレッドはただむくれた。
「ミシュカをフォーミングした記録もなく、我々以前に調査隊がミシュカを訪れたこともない。なおかつ、あきらかに何物かによってミシュカはフォーミングされている。これ程大規模なフォーミングをするからには、何らかの理由、この環境を必要とするものがいるということだ。我々が知る限りでは、テランの環境を必要としつつ、それを可能とする知性、技術を持つ者はひとつしかない」
『コモン・ヒューマン』
ヒルダを含む全員が同時に一つの言葉を叫んでいた。
「き、教官どの、では、ここには、コモン・ヒューマンが生存する可能性が」
「可能性はあるが、確実ではない。以前に、改造機器のみが残された惑星が、無人のまま惑星改造を行っていた事例がある」
焦りまくったラリックを、眉ひとつ動かさぬアルカードがたしなめた。
「しかし、可能性が高いのは確かだ。元々我々はそのために辺境探査をしてきたのだからな。問題は、それが既に形骸化し、このスペースシップにはコモン・ヒューマンのための物資が何も積まれていないということだ」
「テランの本部に指示を仰ぐべきでは? 我々には荷が勝ちすぎるようです。仮にコモン・ヒューマンを発見したばあい、『ヒルデガルド』ではテラン行きは無理ですし」
コンラットが意見を述べる。一見責任逃れにも聞こえかねないが、本人なりに建設的な見解である。惜しむべきは、時間というものを考慮に入れていない。
「むろん、ミシュカがフォーミングされていた事実は報告する。しかし、ハイパー・ドライブ・スペースを利用した通信でもテランに届くまではタイム・ラグがある。なおかつ、スペースシップを仕立てるにも時間がかかるし、迎えが来るのにもそれなりの航海時間がかかる。その間我々は何をするべきかな?」
アルカードは答えを言わなかった。既に自分の答えを持っていながら、他のものがどのような答えを出すのか試しているような気がして、ラリックは考えた。
「調査です。本当にコモン・ヒューマンが存在しているか。存在していた場合、人数の把握。人数が把握出来ていなければ、必要物資の数量がわかりません。また生活水準の調査も必要かと。文明を維持出来ず、文明退化している可能性もあります。その場合、いらぬトラブルを起こす可能性がありますので」
アルカードは頷いた。
合格ラインの答えが出せたようで、ラリックは安心した。同時に、自分達がミシュカの美しさに気をとられていたわずかな時間に、アルカードがそこまでの判断を行ったという事実に気づいた。アルカードはクルーの態度に怒っていたのではなく、指揮官としての実戦態勢に入っていたのだ。さすがに歴戦の兵だ。判断が早く、適切だ。
これは既に実戦なのだ。ラリックは気を引き締めた。
「その通りだ。そして、結果は随時報告しなければならない。ハインリッヒ、ハイパー・ドライブ・スペースチャンネルで第一報を送れ。内容は、既に入力済みだ。これにミシュカのデータを付属」
「ラジャー。通信、ハイパー・ドライブ・スペースチャンネルで送ります。データはどの時点のでっか」
「ドライブ・アウトした瞬間から今までのもの全てだ」
「ラジャー。本当にコモン・ヒューマンがいたら、大発見でんなぁ 」
うきうきと機器を操作するハインリッヒの横で、スタンが不安そうな顔をする。
「しかし、教官、いいんですか。我々で。できるでしょうかぁ」
「スタン、できるか、ではなく、しなくてはならないのだ。確かに、君たちは歴戦のメンバーに比べれば劣ることは否めない。しかし、機能的には君たちが上だ。充分それをなせるように造られている。足りないのは、経験だけだ。それは私がサポートする。経験はいまから積むのだ。宣言しよう。これは訓練ではない。今この時点から実戦である」
ラリックはしばしアルカードにみとれていた。そして、いつの間にかアルカードに依存している自分を自覚した。反抗的な態度をとるブレッドすらも、既にアルカードの部下になっているのに気がついた。それこそが、数々の修羅場をくぐり抜けた真の勇者の実力なのだ。ラリックは感動に震えた。
スタンの悲鳴のような報告がラリックの夢想を破った。
「教官、探査機のひとつにエネルギー反応――いえ、戦闘反応ですぅ。何者かが、戦っていますぅ」
「影像に切り替え、戦闘を行っている者を確認。メインモニターに表示。待て! 遠望モードだ! 戦闘に近づけるな!」
指示はわずかに遅く、争ういくつかの影がメインモニターに写り、みるみる拡大したかと思うと、一人の影が向き直り、一瞬の閃光と共に画像が乱れ、何も写さなくなった。
「探査機、撃墜されましたぁ。すみません、僕、いえ、自分のミスですぅ」
スタンは自分のミスにすぐ気がついた。対象物を確認することだけに気をとられ、探査機を戦闘に近づけすぎた。たとえ発見されなくとも、戦闘に近づけば流れ弾を食らうこともある。アルカードが指摘しなかったのは、常識以前のことだったからだ。
叱咤を覚悟したが、それはいつまで待ってもこなかった。恐る恐る振り向いて、信じられないものをみた。
目を見開き、驚愕の表情で凍りついているようなアルカードだった。わずかに震えているようにも思える。
高性能なスタンの耳と、一番近くに位置していたラリックのみが、呆然としたアルカードの呟きを拾った。
「……ガイナック……ばかな……」
「教官どの……」
気遣わしげなラリックの声に、アルカードはハッとしたようだった。掌で顔をおおい、目を閉じ――再び目を開いたときには、いつもの峻厳な表情を取り戻していた。
「探査機のコントロールをヒルダに移行。ヒルダは上空待機。命令のあるまで状況を監視しつつ、要請があればバックアップ。緊急と判断した場合は、自ら判断にしたがってかまわん。全員出撃だ」
アルカードは号令とともに立ち上がり、席から離れようとした。
「教官殿、軽率ではありませんか? 対象物を確認してからでなければ、戦う相手がわかりません」
「その必要は無い! 探査機を撃墜したのは、カイザー軍だ」
「! ここは、フェリックス軍側の辺境です。カイザー軍がいるはずが――」
「でもぉ、先程確認したシルエットはぁ、カイザー軍の上級士官のシルエットと類似しているよぉ。いえ、していますぅ」
わずかに動揺を含んだコンラットの意見は、以外にもスタンによって否定された。
「聴いてのとおりだ。スタンの影像解析能力は我々の中で一番優れている。疑う余地はなく、ここはフェリックス軍領地だ。相手がカイザー軍であるかぎり、我々は戦わなくてはならない」
「待ってぇ、指揮用個人船の用意ができていないわぁ! 予定では、着陸後、坊やたちだけが探査にいくはずだったでしょう。いそいでいるけどぉ、もう少し、かかるのよぅ」
アルカードは眉をひそめた。
「ラリック、君が指揮をとり撃墜地点まで行きたまえ。私も用意できしだい出撃するが、それまで他の者はラリックに従うこと。私が到着するまでは、事実関係の確認を第一として、なるべく戦闘を行うな。行う場合でも、撤退を目標とし足止めに徹するように。撃退しようとは思うな。相手は精鋭部隊と思われる」
「その根拠は、あるんでありますかぁ。負けるつもりで戦うてーのは、気性にあわないんすけど」
憮然としてブレッドが意見する。ラリックが何か言う前に、アルカードが否定した。
「負けるつもりではなく、撤退だ。撤退と敗戦を混同しないように。カイザー軍領地からここへ向かうには、かなりの大回りをするか、フェリックス軍の警戒ラインをかいくぐるしか無い。並の相手ならともかく、少数精鋭部隊相手では分が悪い」
「さっきのシルエットのひとつはぁ、重装備タイプに所属するものですぅ。装備可能な推定武装はぁおよそ35タイプ以上。最大7種。Aクラスの破壊力をもつものもありますぅですぅ。多分、かなり強力な武器を装備しているものと思われますぅ。そのぉ経験を考慮に入れない単純な戦力比でもぉ、教官ぬきだとぉ、劣っているかもぉ」
スタンがいらぬ補足をして、ブレッドに睨まれた。それをラリックが視線だけで牽制し、スタンをかばい、ブレッドがむくれる。
ささやかな人間模様を無視し、アルカードは続けた。
「そのとおりだ。さきほどのでこちらの存在は気づかれていると思われる。警戒したまえ。部隊の損失は極力避けるように。これは物質的なものではなく、人材的なものだ。以上」
『ラジャー』
クルーは敬礼すると、メインブリッジを出た。その姿が見えなくなると、アルカードは腰を下ろし天を仰いだ。
「ひよっこちゃん、発進したわぁ。他の探査機を反応地点に向かわせているけど、目標物を捕らえられるのにはもう少しかかるわよぉん。スタンちゃん、多くのデータをとろうと、かなり広範囲に探査機を飛ばしたのよぉ。惑星捜査なら正しい行動なんだけど、こーゆーときは困るわよねぇ。ひよっこちゃんたちを追尾できないわぁ。まあ、ミスのうちにはいんないけどぉ。指揮機の用意の方が先になりそう。データは確認しだいリアル・タイムでそっちに回すわぁ」
「手抜かりだな、ヒルダ」
「ごめんなさぁい。準備はいそいでいるわぁ。それよりぃいっそのこと、あたしごとおりない?準備が整うよりは早いわよぉ」
「……ヒルダも団体戦は初めてだったな。個人艇ならば、私と心中するつもりでもいいが、チーム戦では退路を確保しておかねばならない。もはや君は『空母』なのだよ」
「そーゆうものなの? ああ、あたしも足ひっぱっちゃいそう。それよりもぉ……アルカード、あなた、いま、出かかったんじゃない? 大丈夫?」
「……大丈夫だ。たとえ、同タイプのものであろうと、同じルーツ・マトリクスを持つものであろうと、それは、奴ではない……奴は……破壊した……私がこの手で」
一瞬、鬼気迫る憎悪に顔を歪ませ、アルカードは拳をにぎりしめた。次の瞬間にはそれは全て消え、手をひらく。そして脱力したように呟いた。
「……だから……あれは起きない……重大な障害を起こすレベルには達しない……私は大丈夫だ、ヒルダ」
「そうよ、ガイナックは既に存在しないわぁ。あたしと、アルカードがやっつたけたのよ。だーかーらー、アルカードは大丈夫。大丈夫よぉ。敵なんか蹴散らして、大手柄立てるのよぉ」
アルカードはわずかに微笑んだ。そうすると、やはりジーニアス系だと思わせる、穏やかな顔になる。
「まさか、それを確認したくて、私を足止めしたのでは無いだろうな」
キャラキャラと笑う声が応える。
「あらぁ、ちがうわよぉ。ほんとうに、ちょっとしたミスよ。訓練航行だと思って、気を抜いていたのぉ。予定なら、アルカードってほとんど出ないはずじゃない。だから、着陸してからでも間に合うなって。ごめんなさぁい」
「ヒルダ、君がそういう性格で、私は随分助かっている」
「それって、誉めてるの それとも皮肉?」
「事実を、ありのままだ」
「誉め言葉だと思っておくわ。そういえば、そろそろひょっこちゃんが探査可能区域をでるわよ。母艦での探査可能区域を出ると、探査機の到着まで追尾できなくなるけど」
「いちおう、影像を出してくれ」
それは教官としての老婆心から出たことだったが、結果としては正しかった。命じたときにはまだ余裕があったのだが、しかし、影像がモニターに映ると、それは霧散した。
アルカードはギョッとして目をむき、あわてて通信を送った。
「マシンモードへトランスせよ。繰り返すが、これは実戦である。母艦を出る前から戦闘体制に入るのが定石だ」
『ラ、ラジャー』
ヒューマンモードだった新兵たちがマシンモードにトランスする前に、高速移動していた個人艇は探査可能区域を出てしまった。
脱力したようにコンソールに手をつき、力無くアルカードが言う。
「……頼む……ヒルダ……急いでくれ……不安になってきた……」
「奇遇ね……あたしも不吉な予感がするの……」
「うわー、きれー」(スタン)
「美しい。まさしく大自然は芸術だ」(ラリック)
「ほぅ、まあまあじゃないか」(コンラット)
「あそこかぁ、楽そう」(ハインリッヒ)
「ひゅー、ひゅー」(ブレッド)
「ハインリッヒ、座標を確認しろ! ヒルダ、着陸は中止! 衛星軌道上に待機! スタン、捜査機を出せ! 大気圏到達しだいデータをリアル・タイムで回せ! 至急だ!」
浮かれた空気を切りつけるように、アルカードが指示をとばした。
「ラ、ラジャー、座標確認します」
「ラジャー、探査機射出しまぁすぅぅ」
「アルカード、どうしたの? 予定と違うわよぉ」
ハインリッヒとスタン叱り付けられた気分になって慌てて指示にしたがった。目の前の光景に気をとられ、やるべきことを怠ったため、アルカードが怒ったと思ったのだ。
その点ヒルダは、指示に従いつつも質問するという、大胆なことをやらかした。付き合いの長さの違いというものだろう。
「確認できました。間違いなく惑星ミシュカです」
「データ、転送しますぅ。怒らないでくださぁい」
ハインリッヒが内心ほっとしつつ、スタンは怖々、報告した。
報告を聞いたアルカードの表情がいっそう厳しくなった。
やるべきことをやれば、多少は機嫌も直るのではないかという、クルーの期待は脆くもくずれ、減点を覚悟した。しかし、減点よりもアルカードのしかめ面の方がいまのクルーには恐かった。
張り詰めた空気にブレッドが爆発した。
「なんなんだよ、ちょっと、報告が送れたくらいで――」
「教官どの、何か気になる事でも」
ブレッドの暴言を最期まで言わせず、ラリックが割り込んだ。上官への反抗は重大な問題行為なのだ。
アルカードは切りつけるような視線を全員に送り、自ら操作してメインモニターにミシュカのデータを表示させた。
「不審な点をあげてみろ」
全員訳も分からずデータと美しいミシュカを見直した。ラリックが弾かれたように顔をあげる。
「データが、いえ、おかしいです。ミシュカの以前のデータとまったく異なります。ミシュカはこのような豊かな星ではないはずです!」
悲痛な声を上げるラリックに、ブレッドが怪訝な顔をする。
「ミシュカのデータ? なんでそんなもん知ってんだ」
「ブレッド……目的地のデータはあらかじめ全員に配布されているはずだ。目的地到達までにチェックするように指示したはずだが、していなかったな」
アルカードの刃より鋭く氷より冷たい声に背中をなでられ、ブレッドは竦み上がった。ラリックをのぞく他のクルーも肩をすくめる。
「訓練だと思って、行けば何とかなるなどと侮ったな。くだらん悪戯をする時間があったのなら、やるべきことをしておくように。繰り返すが、確かにこれは訓練だが、何らかの不測の事態が起こった場合、すぐさま実戦となる。絶対的に経験が不足しているのなら、それを補う努力をするように。余裕と慢心は別物だ。また、勇敢なのと、恐い物知らずなのも、別物だ。恐ろしさを知らない者は、臆病よりたちが悪い。物事を侮るくせがつくからな」
声に怒気はなかった。全くの正論を述べているだけなのだが、それだけに怒鳴り散らすよりも心に響いた。あまりにも他のクルーが震え上がっているので、唯一配布されたデータをまめにチェックしていたラリックは、逆に肩身が狭いような気がした。
「ねーえ、アルカード。このデータって偶然じゃないわよねえ。このデータってテランの、そうねえ、機械文明のないテランと言った方が正しいかしら? の、データに類似しているわよ」
ヒルダが場違いな甘ったるいキャピキャピ声で意見を述べる。
「教官殿、まさか、我々を試すため、偽のデータを配布したのでは無いでしょうね」
「コンラット、口を謹みたまえ」
仲間の数々の暴言に、ラリックが悲鳴を上げた。
「いい子ぶってんじゃねぇよ、ラリック。なんだぁ、さっきからえっらそーに。コンラットの言い分が正しいかもしれねーじゃねーかよ」
「ブレッドォォ、そういう反抗的な態度は、問題になりかねないんだよぉ」
「だぁから、点数かせいでんじゃねーよ」
「ケンカはぁやめてくださぁいいい。仲間なんですから、仲良くうぅぅ」
「はぁ、手間暇かけたテストでんなぁ」
「静粛に!」
起こりかけたトラブルを一瞬で静めてしまったのは、アルカードの実戦をくぐり抜けたもののみが持つ貫禄と重みだったのだろうか。直立不動で硬直するクルーにアルカードは言った。
「配布されたデータは偽物ではない。また、諸君らのデータと私のデータは同一だ。そして、これはテストではない。コンラット、用心深いのもひとつの貴重な資質だが、信じるべきものを信じなければ、それはただの猜疑心だ。ブレッド、目新しい意見だからといって、考えもなしに飛びつかないように。また、自分の意見と違うからといって、深く考えず非難するのもやめたまえ。他人の意見は悪まで参考でしか無い。自分で考え、また、他人の意見の意味を吟味したまえ」
コンラットはかるく肩をすくめた。コンラットはデータはチェク済みだったが、あまりにも眼前の光景とは異なるため、データの方を否定してしまったのだ。そして、それが注意力を試すためのテストかと判断した。その確認のつもりだったのだが、考えてみれば、そこまでひねくれたテストをしても意味はない。不測の事態という奴に遭遇したのだ。まわりを疑う前に、その可能性を考慮しなかったのは、やはり軽率だったのだろう。そして、上官への侮辱ではなく、用心深さの現れと判断したアルカードを評価した。
ブレッドはただむくれた。
「ミシュカをフォーミングした記録もなく、我々以前に調査隊がミシュカを訪れたこともない。なおかつ、あきらかに何物かによってミシュカはフォーミングされている。これ程大規模なフォーミングをするからには、何らかの理由、この環境を必要とするものがいるということだ。我々が知る限りでは、テランの環境を必要としつつ、それを可能とする知性、技術を持つ者はひとつしかない」
『コモン・ヒューマン』
ヒルダを含む全員が同時に一つの言葉を叫んでいた。
「き、教官どの、では、ここには、コモン・ヒューマンが生存する可能性が」
「可能性はあるが、確実ではない。以前に、改造機器のみが残された惑星が、無人のまま惑星改造を行っていた事例がある」
焦りまくったラリックを、眉ひとつ動かさぬアルカードがたしなめた。
「しかし、可能性が高いのは確かだ。元々我々はそのために辺境探査をしてきたのだからな。問題は、それが既に形骸化し、このスペースシップにはコモン・ヒューマンのための物資が何も積まれていないということだ」
「テランの本部に指示を仰ぐべきでは? 我々には荷が勝ちすぎるようです。仮にコモン・ヒューマンを発見したばあい、『ヒルデガルド』ではテラン行きは無理ですし」
コンラットが意見を述べる。一見責任逃れにも聞こえかねないが、本人なりに建設的な見解である。惜しむべきは、時間というものを考慮に入れていない。
「むろん、ミシュカがフォーミングされていた事実は報告する。しかし、ハイパー・ドライブ・スペースを利用した通信でもテランに届くまではタイム・ラグがある。なおかつ、スペースシップを仕立てるにも時間がかかるし、迎えが来るのにもそれなりの航海時間がかかる。その間我々は何をするべきかな?」
アルカードは答えを言わなかった。既に自分の答えを持っていながら、他のものがどのような答えを出すのか試しているような気がして、ラリックは考えた。
「調査です。本当にコモン・ヒューマンが存在しているか。存在していた場合、人数の把握。人数が把握出来ていなければ、必要物資の数量がわかりません。また生活水準の調査も必要かと。文明を維持出来ず、文明退化している可能性もあります。その場合、いらぬトラブルを起こす可能性がありますので」
アルカードは頷いた。
合格ラインの答えが出せたようで、ラリックは安心した。同時に、自分達がミシュカの美しさに気をとられていたわずかな時間に、アルカードがそこまでの判断を行ったという事実に気づいた。アルカードはクルーの態度に怒っていたのではなく、指揮官としての実戦態勢に入っていたのだ。さすがに歴戦の兵だ。判断が早く、適切だ。
これは既に実戦なのだ。ラリックは気を引き締めた。
「その通りだ。そして、結果は随時報告しなければならない。ハインリッヒ、ハイパー・ドライブ・スペースチャンネルで第一報を送れ。内容は、既に入力済みだ。これにミシュカのデータを付属」
「ラジャー。通信、ハイパー・ドライブ・スペースチャンネルで送ります。データはどの時点のでっか」
「ドライブ・アウトした瞬間から今までのもの全てだ」
「ラジャー。本当にコモン・ヒューマンがいたら、大発見でんなぁ 」
うきうきと機器を操作するハインリッヒの横で、スタンが不安そうな顔をする。
「しかし、教官、いいんですか。我々で。できるでしょうかぁ」
「スタン、できるか、ではなく、しなくてはならないのだ。確かに、君たちは歴戦のメンバーに比べれば劣ることは否めない。しかし、機能的には君たちが上だ。充分それをなせるように造られている。足りないのは、経験だけだ。それは私がサポートする。経験はいまから積むのだ。宣言しよう。これは訓練ではない。今この時点から実戦である」
ラリックはしばしアルカードにみとれていた。そして、いつの間にかアルカードに依存している自分を自覚した。反抗的な態度をとるブレッドすらも、既にアルカードの部下になっているのに気がついた。それこそが、数々の修羅場をくぐり抜けた真の勇者の実力なのだ。ラリックは感動に震えた。
スタンの悲鳴のような報告がラリックの夢想を破った。
「教官、探査機のひとつにエネルギー反応――いえ、戦闘反応ですぅ。何者かが、戦っていますぅ」
「影像に切り替え、戦闘を行っている者を確認。メインモニターに表示。待て! 遠望モードだ! 戦闘に近づけるな!」
指示はわずかに遅く、争ういくつかの影がメインモニターに写り、みるみる拡大したかと思うと、一人の影が向き直り、一瞬の閃光と共に画像が乱れ、何も写さなくなった。
「探査機、撃墜されましたぁ。すみません、僕、いえ、自分のミスですぅ」
スタンは自分のミスにすぐ気がついた。対象物を確認することだけに気をとられ、探査機を戦闘に近づけすぎた。たとえ発見されなくとも、戦闘に近づけば流れ弾を食らうこともある。アルカードが指摘しなかったのは、常識以前のことだったからだ。
叱咤を覚悟したが、それはいつまで待ってもこなかった。恐る恐る振り向いて、信じられないものをみた。
目を見開き、驚愕の表情で凍りついているようなアルカードだった。わずかに震えているようにも思える。
高性能なスタンの耳と、一番近くに位置していたラリックのみが、呆然としたアルカードの呟きを拾った。
「……ガイナック……ばかな……」
「教官どの……」
気遣わしげなラリックの声に、アルカードはハッとしたようだった。掌で顔をおおい、目を閉じ――再び目を開いたときには、いつもの峻厳な表情を取り戻していた。
「探査機のコントロールをヒルダに移行。ヒルダは上空待機。命令のあるまで状況を監視しつつ、要請があればバックアップ。緊急と判断した場合は、自ら判断にしたがってかまわん。全員出撃だ」
アルカードは号令とともに立ち上がり、席から離れようとした。
「教官殿、軽率ではありませんか? 対象物を確認してからでなければ、戦う相手がわかりません」
「その必要は無い! 探査機を撃墜したのは、カイザー軍だ」
「! ここは、フェリックス軍側の辺境です。カイザー軍がいるはずが――」
「でもぉ、先程確認したシルエットはぁ、カイザー軍の上級士官のシルエットと類似しているよぉ。いえ、していますぅ」
わずかに動揺を含んだコンラットの意見は、以外にもスタンによって否定された。
「聴いてのとおりだ。スタンの影像解析能力は我々の中で一番優れている。疑う余地はなく、ここはフェリックス軍領地だ。相手がカイザー軍であるかぎり、我々は戦わなくてはならない」
「待ってぇ、指揮用個人船の用意ができていないわぁ! 予定では、着陸後、坊やたちだけが探査にいくはずだったでしょう。いそいでいるけどぉ、もう少し、かかるのよぅ」
アルカードは眉をひそめた。
「ラリック、君が指揮をとり撃墜地点まで行きたまえ。私も用意できしだい出撃するが、それまで他の者はラリックに従うこと。私が到着するまでは、事実関係の確認を第一として、なるべく戦闘を行うな。行う場合でも、撤退を目標とし足止めに徹するように。撃退しようとは思うな。相手は精鋭部隊と思われる」
「その根拠は、あるんでありますかぁ。負けるつもりで戦うてーのは、気性にあわないんすけど」
憮然としてブレッドが意見する。ラリックが何か言う前に、アルカードが否定した。
「負けるつもりではなく、撤退だ。撤退と敗戦を混同しないように。カイザー軍領地からここへ向かうには、かなりの大回りをするか、フェリックス軍の警戒ラインをかいくぐるしか無い。並の相手ならともかく、少数精鋭部隊相手では分が悪い」
「さっきのシルエットのひとつはぁ、重装備タイプに所属するものですぅ。装備可能な推定武装はぁおよそ35タイプ以上。最大7種。Aクラスの破壊力をもつものもありますぅですぅ。多分、かなり強力な武器を装備しているものと思われますぅ。そのぉ経験を考慮に入れない単純な戦力比でもぉ、教官ぬきだとぉ、劣っているかもぉ」
スタンがいらぬ補足をして、ブレッドに睨まれた。それをラリックが視線だけで牽制し、スタンをかばい、ブレッドがむくれる。
ささやかな人間模様を無視し、アルカードは続けた。
「そのとおりだ。さきほどのでこちらの存在は気づかれていると思われる。警戒したまえ。部隊の損失は極力避けるように。これは物質的なものではなく、人材的なものだ。以上」
『ラジャー』
クルーは敬礼すると、メインブリッジを出た。その姿が見えなくなると、アルカードは腰を下ろし天を仰いだ。
「ひよっこちゃん、発進したわぁ。他の探査機を反応地点に向かわせているけど、目標物を捕らえられるのにはもう少しかかるわよぉん。スタンちゃん、多くのデータをとろうと、かなり広範囲に探査機を飛ばしたのよぉ。惑星捜査なら正しい行動なんだけど、こーゆーときは困るわよねぇ。ひよっこちゃんたちを追尾できないわぁ。まあ、ミスのうちにはいんないけどぉ。指揮機の用意の方が先になりそう。データは確認しだいリアル・タイムでそっちに回すわぁ」
「手抜かりだな、ヒルダ」
「ごめんなさぁい。準備はいそいでいるわぁ。それよりぃいっそのこと、あたしごとおりない?準備が整うよりは早いわよぉ」
「……ヒルダも団体戦は初めてだったな。個人艇ならば、私と心中するつもりでもいいが、チーム戦では退路を確保しておかねばならない。もはや君は『空母』なのだよ」
「そーゆうものなの? ああ、あたしも足ひっぱっちゃいそう。それよりもぉ……アルカード、あなた、いま、出かかったんじゃない? 大丈夫?」
「……大丈夫だ。たとえ、同タイプのものであろうと、同じルーツ・マトリクスを持つものであろうと、それは、奴ではない……奴は……破壊した……私がこの手で」
一瞬、鬼気迫る憎悪に顔を歪ませ、アルカードは拳をにぎりしめた。次の瞬間にはそれは全て消え、手をひらく。そして脱力したように呟いた。
「……だから……あれは起きない……重大な障害を起こすレベルには達しない……私は大丈夫だ、ヒルダ」
「そうよ、ガイナックは既に存在しないわぁ。あたしと、アルカードがやっつたけたのよ。だーかーらー、アルカードは大丈夫。大丈夫よぉ。敵なんか蹴散らして、大手柄立てるのよぉ」
アルカードはわずかに微笑んだ。そうすると、やはりジーニアス系だと思わせる、穏やかな顔になる。
「まさか、それを確認したくて、私を足止めしたのでは無いだろうな」
キャラキャラと笑う声が応える。
「あらぁ、ちがうわよぉ。ほんとうに、ちょっとしたミスよ。訓練航行だと思って、気を抜いていたのぉ。予定なら、アルカードってほとんど出ないはずじゃない。だから、着陸してからでも間に合うなって。ごめんなさぁい」
「ヒルダ、君がそういう性格で、私は随分助かっている」
「それって、誉めてるの それとも皮肉?」
「事実を、ありのままだ」
「誉め言葉だと思っておくわ。そういえば、そろそろひょっこちゃんが探査可能区域をでるわよ。母艦での探査可能区域を出ると、探査機の到着まで追尾できなくなるけど」
「いちおう、影像を出してくれ」
それは教官としての老婆心から出たことだったが、結果としては正しかった。命じたときにはまだ余裕があったのだが、しかし、影像がモニターに映ると、それは霧散した。
アルカードはギョッとして目をむき、あわてて通信を送った。
「マシンモードへトランスせよ。繰り返すが、これは実戦である。母艦を出る前から戦闘体制に入るのが定石だ」
『ラ、ラジャー』
ヒューマンモードだった新兵たちがマシンモードにトランスする前に、高速移動していた個人艇は探査可能区域を出てしまった。
脱力したようにコンソールに手をつき、力無くアルカードが言う。
「……頼む……ヒルダ……急いでくれ……不安になってきた……」
「奇遇ね……あたしも不吉な予感がするの……」
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