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母と娘 第一話
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母が亡くなった。
くも膜下出血だった。
母の四十九日が過ぎ、父も平静を取り戻し、ソウル特別市に出張していった。
父は韓国に単身赴任しているのだった。
あたしも、そろそろ学校に戻らねばならない。
もう四回生なので、就活に忙しいのだった。
でも、なんだか、まだ、気持ちの整理がつかないのだった。
母のケータイが鳴った。メールのようだった。
母の友達なら、みんなお葬式に出てもらっているから、母のケータイにかけてくるなんて・・・
「誰からだろう?まだ、母さんの死を知らないお友達がいたのかも」
なんだか、母の秘密を覗くようで怖かったが、あたししかもう、見ることができないので、ケータイを取って開いた。
タク・・・男の人みたいだった。
母は、この人をアドレス帳に登録しているようだった。
あたしは、おそるおそるメールを開いた。
母にも男性のお友達がいたみたいだった。
『キョウコさん、しばらく会ってませんね。そろそろ会いませんか。いつもの場所で』
あたしは、直感で「出会い系」で知り合った男だと思った。
母が「出会い系」で男の人と、会っていた・・・
父とはほかに男の人と付き合っていたんだ。
海外赴任が長い父と、いつも家でひとりぼっちの母。
母も女だった。
あたしは、その気持も理解できた。
しかし、このメールの男をどうしたものだろうか・・・
知らさなければ、そのまま消えていくものだとも思えた。
あたしは、いけないと思いながら、過去の母が受信したメールを探した。
母は、用心深く怪しいメールは消去してしまっていた。
が、送信済みトレイは消し忘れている。
よくあることだった。
『タク君、金曜日はあたしちょっと用事があるの。月曜日の1時でどうかな』
『じゃ、1時に藤沢駅バス停で』
などなど・・・
もう、疑い得なかった。
母はタクという男性と密会していたのだ。
それは、男と女の出会い、あたしにも想像はできた。
父以外の男性と、いやらしいことをしていたのだ。
そして母の死を知らない「タク」は、また母と関係を結ぼうとメールをしてきた・・・
よし、あたしが会ってやる。
あたしは母になりすましてタクにメールを返した。
『今からでもいい?』
すぐにタクからメールが返ってきた。
『いいの?うれしいよ。じゃ、藤沢駅のバス停で10時に』
あたしは、
『わかったわ。楽しみ』
不安がないといえば嘘になるけれど、かりそめにでも母を愛した男性というものに会ってみたかった。
それに、なんだか母に裏切られた気がして・・・
あたしは、母を不潔に思うより、自分がまだ子供で処女であることに劣等感を覚えたということがより動機に近いのかもしれなかった。
藤沢駅のバス停でドキドキしながら待っていた。
喉がカラカラだった。
「タク」は、母が死んで、娘がナリスマシで会いに来たと知ったらどうするんだろうか?
なにかヤバイことになりはしないか?
車で来るらしいことはメールからわかっているけれど、車種もなにもわからなかった。
あたしは母の帽子を目深に被って、遠目には判別しにくいように装った。
母とは体型もそっくりで服を共用していたので、今日は母のお気に入りのボーダー柄のワンピースを着てきた。
すーっと、紺色のメタリックの車がバス停に入ってきた。
この車か?
あたしは、運転席を覗きこんだ。
四十くらいの短髪の男が運転していた。
父よりずっと若い。いや、母よりも若いと思う。
男は「え?」と驚いた表情でこっちを見ている。
彼は母じゃないことに気づいたようだった。
あたしは、思い切ってドアをノックした。
彼は、怪訝な顔でウィンドウを下げる。
「あの、君は?」
「吉田恭子の娘です」
彼は驚きの表情を隠せないようだった。そりゃそうだろう。
「いいですか?乗っても」
あたしは、ドアに手をかけた。
「いいけど、キョウコさんには」
「母は亡くなりました。それをお知らせしたくって」
「えっ!」
彼の顔は、驚愕の表情に変わった。
あたしは、助手席に収まると、シートベルトを締めた。
「君は、全部知ってるんだね」
「ええ、まあ」
「しかし、驚きだ。キョウコさんは何で亡くなったんだい?」
「くも膜下出血でした」
「そうか。でもぼくらは、その、娘の君には言えないような関係だったんだ。知っているかどうかわからないけど」
「わかってます。出会い系で母と知り合ったんでしょ?」
「そうだ。で、どうする?」
「車、出してください」
「え?」
「タクさん・・・でしたね。行きませんか?母と思って、あたしとホテルに」
我ながら、大胆な発言だった。
「あ、ああ。いいのかな。おれはいいけど・・・じゃ、行くよ。気が変わらないうちに」
半時間ほど後には、あたしたちはラブホテルの一室にいた。
あたしは、こんなところには初めてだった。
黒を基調にしたシックな大人の雰囲気を醸しだした部屋だった。
あたしは、平静を装っていたが内心はどぎまぎしていた。
ここが、母とタクが密会していたところだと言うのだ。
「きみは、キョウコさんに似ているよ。名前、聞いてなかったね」
「真帆(まほ)って言います」
「いいんだね」
あたしは頷いた。母に対抗意識が芽生えていたのかもしれなかった。
タクに唇を奪われた。
ファーストキッスだった。
他人の味を初めて味わった。
タバコの匂いがかすかにしたが、気になるほどでもなかった。
母さん、あたし、母さんのカレとしてるんだよ・・・
タクも母を思って娘を抱いているようだった。
くも膜下出血だった。
母の四十九日が過ぎ、父も平静を取り戻し、ソウル特別市に出張していった。
父は韓国に単身赴任しているのだった。
あたしも、そろそろ学校に戻らねばならない。
もう四回生なので、就活に忙しいのだった。
でも、なんだか、まだ、気持ちの整理がつかないのだった。
母のケータイが鳴った。メールのようだった。
母の友達なら、みんなお葬式に出てもらっているから、母のケータイにかけてくるなんて・・・
「誰からだろう?まだ、母さんの死を知らないお友達がいたのかも」
なんだか、母の秘密を覗くようで怖かったが、あたししかもう、見ることができないので、ケータイを取って開いた。
タク・・・男の人みたいだった。
母は、この人をアドレス帳に登録しているようだった。
あたしは、おそるおそるメールを開いた。
母にも男性のお友達がいたみたいだった。
『キョウコさん、しばらく会ってませんね。そろそろ会いませんか。いつもの場所で』
あたしは、直感で「出会い系」で知り合った男だと思った。
母が「出会い系」で男の人と、会っていた・・・
父とはほかに男の人と付き合っていたんだ。
海外赴任が長い父と、いつも家でひとりぼっちの母。
母も女だった。
あたしは、その気持も理解できた。
しかし、このメールの男をどうしたものだろうか・・・
知らさなければ、そのまま消えていくものだとも思えた。
あたしは、いけないと思いながら、過去の母が受信したメールを探した。
母は、用心深く怪しいメールは消去してしまっていた。
が、送信済みトレイは消し忘れている。
よくあることだった。
『タク君、金曜日はあたしちょっと用事があるの。月曜日の1時でどうかな』
『じゃ、1時に藤沢駅バス停で』
などなど・・・
もう、疑い得なかった。
母はタクという男性と密会していたのだ。
それは、男と女の出会い、あたしにも想像はできた。
父以外の男性と、いやらしいことをしていたのだ。
そして母の死を知らない「タク」は、また母と関係を結ぼうとメールをしてきた・・・
よし、あたしが会ってやる。
あたしは母になりすましてタクにメールを返した。
『今からでもいい?』
すぐにタクからメールが返ってきた。
『いいの?うれしいよ。じゃ、藤沢駅のバス停で10時に』
あたしは、
『わかったわ。楽しみ』
不安がないといえば嘘になるけれど、かりそめにでも母を愛した男性というものに会ってみたかった。
それに、なんだか母に裏切られた気がして・・・
あたしは、母を不潔に思うより、自分がまだ子供で処女であることに劣等感を覚えたということがより動機に近いのかもしれなかった。
藤沢駅のバス停でドキドキしながら待っていた。
喉がカラカラだった。
「タク」は、母が死んで、娘がナリスマシで会いに来たと知ったらどうするんだろうか?
なにかヤバイことになりはしないか?
車で来るらしいことはメールからわかっているけれど、車種もなにもわからなかった。
あたしは母の帽子を目深に被って、遠目には判別しにくいように装った。
母とは体型もそっくりで服を共用していたので、今日は母のお気に入りのボーダー柄のワンピースを着てきた。
すーっと、紺色のメタリックの車がバス停に入ってきた。
この車か?
あたしは、運転席を覗きこんだ。
四十くらいの短髪の男が運転していた。
父よりずっと若い。いや、母よりも若いと思う。
男は「え?」と驚いた表情でこっちを見ている。
彼は母じゃないことに気づいたようだった。
あたしは、思い切ってドアをノックした。
彼は、怪訝な顔でウィンドウを下げる。
「あの、君は?」
「吉田恭子の娘です」
彼は驚きの表情を隠せないようだった。そりゃそうだろう。
「いいですか?乗っても」
あたしは、ドアに手をかけた。
「いいけど、キョウコさんには」
「母は亡くなりました。それをお知らせしたくって」
「えっ!」
彼の顔は、驚愕の表情に変わった。
あたしは、助手席に収まると、シートベルトを締めた。
「君は、全部知ってるんだね」
「ええ、まあ」
「しかし、驚きだ。キョウコさんは何で亡くなったんだい?」
「くも膜下出血でした」
「そうか。でもぼくらは、その、娘の君には言えないような関係だったんだ。知っているかどうかわからないけど」
「わかってます。出会い系で母と知り合ったんでしょ?」
「そうだ。で、どうする?」
「車、出してください」
「え?」
「タクさん・・・でしたね。行きませんか?母と思って、あたしとホテルに」
我ながら、大胆な発言だった。
「あ、ああ。いいのかな。おれはいいけど・・・じゃ、行くよ。気が変わらないうちに」
半時間ほど後には、あたしたちはラブホテルの一室にいた。
あたしは、こんなところには初めてだった。
黒を基調にしたシックな大人の雰囲気を醸しだした部屋だった。
あたしは、平静を装っていたが内心はどぎまぎしていた。
ここが、母とタクが密会していたところだと言うのだ。
「きみは、キョウコさんに似ているよ。名前、聞いてなかったね」
「真帆(まほ)って言います」
「いいんだね」
あたしは頷いた。母に対抗意識が芽生えていたのかもしれなかった。
タクに唇を奪われた。
ファーストキッスだった。
他人の味を初めて味わった。
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