憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉

陣ノ内猫子

文字の大きさ
上 下
18 / 21

第六感発動

しおりを挟む
 比較的低ランクの魔物がいるという、“タンバの森”というところへ行く。
 足を進めていくと不意にマダナイが足を止めた。そして、進んでいたのとは違う方向へどんどん歩みを進める。

「マダナイ君、どうしたんだい?」
「吾輩の『第六感』がこっちだと言っているのである」

 それならばと、イリスもマダナイの後に続く。辿り着いた先には、様々な薬草らしきものが多種多様に芽吹いていた。

「わぁ、すごいね! マダナイ君の『第六感』!」
「女神様から頂いた能力なのだから、当然である」

 マダナイはどこか誇らしげだ。

「小娘、これが回復に効く薬草である。これが魔力回復に効く薬草で、これが――」

 本当に色々な薬草があり、状態異常を回復する薬草まであった。滅多に見つからないことで有名なのだが、マダナイの『第六感』のおかげでたくさん採取することができた。

「でも、こんなにたくさん持って行ったら、ギルドの人がびっくりするんじゃないかい?」
「ならば、最低限だけ提出し、残りはそのポーチに入れておくとよかろう。いつ必要となるか分からんのだからな」

 「そうだね」と頷き、ポーチに薬草を仕舞っていると、どこかからか悲鳴が聞こえた。

「! もふもふがボクを呼んでいる気がする!」
「何を言っているのである。しかし……ふむ。これは神獣の気配であるな」

 マダナイの呟きが聞こえたのかは分からないが、イリスはすぐさま、悲鳴の聞こえた方角へ駆けて行った。

「こ、小娘! 待つのである!」

 慌ててマダナイも、イリスの後を追いかけた。





「確かこっちから聞こえたはず……」
「――っ!」

 再び悲鳴が聞こえた。

「こっちか!」

 森の中を駆けると、丁度小さな魔物がオークに襲われているところだった。だが、助けようにもイリスには戦闘の経験はない上、魔法を使ったこともない。そこで思いついたのが剣だった。女神特製の剣は、持つだけで使い方が分かったはず。そうと決まれば、イリスはすぐに腰から剣を引き抜いた。
 柄を握った瞬間、様々な戦い方が頭の中を巡った。

「これなら……」

 ぐっと柄を握り直して「ハァッ!」と斬りかかり、オークと小さな魔物の間に立った。

「もう大丈夫だからね!」

 後ろにいる小さな魔物に振り返り告げる。
 オークは巨体のわりに動きが遅い。そこをつけば勝機はある。
 獲物を取られたと思ったのか、オークは怒り狂い突進してきた。イリスは小さな魔物を左腕で抱え、紙一重で躱す。そして振り向きざまに、オークの背中を斬り裂いた。
 剣の性能のおかげで戦い方が分かった上、どこを斬れば返り血を浴びないで済むのかも分かった。おかげで、ドレスアーマーに汚れはない。

「大丈夫だったかい?」

 腕の中にいる小さな魔物の姿はウサギのようだった。瞳は赤く、尻尾はイリスの大好きな、ふさふさのもふもふ。そして何より目を惹くのは、その眉間の辺りに輝くハート型の小さな宝石だった。見たところ大きな傷は見られないが、逃げ回り疲れたのかぐったりとしている。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

家族はチート級、私は加護持ち末っ子です!

咲良
ファンタジー
前世の記憶を持っているこの国のお姫様、アクアマリン。 家族はチート級に強いのに… 私は魔力ゼロ!?  今年で五歳。能力鑑定の日が来た。期待もせずに鑑定用の水晶に触れて見ると、神の愛し子+神の加護!?  優しい優しい家族は褒めてくれて… 国民も喜んでくれて… なんだかんだで楽しい生活を過ごしてます! もふもふなお友達と溺愛チート家族の日常?物語

森だった 確かに自宅近くで犬のお散歩してたのに。。ここ  どこーーーー

ポチ
ファンタジー
何か 私的には好きな場所だけど 安全が確保されてたらの話だよそれは 犬のお散歩してたはずなのに 何故か寝ていた。。おばちゃんはどうすれば良いのか。。 何だか10歳になったっぽいし あらら 初めて書くので拙いですがよろしくお願いします あと、こうだったら良いなー だらけなので、ご都合主義でしかありません。。

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界転生はうっかり神様のせい⁈

りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。 趣味は漫画とゲーム。 なにかと不幸体質。 スイーツ大好き。 なオタク女。 実は予定よりの早死は神様の所為であるようで… そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は 異世界⁈ 魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界 中々なお家の次女に生まれたようです。 家族に愛され、見守られながら エアリア、異世界人生楽しみます‼︎

異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ
ファンタジー
【異世界に召喚されましたが、間違いだったようです】 ノベルアッププラス小説大賞一次選考通過作品です ※自筆挿絵要注意⭐ 表紙はhake様に頂いたファンアートです (Twitter)https://mobile.twitter.com/hake_choco 異世界召喚などというファンタジーな経験しました。 でも、間違いだったようです。 それならさっさと帰してくれればいいのに、聖女じゃないから神殿に置いておけないって放り出されました。 誘拐同然に呼びつけておいてなんて言いぐさなの!? あまりのひどい仕打ち! 私はどうしたらいいの……!?

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

処理中です...