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依頼を受けよう

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 何とかペット(従魔)可の宿を見つけ、夜を明かすことにする。
 そこで初めてイリスは自分の姿を鏡で見た。
 ウェーブのかかった空色の髪、碧眼の瞳、肌は白く陶磁器のようだった。女性としての膨らみはささやかだったが気にしない。大きくても戦闘には邪魔なだけだと思った。顔は整ってはいるが、美人というよりかは可愛らしいというような顔立ちだ。エスパーダがハーレムに加えようと思ったのも頷ける程度には愛らしい容姿だといえる。

「小娘、いつまで鏡に張りついているのだ。明日の話をするのである」

 「分かったよ」と返事をし、椅子に腰かける。

「明日は薬草の採取と討伐の二件、依頼を受けてもらうのである。薬草はおそらく常設依頼であろうが、討伐の方は分からん。たぶんゴブリンあたりであろう」

 マダナイの話をうんうんと頷きながら聞く。ゴブリンと言えば、繁殖力が強く女性をすぐ手籠めにするクズだと認識している。出会ったら容赦なくぶっ飛ばそう、と心に決めた。

「薬草は役に立ちそうなものを教える。小娘は『状態異常無効』の能力を持っているが、吾輩は持っていない。きちんと覚えておくように。まぁ小娘の魔法があれば必要なようはないかもしれないが、念の為である」
「はい、マダナイ先生!」

 手を上げて、イリスは元気よく返事をした。マダナイも先生と呼ばれて悪い気はしないようだ。ほんのり頬を赤らめている……ような気がする。

「こほんっ。話は以上だ。明日に備えて寝るのである」

 マダナイはマントを翻し、背を向けた。

「ふふふ、分かったよ」

 照れ隠しであることが分かっているので、イリスは思わず笑ってしまった。
 それにしても、明日は本格的な戦闘に入る。多少の緊張と不安はあるが、無理な依頼を受けさせることもないだろうし、マダナイがいてくれる。口には出さないけれど、それだけでも安心の材料となるのだ。

「ねぇ、マダナイ君」
「何だ」

 実はイリス、寝る前にしようと思っていたことがあるのだ。

「もふもふさせてくれないかい?」
「は?」
「マダナイ君、覚悟!」

 言うが早いか、イリスはマダナイに飛びついた。

「な、なにぃぃぃぃっ!?」

 ちなみにこの宿、ペット(従魔)がベッドで寝ることは禁止なので、大きめのペット(従魔)用の布団を借りた。


* * * * *


 早朝――。
 マダナイに叩き起こされ、朝食を済ませると、早々に冒険者ギルドへと向かった。何でも、いい依頼は朝早くに貼り出されるらしい。それを確保する為、早朝に叩き起こされたようだ。それならそうと、昨夜の内に言ってくれればよかったのに、とイリスはブツブツと呟く。まぁ、昨日もふもふできたおかげで、イリスとしては満足なのだが。
 そこでイリスはピンときた。

「……もしかしてマダナイ君、忘れてたんじゃないのかい?」
「そ、そんなことあるはずがなかろう!」
「どうだかね~」

 今の反応は図星のようだった。ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべたイリスと、冷や汗をかいたマダナイが冒険者ギルドへ到着した。
 しかし、いい依頼と言っても常設の依頼を受けると昨日は言っていたはず。
 そう尋ねると、それでも自分達に合った、いい依頼がないとも言い切れないからだと返された。

「なるほどね~」

 冒険者ギルドの中へ入ると、まだ朝早いというのに冒険者がちらほらいた。試しになぜ朝早いのか冒険者に尋ねてみると、マダナイの言う通りだった。いい依頼を狙う為だ、と。その話を隣で聞いていたマダナイが、得意気な顔をしていた。
 ちなみに、イリス達に合ったいい依頼は特になかった。一緒に依頼ボードを見ていたマダナイはしょぼくれている。

「いいじゃないか、マダナイ君。『早起きは三文の徳』って言うしね!」
「それは日本の言葉であるな」
「この世界では言わないのかい?」
「言わないのである」

 マダナイの言葉に、イリスは気をつけなくちゃな、と思った。異世界転移者など、そうそういるものではないはず。何でバレるか分かったものではない。
 イリス達はひとまず、依頼ボードから常設依頼である『薬草の採取』と『ゴブリンの討伐』を受けることにした。これは受付に持って行く必要はないので、手ぶらで冒険者ギルドを出た。
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