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◆本編

EPISODE 24.学園都市の悲劇②

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「そして、この“軍事国家”を守り通せるのはグレンさんなのはわかってますから」

「え?俺?」

「だって、貴方は“元防衛部隊”の隊長でもありハクトさんを育て上げた人ですから」

「それも、知ってるのか……」


ラゼットが満面な笑顔で告げると、グレンは少し呆れた表情をしては少し嬉しそうに微笑んでいた。


「そして、万が一の為にダレスさん達はグレンさんと共に」

「それと……」


ラゼットはダレスの隣で此方を見ていたアレンを見れば、アレンはどことなく分かっていたのか微笑んでから小さく頷いていた。


「アレンさんには、ボクらのフォローを頼みたいんです」

「ん、当たり前っすわ」

「頼りにしてますよ、アレンさん」

「おう、任せてくれっす」



“学園都市”。


唯一“中立国家”とも言われて他国からの生徒や教師を受け入れている独立した国の一つでもある。
この地が出来たのは、今から30年前とも言われている。

もしかしたら、もっと古くから存在していたとも逸話がある。


そんな“学園都市”へとラゼットとレイヴン、そしてアレンの三人は到着して学園長とも話し合いの結果。
学園長の指示により、教師全員の力で“学園都市”に強い結界を張り巡らせていた。


「結界の設置は完了っすよ、ラゼットさん」

「わかりました」

「何事も起きないと、いいんですが……」

「レイヴンさん、それは確かに思いますよ?でも、あの“紫の国”が“普通な攻め方”なんて絶対にしないと思います」


ラゼットは“紫の国”について話を聞いていたからこそ、“紫の国”の行動に対して絶対に警戒は解かない。

現に“史実”では、この“学園都市”を生贄にして“最悪なる生物”を生み出しては“軍事国家”へと放っていた。
それこそ、生贄にするためならば“惨殺”したのだから。


「それを阻止しなければ、いけないんです…………今回は」


半分以上の騎士と魔導師を此処へと派遣させていた“紫の国”、それの指揮を崩すためにも“制圧班”には頑張ってもらうしかない。


“2時間”。


その時間の範囲内で“制圧”が出来れば、ラゼット達の体力の限界が来る前に終わらせれる。


「アレンさん、大丈夫ですか?」

「一応、ハクトさんから“バハムート”を借りていますから大丈夫っすよ」

「なら、良かった」

「ちなみに、ゼノさんからも“フェンリル”を借りているんっすよ?ほら」

「え?」


ラゼットの真後ろには白銀の毛色をさせた巨大な狼が座っては、ラゼット達を観察するかのように見下ろしていた。


「これは、確かに……どうにか、なりそうですね」


2体の“幻獣”が此方に居るならば、確かに2時間以上掛かっても大丈夫なのは確実だろう。
だが、ラゼットとしては不安な要素が一つあるのだ。


(この戦争に、“例の魔女”が関わっているのかどうなのか)

(関わっている可能性は、高い筈だ……)

(何せ、この“学園都市”全土を使った“生贄創生の術式”を展開させていたのだから)


ラゼットは折り畳み式の長弓を取り出しては、左右にいるアレンとレイヴンと目で合図をする。
そうすると、アレンはジャマダハルを構えレイヴンは血躁術で刃鞭を出して構える。

三人が見据えるのは、“学園都市”の入り口へと到着した“紫の国”の騎士団の群れと魔導師の姿である。


「さぁ、防衛戦の始まりですよ!!二人ともっ!」

「ういっす」

「はいっ!」


ラゼット達が“防衛戦”を開始したと同時に、離れた木の上で“三人の影”が様子を眺めていた。
特に、あの群れの上空に浮いているクロニカの事を監視するかのように。


「邪魔は、させへんで」

「そうだよな、アイツのやりたい事を邪魔はさせないぜ」

「何かあれば、直ぐに撃つわ」


“学園都市”での戦いの最中、校舎の窓から眺めていた二人の生徒は不安そうな表情をしていた。

一人は金色の髪色をさせた長い髪をポニーテールにして横髪が少し長くて軽く巻いており、少しキツめのツリ目をさせた青紫色の瞳をしていて、少し耳が尖っていて学生制服を着ている少女である。


ー“学園都市”に通う生徒、“ティア”。


「なんで、こうなるのよっ……どうしたらっ」


ティアの隣に立ってはティアの頭を優しく撫でて慰めているのは、灰色の髪色をしているセミロングを軽く三つ編みにして束ねており、ツリ目をさせた青色の瞳をしていて、背中には白い羽根の翼を生やして学生制服を少し緩く着ている青年だ。


ー“学園都市”に通う生徒、“シキ”。


「ティア……」

「シキっ、どうしたらいいと思うっ?先生に、……エミル先生に話したら……いいのかなっ?」

「でも、此処からは出れないから……通信機が使えるか、学園長に」


ティアとシキが話をしていると、後ろから何かの気配を感じて振り向けば其処には笑みを浮かべているクロニカが“いつの間にか”立っていた。


「久しぶりねぇ~、ティアぁ?」

「ひっ……!?」

「っ……」


シキがティアを守るように前に立ってはクロニカを睨んでいれば、クロニカは可笑しそうに嗤っていた。


「あらぁ、可愛いナイト様ねぇ?でも、~この惨劇を招いたのは其処のティアよぉ?」

「え?」

「っ……」

「フフフフッ……、知らなかったぁ?ティアぁ、教えてなかったのねぇ?フフフフッ、良い子じゃないの~ティアぁ?」


クロニカは可笑しそうに嗤いながらも、シキとティアへと歩み寄りティアの様子を伺いながらも笑みを浮かべている。


「ねぇ、ティアぁ?キミのナイト様に、暴れて貰おうかしらぁ?」

「だ、ダメっ!!し、シキは、関係ないんだからっ!!」

「フフフフッ、関係ない?でも、キミには関係しているよねぇ?だったら、関係者の一人って思っても良いじゃない~?」


クロニカは涙を流しているティアを見ては恍惚な表情を浮かべては、可笑しそうに大きな声で嗤っていた。


「フフフフッ、ティアぁ?今まで、貴女の考えた“術式”で何人の人間が喪ったと思う~?」

「フフフフッ、折角だからナイト様に教えてあげるわぁ~」

「キミが護ろうとしている女の子はねぇ~、普通の人間が“人狼”になったり“魔物”になる“術式”を思い付いたのは……紛れもなく、ティアなのよぉ?」


クロニカは微笑みながらも、黒い扇子を出して口許を隠し目を細めてティアとシキを見つめていた。


「え?」

「っ……」


ティアは座り込んでは耳を塞いでしまい、シキは唖然とした表情をしていたが直ぐにクロニカを睨んでいた。


「もしも、そうだったとしても!ティアを“追い詰めた”のは、お前なんだろっ!?」

「し、き……」

「僕はっ!以前から、ティアから話を聞いていた……“幼馴染み”だった“クロニカ”について、全部だ!」

「!?……ティア、話したの?」


シキの発言に驚愕な表情を浮かべたクロニカは、段々と険しい表情へと変わったと思えば可笑しそうに嗤っていた。


「あーあ、ぜーんぶ貴女に押し付けてやろうと思っていたのに」

「っ?」

「そうねぇ、ぜーんぶ教えてあげるわぁ?ティアぁ?キミの大切な“クロニカ”は、あの時から既に死んでるのよぉ?フフフフッ」

「ぇ……」


クロニカは其処で軽く回っては妖しく微笑みながらも、少しずつティアとシキへと歩み寄る。


「貴女からしたら、“クロニカは変わってしまった”と思っていたでしょうけどぉ?」

「それは、勘違いだわ」

「あの日、いいえ“前日”に“この身体”の持ち主を殺したのは“ボク”だものぉ~?」


クロニカは深い笑みを浮かべては両手を広げては、二人の目の前で可笑しそうに嗤っていた。


「この“持ち主”、エーテルナノが多いし適合率が高くてねぇ?それで、欲しくなったのさ!」

「し・か・も!!“持ち主”の幼馴染みは凄く良い“術式”を産み出せた!なら、ボクがすべき事は直ぐに分かるだろぉ?フフフフッ」


クロニカは座り込んだティアの目の前に立って、折り畳み式の杖でティアではなくシキを殴りティアから離れさせる。


「っあ!?」

「シキっ!?」

「フフフフッ、ティアぁ?今までご苦労様ぁ~、ご褒美に二人仲良く死なせてあげるねぇ?」


クロニカが折り畳み式の杖を振り上げてティアへと狙い定めると同時に、2つの銃声がしたと思えばクロニカが持っていた折り畳み式の杖は地面へと激しく落ちてクロニカの左肩から血が溢れていた。


「誰っ!?」

「ぁ……」

「私の“生徒”から離れて貰いましょうか、“クズ魔女”さん」

「せ、先生……」







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