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◆本編

EPISODE 18.黒キ竜ノ狂乱①

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ダレスが一番後悔しているのは、自分を慕い崇拝してくる程の“副隊長”の喪失が大きかった。


【俺が、誰にも関わらないってのは……】

【アイツが、昔……俺の下に居た“副隊長”が俺を護るために、俺なんかを逃がすために囮になったんだ】


それからというもの彼は、誰に対しても冷めた対応をしては自分に深く関わらせたりしなかった。


【アイツも逃げれば、それでいいじゃねぇーかっ!!なのに、アイツはっ……アイツはっ……】


彼は滅多に他人に涙を見せないのに、その時だけ微かに涙を流しながら話をしてくれていた。


「だからこそ、彼の心を護るためにも……」

「“近接部隊”の“副隊長”、“ガデシュ”さんを護るんだ」

「そのためにも、“感染源”もとい“第二の大規模実験”ともなる“実験の街”に出向かないといけませんね」


ー例え、どんなに困難な内容だろうとも。


「必ず、成し遂げるだけです」











「そうか、次は其処という事なのだな?」

「はい」


ラゼットは目を覚まして直ぐに、ヴェニタスの執務室へと来ては“実験の街についての調査隊”へと自分の加入申請の話をしていた。


「元々、あの場所は“キナ臭い”所だと思って目を付けていたが……」

「そうか……。“紫の国”の管理下の街でもあり、丁度“第二の大規模実験”を行おうとしているという事か」


ヴェニタスは資料を眺めながらも、ラゼットからの話を聞いては眉間に皺を寄せては明らかに不機嫌である。


「ヴェニさん、どうするんだ?一応、ダレス達に頼んでいるんだろ?」

「あぁ、……ラゼット」

「はい」

「レイヴンは元々は、お前の部下としてつけているが……ついでに、本人の推薦でアレンもつけるなら許可をしよう」

「アレンさん、ですか?」


ラゼットが軽く首を傾げていると、ヴェニタスの執務室の扉が開いてアレンが入ってくる。


「さっき、約束したでしょ?俺は、意地でもついていくっすよ」

「あ……」


ラゼットはアレンとの会話を“今、思い出しました”という表情をすれば、アレンは呆れながらもジト目でラゼットを見つめていた。


「ワザと、っすよね?」

「はははっ……」

「んで、先輩の部隊についていくって話でしたよね?ヴェニタスさん」

「あぁ、そうだ」


ダレスの部隊“近接部隊”が向かい調査をする予定だった場所は、度々“報告”されていた“不気味な街”の事である。
 
“不気味な街”と呼ばれている理由は、かつては滅んだ筈の街だったからである。


「“人”が居ない筈なのに、度々“報告”では灯りがついているというのはあったが……」

「最近になってな?“人の気配がする”という、報告まで上がった」


グレンは資料を取り出しては、その資料をアレンに手渡しをするとアレンは受け取り中身を確認する。
確かに、資料の中には沢山の目撃情報が提供されているようである。


「……明らかに、こちらが調査をするという名目を与えたって感じっすね?」

「アレン、ラゼット。お前達は、“近接部隊”とは別行動をして“原因”を突き止めて“阻止”をしろ」

「「はい」」

「……少し、嫌な予感もする。どうか、気をつけて任務にあたってくれ二人とも」

「わかったっす」


アレンとラゼットが執務室を出ていくと、ヴェニタスは資料にある写真を眺めては軽く息を吐いていた。
そこに映るのは、“軍事国家”の軍服を着た“人狼”の姿があった。


「……卑劣な事をしてくれるな、あの魔女め」

「ヴェニさん」

「今回の調査次第では、“紫の国”へと潜入調査が必要となるぞ」

「……だろうな」


執務室を出たラゼットは手帳を確認しては、その手帳の中の内容が再び変わっているのを確認しては眉間に皺を寄せていた。


「ラゼット?」

「……アレンさん、内容が少し変わってます」

「え?」

「多分、これはボクらが関わる形になったからだと思いますが……」


ー“副隊長”が、人狼化させられている内容へと変わっている。


ラゼットの言葉にアレンは驚愕な表情をしては、ダレスの事を考えては苦虫を潰したかのような表情へと変わっていた。


「……余計に、あの人は」

「だからこそ、絶対に“変える”んですよ?アレンさん」

「ラゼット……」

「ダレスさんにとって、一つの支えとなっていた“ガデシュ”さんを助けるためにも……ボクらは、先に“実験の街”へと出向き解決させるしかないんですよ………物事が起きる前に」

「そうっ、すね」


ラゼットとアレンは城塞を出ていくと、アレンが用意した“マジックバイク”と呼ばれた見た目は確かにバイクだが、その機能は普通のバイクとは違うようである。


「これは……」

「オレの“愛機”っすね。未来には、無かったんっすか?」

「ありましたけど……、少しだけ違いますね」

「へぇー」


アレンはマジックバイクを起動を確認してから、ヘルメットを身につけると他のヘルメットをラゼットに手渡してから跨がる。


「後ろ、どうぞ」

「あ、はい」

「結構、飛ばすんで」


ラゼットがアレンの後ろで跨がり座るとアレンの腰に腕を回すと、アレンはチラッとラゼットを見てからマジックバイクを走らせる。


「一つ、聞いていいっすか?」

「え、あ、はい?」

「……未来のオレらは、最後は貴女に何かを残したんっすか?」

「………あれは、突然でしたから………何も」

「そうっすか。最後ぐらい、何かしら残しておけよな未来のオレ」


アレンは少しだけ悔しそうな表情をしながらも、前だけを見つめてはマジックバイクを走らせていた。


「……襲撃が始まる前は、いつも通りでボクの“誕生日”を祝う予定だったんです」

「っ!?」

「いつものように、どんちゃ騒ぎをして楽しく過ごす予定でした」


だが、その幸せは突然として壊されたのだ。


ー大切な“仲間”。

ー大切な“人”。

ー大切な“居場所”。


それは、本当に突如として奪われる事を思い知った。


「……凄く、悲しかったです」

「目の前で、皆が、皆の首を落とされる光景……」


ーどうして、一緒に戦わせてくれなかったの?


ーどうして、一緒に逃げてくれなかったの?



「そして、後悔だけが、……その場に残りました」


ラゼットは俯きながらも、あの時の気持ちを少しだけ露呈させていた。
それほどまでに、大切な彼らを目の前で奪われ喪ったのが心へと大きなダメージを残した。


「……って、こんな暗い話をして……すみませんっ」

「いや、構わないっすよ……なんか、不甲斐ない気持ちっすよ」

「え?」

「今思えば、そうっすね……オレらは、ラゼットを“置いてきぼり”にして辛い想いをさせた挙げ句の果てには一人で戦わせてしまっている」


アレンはラゼットの話を聞いては、自分が“もしも”ラゼットと同じようになっていたとしたならば、それは耐え難い重い感情で押し潰されていたかもしれない。


「あ、ほら?あそこっすよね?」

「そうですね」


アレンとラゼットが話をしていると、廃墟となった筈の街並みが見えてアレンは入り口付近でマジックバイクを停める。

ラゼットとアレンはマジックバイクから降りてから、街の入り口から街の様子を確認する。


「確かに、明らかに“人の手”が入っているみたいっすね」

「“紫の国”が2年前から此処で、“人狼化”もしくは“魔物化”の実験を行っていたという話がありました」

「……こりゃー、明らかに“黒”っすね……」


ラゼットとアレンは無言で互いに顔を合わせては静かに街の中へと入っていくと、街の中は少し前に滅んだというのに完全には朽ちずに形を残している状態である。

この街が滅んだのは、当時の領主が“薬物”に手を出した事による自業自得の崩壊である。


「……ですが、後に報告が上がったんです」

「後になって?」

「……“紫の国”による策略だと」

「なるほどっすかー、それなら納得っすね」

「そうですね、“紫の国”ならば“可能”ですから……」


ラゼットは一つの建物を見つめては、その瞳を細めてからアレンを突き飛ばす。


「っ!?」






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