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魔王の城(サタン城)
魔王の城
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「つ…ついにきたか」
両手を腰に当て、仁王立ちして格好をつけて前を見据える。
天に登るかのように、
大きく口を開いた龍の像が両端にそびえ立っている。
目の前には大きな鉄の門。
ついにきてしまった。
いや、
簡単にたどり着いてしまった魔王城。
まあ、そりゃそうか。
俺はモンスターで、異世界の会社は魔王城であれば、ただ会社に戻るだけだもんな。
俺が何故簡単に魔王城に戻れたかというと、
実は、ステータスの中に
「魔王場へ戻る」
というボタンがあったのだ。
ボタンをぽちっと押すとワープホールが現れ、簡単に転生された、というわけだ。
「これはこれで面白いな。
ゲームプレイする時はたいてい勇者側だから、
モンスター側のシステムなんて知らないもんなぁ…」
ゴブリンに追いかけられたり草に足を取られたりと、あんなに苦しまなくても、すぐに魔王城へ行くことができたという…。
「最初のスタートから魔王城にしてくれても良かったんだけどな…なんで洞窟に放り込まれてたんだ?」
魔王の考えはイマイチ理解できない。
俺がインキュバスになっている理由も、
魔王なら知っているのではないかと思ってきたわけだが。
会社で言えば採用担当や人事が配属先を決める訳だが、モンスターの世界はどうなっているのだろうか。
インキュバスは俺が希望したわけではないし…
きっと誰かが決めたはず。
まずは社長である魔王に会ってからだ。
「しっかし、すごいとこだな魔王城」
城の中に赤い川が流れている。
薄く透き通った赤はルビーのようで、美しい。
水の色は赤いが、にごりはいっさいなく、川の底が岩造りであるのがよく見える。
水面がキラキラと光って、まるで砂金やダイヤモンドが浮いているのではと疑うくらいだ。
「イメージと違うな…」
確かに、ゲームでよく見るような薄暗さとおどろおどろしさはなくは無い。
どこから何が出てくるかドキドキするような感覚はある。
しかし、片付いていてほこりがなく綺麗。
丁寧に清掃されているな、という印象だ。
装飾品や家具に関してもアンティークでセンスが良い。
「綺麗な骨董品屋って感じ…?や、なんつーかフランスの王宮的な…?ヴェルサイユ宮殿的な?」
想像の海外の宮殿を彷彿とさせる魔王城。
ドラマや映画でよく見る世界感に圧倒されてしまう。
味わったことのない経験に現実味がなく、また夢を見ているんじゃないかと思う。
鉄の門までに続く赤い絨毯もただの赤ではなく深みがあって美しい。
「魔王って、インテリア大好き…?」
ーーーーガタッ
音にビクリと反応すると、鉄の兵士が一体。
ーーーえ?え?え?
「鉄の兵士始めてみた。すげぇー」
2m近くある鉄甲冑の周りをぐるぐると見て回る。
鉄兜の中は真っ暗。人は入っていないようだ。
「あれ?でもさっき音したけど、うごか・・・?ない?」
好奇心で鉄の固さを確かめようと、触れたくなり、腕を伸ばした。
「うおおおぁああああすっすっすいませぇええん」
すると、鎧の兵士に腕を掴まれた。
鎧の兵士は腕を離して、ぺこりと一礼頭を下げた。
「あ、ども…」
つられて俺も頭を下げる。
ーーーれ、礼儀正しいじゃん…。
驚きで心臓が飛び跳ねる。
もう一度頭を下げてレッドカーペットの上を勢いよく駆け出す。
魔王城では俺がインキュバスでもさほどなにもおきないようだった。
俺よりもレベルの低い花もいたが、足に巻き付いてきたりはしない。
両手を腰に当て、仁王立ちして格好をつけて前を見据える。
天に登るかのように、
大きく口を開いた龍の像が両端にそびえ立っている。
目の前には大きな鉄の門。
ついにきてしまった。
いや、
簡単にたどり着いてしまった魔王城。
まあ、そりゃそうか。
俺はモンスターで、異世界の会社は魔王城であれば、ただ会社に戻るだけだもんな。
俺が何故簡単に魔王城に戻れたかというと、
実は、ステータスの中に
「魔王場へ戻る」
というボタンがあったのだ。
ボタンをぽちっと押すとワープホールが現れ、簡単に転生された、というわけだ。
「これはこれで面白いな。
ゲームプレイする時はたいてい勇者側だから、
モンスター側のシステムなんて知らないもんなぁ…」
ゴブリンに追いかけられたり草に足を取られたりと、あんなに苦しまなくても、すぐに魔王城へ行くことができたという…。
「最初のスタートから魔王城にしてくれても良かったんだけどな…なんで洞窟に放り込まれてたんだ?」
魔王の考えはイマイチ理解できない。
俺がインキュバスになっている理由も、
魔王なら知っているのではないかと思ってきたわけだが。
会社で言えば採用担当や人事が配属先を決める訳だが、モンスターの世界はどうなっているのだろうか。
インキュバスは俺が希望したわけではないし…
きっと誰かが決めたはず。
まずは社長である魔王に会ってからだ。
「しっかし、すごいとこだな魔王城」
城の中に赤い川が流れている。
薄く透き通った赤はルビーのようで、美しい。
水の色は赤いが、にごりはいっさいなく、川の底が岩造りであるのがよく見える。
水面がキラキラと光って、まるで砂金やダイヤモンドが浮いているのではと疑うくらいだ。
「イメージと違うな…」
確かに、ゲームでよく見るような薄暗さとおどろおどろしさはなくは無い。
どこから何が出てくるかドキドキするような感覚はある。
しかし、片付いていてほこりがなく綺麗。
丁寧に清掃されているな、という印象だ。
装飾品や家具に関してもアンティークでセンスが良い。
「綺麗な骨董品屋って感じ…?や、なんつーかフランスの王宮的な…?ヴェルサイユ宮殿的な?」
想像の海外の宮殿を彷彿とさせる魔王城。
ドラマや映画でよく見る世界感に圧倒されてしまう。
味わったことのない経験に現実味がなく、また夢を見ているんじゃないかと思う。
鉄の門までに続く赤い絨毯もただの赤ではなく深みがあって美しい。
「魔王って、インテリア大好き…?」
ーーーーガタッ
音にビクリと反応すると、鉄の兵士が一体。
ーーーえ?え?え?
「鉄の兵士始めてみた。すげぇー」
2m近くある鉄甲冑の周りをぐるぐると見て回る。
鉄兜の中は真っ暗。人は入っていないようだ。
「あれ?でもさっき音したけど、うごか・・・?ない?」
好奇心で鉄の固さを確かめようと、触れたくなり、腕を伸ばした。
「うおおおぁああああすっすっすいませぇええん」
すると、鎧の兵士に腕を掴まれた。
鎧の兵士は腕を離して、ぺこりと一礼頭を下げた。
「あ、ども…」
つられて俺も頭を下げる。
ーーーれ、礼儀正しいじゃん…。
驚きで心臓が飛び跳ねる。
もう一度頭を下げてレッドカーペットの上を勢いよく駆け出す。
魔王城では俺がインキュバスでもさほどなにもおきないようだった。
俺よりもレベルの低い花もいたが、足に巻き付いてきたりはしない。
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